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アメリカ                       かけはし2008.12.8号
米ビッグ3の破綻

救済? 破産? それとも国有化?生産システムの転換こそ課題
                           ビル・オナーシュ


 米国の深刻な金融危機、経済危機の中で、アメリカの工業生産の中核をなしてきた自動車産業のビッグ3(GM、フォード、クライスラー)の経営破綻が深刻化しており、倒産の可能性も浮上している。ビッグ3の経営陣は、数百万の労働者の失業、アメリカ経済全体の崩壊を逆手にとって政府と議会に対して緊急の救済措置を求めており、新大統領に決まったオバマも救済に乗り出している。しかし議会との関係でいまだ決着はついていない。米国のベテラン左派労組活動家ビル・オナーシュの以下の論考は、「救済」「倒産」ないし「国有化」の問題を、労働者階級の立場から経済危機と気候変動に対処する資本主義的生産システムの転換の課題として提起している(編集部)。

多額の追加支援
と労働者攻撃

 数週間前、ビッグ3の自動車メーカーを支援するために二百五十億ドルもの連邦予算の支出が承認された。ビッグ3が、どんな値をつけても売れないガソリンを食う車を、より燃料効率のよい車にシフトする生産ラインに入れ換えるための支出である。しかしゼネラル・モータース(GM)、フォード、クライスラーは自分たちは本質的に破綻したのであり、日々の経費を捻出することができないと述べている。これらの企業はUAW(全米自動車労組)の支援の下に、よりガソリンをがぶ飲みしない、より市場に受け入れられる自動車生産に必要な移行ができるまでの解決策として、さらに二百五十億ドルという多額の追加支援を求めている。
 アメリカの自動車産業への救済には先例がある。一九七九年にクライスラーが危機に追い詰められた時、議会はクライスラー・ローン保障法案を可決した。それには十五億ドルのローンと、国とUAWからの譲歩を引き出す支援措置をふくんでいた。政府は、「現実的で実行可能な」再建プランを監視する、影の経営監督機関を設置した。クライスラーの新しい「K」カーは成功して同社は速やかにローンを返済し、政府はこの投資から実質的に三億ドル以上の利益を上げた。
 しかし現在の経済危機、そして日本、韓国、ドイツが「現地生産」の市場シェアを所有している現実は、かつてと同様にビッグ3が現実的で有利な復活をするという自信をかきたてるのを困難にしている。
 しかし下院民主党は、十分に明確ではない条件で支援プランを提示している。ジョブバンク(職業あっせん所)や追加的な失業給付や工場閉鎖の制限への除外など、UAWへのさらなる譲歩の強制が話されている。投資銀行は、退職者の医療保障のために設立されたAVEBAへの企業支出の削減(すでに一部の支払いは労組との協定よりも繰り延べになっている)、医療への労働者側支出の増額、さらにはあからさまな賃金カットまで強調している。
 しかしこの悪辣なシナリオでさえも、ますますありえなくなっている。「レイム・ダック」状態の大統領の署名については言うまでもなく、上院の賛成もこの点で疑わしくなっているように見える。企業が過大評価されることなく、上院とホワイトハウスがより好意的になると推定される来年一月までに支払い不能になってしまうと仮定すれば、何が選択肢になるだろうか。

倒産は雇用破壊
の引き金となる

 少なくともGMとクライスラーにとって、倒産は有利なものであるように見える。鉄鋼、航空、さらに自動車部品産業の最近の経験は、倒産が、危機をビッグ3の労働者にとっての惨害へと転化することができるものであることを教えている。破産裁判官は、UAWが昨年交渉した降伏的取引のような労組協約でさえも廃棄する権限を持っている。
 新たな脅威を予測しうる。破産は再組織化なのか、それとも企業の解散なのか。ティームスター(運輸労組)は最近、インターステート・ベーカリーズが、残った労働組合員に過酷な譲歩を強制する再組織化と引き換えに解散の脅しを取り下げた時、勝利だと主張した。
 とりわけ現在、企業はいつでも破産する。ビッグ3の将来はなぜこれほど大きな問題なのか。まず初めに、その巨大な規模である。部品供給、最終生産物の輸送、車の販売などを勘定に入れれば、ビッグ3の崩壊は米国で三百万人の雇用の破壊、そしてカナダ、メキシコなどの諸国でも数えきれないほどの雇用破壊の引き金となる。こうした雇用のほとんどは、給料が比較的高い。また租税収入の喪失は、ただちに何千億ドルにまで達する。これがまさしく非常に重大な問題であるのはそのためである。

地球を救う違っ
た道の選択を!

