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政府は秋の臨時国会提出をも断念             かけはし2008.6.30号

自衛隊派兵恒久法をつくるな

グローバルな日米軍事一体化
反対!あらゆる海外派兵阻止


成立の見通し
が立たない

 六月十九日の新聞各紙は、福田政権と自民党が準備してきた「自衛隊派兵恒久法案」を、秋の臨時国会に提出することを見送る方針を固めた、と報じた。「インド洋での給油活動のための補給支援特措法が来年1月に期限切れを迎えるため、自民党内には恒久法を成立させて給油活動を続ける案もあったが、公明党に慎重論が根強いうえ、『ねじれ国会』では成立の見通しが立たないと判断した」(「朝日」6月19日)というのだ。町村官房長官が十八日の記者会見でそうした趣旨を語った。
 六月十九日、自民・公明の与党による派兵恒久法検討プロジェクトチームは、中間報告をまとめた。その中では与党両党の間での主張の隔たりが依然として相当程度存在することも明らかになっている。意見の一致が得られなかった論点については「国連決議のない平和協力活動への自衛隊の参加」「いわゆる『駆けつけ警護』をふくむ警護任務の付与」などが挙げられている。つまり「PKO派兵や国連決議に基づく自衛隊の派兵」については自・公両党の合意は存在するものの、それ以外については依然として公明党は、米軍指揮下での公然たる自衛隊の実戦参加についてのためらい、あるいは危機にあえぐ福田政権への追随に対する支持者からの批判の高まりがあるようである。

米国の戦略と
恒久法のねらい

 自民党にとって、派兵恒久法の成立は悲願だった。事態が起きるたびの「特措法」では限界があり、かつ米軍が求めている自衛隊の海外での実戦参加を「憲法9条」によって「制約」されている現実へのいらだちがギリギリにまで高まっていたからである。二〇〇〇年と二〇〇七年の二回にわたる「アーミテージ報告」は米政府と軍からのそうした圧力を体現するものであった。
 二〇〇五年二月の日米安全保障協議委員会(2+2)で合意された「共通戦略目標」は、「米軍再編」=日米のグローバルな軍事的一体化を通じた、海外での戦闘における米軍指揮下の自衛隊の参戦の方向を確定するものとなった。
 二〇〇六年の自衛隊法の改悪によって、海外活動を「本務」とするに至った政府・防衛省にとっても、「憲法上の制約」を突破することは緊急の課題だった。もちろんそのためには最終的には憲法改悪が必要となる。しかしそれには一定の時間がかかるし、かつ「国民投票」によって明文改憲が実現される可能性も保障されているわけではない。したがって政府と自民党は、改憲以前にも「安全保障基本法」を制定して自衛隊の海外での作戦活動への「制約」を突破し、「特措法」形式ではない形で自衛隊の海外での戦争参加を「恒久化」することをねらってきた。
 しかし「集団的自衛権」行使を違憲とする従来の政府見解を見直すために安倍前首相が設置した「安保法制懇」の議論は、安倍の政権投げ出しとともに吹っ飛んでしまった。アフガニスタン戦争での多国籍軍支援のために海上自衛隊による「洋上給油」を継続する新法は参院で否決され、衆院での「三分の二」による再議決という異例の方法で強行成立させざるをえなかった。さらに本年四月十七日の航空自衛隊のイラク派兵違憲判決の確定も大きなダメージとなった。
 だからこそ政府・自民党は「恒久派兵法」の早期成立を急ぎ、自民党部会での検討を進め、公明党を巻き込んで五月二十三日以後与党プロジェクトチームでの討論を行ってきたのだが、福田政権・自民党のそうした思惑はとりあえずのところ頓挫することになってしまったのである。

