| 福田改造内閣の発足と「安心実現内閣」の実像 かけはし2008.8.11号 |
消費税増税を軸にした「08骨太
方針」と生活破壊の強行許すな |
「御手洗ビジョン」が土台
福田首相は、八月二日、内閣改造を行った。自民党派閥の「談合」によって伊吹財務相、与謝野経済相、谷垣国交相ら消費税増税派を入閣させながら増税攻撃にむけた地ならしを押し進めつつ、自民党執行部も麻生幹事長など新体制にして、総選挙にむけたシフトを敷いた。福田は、「安心実現内閣」などと名乗りながら、「消費税なしで財政再建できるとも考えられないし、国民の安心できる社会保障制度も成り立たない。きちんと道筋を立てていく」と述べ、選挙後を射程にして消費税増税を強行することを断言したのである。
これは福田の独断ではなく、自民党財政改革研究会座長の園田が、「今秋の税制の抜本論議で、消費税引き上げの時期や幅に踏み込んだ案をまとめ、党の公約にしたい」と「号砲」を上げている現れだ。消費税を一%上げるだけで二・五兆円の税収になるにもかかわらず、園田は「基礎年金の国庫負担率引き上げで二・三兆円の財源が必要だ」などとどう喝し、「〇九年十月からでも消費税一〇%に移行したい」などと暴言するありさまだ。日本経団連も消費税増税のために圧力をかけ続け、福田改造内閣に対してあらためて「税・財政・社会保障制度の一体的改革が不可欠だ」と強調している。
福田政権は、小泉・安部政権による新自由主義政策によって民衆生活の破壊、社会的格差の拡大を作り出したがために反撃され、参院で与党過半数割れという事態を受け継ぎ、今日、世論調査によっても支持率が二〇%台を推移しているという落ち込みだ。だから福田は、ウソもみえみえみの「国民の目線にあった政治」などとアピールしなければならないのだ。こんな稚拙な手法を許してはならない。福田政権の反動的正体を現しているのが「〇八年骨太方針」(「経済財政改革の基本方針2008」6月27日)である。
方針の土台となっているのは、日本経団連の御手洗ビジョン(07年1月)だ。同ビジョンは二〇一〇年代初頭までに「憲法改正を実現」することを柱に企業減税、消費税増税と社会保障の削減など百十四項目にわたるアクションプログラムを提示していた。方針は、憲法改悪やホワイトカラー・エグゼンプションに関しては反対闘争の高揚によって引っ込めているが、御手洗ビジョンの成長戦略、新自由主義的構造改革、規制緩和、社会保障削減、消費税増税路線を継承し、その具体化である。
方針の「第一章 日本経済の課題と改革の視点」で「日本経済の成長力を強化するとともに、豊かで安心できる国民生活を実現するための、経済財政改革の道筋を示す」などと位置づけ、第二章の「成長力の強化」で全員参加経済戦略、グローバル戦略、革新的技術創造戦略を掲げた。だがその内実は、財界の承認のもとに共同合作した「第3期科学技術基本計画」、「成長力加速プログラム」、「アジア・ゲートウェイ構想」、「21世紀環境立国戦略」、「長期戦略指針『イノベーション25』」、「経済成長戦略大綱」、「観光立国推進基本計画」、「成長力強化への早期実施策」を追認し、具体化したものでしかない。冒頭から財界が描いたシナリオを引用し、基本方針を設定した。そのうえで以下のような重点取り組みを提示している。問題点は多岐にわたるがそのポイントを指摘しておく。
日本企業のグローバル化
グローバル戦略では、 EPA(経済連携協定)締結国・地域を二〇〇九年初めまでに十二以上、締結国との貿易額の全体に占める割合を二〇一〇年に二五%以上と目標設定した。つまり、日本企業のグローバル化の促進、とりわけアジア経済圏の拡大、多国籍企業の税制面での優遇措置などバックアップしていくのである。
経済成長戦略 において「新雇用戦略」を押し出したが、そもそも「新時代の日本的経営」路線で強引に作り出してきた雇用流動化、非正規雇用を拡大してきた根本政策の検証、総括、転換を打ち出すのではなく、場当たり的なセーフティネットで対応するレベルでしかない。
