| 自民党総裁レースが明らかにしたもの かけはし2008.9.22号 |
今こそ自公政権を打倒しよう
新しい左翼のための闘いへ! |
保守政治の危機
はさらに深まる
九月十日、自民党総裁選が告示され二十二日の投開票に向けた「選挙運動」が開始された。安倍、福田と二人続いた一年足らずでの政権投げ出しによる自公政権の危機を逆手に取り、総裁選後の臨時国会冒頭にも予想されている衆院解散・総選挙に向けた自民党の「イメーシアップ」をはかる意図が見え見えの、五候補の選挙運動にマスコミが飛びついた。その結果、まさに自民党による「TVジャック」とも言うべき状況が現出している。
総裁選では、グローバルな資本主義経済の危機の深まりの中で、「大幅な財政支出」によって小泉の新自由主義的「構造改革」がもたらした「貧困・格差のひずみ」への社会的怨嗟の声をなだめるポーズを示している麻生太郎・幹事長が大きく優位を占めていると報じられている。他方、こうした麻生の路線が、小泉「構造改革」路線を否定するものだとして危機感を深めるいわゆる「上げ潮」派は、町村派の中川秀直・元幹事長を中心に同じ町村派の小池百合子元防衛相を押し立てて、小泉「改革」路線継承を強調している。小泉元首相も「小池支持」を公言するにいたった。
森・小泉・安倍・福田と四期にわたって首相を連続して輩出してきた町村派内の分裂は、総選挙後の「政界再編」の可能性をもにらんだものである。われわれはこの自民党総裁選のドタバタ騒ぎと、自民・公明与党連合体制の崩壊的事態の中から、「小泉人気」が主導してきた保守政治イニシアチブの危機の深さ、時代の歴史的転換をつかみ取ることができる。
洋上給油継続と
派兵恒久法合意
保守政治の危機は、サブプライムローン問題を引き金とした世界的な金融恐慌、石油・穀物価格の高騰、環境危機が示す資本主義の新自由主義的グローバリゼーションの歴史的限界の爆発的な露呈、そして国際法や国連憲章をも踏みにじったブッシュ米政権のアフガニスタン、イラクへの「対テロ」先制攻撃戦争の敗北と、アメリカ帝国主義の「単独覇権」の崩壊に根拠づけられている。
自民党総裁選レースに立候補した五人の候補からは、現在の資本主義の不況局面に対するきわめて短期的な対処方針しか出てこない。そこにはOECD諸国の中でも一、二を争うような貧困率と格差、一千万人を超える「ワーキングプワー」と十年連続三万人を超えた自殺、といった社会崩壊に対する認識はまったく聞こえてこない。
「対テロ」戦争に無条件に追随して、自衛隊をインド洋やイラクに派兵し、さらに「米軍再編」を媒介に「戦争国家」=憲法改悪への道を切り開いた小泉・安倍政権の政策を、今日のイラク・アフガニスタンの危機を直視する中から、どのように評価するのか、という言葉も語ることはできない。そしてG8サミットであれほどキャンペーンされた地球温暖化問題や「低炭素社会」への移行という課題についても、公約ではおざなりに触れられているだけで、論戦ではどこかに消え失せてしまった。
アフガン・イラク戦争の口火となった「9・11」から七年後の九月十一日、町村官房長官はイラクに派兵されている航空自衛隊を年内に完全撤収させる方向での検討に入った、と述べた。この撤収方針は、「対テロ」戦争の主戦場をイラクからアフガニスタンに移し、アフガニスタンに米軍を増派させる方針と連動したものであることは言うまでもない。このイラク撤退方針が、四月十七日の名古屋高裁での航空自衛隊イラク派兵違憲判決の確定が大きな要因となったことは疑いない。しかし政府と自民党は、アフガニスタンでの「テロとの戦い」への責任を口実に、インド洋海上給油活動の続行、そしてアフガニスタン本土への派兵の可能性の追求をふくめ、民主党のアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)参加論をも巻き込んで、「国際的人道貢献」を前面に押し出しながら、派兵恒久法制定に突き進もうとしている。
その尖兵となっているのが、総裁選の「泡沫候補」である石破茂・前防衛相である。石破は「イラク戦争に反対した独仏もアフガン本土で一緒に戦っている。なぜ日本だけが逃げるのか。それで世界の中の日本か。国益が確保されるのか。世界に胸を張って日本人と言えるか」とアジりまくることによって自らの役割を果たし、新政権での「派兵恒久法」制定への足がかりを築きあげようとしているのだ。
