| 貧困を拡大するアフリカ開発の問題点 かけはし2008.6.9号 |
TICAD Wを問う集会・デモ
南ア活動家の入国妨害に抗議する!草の根からの国際連帯を |
【神奈川】アフリカの貧困・環境破壊・戦争を考える5・25デモと集会が取り組まれた。五月二十八日から三十日まで横浜で開かれるTICAD W(アフリカ開発国際会議〉に対する対抗アクションである。
五月二十五日午後二時から横浜・桜木町駅前の広場で街頭アピール、「TICADって何?」リーフレットなどの配布が取り組まれた。三時からデモを行い、時折コールを上げながら日の出町駅前、伊勢佐木町商店街モール、横浜市庁舎前を通過し、アフリカの動物のイルミネーションが並ぶ山下公園で解散した。
沿道の反応はTICAD自体が良く分からないというものであったように思うが、アフリカの貧困が「先進国」の責任であるという主張は相当伝わったのではないかと思う。そしてメインゲストのングワネ・トレバーさんが来日できなくなったため、急きょ登場したトレバーさん人形を先頭に西サハラ、ナイジェリアの音楽でにぎやかにTICADキャンペーンに染まりそうな横浜市街に一石を投じる行動となった。
「貧困をなくす
二つの選択肢」
夜の集会は神奈川県民活動サポートセンターが会場だった。まず司会の中森圭子さんから中田市長のサミット誘致失敗とその代替イベントとしてのTICAD開催が決まった経過が説明された。日本政府のてこ入れもあって、反テロをうたった各種訓練、電車、バスへの同乗警備など過剰警備の問題もある。主催団体の「横浜からG8とTICADを考える会」としても、開発そのものに反対なのか、国内NGOと同様、援助の中身を改善していこうという立場を取るべきなのか迷いはあるというジレンマも表明された。
G8を問う連絡会から小倉利丸さんが、TICAD推進のあり方を概略述べた。そしてナイロビ世界社会フォーラム(2007年)でのングワネさんの印象を伝えてくれた。特に「アフリカの貧困をなくすのに二つ方法がある。籠の中の鳥に例えて言おう。一つは籠はそのまま鳥に餌を与えて元気にする方法。もう一つは籠をなくし鳥を外に放す方法だ。前者が、今の欧米のやり方だ。選ばれたもののみが餌を与えられ、元気になる」といった例えをングワネさんがしていたことなど。
ATTACジャパンの秋本陽子さんは、ングワネさんの入国を外務省が許さなかった経緯を話した。「なぜか南アの日本大使館では無犯罪証明書の提出を求められた。無罪を報じる記事などを送ったにもかかわらず無視したことは、TICADに反対の人は入国させないという外務省の姿勢だと思う」ということだ。
ケニアの現場
での経験報告
ケニアで獣医をする神戸俊平さんからは日本のODAによる無駄遣いの実例などをビデオを使って説明してもらった。数百億の円借款で橋を作っても使い物にならない、その借金はケニアの人が返さなければならない。ビデオに登場した教員はまず初等教育の充実に力を入れて、アフリカでの問題解決の能力を発揮させることが大事だと強調していた。
アフリカ日本協議会の茂住衛さんは、過去三回のTICADの開催状況と各NGOの関係を紹介した。
「第一回は一九九三年。旧宗主国の援助疲れに乗じる機運もあり、NGO側からはカンボジア市民セッションでの成功を生かしてアフリカ支援を充実させたいという意図があった」。
「その後、二〇〇〇年から減ったODA額の挽回を図って、国民参加という言葉も多用された。NGOの中にも善意とはいえ、元外務省職員、開発コンサルタントも含まれているが、アフリカについて取り組む対象の専門化、細分化によるところが大きい。外務省は哲学を語る場、思い出を作りたいなどともらすこともあったが、アフリカの人は日本政府がODAの六割を日本人の人件費などにまわしていることを知っている」と述べ、集会参加者はTICADの概略、批判点を共有することが出来た。
債務・教育・
軍事の面から
ングワネさんが来ていれば、質問という形式で提起されるはずだった内容を三人の人が発言した。大友深雪さんは、南アフリカ・反アパルトヘイト運動と教育の観点から、グローバリズムの浸透に従って生まれる格差と教育機会の不平等について投げかけがあった。「白人だというだけで優秀でなくても進学できる」ということの不当性を表現する風潮は運動内でも根強かったが、そこから生じる民営化、高失業社会への無批判にどう対抗するかという深刻な疑問がそこにはある。
大倉純子さんは債務帳消し運動を中心になって進めてきた人だが、輸出作物偏重を奨励しておきながら今になって食料価格高騰を克服しようとはよく言えたものだと、G8各国の姿勢を批判した。
「一九九八年バーミンガムサミットなどで債務帳消しは大きな焦点となり、実施された部分もあるが、重債務貧困国に対してであり、中債務貧困国には貿易収支改善を求める政策の押し付けで終始した。それも根本原因を問わないので二〇〇五年グレンイーグルスサミットでは債務の問題が再浮上した。イラクのような『親米国』には八〇パーセントの帳消しをしたという不公平もある」と、帳消しが「恩恵として与えられる」矛盾を説いた。その上でアフリカ南部のいわゆるアパルトヘイト債務、資本逃避の問題への関心を示した。
今後アフリカとの関係をG8に対抗するかたちで追っていくために債務帳消し運動を取り組むことは避けられない。