「開かれた経済のインフラ強化」は、安全軽視・環境破壊を作り出す「航空ビックバン」=航空自由化の推進の立場から羽田空港と成田空港の一体化と24時間運用によって、アジア国際空港競争からの遅れを取り戻すことを明記した。あげくのはてに「あらゆる角度から可能な限りの空港容量拡大施策を検討する」ことを加え、成田空港B滑走路の三千五百メートルへの延長、反対派農民の追い出し攻撃を強化していくことを押し出した。
福田政権のセールスポイントである温暖化・環境対策については、一言も触れず、空港拡張、過密航空運航の促進を賛美するだけだ。それだけではない。港湾整備、巨大プロジェクトに対しては従来通りのばらまき予算支出の促進であり、総選挙をにらんで与党が有利になるために政官財利権構造の温存・助長していこうとする狙いとセットなのだ。
「地域活性化 」は、地方再生を掲げたが、同時に「強い農業構造」への転換をキーワードに企業型農業経営の拡大、農業経営の法人化、農地リース事業などを提言している。国際競争に耐え、市場競争に勝ち抜くために農業の多角的経営主義の貫徹を求め、「高い付加価値を生み出す農林水産業」を育成し、儲からない農林水産業者を駆逐していけとまで言っているのだ。
「耕作放棄地の長期拡大、従事者の急速な高齢化、生産額の大幅減少といった危機」にまで追い込んだのはいったい誰だ。これまでの農産物自由化促進、農林業政策の破綻の結果ではないか。その責任も、反省も全くなく大資本が望む農林水産政策を押し付けるだけだ。こんな食糧主権を否定した農林水産破壊方針を許してはならない。
「低炭素社会」の欺まん性
さらに「原油価格高騰への抜本的対策」を設定しているが、「生活関連物資の価格監視等を実施する。また、需給問題や投機資金等国際的な動向に注意しつつ、市場の安定化に向け、国際的な働きかけを行う」というレベルだ。
農林水産業者に対する補助金支出、減税はもちろんのこと投機マネーを規制していく法的措置を行うべきなのだ。
方針は「地方再生戦略」の一環として定住自立圏構想や広域地方計画などを打ち出し、「地域成長力強化、地域生活基盤確保及び低炭素社会づくりを重点に地域活性化の戦略を展開する」と述べている。ならば「三位一体の改革」を掲げて地方財政の歳出圧縮政策を行ってきたことを中止するのか。そんなことはどこにも書かれていない。
小泉政権以降、新自由主義政策の強化によって自治体財政が直撃された。これまでに五・一兆円以上の地方交付税が削減されてきた。自治体の財政は破綻に追い込まれ、必然的に公共サービスやセーフティネットの後退や各セクションの民営化を通した人員削減が強化され、地域医療・福祉崩壊など深刻な事態に陥っている。地方再生対策を提言するならば充実した交付税配分を行うことが優先されなければならない。
「第三章 低炭素社会の構築」では、環境対策を言いながら、環境と人命破壊につながる原発推進、核燃料サイクルの確立の立場を明らかにしている。また、CO2排出源である企業に対する規制強化していくことを意識的に避け、具体的な数値目標を掲げることもしない。なぜならば財界が反対しているからだ。福田の「低炭素社会」キャンペーンの欺瞞性を許してはならない。
新自由主義戦略と軍事化
「第四章 国民本位の行財政改革」において国の出先機関の合理化、公共サービスの削減と民営化につながる「道州制ビジョン」の策定と導入にむけた提言をしている。地方再生などと言いながら、これでは地方破壊だ。充実した財政確保も含めた都道府県・市町村の分権・自治の確立こそが求められているにもかかわらず、なし崩し的に道州制の導入をねらっている。
さらに道路特定財源の一般財源化を提言しているが、道路族・官僚らの利権の温床となっている道路中期計画そのものに切り込むこともなく黙認してしまった。環境対策を主張するならば生活道路、自動車総量規制政策にふれるのが当然だが、全く無視だ。ここでも福田政権の温暖化対策の一貫性がないところの現れだ。
「税体系の抜本的な改革に向けて」で「消費税を含む税体系の抜本的な改革について、早期に実現を図る。税制が社会保障とともに再分配機能を適切に果たすようにし、世代間・世代内の公平を確保する。
