| 韓国はいま 社労連メンバーらを緊急逮捕 かけはし2008.9.15号 |
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政府は再び国家保安法を使い思想の自由抑圧を開始した |
歴史の時計が後戻り
危うく歴史の時計が10余年も後戻りするかのようだった。北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国)と連係したと公安当局が主張している、いわゆる「主思派」の組織事件を除いて、「社会主義」あるいは「労働解放」を主張している団体に国家保安法上の「利敵団体」のレッテルを張った最後の判決は1992年にあった。
ソウル高等法院(裁判所)は1992年11月、国際社会主義者グループ(IS)に対して「国家の存立・安全や自由民主的基本秩序を危うくすることを知りながら変乱を宣伝・煽動する行為を目的とする利敵団体」という判決を下した。こうして国際社会主義者たちは1992年から2001年まで10回にわたり155人が拘束されるという長い苦難を味わった。
仏教界の時局集会の直前
その後も長い間、国家保安法の刃は主として「統一運動」勢力に向かった。もちろん利敵表現物所持・流布の容疑で市民や軍人を逮捕することがときどき起こったが、裁判でその容疑がそのまま認められはしなかった。
だが08年8月、遂に北韓に「反対」している人々で構成された「組織事件」が起こった。警察は8月26日、オ・セチョル延世大名誉教授ら社会主義労働者連合(社労連)のメンバー7人を逮捕した。だが公安当局の意図は裁判所で一応制止された。ソウル中央地裁の令状担当の3人の判事は28日、「社労連が国家の変乱を宣伝・煽動する行為を目的とした結成された団体という点、またはその活動が国家存立の安全や自由民主的基本秩序に実質的害悪を及ぼす危険性を持っているという点についての証明が不充分だ」として彼らに対する令状を棄却した。
令状は棄却されたものの、裁判は残っている。社労連は革命的社会主義労働者党の建設を目標としているが、北韓などの現実の社会主義体制に極めて批判的な組織だ。社労連の運営委員長であるオ・セチョル教授の「信念」も長い間、変わってはいない。彼はノ・テウ政権時代には民衆会議準備委員長、キム・ヨンサム政権時代には民衆政治連合代表、ノ・ムヒョン政権時代には「労働者の力」代表を歴任した。彼が属した各組織は一貫して資本主義を批判した。
「左派」としての彼のアイデンティティーも変わることがなかった。そのようにノ・ムヒョン、キム・デジュン政権はもちろん、キム・ヨンサム、ノ・テウ政権も捕らえることはしなかったオ・セチョル教授をイ・ミョンバク政府の警察が国家保安法違反の容疑で逮捕したのだ。こうして公安当局にとって「失ってしまった10年」は「忘れてしまった10年」だ。10余年間、韓国社会が築きあげた民主主義の進展と人権改善の成果を公安当局は忘れてしまいたいかのように見える。
その上、時期が妙だ。仏教界のイ・ミョンバク政府による宗教差別に反対する大規模な時局集会が開かれるその前日に社労連のメンバーが逮捕され、集会当日には女性スパイ事件が発表された。警察の発表を見ると、スパイ事件はともかくも前から分かっていて取り調べてきていたのであり、社労連事件は既に逮捕状を受けていた状態だった。従って、警察は事件を準備して時期を待ち、一気に表ざたにしたとの推測が説得力を持つ。
パク・レグン人権運動サランバンの常任活動家は「仏教界の行動の影響力や衝撃を薄め、キャンドル集会に冷水を浴びせようとする意図が明らかだ」と指摘した。社労連事件の捜査の主体からも事件の性格がかいま見える。この事件の弁護をしている「民主社会のための弁護士の会」(民弁)キム・ドヒョン弁護士は「国家保安法の組織事件は慣例上、ソウル警察府保安課が捜査する」「今回の事件の捜査主体は南大門警察署で、極めて異例」だと語った。彼は「南大門警察署は鐘路警察署と共にキャンドル集会を主として管轄する警察署ではないのか」と付け加えた。キャンドルを狙った事件だというのだ。警察は社労連がキャンドル集会に参加してビラを撒き、街頭デモに参加したことを問題視している。