ピープルズ・プラン研究所の山口響さんはアメリカ軍の軍事再編の観点からアフリカに焦点を当てた。三カ所に分かれていた司令部が統合されようとしている状況、NGOなどを取り込んだ軍民融和的政策の準備は、中国牽制、さらなる資源搾取を射程に入れているという部分で、今回のTICAD W開催と大いに符合する。くしくも集会当日に、PKOスーダン派遣団を七、八月に先行派遣するために調整をすると発表された。これは部隊派遣を前提としている。アフリカを舞台にした「平和協力国家」としての既成事実作りが防衛省の慎重論を抑えて滑り出すためにTICADが利用されているといえるのではないか。
そして元気よく六月二十八、二十九日のG8サミット直前東京行動への呼びかけがあり、最後にングワネさん入国拒否に抗議する声明(別掲)を参加者で確認して集会は終わった。
TICAD Wそのものは五月二十八日から三日間の日程を終了した。開催演説で福田首相は成長の加速を呼びかけ、インフラ整備、コメ生産倍増、金融支援を「約束」した。いずれも実効性のない約束か、アフリカの貧困層に届かない政策である。そして二十八日夜に「第一回野口英世アフリカ賞」の贈呈式が行われ、天皇が出席したことは、TICADがアフリカ支援のための会合という枠を飛越して国策としてのアフリカ進出に舵を切ったことを物語っている。
五月十六日学習会で講演し、当日も抗議活動をこころみた高林敏之さんに「東京で開かれた前回はビラ配りは問題なかった。今回は明らかに警備が厳しい(5月31日神奈川新聞)」と言わしめた異常な警察シフトは天皇制の問題と通底する。
七月に向けて洞爺湖G8を民衆は許さないという訴えにつなげていくと共に、アフリカの人権と日本の人権、アフリカの貧困と日本国内の貧困を切り離した「援助」というものをきっぱり否定していくことが問われている。今回の会議入場パス削減で振り分けられつつあるNGOの活動家とも連携し、アフリカへの関わりを強めていこう。(海田)
声明
トレバー・ングワネさんの入国
を速やかに認めなさい☆政府は
私たちの集会、言論・表現の自由
を侵害してはいけません☆
5月28日から横浜でアフリカ開発会議(TICAD W)が開催されます。この会議にさきだって私たちは、TICADが貧困や環境問題を日本の国益のために利用したり、紛争解決を口実に自衛隊のアフリカへの派兵を画策するなど、経済と軍事が一体となって貧しい国を食い物にするような「援助」に加担することに反対するために、本日のデモと集会を開催しました。
そして本日の集会に私たちは、南アフリカの活動家、トレバー・ングワネさんを講演者として招待し、アフリカ開発会議の問題点を当事者の視点から語っていただくことを企画しました。ングワネさんは、反アパルトヘイトの活動家の経歴をもち、現在、
ヨハネスブルグ郊外のソウェト電力危機委員会の議長として、新自由主義的な開発政策が貧困層にもたらす破壊的な影響に対して現場で闘っている活動家であり、私たちの集会にとって不可欠なゲストです。
しかしながら、大変残念なことにングワネさんは私たちの集会に参加することができませんでした。日本政府は、ビザの発給を遅延させて、「元気なアフリカ」からの私たちの大切な友人の来訪に対して冷たく国境を閉ざし、私たちの交流の機会を奪い、
TICADに対する異論や批判を封じ込めたのです。
日本政府はビザ発給遅延の理由として、ングワネさんに逮捕歴があるが無罪証明が南アフリカ政府から得られていないことを示唆しています。彼が無罪となっていることは、現地の報道でも明らかですし、逮捕は政治活動に関わってのことです。これまでも、長年にわたって海外から逮捕歴などがある活動家が自由に来日し、集会などに参加してきた前例があり、ビザ発給に特段の問題はなかったはずなのです。
しかし、こうした前例があるにもかかわらず、G8洞爺湖サミットを目前にひかえて、 今年に入ってから活動家や知識人の入国が拒否されるケースが目立って増えていることも事実です。今回のように、法的な根拠もあいまいな理由でビザ発給を遅延させるなど恣意的な入国規制が強化されつつあることに強い危惧をいだかざるをえません。
今回の日本政府のビザ発給遅延措置によって、私たちとングワネさんとの出会いは妨げられ、私たちの集会とデモにとって重要な課題の実現が妨げられたことを強調したいと思います。日本国憲法は、集会・結社の自由、言論・表現の自由をわたしたちの権利として定めており、政府はこうした私たちの権利を侵害できないはずです。にもかかわらず、今回の日本政府の対応は、私たちの集会とデモに不可欠な友人の参加を妨げ、憲法に明示されている私たちの集会や言論・表現の自由を侵害したのです。こうした政府による私たちの権利侵害に断固として抗議します。
私たち、集会の主催者と参加者は、日本政府に対して、ングワネさんへのビザ発給を速やかに行うことを要求するとともに、ふたたび同様の入国規制を行わないよう強く要求するものです。
2008年5月25日
「STOP G8! アフリカ開発会議って何だ?! アフリカの貧困・環境破壊・戦争を考える5・25デモと集会」参加者一同
主催 横浜でG8とTICADを考える会 (問い合わせ先:090―3909―9657)
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