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                            かけはし2008.4.21号

危機意識を深める改憲派

「読売新聞」世論調査でついに
改憲反対意見が賛成を上回る


1993年以来
の「逆転現象」

 四月八日に発表された読売新聞の「憲法」世論調査の結果は、改憲派に大きな衝撃を与えるものだった。日本最大の発行部数を誇り、一九九〇年代以後の「憲法改正」論議をリードしてきた「読売」の世論調査で一九九三年以来、十五年ぶりに改憲賛成が四二・五%と反対の四三・一%を下回ったのである。
 従来も改憲論の中心的テーマである九条に限っていえば、「改正」反対が賛成論を上回っていた。しかし一般的な「憲法改正」問題についていえば「賛成」が「反対」を上回っていた。「護憲」派はこの状況を捉えて、全体としての改憲か否かという問いでは確かに賛成が反対より多いにしても、その核心である九条問題では、依然として改悪反対論が多いとして、九条問題を焦点に改憲反対の世論をさらに拡大することを訴えてきた。そして今回の「読売」世論調査で、ついに再び「反対」論が多数となったことは、この間の全国で七千に達する「九条の会」の飛躍的拡大に象徴される改憲反対運動の大きな成果だということができる。

「9条を厳格に
守れ」論も増加

 具体的な数字を見よう。全体としての改憲賛成派は昨年比で三・七%減り、改憲反対派は四・〇%増えた。とりわけ自民党支持層のうち改憲賛成論が四七%と、一九九八年以後の十年間で初めて五割を切った。保守層の中でも改憲に消極的な意見が増加していることがここから見てとれる。また自民党とならんで、この間、もう一つの改憲政党となってきた民主党支持層の中では改憲賛成派は四一%に過ぎない。一方改憲反対派は五〇・二%と過半数を僅かではあれ上回っている。民主党支持層の中の改憲賛成論は二〇〇五年には六七%を上回っており、自民支持層の中の賛成論六四%よりも多かったのに比べれば、この三年間でまさにドラスティックとも言える変化を遂げたことがわかる。
 この数字は、民主党の中の強力な改憲論の動きを縛るだけではなく、民主党との協力で国会内において改憲「三分の二」多数派を固めようとしてきた自民党にとっても、新たな困難を提示することになる。
 九条改憲反対論の中でも、さらに変化が見て取れる。従来「九条改憲反対」に分類される層の中でも、「これまで通り解釈や運用で対応する」、つまり自民党政権が進めてきた「国際貢献」論という「九条の枠内」での自衛隊の実質的な海外派兵を認める「解釈改憲」是認論も多かった。
 しかし今回の「読売」世論調査では、九条を「解釈や運用で対応するのは限界なので改正する」という明文改正派が三一%と前年を五ポイント下回ったのに対して、「九条を厳格に守り、解釈や運用では対応しない」が前年を四ポイント上回り、二四%となった。依然として「九条」問題に関しては、「解釈や運用」で対応という現状追随派、すなわち「解釈改憲」是認的「九条護憲」派が三六・二%とトップである。自民党支持層では「九条明文改正」論がこれまで六年連続トップだったのが、今回は「解釈・運用で対応」に一位を奪われた。民主党支持層でも昨年一位だった「改正」論が八ポイントも減少し、五ポイント増えた「解釈・運用で対応」論が一位となった。われわれはここで、九条「明文改正」派の減少と「解釈・運用で対応」への移行は、九条「厳格適用」派の伸長にも牽引されていると捉えるべきだろう。
 「集団的自衛権」についても、従来の政府見解に従って「行使できなくてよい」論が前回を二%上回って五二%と過半数となり、「解釈変更」や「明文改憲」によって「集団的自衛権」の行使を合法化する意見を上回った。しかし派兵恒久法が必要とする意見は四六%に達し、「必要でない」の四二%を上回っている。
 また昨年の改憲手続き法の強行成立によって設置が決まった両院での「憲法審査会」がいまだ具体的に始動していない状況の中で、「今後、各政党は、憲法に関する議論をさらに活性化させるべきだと思いますか、そうは思いませんか」という問いには「そう思う」が七〇・八%と多数を占め、「そうは思わない」の一九・三%を大きく上回った。
 この質問はきわめて操作的なもので、「憲法に関する議論の活性化」を是とする意見は、必ずしも「憲法調査会」を具体的に始動して「改憲」案を論議することとは直結しない。しかし、この数字が意図的に利用されることにわれわれは注意しなければならない。

