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トラック、バス、タクシー運転手の過酷な労働       かけはし2008.7.14号

「貨物連帯」のストは政府の庶民政策の実験台

ストはガソリン代を浮かす

 殺人的な石油価格暴騰の第一のターゲットは、石油に頼って暮らしている貧しい庶民たちだ。貨物トラック、バス、タクシー労働者たちが、まさにそうだ。彼らは相次いで赤いハチマキを締め、生存権を要求している。彼らはなぜ運転台を離れ街頭に踏み出しているのだろうか?
 「ストをやって死のうが、座して死のうが変わりはないじゃないですか?」
 現代自動車が作った完成車を全国各地の出荷センターに運ぶ仕事をしているキム・サンスさん(50)。俗にカーキャリア労働者と呼ばれる。彼もまた貨物連帯に所属している。キムさんは6月9日からストに突入した。働けば働くほど収入は「マイナス」だ。ストをすれば、何はともあれガソリン代を浮かすことができる、と話した。

トラックの月賦が大きな打撃

 キムさんが乗用車または乗合車6台を蔚山から仁川に輸送(往復)するときの貸借対照表を一度、見てみよう。まず軽油280リットルを注油しなければならない。軽油価格が1900ウォンだとすると、燃料費は53万2千ウォンだ。高速道路の料金5万2800ウォン、食事代2万ウォン、そのほかタイヤ交替・オイル交換、保険料などを含め1カ月平均で分けると6万6250ウォンぐらいになる。
 だが彼が手にする運送料は56万1088ウォン。1回出るたびに10万9962ウォンの赤字だ。18時間の労働に対する賃金を受けとるどころか、むしろ自分のふところから持ち出さなければならない。彼の通帳にはマイナス800万ウォンと刻まれている。「大学生の2人の娘は来学期に休学届を出すつもりだ。歳の離れた小学生の息子は3歳の時からテコンドーを習わせているが、これがもう大好きなんです。ところがこの4月から、それさえもやめてしまいました」。彼は深いため息をついた。
 1997年1リットル当たり300ウォンだった軽油が昨年末には1300ウォンに上がり、先月は2000ウォンにまでなった。貨物労働者たちは貨物車を月賦で買うケースが多く、その分、打撃は一層ひどくなる。1億2千万ウォンほどの貨物車を購入した場合、普通5年間、毎月300万ウォン前後の月賦を払わなければならない。けれども近頃は月賦のカネをひねり出すのも大変だ。カードの支払いが滞って土壇場まで追い込まれた人も少なくない。
 貨物は貨主(荷主)→あっせん業者→運送業者→貨物運送労働者など、下請け・孫請けを経て運送される。したがって荷主が払う運送料を100とすると、貨物運送労働者は中間段階の経過とともに37差し引かれた63を運貨として受け取る。
 貨物連帯は油価対策と標準料率制(最低賃金制)の導入を要求している。また荷主と運送業者が運送料交渉に出ることができるように政府が努力してくれ、と要求している。けれども国土海洋部(省)や企画財政部、知識経済部、労働部、公正取引委員会は互いに責任を押しつけあっている。貨物連帯側は政府とこれまで数十回も交渉を重ねてきた。だが交渉はいつも振り出しに戻った。
 このため、イ・ミョンバク政府の危機対応能力が低下しているのではないかとの批判も出ている。前の政府の高位人士は「貨物連帯の要求条件は各部署ごとに連関しており、一つの部署が主導的に処理するのは難しい。青瓦台(大統領府)が部署ごとの意見を調律して調整をしてやらなければならない。つまりコントロール・タワーが必要だ。しかし現政府は『牛肉』の政局から脱け出ることができないからか、そのような努力はしていないようだ」と指摘した。現政府には労働界の現実を認識している専門家たちがいない、という点も問題として指摘する。
 また一部からは別の解釈も出されている。ある貨物連帯の組合員は「青瓦台と政府が貨物連帯のストを解決しようとする意志が見えない。このために組合員らの間では、政府が貨物連帯のストを長期間ひきずり、キャンドル政局をストの政局へとねじまげようとしているとのうわさが飛びかっている」と語った。
 貨物連帯のストは03年のときとは、まるで異なった様相を見せている。貨物連帯の組合員だけでなく、非組合員の合流が大きく増えている。シム・ドンジン貨物連帯事務局長は「03年には運送料を少し上げてくれということに焦点が絞られていたとするならば、現在のストはこのままでは最小限の生活も立ちゆかないという生存権レベルの抵抗だ」と語った。
 貨物連帯は6月13日からストに突入した。だがそのまま週末になるということから、本格的なストは月曜日の16日から始まる見通しだ。金曜日の20日ごろにストが長期化するかどうかの分水嶺となる可能性が大きい。ダンプトラック、掘削機、レミコンの労働者たちも16日、ストを決議した。
 高油価は庶民の足であるバスやタクシーをも揺さぶっている。全国533のバス運送事業者の集まりである全国バス連合会も、政府が然るべき対応策を提起しないなら7月15日から全国のバス運行路線の30%を削減運行すると発表した経過がある。石油価格の引き上げ→赤字累積→仕事場の縮小→庶民の交通手段の削減へとつながる悪循環だ。