制約なき派兵
と武器使用

 それでは自民党のねらう「派兵恒久法」はどのような内容なのだろうか。そのモデルは〇六年八月自民党防衛政策検討小委員会(小委員長・石破茂)がまとめた「国際平和協力法案(素案)」(石破私案)である。
 第一に同案では、「国際平和協力活動」という自衛隊の海外派兵は、国連総会や安全保障理事会などの決議によるものだけではなく、国連決議や要請がなくても「武力紛争当事者の合意に基づく要請」や「国連加盟国その他の要請」さらには、「我が国として国際的協調の下に活動を行うことが特に必要であると認める事態」でも自衛隊の海外派遣が可能だとしている。つまり、およそ「国連」という枠組みを取り払って米国の単独要請、あるいは日本「独自の判断」において自衛隊派兵が可能となるのであり、まさに無制限の海外派兵法案である。
 第二に同案は、自衛隊の「国際平和協力活動の任務」として、「人道復興支援活動」だけではなく、「停戦監視活動」「安全確保活動」「警護活動」「船舶検査活動」「後方支援活動」「物資協力」を含むものとしている。ここで「安全確保活動」とは「人の生命若しくは身体に危害を加え又は建造物その他の者を破壊する行為を防止」し「天災、事変等危険な事態において危害を防止することにより当該地域における安全を確保するために我が国が実施する活動」とされている。
 また「警護活動」とは「当該人、施設又は物品に対する侵害行為がまさに行われようとしているのを認めた場合に、危害防止のために必要な措置を実施する」ものと規定されている。
 イラク派兵特措法では「安全確保活動」への「後方支援」という名目で米軍の兵士や兵器・物資を輸送していたのだが、次には自衛隊自身が「安全確保活動」に従事して、戦闘に参加することができる、ということになる。またこの「警護活動」については、福田首相が国会答弁で「現行法上認められない」としてきた「駆けつけ警護」(すなわち日本以外の多国籍軍と現地武装勢力との衝突の際、自衛隊が駆けつけ、多国籍軍とともに戦闘に参加する行為――陸自イラク派遣部隊の隊長だった佐藤正久・自民党参院議員が、イラク特措法違反であることを承知の上で自衛隊に行わせようとした行為)も含まれることになる。
 第三に同案では、自衛隊の「武器使用」の範囲が事実上無制限に拡大される。武器使用は「安全確保活動」「警護活動」から「人道復興支援活動」「停戦監視活動」「船舶検査活動」「後方支援活動」のすべてに認められるのだ。
 「権限の行使への妨害防止又は活動の実施に対する抵抗の抑止のため必要であると認める相当の理由がある場合は、その事態に応じて合理的に必要とされる程度で……武器を使用することができる」「多数集合して暴行若しくは脅迫をし、又は暴行若しくは脅迫をしようとする明白な危険があり、武器を使用するほか、他にこれを鎮圧し、又は防止する手段がないとき」などには武器を使用できる。それは「警護」や「船舶検査」においても適用される。
 つまりこれは、米軍と自衛隊が文字通り「肩を並べて」海外での戦闘行動に参加すること、言葉を変えれば、米軍がイラクのファルージャ等で行ってきた無差別殺りく戦争に自衛隊もまた参加して民衆を虐殺することを正当化する法律なのである。われわれはこうした派兵恒久法の本質を、広く人びとに明らかにしながら法案阻止のために全力をあげなければならない。

G8利用した
アフガン派兵

 今国会中に派兵恒久法案をまとめ、今秋の臨時国会に上程、来年一月の新テロ特措法期限切れ前に成立をはかる目論見は当面のところ崩れ去った。
 しかし言うまでもなく福田政権は次の手を打っている。アフガニスタン「国際治安支援部隊」(ISAF)に自衛隊を参加させる案がそれだ。二〇〇一年十月の米軍によるアフガニスタン攻撃開始以来はじめて、外務・防衛省などによるアフガニスタンへの政府調査団が派遣された。調査は、空自の輸送機や陸自の大型ヘリコプターによるISAFへの空輸支援の可能性を探ることが目的だ。六月十二にパリで開かれたアフガニスタンへの追加支援を協議する国際会議で高村外相が「治安回復」などのための追加支援を打ち出したのもその一環である。
 七月七日から北海道洞爺湖で開かれるG8サミットではアフガン問題も議題の一つとなる。自衛隊のアフガン派兵に向けた動きは「北海道洞爺湖サミットを控え、アフガン復興に苦慮する欧米に日本の姿勢をアピールする狙いや、補給支援特措法の来年1月の期限切れをにらみ、民主党を安保論議に引き込みたいとの思惑もある」(「朝日」6月18日)と報じられている。
 さらに「アフリカ開発支援」をキャンペーンしている福田政権にとって、スーダンへのPKO派兵が検討されていることも、「派兵恒久法」を制定する構想に位置づけられていることは間違いない。
 この点では野党第一党の民主党もまた「安保基本法」という名の派兵恒久法を積極的に推進する立場であることにかわりはない。そのことは昨年十二月末に民主党が国会に提出した「新テロ特措法案」への「対案」としての「アフガニスタン復興支援特措法案」の中で「我が国の安全保障の原則に関する基本的な法制の整備が速やかに行われるもの」とするという条文がすべりこまされたことに示されている。
 もちろん「国連決議」を条件とするか否かなどを含めて、自民党と民主党の間には依然として自衛隊の海外派兵の原則をめぐる相違が存在する。しかし総選挙を契機にした「大連立」の再浮上、あるいは新しい政党再編の中で、「派兵恒久法」をめぐるすり合わせが最重要課題の一つとなるだろう。労働者・市民はこうした動きをにらみながら、アフガニスタンやスーダンへの自衛隊の派兵、「新々テロ特措法」反対、イラク・インド洋からの自衛隊の即時撤退の運動とともに、沖縄・岩国・横須賀・座間などでの反基地の闘いと一体のものとして「海外派兵恒久法NO!」の運動を作りだそう。
 実質的明文改憲である「派兵恒久法」へのあらゆる動きに注視し、反対を! G8サミットに抗する運動の中にも、「米軍再編」反対・「派兵恒久法」反対の訴えを!
(純)



