| 『沖縄ノート』の出版は適法だ! かけはし2008.7.14号 |
大江・岩波沖縄戦裁判控訴審始まる
原告側秦郁彦の証人申請却下
ずさん控訴理由書間に合わず |
【大阪】大江・岩波沖縄戦裁判控訴審第一回口頭弁論は、大阪高裁で六月二十五日に開かれた。百六十人ほどの人が傍聴券を求めて並び、七十人が券を手にした。被告側支援の数が相手方を上回った。原告側の傍聴者の中には、この訴訟の真の主役山本明(元陸軍大佐)や藤岡信勝、また秦郁彦などの顔があった。被告側は裁判が始まる前に一万五千三百筆の署名を民事第四部に提出。
いつもながらの原告側のずさんさ
原告側は控訴理由書の提出が間に合わなかったため、先に理由書の骨子を提出した。裁判の冒頭、裁判長が傍聴席には聞こえにくい声で何か言っていた。後で提出された控訴理由書には間違いがあって、訂正一覧も提出されたようだが、他の箇所にも数カ所間違いがあることをページ数と行数を示して「この文脈で本当にいいのですか」と指摘していたようである。
支援連絡会事務局長の話では、控訴理由書とその骨子の間にも食い違いがあるとのことだ。原告側のずさんさと裁判官が関係文書をよく読んでいることを印象づけるスタートだった。原告側弁護人は一審では三十四人だったが、理由はわからないが控訴審では六人に減っている。映画「靖国」の上映阻止で名をあげた稲田朋美衆議院議員も降りたとのことである。
原告側の控訴
理由と概略
控訴理由を徳永弁護士が述べた。与えられた時間を超えて陳述していて、止めるように注意されたため途中は省略されたが、概略次のような内容である。
請求内容は、@不当原判決の取り消しA「太平洋戦争」と『沖縄ノート』の出版差し止めB損害賠償(それぞれ1審の時の2倍)、岩波書店に対して二千万円、大江健三郎に対して一千万円。
軍の関与と隊長命令は別
一審判決は、隊長命令それ自体まで認定するには躊躇を禁じ得ないとしながらも、軍の関与・軍による強制や誘導、文科省の立場から、隊長命令があったと推認できるとした(真実であると信じるに足る相当の理由があったとした)。これは、真実性を真実相当性に置き換えただけであり、真実の証明にはならない。軍の関与は隊長命令とは別のものだ。
にもかかわらず、二つの出版物、特に『沖縄ノート』は判決後ですら五十八、五十九刷と不当にも増刷を繰り返している。これは判決に反する行為だ。
文科省を当てにした原告側の姿
判決は、文科省審議官が国会答弁で隊長命令が風説としてあったと発言したことを文科省の立場としているが、「平成十九年十二月二十六日」の教科書検定についての文科省見解でも隊長命令は否定されている。つまり、「平成十八年度」の教科書検定意見は堅持されている。判決は、「平成十八年度」の教科書検定意見が(沖縄県民大会等を経る中で)事実上修正されたとしているが、文科省の見解は一貫してる。
「母の遺したもの」のなかに、宮城初枝は中尉から自決用に手榴弾を渡されたとの証言があるが、彼女は弾薬の運搬を指示され、その任務を終えて部隊に合流したとき「無事で何よりだった」とねぎらわれている。命令があったのならこのような会話はあり得ない。
富山証言(3月20日、渡嘉敷島の村役場に17歳以上の少年が集められ、兵器軍曹から、一つは敵に、もうひとつは自決用に手榴弾を渡された)は、村史にも載っていない。
第三次家永訴訟で突然出てきた証言で、それが幻であることが明かだ。
『沖縄ノート』は、梅沢・赤松ら原告への個人攻撃に終始している。
被告側「原判決」
に異論はない
以上の原告側陳述に対し、被告側は控訴理由書が間に合わなかったので、骨子に対する反論を述べた。
原判決に異論はない。ただし、『沖縄ノート』には、座間味島の「集団自決」命令が同島の守備隊長によって出されたという記述も、元隊長の原告梅沢を特定する記述もない。また渡嘉敷島の赤松隊長に対しても同じだ。仮に、『沖縄ノート』が赤松隊長の自決命令を摘示したものであるとしても、歴史的事実に関する論評であるから、その事実が全く虚偽であることが証明された場合にのみ不法行為が成立する。