バスの燃料費が売上げの53%

 全羅北道のあるバス会社。市内・市外バスと高速バス250台を運行してきたが、今月から市外バス30台の運行を止めた。石油価格があまりにも上がったためだ。車だけを止めているわけではない。車を運転する労働者たちもそれに合わせて減らさなければならなかった。幸いにも労使はマラソン交渉のすえに、労働者を解雇しないかわりに労働日数を「21日就労」から「20日就労」へと減らした。苦痛を分担することにしたのだ。けれども勤務日数が減って、賃金は個人当たり平均10万ウォン程度ずつ減らさざるをえなかった。
 地域の住民たちも苦痛を味わっている。1日に10回運行されている路線が7回に減り、7回の路線は5回に縮小された。配車の間隔が長くなったのだ。市外バスが運行される地域は、都市とは違って地下鉄やタクシーなど他の交通手段を利用しがたい所だ。したがって市外バスの配車回数が少なくなるということは都市よりもより大きな打撃となる。市外バスを利用している人もまた老年層、出退勤の労働者、都市に通学する学生など、いわゆる交通弱者たちだ。
 この会社がこれほどまでにせざるをえない理由は石油価格の暴騰にある。油価が売上げ高からの経費支払いの中で占める比率が53%にまで上がった。5月には17億ウォンの赤字を出した。このままでは共倒れ、との思いが会社と職員の間で広がっている。
 今後、石油価格が上昇し続ければどうなるだろうか? この会社の分析を見ると、油価1リットル当たり2千ウォン台で数カ月続けば、車両200台ほどを減らさなければならない。そうなればバス運転手375人のうち300人ほどが減員となり、総務、経理、集金社員、整備士などもそれに伴って解雇されなければならない。地方の庶民たちの交通の不便さも一層大きくなる。運行の削減どころか路線の廃止にまでなりかねないからだ。

タクシー運転手に犠牲を転嫁

 タクシーも同じ悲鳴を上げている。LPGの場合、今年1月にリットル当たり94ウォン引き上げられたのに続き、6月にはさらに78ウォン上がった。1日12時間運行するタクシーに必要なLPGは40リットル。普通20リットルはタクシー会社が負担し、20リットルは運転手が負担する。1カ月26日就労として計算すると、タクシー運転手は昨年末に比べて6月には8万8440ウォンのガス代を多く支払わなければならない。個人タクシーの場合はさらに深刻だ。昨年末よりも1カ月間に30〜40万ウォンのLPGの費用をさらに出さなければならない。
 一部のタクシー会社ではガス価格が増えた分、これを社納金の引き上げを通じてタクシー労働者たちに転嫁しようとする動きも見える。結局はより多くの社納金を稼ぐためにタクシー労働者たちは相乗りや乗車拒否、無理な走行へと駆りたてられる。
 03年の貨物連帯のスト当時、労組員たちの要求は標準料率制の導入と多段階式あっせん構造(下請け、孫請け構造)の撤廃だった。5年の歳月が流れた今日も労組員たちは同じ要求を掲げている。キャンドルデモにあわてふためいたイ・ミョンバク政府は「ビジネス・フレンドリー」のかわりに「市民フレンドリー」へと政策を修正する、と語ったけれども、同じ市民でも労働者に対しては強硬対策だけを出している。
 貨物連帯のストはイ・ミョンバク政府の庶民政策の実験台であり、今後この政府がどんなやり方で労働政策を繰り広げていくのかをうかがい知る物差しとなるだろう。(「ハンギョレ21」第715号、08年6月24日付、チョン・ヒョッチュン記者)