反安保実が派兵恒久法反対集会
イラク派兵違憲判決を生かし「明文改憲」法案許すな


市民の声が裁判
官を動かした

 六月十四日、新しい反安保行動をつくる実行委員会は「恒久派兵法を許さない6・14集会――イラク派兵違憲判決を受けて」を行った。会場の文京区民センターには五十九人が集まった。
 この日の集会は、四月十七日の画期的な名古屋高裁イラク派兵違憲判決を生かしながら、政府・与党がもくろんでいる事実上の明文改憲である派兵恒久法に反対する運動を作りだすために準備された。
 集会では、自衛隊イラク派兵差止訴訟弁護団事務局長の川口創弁護士と島川雅史さん(立教女学院短大教員)が報告した。川口弁護士はこの週だけでも六月九日、十二日、十四日と東京での各種集会で発言するなど、精力的に「名古屋高裁判決を市民の中に広げ、生かす」活動を繰り広げている。
 「イラク派兵違憲判決と恒久派兵法」と題して講演した川口さんは、名古屋高裁判決について@イラクでの自衛隊による空輸活動は憲法9条1項違反の「武力行使」であることを、イラク侵略戦争の実態に即して明確に認定したことA平和的生存権の具体的権利性を肯定したこと、として提起した。たとえば「憲法9条に違反する戦争の遂行等への加担を強制される」場合には、その「差止め」を要求する権利が発生することが今回の判決によって導かれることになる。
 川口さんは、違憲判決の要因分析として「無法なイラク戦争に日本は加担し、すでに戦争をしてイラクの無辜の市民を殺しているに等しいのだ、という怒りと悲しみが裁判官を動かした」「着々と進む米国の下請部隊化、派兵恒久法の動きなど、深刻な事態を裁判官に伝え続けたことに応えた」「全国の原告、弁護士、平和を願う多くの市民の声が裁判官を動かした」ことなどを挙げた。そして「平和協力」の名で進められようとしている九条破壊の派兵恒久法に反対するために、名古屋高裁判決文自体を使うことが重要であり、「政府に騙されるのはもうやめよう。それは私たちの過ちを拡大することになる」と訴えた。

進行する既成事
実の法的裏づけ

 「恒久派兵法と米軍再編・国連」と題して報告した島川さんは、一九九一年以後、自衛隊が米国が展開する戦争の中で米軍との「職掌分担」に踏み込み、PKO派兵後それが既成事実化していった経過と、憲法との関係でのごまかしに満ちた言い訳の矛盾を指摘し、こうした「日米安保」のあり方が米国の不満を募らせていったことを明らかにした。
 9・11を口実にした米国のアフガニスタン侵攻、イラク侵略と自衛隊のインド洋・イラク派兵は、米軍を中軸とした多国籍軍の一体的指揮の下で自衛隊が作戦活動する「日米同盟」のあり方を急速に発展させた。もはや「憲法の禁じる集団的自衛権」という政府の解釈は事実において乗り超えられた。
 島川さんは、アメリカが単独行動型ではなく実戦への「同盟国の貢献」を組み込んだ戦略に積極的に応えようとするのが「恒久派兵法」であることを強調した。
 「派兵恒久法案」は「国連の制約」を外し、警護活動や「武装勢力掃討戦」も可能となり、臨検では船舶への「危害射撃」も可能となるなど、従来の「特措法」方式を大きく超えたものになっている。しかしそれはすでに今まで進めてきた既成事実を「法案化」しようとするものであることにも、島川さんは注意を促した。したがって問題は、法案への反対闘争であるとともに、「米軍・自衛隊」再編の中で確認されている日米両国のグローバルな軍事的一体化との闘いであるということになる。
 集会の最後に、辺野古実がカンパを訴え、G8サミット直前東京行動実行委員会で行われる「生活の営みを破壊する『軍事化』を許すのか?」分科会と六月二十九日のデモへの参加が呼びかけられた。   (K)


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