派兵恒久法案
上程が突破口

 こうして一時は勢いを増していた「ムード」的ともいえる「改憲」論が、世論調査でも急速にトーンダウンしていることが見て取れる。安倍内閣の改憲強行突破路線と日米軍事同盟のグローバル化による「戦争国家」「派兵国家」体制づくりへの批判が着実に広がっている。九条改憲への危機感を増大させ、全体としての改憲攻撃に反対ないし慎重さを求める声が強まっている。冒頭に述べたように、それは「改憲反対」運動の多様な「草の根」的浸透への努力の表現である。
 このことに危機感を感じているのが、右翼・改憲派である。本紙3月31号でも紹介した「新憲法制定議員同盟」の再編が、それを示している。三月四日に開催された同議員同盟の総会では、民主党幹事長の鳩山由紀夫が「顧問」、民主党前代表の前原誠司が副会長に就任し、自民・民主の結託した改憲体制が築かれた。同議員同盟は活動方針の中で、「九条の会」に対抗する「地方拠点の形成」という、「草の根」的運動作りを進め、安倍・改憲政権の瓦解後の新しい改憲運動体制を模索している。
 そしてその突破口が「憲法審査会」の早期始動であり、さらには「派兵恒久法案」の策定である。自民・民主の「大連立」体制が頓挫して以後の169通常国会は、完全に機能マヒ状況を呈しており、今のままでは右派がねらう改憲国家戦略の実質的発動は議会的にも困難である。しかし自民・民主両党では「ポスト福田」を見据えた、新たな「大連立」ないし「政界再編」の模索も水面下で進められている。
 今回の読売世論調査結果は、自民・民主を貫く改憲派の危機感を駆り立て、新政権構想を軸にした改憲多数派体制形成への衝動をいっそう強めることになるだろう。

「憲法論議の
活発化」とは

 世論調査結果を発表した「読売」4月8日付社説は、「改正論を冷やす政治の混迷」と題して次のように述べている。
 「(改憲論が改憲不必要論を下回った)最大の要因は、国会や各政党の憲法論議の沈滞にあるだろう」「憲法改正に積極姿勢をみせていた安倍前首相が、昨夏の参院選での自民党惨敗の後、突然辞任した。後継の福田首相は、打って変わって、憲法改正問題には、ほとんど触れなくなった」「(改憲論の後退は)衆参ねじれ国会の下、憲法改正論議の進展は困難、という判断と、憲法改正への首相のメッセージの乏しさが、影響しているのではないか」。
 福田首相の「改憲メッセージの乏しさ」を批判する同社説はまた、「憲法改正問題に正面から取り組もうとしない民主党の姿勢が、支持層の改正派減少をもたらす一因になっていないか」と返す刀で民主党・小沢執行部をも批判している。ここで「憲法論議の活発化」を望む人びとが七割を超えるという数字が恣意的に利用されている。そして同社説は「派兵恒久法」の制定を望む意見が四六%で、「必要とは思わない」の四二%より多いという数字に着目し、「安全保障や環境問題など、さまざまな観点から憲法を議論しあうことが求められている」と結んでいる。
 われわれは改憲論議にブレーキがかかっている現在の状況に気をぬいているわけにはいかない。「5・3憲法集会」とそれに続いて首都圏(千葉・幕張メッセ)、大阪、仙台、広島で行われる「9条世界会議」は、労働者・市民の憲法改悪反対運動の新しい展開にとっての重要な場である。われわれもまた、民衆運動の立場から「改憲反対」の憲法論議をさらに「活発化」させよう。
 また当面する「戦争国家体制」づくりの闘いへの焦点として、「米軍再編」に反対する沖縄、岩国、座間、横須賀、横田など各地の運動を大きく発展させるとともに、現在、自民党内で準備されている「安全保障基本法案」=「派兵恒久法案」上程阻止の世論と運動を大きく広げよう。(4月14日 平井純一)