社労連の逮捕は突出した事件ではない。不吉な予感は年初から感知された。全北(全羅北道)警察庁保安捜査隊は1月29日「南側の統一愛国烈士追悼祭」に中学生180人を引率していった容疑で教師キム某氏(49)を拘束した。2006年12月に行われた追悼祭への参加を、1年以上も過ぎてから問題にしたのだ。韓総連(学生自治会総連合)議長のときから10年余り手配生活を続けてきたユン・ギジン汎青学連南側本部議長も、「よりにもよって」イ・ミョンバク大統領就任2日後の2月27日に逮捕された。キャンドル集会が熱くなっていた背後では公安政局の影も色濃くなっていった。
国軍機務司令部保安隊は6月2日、個人ブログにレーニンの『帝国主義論』などから引用した文章を載せ、パンフレット『マルクスの革命的思想』を所持していた容疑(国家保安法上の利敵表現物所持)で陸軍6軍団所属チョン某下士(軍階級のうち、兵長の上、副士官)を逮捕した。機務司は同じ時期に学生運動の経歴がある海兵隊クォン某少尉、特戦司イ某中尉を利敵表現物所持の容疑で逮捕した。けれども軍検察チョン下士に対して不起訴処分を下した。当時、クォン少尉らに接見したキム・ジョンウン弁護士は「機務司が組織の論理に従って彼らを逮捕したものの、軍検察は気にもしていない雰囲気だった」と伝えた。このように公安警察や機務司などが自身の存在を証明しようとする試みは続けられ、時には挫折した。
逮捕状は道交法違反のみ
このように公安政局の雰囲気は年初から水面下で形成されていた。組織事件についてのうわさもあった。けれども民主化実践家族運動協議会(民家協)幹事は「大学路などの社会科学書店で警察とおぼしき人々が社労連の刊行物『社会主義か、野蛮か』などを買っていくという話が前からあった」と伝えた。さらに彼は「昨年末から組織事件20件が準備されているという話も出回っている」と付け加えた。パク・レグン活動家は「チュソク(秋夕=中秋)を前後して組織事件が相次いで一気に吹き出る可能性が濃厚だ」し「公安警察が国会で来年の政府予算の審議が始まる前に自分たちの存在を証明して予算を確保しようとするだろうから」だと語った。
それではなぜ社労連が最初の標的となったのだろうか。ハン・ジョン幹事は「社労連のように小さな組織を相手として、まず利敵団体の判決を手にし、次にはもう少し大衆性のある組織を狙う可能性がある」と分析した。しかもオ・セチョル教授は社会主義を公々然と主張してきたわけだから「事件」を仕立てるのによいと判断した可能性があるというのだ。彼は「そのようにして先例を作れば『アカの度合い』が社労連よりも弱い組織も引っかけられる可能性が大きくなる」と付け加えた。
社労連は今年2月23日に発足した組織だ。大衆行動が綱領として▽非正規職の撤廃▽労働時間│雇用時間の連動制▽完全なストライキ権の獲得▽労働者による生産統制などを掲げている。社労連は革命的社会主義労働者党の建設を目標として労働解放連帯、蔚山労働者新聞など4つの組織が結合して作られたが、拘束された7人のうち、全国非正規職労組連帯会議執行委員長を担った労働運動家オ・ミンギョ氏らが含まれている。民主労総内で「現場派」として分類されている彼らは非正規職闘争において、その先頭に立ってきた。ハン・サンヒ建国大法学部教授は「利敵団体という言葉は労働者のためと言っているのだから、さしずめこの利敵の『敵』は労働者だと言うことではないか。それならば全国の労働組合が利敵団体ではないのか」と指摘した。
しかも、社会主義はもはやタブーではない。今や韓国には社会主義を目指している運動組織の存在は珍しいことではない。韓国で社会主義者のカミングアウトは1889年の仁川地域民主労働者連名(仁民労連)事件にさかのぼる。ユン・チョルホ氏ら仁民労連事件で拘束された人々が、法廷で自分は社会主義者だと公開宣言したのだ。彼らの社会主義者宣言は1990年に発刊された『そうです、私たちは社会主義者です!』に載っている。
2002年のソウル市長選挙当時、ウォン・ヨンス社会党候補がTV討論会で「私は社会主義者です。社会主義者の候補が出馬したことをどうお考えですか」と質問すると、イ・ミョンバク・ハンナラ党候補は「良いことですよ。一緒に討論もできて、どれほど良いことでしょう」と答えた。こうして87年以降、韓国において社会主義は「市民権」を獲得してきた。その上、社労連は「公開」組織で彼らの主張や活動は出版物を通しても、いくらでも確認できる。社労連事件の弁護をしているキム・ドヒョン弁護士は「主張が公開されており、証拠いんめつのおそれはなく、オ・セチョル教授のように身分が確実な人々なのだから不拘束捜査が当然だ」と指摘した。