出版は適法だ。原判決は出版差し止め、損害賠償を否定している。
明らかに文科省は見解を修正した
梅沢陳述書によって隊長命令があったとする従来の通説が覆されたとして、昨年三月三十日に発表した教科書検定結果は、その後事実上撤回され、軍の関与により住民は集団自決に追い込まれた、などの記述が復活した。原告側は、「直接的な軍の命令」を示す根拠は現時点では確認できていないとする琉球新報記事を証拠として出しているが、その記事は軍による手榴弾の配布、壕からの追い出しなどの軍の関与は明確に認めている。
自決用の手榴弾を渡された宮城初枝が、その後部隊に合流したとき、任務を終えて部隊に戻ったことを喜ぶのは当然だ。「弾薬運搬の途中で万一のことがあれば、日本人女性として立派な死に方をしなさい」と言って、自決用に手榴弾を渡したもので、何ら矛盾するものではない。
毎月8日の大詔奉戴日に玉砕を指示
原告は、屋嘉比島では日本軍がいなかったが、米軍上陸により集団自決が発生していると主張する。しかし、屋嘉比島は梅沢隊長と野田隊長の指揮下にあり、座間味村に属していたから、自決の指示は当然伝えられていたと考えられる。集団自決の原因は、日本軍が秘密保持のため、米軍の捕虜になったときの恐ろしさを住民に植えつけ、捕虜になることを禁じ、米軍が上陸した場合は玉砕するように命じたことにある。
座間味島でも渡嘉敷島・慶留間島・阿嘉島でも、毎月八日の大詔奉戴日には、忠魂碑前に村民が集められ、戦時下の日本国民としての「あるべき心得」を教えられ、「鬼畜である米軍につかまると女は強姦され、男は八つ裂きにされ殺される。その前に玉砕すべし」と指示された。座間味村の阿嘉島では集団自決が発生しなかったが、それは米軍の攻撃が及んでこなかったので中止され、自決に至らなかったもの。
原告側証拠申請
原本でないと却下
裁判の最後に、証拠申請したものの確認が行われた。原告側からあらたに、「昭和六十年」のもので梅沢氏が保管していたという文書が証拠として提出されたが、これは原本ではないと裁判長が疑問を呈し、弁護人がしどろもどろの対応をする場面があった。それは、どうも原告梅沢が手書きしたものを神戸新聞の大城記者にわたし、パソコンで編集して送り返してきたもののようだ(梅沢戦闘記録)とのこと。
原告側は、秦郁彦氏を証人申請した。文科省が集団自決をどう評価しているかについて秦氏に語らせようとしたが、裁判長は、その内容は雑誌「諸君」の二〇〇八年二月号の「徹底検証・沖縄集団自決」の内容ではないのか、それなら意見書をつけてくれるだけでよいと、退席協議後証人申請を却下した。ここでも、裁判長が関係文書をよく読んでいるな、と評判になった。
次回口頭弁論は九月九日十四時から。八月末までに準備書面をすべて提出する事になったので、秋山弁護士の話では、次回で結審の可能性もあるとの説明であった。教科書検定に直接関わる重要な裁判があっという間に大詰めを迎えようとしているとの印象を強くした。 (T・T)
東京オリンピック反対集会
2週間のお祭りに環境が破壊され、膨大な赤字が残る
六月二十一日、渋谷勤労福祉会館で「利権はリレーする。名古屋、長野、そして東京へ――オリンピックと新東京銀行とのあぶない関係?」の集会が開催された。
誘致予算55億円
が100億円に