 現在資本家と政治家たちが提出しているたった二つの明瞭な選択肢――条件付きの救済かそれとも破産か――は、明らかに、偏頭痛か歯痛かといった選択のようなものである。われわれは国有化のような新しい第三の選択を提起すべきなのだろうか。
 国有化は異なった環境においては、異なったものになりうる。われわれはこの三カ月にフレディー、ファニー、そしてAIGのいわゆる「部分的国有化」を見てきた。このような国有化はごまかしであり、ボール・クルーグマンが述べているように、損失を社会化し利益を私有化するものである。アムトラクの例は、米国のほとんどの鉄道乗客を見捨てる、もう一つのいかさま的国有化である。
 おそらく避けるべき国有化のもっと適切な例は、英国の自動車産業で起こったことである。ビッグ3についてのオバマの宣言のように、一九六〇年代と七〇年代の労働党政権の首相だったハロルド・ウィルソンは、英国が所有する自動車産業の崩壊は悲惨な事態になると考えた。一連の救済と国有化を通じて、十四に上る乗用車、トラック、バス、組み立て・装置企業が最終的にブリティッシュ・レイランド社に一体化された。
 以前私が英国を訪れた時、英国の自動車生産の歴史的センターであるカウリーに二十四年間働き、そのうち二十年は有名な職場委員会運動のリーダーだったアラン・ソーネット(訳注)と話す機会があった。サッチャーが終止符を打つまで、国有化の下で諸条件がいかに悪化していったかを彼は語った。労働のスピードアップや労働者に対するその他の攻撃にもかかわらず、ブリティッシュ・レイランド(BL)は市場での競争に成功しなかった。ブリティッシュ・レイランドの多くの工場はあっさり閉鎖される一方、収益の上がる部門は「外国」のバイヤーに売却された。現在、英国所有の自動車産業は存在しない。
 したがってわれわれは、何を避けるべきかを知っている。三百万の雇用を救う、別の国有化のやり方を探す前に、われわれはそうした労働者が何をしたらいいか望むものを考えるべきである。英国が三十数年前にすでに直面したと同様に、現在のアメリカの自動車産業の危機の根底にあるものは過剰生産であり、過剰能力である。「外国」企業の進出工場との競争を続けるためのビッグ3の国有化は、ブリティッシュ・レイランドよりも良い結果をもたらさないことはほとんど確実である。
 そしてわれわれは、グローバルな温暖化危機の中で自動車の増加を促す公的政策を補助することを望むのだろうか。そしてわれわれは登録車両の数が、すでに運転免許の保持者を上回っている国で、もっと多くの車を本当に望むのだろうか。
 私は、われわれの経済のグリーンな再編に奉仕する新しい公共セクターの先駆的構成要素を作り出すことによって、ビッグ3の雇用と産業的能力を救い出すべきだと確信している。われわれは既得権の返還を望むのではなく、転換と必要な再訓練の中で労組協約の保持、賃金と給付金の継続保障を勝ち取るべきである。
 われわれを現在の経済危機と地球温暖化危機に導いた「市場」の法則の代わりに、この種の国有化は、科学者、環境保護活動家、そして選出された労働者代表を、計画と経営に参加させるために利用するものとなる。
 自動車産業を別の生産に転換するのは前例のないことではない。来年四月三日から四日にカンサスシティーで予定されている会議(詳細は近々発表される)での提起の準備をしながら、私は第二次大戦中の経験を調べた。一九四二年、自動車生産は突然の停止を迎え、四年間にわたって再開しなかった。その結果追放されたり、飢えた自動車労働者はいなかった。労組協約は維持され、労働力は拡大した。私の意見では、労働者階級が直面している二重の危機は、同様の大胆な行動を必要としている。ただし地球を破壊するのではなく救うという、別の目的を持ってである。
 こうした国有化のアイデアも新しいものではない。それは偉大なユージン・デブスのようなこの国の労働者階級の指導者が、かつて広範に促進し、受け入れられたものである。われわれを取り巻くシステムのあらゆるものが、とんでもないことになっている今こそ、アメリカの労働者は、長く押さえ込まれてきた遺産を取り戻す時である。(08年11月18日)
(訳注)アラン・ソーネットは、イギリス自動車産業の労働者で労働組合運動の指導的活動家。著書に一九七〇年代の自動車産業の職場での攻防を描いた『インサイド・カウリー』がある。現在彼は国際主義社会主義者グループ(第四インター・イギリス支部)の指導部メンバーで、RESPECTの全国運営委員。

(米「レイバー・スタンダード」ウェブサイトより。筆者のビル・オナーシュはベテランの労組活動家でUE〔全米電機労組〕などで活動。反戦運動や労働党建設の闘いにも参加している。)


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