政界再編にさ
らされる野党
自民党総裁選に示される、今日のブルジョア政治的イニシアチブの危機の深まりの中で、民主党の代表選挙では小沢一郎への対立候補擁立への動きが押しつぶされてしまった。民主党内の対立は、小沢の「政権交代」戦略の下で無理やり水面下に移行させられた。しかし「日本会議」などにつながる天皇制極右国家主義から、市民的リベラル派や社会民主主義的傾向までの幅を持つ民主党内の亀裂は、総選挙後いっそう深まるだろう。
総選挙の結果がどのようなものになろうとも、自民党と民主党の双方を巻き込んだ、新たな政党再編あるいは大連立のシナリオが急速に浮上していくことは必然である。そしてその再編成は、日米軍事同盟のグローバルな強化と新自由主義的な経済・社会「改革」を共通の枠組みにした二大政党ブロックを基軸に展開されることになる。民主党内のリベラル・社会民主主義的傾向は、この政治再編の中で独自の役割を果たすことはできない。
問題は、今日、新自由主義への批判と反改憲の立場を維持している共産党と社民党の位置である。
現在、共産党は新自由主義批判を強化し、「蟹工船」ブームに表現される格差・貧困に対する抵抗の高まりを背景にこの十カ月で党員を一万人増やし、自治体選挙でも健闘している。共産党は「資本主義の枠内での民主的改革」という綱領的立場を堅持しつつ、他方では「資本主義の限界」についても「大いに論じる」という方向に向かっている。ここには、明らかに新自由主義的「構造改革」がもたらした労働者・市民、高齢者・女性・青年たちの労働と生活の場からの怒りを反映した一定の「転換」の可能性が見て取れる。しかしこの「転換」は、「資本主義の枠内」という旧来の綱領的立場との関係で深刻なジレンマに陥ることになる。
他方、社会民主党についても、われわれは欧州社民党のような「社会自由主義」への純化と単純にダブらせて捉えることはできない。とりわけ民主党との関係において圧倒的な少数派である社民党は、一方で「連合政権」における民主党の補完物として吸収される可能性とともに、他方において民主党に対する自らのアイデンティティーを保持するためにも、その伝統的な「護憲平和主義」に依拠した批判的勢力として自らを維持しようとする力学も働いていくのである。
歴史的挑戦に
向かう一歩を
十月末ないし十一月にも予測される総選挙において、労働者・市民は、こうした激変する政治情勢の中で闘いを発展させていくために、自公政権の打倒を直接的な課題とする必要がある。今回の総選挙においても、社民党、共産党の左翼に立とうとする政治潮流は共同の候補を擁立して選挙戦に挑戦することは困難である。少数派にとってきわめて不利な選挙制度は、「反資本主義左翼」をめざす勢力の独自の闘いにとって大きな障がいである。
われわれは「貧困・格差」を加速させる新自由主義に対する抵抗の始まり、そして日本の「派兵・戦争国家」化を促進する派兵恒久法・憲法改悪に対する闘いをしっかりと結合しながら、その着実な発展に全力を上げよう。自公政権の打倒は、オルタナティブな左翼潮流の形成をめざす基礎である労働者・市民の運動にとって新しい政治的空間を切り開くための条件である。自公政権打倒を労働者・市民の運動によって実現することこそ、自民・民主の二大政党ブロックによる政界再編・大連立に対する批判的勢力を登場させるテコである。
われわれはそのためにこそ、十月十九日の「反貧困`世直しイッキa大集会」の成功、原子力空母横須賀母港化阻止と、アフガン侵略・占領を支える海上自衛隊のインド洋での給油活動継続に反対する反戦・平和運動を築き上げていかなければならない。
このような運動的テーマと結びつきながら、われわれは「反資本主義左翼」の新たな潮流形成に向けた主体的な挑戦をねばり強く、ダイナミックに展開していかなければならない。
自公政権を打倒しよう! きたるべき総選挙で、共産党、社民党をはじめとする憲法改悪阻止・新自由主義的「構造改革」反対の政党と候補者への投票を! そしてこの中で、複数主義的な新しい左派政治勢力のための意識的闘いを準備しよう。
(9月14日)(平井純一) |