かけはし重要記事

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野宿者・人権資料センター発行 八〇〇円        かけはし2002.9.2号より

『季刊 Shelter-less』路上から現代社会を問う

ホームレス自立支援法の成立を見すえて

 七月三十一日にホームレス自立支援法が国会で成立した。この法案をめぐって野宿者運動は、賛成派、危惧派、反対派と評価が別れた。法案が成立したことによってこの間の論議をどのように総括していくのかが問われると同時に、野宿者運動にとって支援法を真に野宿者自身のものにしていく闘いなど、新たなステップが求められている。これらの課題に接近するために本号は、「自立支援法成立を見据えて」、「東西の自立支援事業」、排除問題を取り扱った「よるべなき街角」を設定して問題提起している。
 まず最初に検討しなければならないのは、支援法が持っている弱さや問題点についてである。この側面について特集では、全国の二十七の野宿者団体・支援団体と五十一人の賛同者によって政府と関係機関に提出した「資料 総理大臣等への要望書」を掲載している。
 要望書は、野宿者の人権と自己決定権の尊重、強制 排除や収容主義批判、「自立」に至るための多様な経路の設定、生活保護の充実化と違法・差別的運用禁止、入居支援政策と就労創出の充実などを列挙し、これらを政府の責任として明記し全国的に行えと訴えて いる。
 要望書の指摘を踏まえて、以下の発言者たちの報告と比較検討し、論議を深めていきたい。
 藤田博仁さん(愛知県立大)は、「名古屋市・東京23区・大阪市のホームレス比較」から、地方自治体が「生活保護、法外援護を中心に増加するホームレス問題に対峙してきた」段階から、国が補助する形で一時保護・自立支援事業にシフトしていくべきだと主張する。そのうえで「効果的装置」「もっと何が必要なのか 」という内実を豊富化させていかなければならないと強調する。
 穂坂光彦さん(日本福祉大)は、支援法の強制排除の性格について焦点をあてて「強制追い立ては、人権、なかんずく『居住の権利』の重大な侵害である」という国連人権委員会決議(一九九三年、日本政府も含む全会一致)を踏まえ「国際人権法の遵守」を明示せよと述べている。
 さらに釜ケ埼就労と生活保障制度実現をめざす連絡会の「失業\野宿対策の総合的推進を求める要望」は、 「野宿生活者の社会再包摂のための施策」の観点から今後の運動の方向性を提起している。また、実践報告例として、笠井和明さん(新宿連絡会)の「大田寮紀行」、稲葉剛さん(自立生活サポートセンター・もや い)の「東京における自立支援事業の現状と課題」、尾松郷子さん(大阪大学OG)の「自立支援事業が抱 える問題」などが掲載されている。
 排除と追い出し問題については、遠田哲史さん(池袋野宿者と共に歩む会)が豊島区三公園「一斉整備工 事」にともなう区の対応について、オリジンさん(神奈川全県パトロール)がJR横浜駅東西自由通路工事をめぐる 東急ホテルと横浜市の問題について取り上げている。
 小泉政権の新自由主義政策は、労働者に対して弱肉強食競争、大リストラと不安定雇用を拡大し、膨大な失業者を野宿者へと追い込んでいる。同時に必然的に再生産される社会的分裂と不安定要因を回収・統合するための装置を打ち立てていかなければならない。そのひとつであるセーフティネットと称する失業者対策だが、三百五十万人以上の完全失業者数に現れているようにほとんど有効に対処できずにいる。さらに、野宿者が全国で三万人以上も存在しているにもかかわらず各自治体まかせにし、放置し続けてきた。
 こうした状況に対して野宿者問題の責任が国にあり、その対策のための根拠法を作れと要求してきた野宿者運動は、ついに支援法の成立を実現した。他方、小泉政権と資本にとっては、新自由主義政策を推進する 立場から社会的統合装置の一環として支援法の成立を認めざるをえなかった。
 野宿者運動は、この攻防段階から、さらに踏みこんで支援法成立という地平から具体的な諸政策・要求の実現という ステージに入っている。つまり、政策実現過程の局面に入ったのであり、そのための全国的スクラム の構築があらためて求められているのではないか。これ以上の政府のサボタージュを許さない全国的な共同した取り組みを行っていこう。こういった局面と位置からこの号の諸提起を検討していく べきであろう。
 グローバリゼーションと新自由主義政策は、失業者と野宿者を再生産し続ける。この激流に抗する羅針盤と、統合装置に流されない団結力を実践的に創出していこう。野宿者運動に連帯していこう。(遠山裕樹)

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