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シリーズ:G8サミットに異議ありD           かけはし2008.6.16号

国境を超えた治安弾圧システム

オルター・グローバリゼーション運動の「犯罪」化



「テロ・暴動」キャンペーン

  昨年六月のドイツ・ハイリゲンダムでのG8サミット後、日本政府は治安対策の焦点を今年のG8洞爺湖サミットに据えて、文字通り空前の警備・弾圧・情報収集体制を築き上げている。警察庁は、ハイリゲンダム・サミット直後、ただちにドイツ連邦刑事庁幹部と密接な協議を行って「洞爺湖サミット」への弾圧体制を準備した。「イスラム過激派」をはじめとする「国際テロリスト」や「反グローバリズム運動」をターゲットに、あらゆる反対運動の可能性に神経を尖らせるとともに、これを機会に「対テロ」を名目とした治安弾圧や外国人をふくむ住民監視体制のレベルアップを図ろうとしている。
 政府と警察権力は、新自由主義的グローバリゼーションの下での貧困や格差の拡大を「社会的不安定性」の広がりと捉え、「不穏な外国人」「過激派」対策を口実にして抵抗運動を「犯罪化」しようとしている。警察庁のホームページの「焦点275号――北海道〜成功へ向けて」にでは「反グローバリズムを掲げる団体による過激な行動」という項目で次のように書かれている(08年1月20日付)。
 「近年、経済のグローバル化が貧富の差の拡大や環境破壊といった社会問題を発生させているなどとする反グローバリズムの考え方が広まり、サミットやAPEC(アジア太平洋経済協力会議)、WTO(世界貿易機関)の国際会議等において、大規模な抗議集会やデモ等を行う反グローバリズムの運動が展開されています」「我が国においても、反グローバリズムを掲げる海外団体の関連組織が結成されるなど、運動の浸透が見られています」。
 さらに、反グローバリズム運動によって「大規模暴動事案や警察部隊との衝突事案が発生しています」として、一九九九年十一月のシアトルWTOへの闘い、二〇〇一年七月イタリア・ジェノバでのG8サミット、二〇〇五年十二月の香港WTO、昨年のハイリゲンダムG8サミットの例を挙げている。そして「北海道洞爺湖サミットにおいても、国内外の各種団体が、デモ等の抗議行動に取り組むことが予想されますが、その過程で暴動等が発生することが懸念されることから、警察では違法事案を防止するための諸対策を徹底することとしています」と結んでいる。
 「治安フォーラム」などの公安関係情報誌では、反グローバリゼーション運動を担っているグループへの集中的な敵対キャンペーンを行っている。

住民生活脅かす厳戒態勢

 北海道現地では、G8対策のために全国から二万人以上の警察官を総動員する予定で、厳戒体制が築き上げられ、市民生活にも重大な支障を来している。六月七日付の朝日新聞夕刊「洞爺湖発 厳戒の波」という1面トップ記事は幾つかの例を挙げている。
 G8サミット会場の洞爺湖畔ウィンザーホテルから見える噴火湾では、サミット期間中海上保安庁が噴火湾の警備を強化し、全船舶の荷物検査を行うため、毛ガニ漁に支障をきたすことになる。したがって地元の漁師たちは例年より一週間早く漁を開始することになり、「実入りの少ないカニが揚がらないといいが」と心配だという。ウィンザーホテルに連なる道の脇は草が刈られ、道路と周辺の雑木林などを隔てる高さ1メートルのフェンスが築かれた。
 札幌市で、七月一日から十一日までの間、大通公園でのイベントを認めないという方針を出し、そのため毎年恒例の野外コンサートが中止となった。「札幌国際ハーフマラソン」は例年より一カ月早い六月十五日に前倒しされ、毎年六月の第三日曜日に開催される「はまなす全国車いすマラソン」は九月末に延期された。
 札幌市水道局は水道局への「毒物混入」を警戒し、配水池とポンプ場に警報機能つきカメラを取り付け、市営地下鉄やJRの各駅には監視カメラ数十台が設置された。観光シーズンの洞爺湖では厳しい検問のため団体ツアーが激減し、観光業は重大な損失を被ることになるという。また洞爺湖周辺のキャンプ場は反対派の利用を妨げるために、すべて警察やさらに自衛隊にまで借り上げられている、という。
 それはG8サミットへのあらゆる異論を排除する民主主義と人権の抑圧のみならず、「サミット成功」のために住民を動員し、日々の生活をも脅かす暴挙である。

「サミット警備地域協力会」

 この戒厳的治安管理体制は、決して北海道現地だけの話ではない。警視庁は「東京が主戦場」と位置づけ、サミット期間の前段からの「テロ対策・デモ対策」に総力を上げている。「広報けいしちょう」30号(08年5月18日付)は「サミット特集」を組み、「東京が狙われている?」として「過去、平成17年にイギリスで開催されたグレンイーグルズサミットでは、開催地から遠く離れた首都ロンドンで、同時多発テロが起き、多数の死傷者が出ています。また東京には、テロのターゲットとなり得る、公共交通機関や不特定多数の人びとが集まる繁華街、施設等が集中していることから、テロリストから狙われる危険性も否定できません」と危機感を煽っている。
 そして「地域や企業の皆さん」に「サミット警備地域協力会」の結成や「サミット警備セミナー」の開催を通じた協力を呼びかけ、「見かけない車が長時間駐車していて、車内に人がいる」「見かけない人がメモしたり、写真、ビデオを撮るなどして、同じ場所を何度も行ったり来たりしている」「電車やバスの車内、ホームなどに荷物を置き去ろうとしている」「天候や季節に合わない不自然な服装をしている」などの行為に気づいたら110番してください、などと呼びかけている。「テロリストは観光客などを装って、あなたの町に溶け込んでいるかもしれません」というのだ。

