もどる

命と安全を守れ!尼崎集会               かけはし2008.4.28号

ノーモアJR尼崎事故―民営化と格差社会を撃つ

 【大阪】死者百七人、重軽傷者五百六十二人という大惨事を起こしたJR尼崎事故からまる三年。4・20集会実行委員会主催のノーモア尼崎事故の集会が、JR尼崎駅前の小田公民館で開かれた。
 大串さん(鉄建公団訴訟原告団)の開会のあいさつにつづいて、野坂昭生さん(国鉄闘争共闘会議常任幹事)は主催者あいさつの中で、「分割民営化は弱いものを徹底的に収奪していくものとして当初から考えられていた。だから民営化=格差社会をつくるということ。このような民営化を推し進めて行けば大変な事故を起こしてしまうと国労は訴えてきた。格差社会を少しでも変えていく、またそれを通じて、戦争のできる国づくりを止めていくために集会をもった」と、集会の意義を述べた。
安田浩一さん(ジャーナリスト)が「民営化・格差社会と安全問題」と題して講演を行った(要旨別掲)。

事故がゼロになる
まで生きていたい

この後、4・25ネットの藤崎さん(遺族)をインタビューしたビデオを見た。藤崎さんは、「事故がゼロになるまで百年後でも生きていたい、それでも娘(JR尼崎事故で死亡)は許さないだろう」と語った。また、「安全基本計画は事故の幕引きをするためのもののようだ、会社には反省がない、今では暴力団員が事件を起こしても組長が罪を問われる時代なのに、JRの経営責任者はおかまいなしだ」と語った。
保線の業務に就いている国労兵庫の有田さんは、職場実態を報告して、「事故時には、けが人の救護を最優先させるための訓練をするようになった。現場では、変わった実感はない。人員削減合理化は進んでいる。伯備線事故では会社は不起訴になった。人減らししたのは会社なのに。ATSは使えない。但馬笠原という新駅ができたが、駅の業務は外部委託された。保線の三分の二は下請けで、JR社員はノータッチだ。列車乗務員は増やさず、乗車時間は延長された。経営協議会があったが、意見を言っても会社の合理化はどんどん進んでいく。でも、言い続ける力をつくっていきたい」と述べた。

きとんとした
安全協定が必要

 酒井直昭さん(鉄建公団訴訟原告団長)が登壇した。三月十三日の二次鉄建公団訴訟判決を批判した後、「安全問題については労働組合にも責任がある。分割民営化前には、国鉄当局と国労との間に、現場協議制と営業体制近代化協定があった。たとえば無人駅を作る場合、利用者の理解を得るために、関係自治体の長の同意の印をもらわなければならなかった。現在は、会社の就業規則に近い内容の労働協約に合意している。こんなことで安全を守ることができるのか。きちんと安全協定を作るべきだ。採用差別との闘い・安全を守る、が車の両輪だったが、最近後の方が弱くなっている。解雇問題については、今年こそ政治解決をはかる」と訴えた。
 最後にアピールを全員で採択し、集会呼びかけ人の桐生さんのまとめで集会を終えた。このあと、集会参加者二百人は献花台までデモ行進を行った。(T・T)

安田浩一さんの講演から
人員削減し下請けに責任負わせる民営化


公務員叩きをみると、民営化を問題視することの難しさを感じる。公務員制度改革で犠牲になっているのは末端の労働者であって、霞ヶ関の官僚ではない。大阪でもそうだが、市民はたとえばバスの運転手の給料七百万円が高すぎるというが、官僚の給料千二百万円を問題にはしない。このような流れの中で民営化が叫ばれている。尼崎事故を考えるとき、問題はJR西の体質が変わるかどうかにつきる。

ただ儲けるため
だけの論理横行

最近、外国人研修生の問題で中国に取材に行った。外国人研修制度とは、時給三百円、労働法も適用されない奴隷制度だ。この制度には、研修生の送り出し元と受け入れ先がある。中国の送り出し元は、中国の行政機関だ。ここが労働者から多額の金を取って送り出す。どうして行政機関がそのようなあこぎなことをするのかと聞くと、やって何が悪いという返事が返ってくる。労働者の人権を言いだしたら国家はどうなるのだ? 稼いで何が悪いと切り返される。軽い衝撃を受けた。JRも同じだ。JRが一企業として成立してしまった以上、もうけなければならいのは当然だとしても、命と安全には考えが及ばない。
 最近出されたJR西の安全基本計画は、安全性向上計画が基本になっていて、非常に美しい言葉が並んでいる。企業倫理を謳っているが、事故当時の役員が関連会社に天下っていて、何が企業倫理だ。安全意識を高めるとある。安全ミーティングを三千回やったという。ところが、ある職場では、本社から来た人間が日航の御巣鷹山事故で日航職員が遺族の心を開かすために何度も御巣鷹山に登ったことを詳しく話し、遺族の心を開かすために献花台に立ってほしいと言ったという。これは本質からはずれたもので、安全計画となんら関係ない、全くのゴマカシだ。