フランス、英国、ブルガリア、スペイン、ポルトガルでも
全世界で石油の高騰に抗議し
貨物労働者や漁民が連鎖スト

油価の上昇はこ
れからが始まり

 6月7日、原子力団地として名高い日本の青森に11カ国のエネルギー関連部署の長官(大臣)らが緊急会議のために集まった。2泊3日の日程で開かれた会議に参加した国は米国、英国など先進8カ国(G8)と韓国、中国、インドの3カ国だった。この11カ国は全世界のエネルギー消費量の約65%を占めている。
 「このまま放置していては、全世界の経済が甚だしい不況に追いやられるだろう」。アラブの衛星放送「アルジャジーラ」は6月9日のインターネット版で甘利明・日本経済産業相の言葉をこのように伝えた。参加諸国は6月8日、石油輸出機構(OPEC)に一致して原油の増産を求めた。けれどもOPECの加盟諸国は「市場に原油は充分にある」という発言だけを繰り返している。OPEC加盟国であるリビアの国営石油公社ソクリ・カネム社長は6月9日、「ロイター通信」とのインタビューで「投機勢力のはびこりと国際政治の不安定が原油価格をとんでもなく引き上げた主犯」であり「現在の原油供給量は充分だ」と釘をさした。
 「まだまだだ。油価の上昇はこれからが始まりだ」。ついには破局を予告する不吉な予言まで登場した。英国「インディペンデント」は6月11日、世界最大規模の石油・ガス企業であるロシア国営カズフロムの最高経済者アレクセイ・ミラーの言葉を引いて「近い将来、1バーレル250ドルの線まで駆けのぼるだろう」と伝えた。
 こうなればどんな手を打ったとしても効果の期待できない状況となる。崖っぷちに立たされた貨物・運送労働者たちが、油価の引き上げに伴った収益の損失分の補てんと油類税の引き下げ・免税を要求して至る所で生存権闘争に乗り出しているのは当然のことだった。

ヨーロッパ全域
でストが広がる

 5月3日、フランス・パリに向かう道路を貨物運送労働者たちとタクシー労働者たちが阻むとともにヨーロッパで高油価関連のデモが本格的に始まった。5月28日、ブルガリアでは貨物労働者たちが首都ソフィアの外郭でトラック150台余りを動員した抗議デモを展開し、英国では労働者たちがロンドンに向かう道路を封鎖してしまった。高油価に敏感であるという点では漁民たちも同様だった。5月30日、イタリアとポルトガルの漁民たちが一斉に「スト」に突入したのもこのためだ。
 同日、スペインでは貨物労働者たちがストを決議し、漁民たちは首都マドリッドに結集し20トンほどの水産物を市民らにただで配り、政府を圧迫し始めた。英国の漁民たちも6月3日、ロンドンのど真ん中で大規模な抗議デモを繰り広げ、翌4日にはベルギーの漁民のデモ隊がブラッセルのヨーロッパ連合の本部近くで警察と衝突し、負傷者が続出した。
 ピチッとした対案のない状況は激しい闘争へと結びついた。ストの隊伍を維持するために車両の統制をしていた労働者たちが車両にひかれて亡くなるという事故が相次いだ。「AFP通信」は6月10日、「ポルトガルの首都リスボン北部のアルカネナ郊外でスト中だった50代の労働者が貨物運送を阻むためにトラックによじ登ったあと転落し車輪に巻き込まれて死んだ」「またスペインでは南部グラナダの、ある大型マートでスト破りをした貨物車両の運行を阻止していた労働者が乗合車にひかれて命を失った」と伝えた。
 それにもかかわらずストはヨーロッパ全域で急速に広がっている。「AFP通信」は6月13日、英国中西部エルスミア地域のローヤルダッチシェルの石油貯蔵庫でタンクローリー労働者たちがストに突入した、と伝えた。これにより英国全域でシェルが運営している注油所に対する石油の供給が中断された。極限に追いやられた労働者たちにとっては他の選択がありえないからだ。韓国貨物連帯の労働者たちのストも「地球的現象」だということだ。(「ハンギョレ21」第715号、08年6月24日付、チョン・インファン記者)


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