最初に福士敬子都議がオリンピックの招致を進めている東京都の実情について報告を行った。「先日、IOCは二〇一六年のオリンピック候補都市を東京、シカゴ、マドリード、リオデジャネイロの四都市にしぼった。来年のIOC総会で開催地が決定される。つまり、これからの一年間が誘致運動の本番となるが予算もそれと並行してうなぎのぼり。当初誘致のための全体予算は五十五億円で、そのうち都の負担は十五億円であった。その後都の負担分は三十一億円になり、つい最近発表された招致本部予算(2006年度〜2008年度)は百億円を超し、その半分以上を都が負担することになっている。これがすべて税金で支出されるのであり、石原都知事はオリンピックの開催が決まれば六千億円を予算化すると豪語している。これもすべて税金。福祉は切り捨てていながら。……オリンピックの開催をなんとしても阻止する闘いをつくりあげていきたい」。
次に名古屋オリンピックと昨年開催された万博に対して反対闘争を展開してきた岡崎勝さんが名古屋での経験と教訓をユーモアたっぷりに報告した。
「名古屋オリンピックは最終段階でソウルに敗れた。テレビは`残念aがる市民の顔を映し出していたが、圧倒的多数も反対運動をした人もホッとしたというのが正直なところ」「教師をしている観点から見るとオリンピックでも万博でも`さわやかさaのイメージづくりのために強制的に子どもを動員する。皇室が来るといっては旗を持たせ道路に立たせるし、マスゲームだなんだと大変。万博ではその上観客動員数が少ないといって員数合わせのために狩り出された。最も万博動員の時には子どもの方は授業よりもおもしろいといって喜んでいましたが」(笑い)。「どんな祭りも行政の方はトヨタにおんぶでだっこのつもりでも、結局はトヨタの宣伝に利用されるはめになっている」「いずれにしろオリンピックは多元的にとらえる必要がある。さまざまな反対運動があっていいし、それを結集させることによって大きな力になると思います」。
築地市場の汚染
地豊洲移転計画
最後に長野在住で「オリンピックはいらない人たちネットワーク」の江沢正雄さんが「五輪とカネ」に焦点をしぼって報告した。東京都とNPOで形成された招致委の予算は百億円であると報告されたが「長野の時の予算は二十億円でした。しかし田中康夫知事が調査に乗り出すと帳簿は焼却された。その後見つかった一部の帳簿では、百七十円の角砂糖は明らかになってもプレゼンテーションが行われたバーミンガムの夜の二億円の使途は明確にならなかった。投票権を持つ約百人のIOC委員の買収に使われたことは明らかです。オリンピックは二週間のお祭りですが、環境は破壊され、赤字一兆五千億円は長野県民に今も重税としてのしかかっています。今からでも遅くありませんから、多くの弁護士の協力を得て情報公開の裁判をやり、絶対に開催を阻止するべき。予算六千億円ですむはずがありません。最後には何兆円にもふくれあがり、そのために再び税金を注ぎこまざるをえないことになる」。
その後討論に移り、そこで明らかにされたのがジャビックと石原都知事の関係である。ジャビックとは、大銀行、ゼネコン、商社、大企業で構成され、東京湾の埋め立て、関西空港、高速道路などの国の大規模プロジェクトを立案している。築地市場の豊洲移転もここが計画立案し東京都に働きかけているのである。それを推進する最大の手段・セレモニーとしてターゲットにされたのがオリンピックの開催に他ならない。ジャビックに群がる大資本がオリンピックという「祭典」に税金を注ぎ込ませ、その利権を握ろうとしているのが全体の構図である。
集会に参加していた「市場を考える会」の女性たちは、「調査の結果ベンゼンが環境基準の一千倍から四万三千倍、シアンが八十倍から八百倍にはねあがっているのに、都側は土を入れ換えれば安全であると主張している。これは最初に移転ありきで、いくら土の入れ換えをしても水の浸透圧によって再び汚染され五メートルやそこらでは全く解決しない」と怒りをこめて報告した。
最後に「猛毒地への市場移転を断固阻止しよう! 七月十二日築地デモ」への参加を確認した。 (D)
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