保線現場で多発
する事故の実感

 下部の社員が会社に対して述べた疑問は記録に残っていないと言われる。二〇〇六年、保線作業員数名が列車にはねられ死亡した伯備線事故のあと、列車が近づくのを知らせたり、列車を緊急停止させたりする事故防止の最新機器(JPSやATS)が導入された。だが、現場では一度も使われていない。神戸支社は返納したという。この機器を持ち運びする要員二人、見張りをする要員二人がいないとこの機器は使えない。ところが会社は人員を準備しない。安全性向上計画は順調に進んでいると会社はいうが、保線の現場では事故はいっぱい起きている。最新機械は導入しても人員は削減する、外注する、下請けに任すという経営方針である。下請け労働者が作業現場の監督をする。
 広島での事故のときは、作業を受注したのは一次下請け、事故は二次下請けで、JRの社員はいなかった。天王寺の架線火災事故では、経験のない企業に下請けさせ、バーナーを使って作業が行われた。経験のある企業なら、バーナー厳禁はあたりまえのことだった。西明石駅構内事故の場合、これも経験のない三次下請けの企業が、使ってはいけないロングボディーのトラックで鋼材を運んでいて列車と正面衝突した。

JRの文章は
美しいけれど

会社の土台が揺らいでいるから、どんな美しい文章を書いてもダメだ。必要性を点数化し、点数の高いものから対策を講じるというやり方が導入された。このやり方は悪いわけではないが、これは下部の社員との意思疎通があって初めて生きる。乗降客が一日一万三千人の駅でも駅の業務は委託会社にさせる。JRはひたすら金儲けのみに邁進している。民営化前と比べ、確かに小さい事故は減ったが、輸送障害は増えている。このことは、航空業界ではすさまじい。日航の場合、整備現場に日航の社員はいない。人員を減らし、低賃金の下請け労働者に任せている。下請け労働者の技術が低いからではなく、技術の蓄積ができないことが問題なのだ。
 大企業の労働組合は民営化・規制緩和をいっしょになって進めている。タクシー運転手の低賃金、生コンの品質の低下しかりである。いつからこのような世の中になってしまったのか。一九九五年の日経連報告書で、規制緩和と多様な労働形態の提言が出たあたりからだ。現場の労働者が声を上げること、組合が企業の社会的責任に迫ること。組合にはがんばってほしい。JRの文章は美しいが、他にやることがあるだろう。(発言要旨、文責編集部)



日韓連帯闘争・春季学習会
日韓関係はどこへ向かうか
われわれは何をすべきか


 【大阪】四月十六日、ヨンデネット大阪とおおさかユニオンネットワーク主催の春季学習会が、韓国の文正鉉(ムンジョンヒョン)神父(韓国『平和の風』代表)と韓国民主労総の活動家を招いて開かれ、自治労大阪府本部が後援した。
韓国では財界から政界に身を転じてソウル市長になり、さらに大統領に選ばれた李明博氏の下で、十年ぶりにハンナラ党の保守政権が誕生した。この政権を民衆はどのように見ているのか。ハンナラ党が四月上旬の韓国総選挙で議席の過半数を獲得したのと対照的に、総選挙前に分裂した民主労働党は議席を大きく減らした。このことを労働者はどのように見ているのか。これらの点について、直に話を聞くことができた。なお、全順玉さん(韓国『真女性労働福祉センター』代表、独裁政権に抗議の焼身自殺をした全泰壹さんの妹)と李小仙さん(全泰壹さんの母)は、急きょ不都合が生じて参加されなかった。
はじめに、おおさかユニオンネットワーク代表の加来さんがあいさつをした。日本では参議院で与野党が逆転、そのあとの大連立も頓挫した。米国中心の戦後の政治的枠組みが壊れようとしている現在、われわれはこのアジアでどのように対処していくべきか。韓国では民主労働党が十議席を獲得して、アジアの情勢を切り開くかと思ったが、最近の情勢はどうもよくわからない。今日はしっかり勉強したいと述べた。

30年間の闘い
をふりかえる

続いて、文正鉉さんが講演した。文さんはカトリックの家庭に生まれ、自然に神父になった。育っていく中で、隣人を愛せよと教えられた。だから、国家保安法は認められなかった。北に住んでいる同胞を拒絶するための法律である国家保安法が廃止されるまでひげを剃らないと決め、底辺の人々と共に生きていくと決めた。
 国家保安法によってある日突然二十四人が拘束され、そのうち八人の死刑が一九七五年四月に執行された。文さんは、彼らの家族とともに生きてきた。社会はなかなか変わらないと思えるが、足下で疎外されている底辺の人たちに関心を持ち、ともに進むとき変化は見えてくる。死刑になった人たちの再審が始まり、無罪が確定し、補償まで勝ち取った。これほど大きな変化はないだろう。
 三十年間の民主化運動・階級的運動・統一運動の中で、何々を獲得したという成果はあるが、大きな枠組みの中で見ると、解決すべき大きな問題は残っているし、資本の開発の中で労働者・農民の生活が圧迫されていることは、今も同じだ。韓国総選挙で保守政党が政権を取ったことは大きな変化だが、それが大きな悲観をもたらすものとは考えていない。民主労働党も過去ほどの力がないのも事実だ。韓国と米国の関係は元に戻った感じがする。韓米日の同盟の実現に努力を傾けるだろう。しかしそれはできない。民衆がそれを許さないだろう。