「有事」訓練としての警備

 もちろんG8関連の閣僚会合が開かれる全国の諸都市や、それ以外の地域でも同様だ。
 神奈川県では五月に行われたアフリカ開発会議に向けて路線バスや電車に警察官を同乗させた。バスの乗車警備は全国初だという。静岡県では、国籍不明のテロリストが清水港でサリン爆弾を使い、多数の死傷者が出たという想定で、自衛隊、県警、消防、地域住民が参加した「国民保護訓練」が二月八日に行われた。京都では外相会合に備えて鉄道テロを想定した訓練が行われ、大阪府堺市では近畿6府県警の合同で「暴徒鎮圧」対デモ訓練が実施されている。
 まさに全国の警察力を総動員したG8サミット一点に絞った治安弾圧訓練が強化されているわけだが、とりわけ注目すべきは、それが「有事」を想定した自衛隊・警察・海上保安庁などが一体となった体制として構築されようとしていることである。その意味で今回のサミット警備は、「対テロ」戦争の一環として国際的にも連携した一つの「戦争訓練」として展開されていることに注目しなければならない。
 昨年のハイリゲンダムサミットでドイツは国軍の戦闘機や軍艦、装甲車などをも動員した軍事的警備体制をとった。日本では昨年の沖縄・辺野古の新基地建設反対運動に対して掃海母艦「ぶんご」が派遣され、住民の運動に対する自衛隊の事実上の「治安出動」が行われたが、今回のG8洞爺湖サミットにおいても「テロ対策」「過激な反グローバリゼーション運動対策」として、自衛隊の「治安出動」をも含みこんだ対策が取られている。
 石破防衛相が四月二十五日の衆院安全保障委員会で、洞爺湖サミット会場を標的にした航空機テロが発生した場合の対応について「政府全体で判断すべきだ」とした上で「撃墜しなければもっと大きな被害が生じる場合、選択肢から排除するのがリーズナブル(合理的)だとは思わない。考えないのは無責任だ」と答弁し、撃墜も選択肢だと述べたことはその現れである。その際の「選択肢」には航空自衛隊の戦闘機による攻撃以外に、サミット会場周辺へのパトリオット・ミサイルの配備も想定されている、と言われる。
 サミット警備とは、権力者にとって「戦争」そのものであり、まさに戦争国家体制づくりにとって実戦的ステップとしての位置を持っているのだ。
 そして、そのために莫大な税金が浪費されることになる。こんなことを許すわけにはいかない!

軍隊と警察の一体化が進行

 さらに注意しなければならないのは、「外国人への入国管理」の強化である。
 すでに二〇〇四年十二月の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部による「テロの未然防止に関する行動計画」以後、「スカイ・マーシャル」(日本の航空機等でのハイジャック犯の制圧等を任務とする警察官の航空機への警乗)、事前旅客情報システム(外国からの航空機・船舶が日本に到着する前に、航空会社等から旅客・乗員等の情報提供を受ける)の導入、旅館業者による外国人宿泊客の本人確認の義務化、外国入管当局への情報提供、日本版US―VISIT(外国人の入国審査にあたっての顔画像、指紋情報による本人確認)の導入などとして出入国管理法案等が改悪されているが、今年のG8サミットを契機に「活動家」と目された外国人の入国拒否がさらにエスカレートしている。
 アントニオ・ネグリの入国拒否はその一例であるが、三月八日からの「G8を問う連絡会・国際調整会議」に出席予定の韓国人の女性が一時成田入管で入国を拒否され、韓国に戻らなければならなかった事例、三月十四日にロシア船で小樽港に着いたドイツ人男性が入国を拒否された件、五月末のTICAD(アフリカ開発会議)への対抗集会に招待された南アフリカの活動家のビザ発給が意識的に遅延させられ、結局参加できなかった件などの事例が相次いでいる。それ以外にも、これまで何度も支障なく来日していたアジア諸国の活動家が入国審査の段階で執拗に妨害されているケースも起きている。
 こうした外国人への入国拒否をふくむ管理の強化に対しては、「サミット人権監視弁護士ネットワーク」が作られ、こうした外国人への監視・弾圧に対する闘いが取り組まれている。
 新自由主義的グローバリゼーションに抵抗する社会的・政治的運動そのものを「犯罪」化しようとする治安弾圧体制は、G8サミットを通じた「警察のグローバル化」と一体のものである。
 「サミットにおける司法・警察関係の議題は、九〇年代のポスト冷戦期以降、急速に主要議題の一角を占めるようになる。その中心的な議題は『テロリズム』と薬物などに関わる国際的な組織犯罪である。この流れが二〇〇一年の9・11同時多発テロ以降、司法警察サイドからのテロ対策と軍事・安全保障サイドからのそれとが融合し、警察の軍事化、軍隊の警察化が急速に進むことになる。その結果として、司法警察が従来主要な守備範囲としてきた国内の治安維持や犯罪捜査という役割を超えて、外国に対して法執行機関の強制力を行使可能な国際的な枠組み構築が模索されるようになる」(小倉利丸「グローバル化する治安警察の体制とG8サミットの役割」、『インパクション』162号、ならびにATTACフランス編『徹底批判G8サミット その歴史と現在』〔作品社刊〕所収の小倉「虚構の帝国を支えるG8サミット」)。
 グローバルな「対テロ」戦争とグローバル資本主義の秩序、その体現者としてのG8サミットが強制する民主主義と人権の破壊に対して、「グローバルな平和・人権・公正・民主主義」を主体的に担っていくことにより、民衆相互の国境を超える連帯を築き上げていくことが求められている。     (平井純一)


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