少子高齢化の下で、社会保障を支える安定的な財源を確保する」と宣言した。このように消費税増税の実現にむけたかけ声を高めたが、総選挙を前にして、引き上げ時期や上げ幅などについては明確にしなかった。いったいどこに「安心実現内閣」の姿があるというのだ。生活破壊内閣ではないか。だから民衆から税金を搾り取るために国民総背番号制の導入もねらっている。個人情報とプライバシー侵害につながる納税者番号と社会保障番号の関係の整理を行えと主張している。
第五章では「安心できる社会保障制度、質の高い国民生活の構築」などとタイトルをつけているが、全く逆の意味である歳出削減路線の堅持が本当の内容だ。新自由主義路線を継続し、「社会保障サービスや供給体制について、ムダや非効率がないか全般にわたる見直し」を行っていくことを再確認している。だから予算の概算要求において社会保障の自然増の二千二百億円のカットを引き続き強行した。ところが一斉に世論が反発してしまった。総選挙で与党への投票激減を気にして福田は、後期高齢者医療制度の低所得者負担軽減、病院勤務医の就労環境改善、少子化対策の推進などの歳出を別枠で認めざるをえなかった。あいかわらずの場当たり的な対応を露呈させたが、社会保障費抑制路線をただちにやめることが必要なのだ。
「未来を切り拓く教育」の項目では、「教育振興基本計画」に基づいた新自由主義的教育政策を推進していくことを明確にした。文科省と財務省の取引によって「教員が一人一人の子どもに向き合う環境作り」という表現で教員増員を数値的に明示することを避けた。
福田政権においてもグローバル派兵国家作りを強化している。「総合的な外交力強化」の中で「平和協力国家」と規定した。その指針として「『防衛計画の大綱』に基づき、弾道ミサイル等の新たな脅威や多様な事態への実効的な対応、任務の国際化への配慮等を図りつつ、防衛調達等の改革を実施し、効率的な防衛力の整備を推進するほか、国民保護施策を展開する」ことを明記した。さらに「宇宙基本法」制定を根拠に「総合的な安全保障も視野に入れ、宇宙の開発利用、産業化を総合的かつ計画的に実施する」ことも提示し、新たな軍需産業分野の開発育成を行っていくことを強調した。
「迷走内閣」を追撃しよう
第六章の「予算の基本的考え」では、「米国の景気後退懸念や原油・穀物価格の高騰などに見られるリスク要因には十分注視する必要がある」と危機意識を現しながらも「成長戦略」を前提に「大胆かつ柔軟な政策運営を行う」と述べ、抽象的なレベルでしかなく具体性が全くない。
ところが歳出削減方針の継続については具体的に提示してしまうのだ。方針は言う。「歳出改革の努力を決して緩めることなく、国、地方を通じ、引き続き「『基本方針2006』、『基本方針2007』に則り、最大限の削減を行う」などと決意表明をするのだ。つまり、財政再建、社会保障関係費の財源確保を口実にして消費税増税を結論づけた。
現在、資本のグローバル化と新自由主義経済の破綻の結果として、世界的に燃料・食料品などの物価高騰、格差拡大が進行し、他方では国際市場に膨大な投機資金が投入され、規制なしでやりたい放題のマネーゲームが繰り返されている。経済危機の深まりに対して福田政権は有効な政策を提示することができず、迷走状態だ。自民党内からでさえ、「福田内閣では選挙を闘えない」などと嘆きが沸騰しているほどだ。
しかし福田政権は、財界が求める〇八骨太方針を土台にして消費税増税を狙いつつ、すでに予算の概算要求で社会保障・教育・公共サービス関係費の削減など民衆生活の破壊を押し進め、法人税減税、大企業・ゼネコンのための大規模事業と開発費、米グローバル戦争戦略を担うための軍事関係費などのばら撒き予算案を描くことによって延命しようとしている。さらなる楔を打ち込むことが必要だ。骨太方針で明らかとなった反動的な姿を暴き出し、追撃していこう。(遠山裕樹)
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