政権内に入った
民主勢力の評価

 独裁政権と闘ってきた民主勢力は政権の中に入っていったが、自分はそれと距離を置いてきた。あの人たちは、過去の政権がつくってきた機構を使って改革をするという発想だったからだ。
 三代続いた文民政権も米国に対する認識は、民衆の認識と対立してきた。現在進行中の駐韓米軍の再編、平澤基地の拡張、これは韓国だけの問題ではなく日本とも連動するものだが、民衆の同意を得ていないし、民衆は何も知らされていない。まるで冷戦時代に戻った感じがする。これをどう防ぐことができるのか。
 世の中が変わったのだから、ヤクザ(文さんは、常に闘いのある街頭にいるので、ヤクザ神父と言われている)をやめて、権力の中に入ってやることを考えないのかという人もいるが、そのつもりはない。足下で疎外されている人々と共に生きる生き方は変えるつもりはない。民主労働党は、これら底辺の人々のことから出発しない限り足下をすくわれるだろう。
  ピースおおさかに行った。展示を見てこれではダメだと思った。なぜ戦争が起きたのか、についての認識がないと思った。だがら、アジアでの日本の問題(侵略)ではなく、戦争の相手であった米国の問題になっている。真実をもとにしてこれからの自分たちのあり方を考える日本であってほしい。

李明博政権と
民主労総の現状

 引き続いて、朴さん(民主労総前教育宣伝部長)が李明博政権について話をした。
 李政権は、労働政策についてはノムヒョン政権の政策を忠実に引き継いでいて、大資本の利害を代弁している。李政権は、ノムヒョン政権が後回しにしてきたことをどんどん推進していくだろう。労使の交渉窓口を単一化していくだろう。そうなると、御用組合が多数になれば交渉ができなくなる。今は支払われているが、これから組合専従者の賃金をなくすだろう。そうすれば、民主労総の弱体化は避けられない。李政権は、そのような労使関係を完成させるだろう。
 今、全国に公益事業所(ストライキの労働者に代わって労働者を派遣するところ)が拡大しつつある。労働者派遣法は、就労期限が二年から三年に延び、適用業種も二十六から大幅に増やされる。それを、施行令によってやろうとしている。労使政民委員会を各道につくり、労働組合を社会的合意の枠から抜け出せないようにし、交渉能力をなくそうとしている。民主労総は公共企業の民営化阻止で運動をつくろうと考えているが、政府・労働組合の動きは、ともに七月ぐらいになれば状況がはっきり見えてくるだろう。民主労総から公務員の組合、全教祖が出て行ったので、民主労総の勢力は十万人ぐらいに縮少した。非正規職問題の闘いの失敗が原因だ。地域から組合指導部が批判されることもあった。いま民主労総は産別組織に移行しつつあるが、その分だけ地域への関心が薄れている。だが、民主労総はやがて活性化してくることを信じている。辛い時期を経験しなければいけないし、自己批判することが必要である。

民主労働党の
分裂について

ここで、二人の講演はおわり、若干の質疑応答があった。なぜ、民主労働党は分裂したのか、新自由主義反対、統一を求める、困った人の立場に立つ、という三つの一致点は維持されていたのではないのか、との問いについての答えは以下のようなものだった。
 三つの点は今も民主労働党にはなくてはならないものだ。ノムヒョン政権のとき、民主労働党が主張してきた富裕層に対する税金が後退してきたことが、今度の大統領選のスローガンで明らかになった。また、民主労総の中では認められていないコリア連邦共和国のスローガンが大統領候補によって出された。多数派による歪曲した党運営があったのは事実だ。
 韓国の民主運動の中には、階級解放を重視する平等派と統一運動を重視する自主派の二つの潮流がある。初期の民主労働党の運動は、平等派の活動家がリードしてきた。彼らは非正規労働者の課題を主張してきた。しかし、二〇〇三年に自主派が大量に民主労働党に加入し、多数派の横暴による組織運営をするようになった。この対立が大統領選挙をめぐって表面化し、分裂してしまった(民主労働党から分裂して出て行ったのは平等派の方で、彼らは進歩新党をつくり総選挙に出たが、議席を獲得することはできなかった)。民主労総の基盤に安住することなく、今までのやり方を反省し、これからは共同闘争をしていくだろう。(T・T)


もどる

Back