警察は社労連の常備軍廃止と民兵隊創設の主張を問題視している。キム・ドヒョン弁護士は「国家保安法に対する合憲判決が出た当時でも、思想の自由は認めるが、『明白かつ現存している危険』に対してのみ保安法を厳格に適用しなければならない、とした」のであり「彼らの行動は逮捕状において警察が指摘しているように、キャンドル・デモに参加して道路交通法に違反した程度だ」と指摘した。行動してはいないのに主張だけで処罰するのは過度の法適用だと言うのだ。ハン・サンヒ教授は「明白かつ現存している危険という概念まで動員する必要ない」し「キャンドル集会に参加していることが暴力行動であるのならば、集会で座って新自由主義反対を叫んだ人は、すべて捕らえなければならない、ということか」と語った。その上、警察が推定している社労連のメンバーは70人を上回っていないものと伝えられる。はたして70人が結成した団体が「自由民主主義の基本秩序をおびやかし、国家変乱を宣伝・煽動する目的」の利敵団体としての威力を持つだろうか。
最近の判決で、国家保安法上の利敵団体の規定は比較的に厳格適用されてきた。大法院(最高裁)は昨年12月の一心会関連者3人に対して国家保安法上の会合・潜入・脱出罪を認定して最高7年の刑を宣告した。けれども北韓の機関員と会った容疑で起訴された一心会でさえ利敵団体としての「団体性」は1、2、3審のいずれにおいても一度として認定しなかった。今年一月には軍事施設などを撮映して国家保安法違反容疑で起訴された写真作家イ・シウ氏が無罪判決を受けた。
それに先立って年末には非転向長期囚の墓域に「不屈の統一愛国闘士」の一文を刻み国家保安法違反の容疑で不拘束起訴されたクォン・ナッキ統一広場共同代表が、控訴審でも無罪判決を受けた。よしんば国家保安法は存置したものの、国家保安法の適用は「失われてしまった10年」の間に減ってきた。国家保安法違反の容疑で立件された人は1998年の785人から2007年の64人へと、10分1の線まで減った。けれども公安当局は政権交代を契機として再び国家保安法の華麗な復活を図り、社労連に利敵団体の規定まで適用しようとする強引な手を使っているのだ。
人権悪化のシグナル
公安当局の「攻撃」には際限がない。検察・警察は女性スパイ、ウォン・ジョンファ氏事件で拘束されたファン某大尉に対して不告知罪を適用した。パク・レグン活動家は「92年の中部地域党員事件以来、不告知罪が初めて適用された。」と指摘した。これに先立って7月12日、警察はユン・ギジン汎青学連南側本部議長に隠れ家などの便宜を提供した容疑をユク某(32)、キム某(30)氏らを不拘束立件した。国家保安法の中でも人格を破壊する条項として指摘され、事実上、死文化されていた不告示罪や便宜提供の容疑が歴史をさかのぼってよみがえった。
時が経過するほどに後退している人権状況は、国際的関心事として浮上している。国際アムネスティ韓国支部キム・ヒジン事務局長は「韓国と言えば国家保安法を思い浮かべるほどに、国家保安法は国際社会の長きにわたる関心事」であり「社労連事件を国際社会が韓国の人権状況が悪化しているシグナルとして受けとめる可能性が大きい」と語った。彼はまた「韓国はアジアの人権国家としてのイメージを積み上げてきた」「これを崩すのは仁益にも全くプラスにならない」と付け加えた。
警察は街頭では青い染料入りの放水によって「不可解」市民を区分し、国家保安法によって赤い色を重ね塗りしている。このようにキャンドル集会への強硬鎮圧によって集会・デモの自由が脅かされ、国家保安法の適用によって思想の危機に直面した。社労連の活動家のように突然、押しよせた警察によって引っぱられていく「連行の追憶」が悪夢のようによみがえった。連行の現実を前にして、むしろ「まず私を捕まえろ」という抗議の声が沸き上がる。イジョク(利敵)団体のイジョクはイジョク(李敵)、つまり「イ・ミョンバク(李明博)を敵対視する行為」だという憎まれ口も聞こえる。人権か、野蛮か。今、韓国は岐路に立っている。(「ハンギョレ21」第726号、08年9月8日付、シソ・ユンドンウク記者)
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