大江・岩波沖縄裁判報告集会・東京
1審勝訴の成果を引き継ぎ高裁で控訴棄却かちとろう

沖縄戦の学び
直しが始まる

 四月九日、「〜沖縄戦の真実を未来へ伝えよう〜 大江・岩波沖縄戦裁判 勝訴! 判決報告集会」が(文京区民センター)行われ、二百五十人が参加した。主催は、大江・岩波沖縄戦裁判を支援し沖縄の真実を広める首都圏の会、大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判支援連絡会(大阪)、沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会(沖縄)。
 主催者挨拶が俵義文さん(「沖縄戦首都圏の会」呼びかけ人)から行われ、「首都圏の会は、昨年六月に発足し、三団体が協力しながら裁判勝利、文科省の誤った検定意見撤回と史実の回復を求める運動を取り組んできた。この三月二十八日に大阪地裁で勝訴をかちとることができた。皆さんとともに喜びたい」と発言し、参加者全体で拍手が行われ確認した。
 さらに、「すでに原告は大阪高裁に控訴している。新しい歴史教科書をつくる会は集会を行い、藤岡信勝代表は『座間味島で新たな証言が出た』ことを明らかにし、高裁で勝利すると言っている。闘いはまだ続く。他方、文科省は改定学習指導要領を告示した。愛国心教育を強化する内容だ。戦争ができる国作りを許さず、取り組みを強化していこう」と呼びかけた。
 秋山幹男弁護士が「大阪地裁は何を裁いたか、判決の内容と意義」、岡本厚さん(『世界』編集長)が「当該出版社として判決をどうみるか」、小牧薫さん(大江・岩波沖縄戦裁判支援連絡会事務局長)が「支援運動から見た勝利判決の意義と高裁でのたたかい」をテーマに裁判報告を行った。
 秋山弁護士は、判決要旨にもとづいて争点の箇所を具体的に取り上げ解説し、「控訴審はおそらく夏ぐらいから始まる。書類等だけで判断して早期結審してしまう可能性もある。最高裁でも同様だろう。闘いはまだ終わりではない。継続して取り組んでいきたい」と訴えた。
 岡本さんは、原告と新しい歴史教科書を作る会の関係やずさんな証言などを批判し、裁判を通して「死者を悼む感性を持ちながら、次の世代に伝えていきたい。すでに沖縄では沖縄戦の学び直しが始まっている。私たちもあらためて学び直し、再び起こさせないために何が必要かを考えながら取り組んでいきたい」と強調した。

軍命令・強制
記述の復活を

 小牧さんは、今後の取り組みとして@大阪高裁は、直ちに控訴棄却の判決を言い渡し、一審判決を維持すべきであることを求める運動の強化A文科省に対し、沖縄戦の「集団自決」に日本軍の命令・強制を示す記述を回復させる運動の強化を提起した。
 また、「大江健三郎さんへの批判をしておきたい。大江さんは、『集団自決』という言葉を使わず『集団自殺』を使っている。自らの意志で自発的に死んだから『自殺』だと言っているが、ゼロ歳の子が『自殺』しますか。事実に基づいて文書に書き、発言していくべきだ。お互い切磋琢磨しながら頑張っていきたい」と問題提起した。
 謝花直美さん(沖縄タイムス編集委員)は「証言取材を通して見えてきた『集団自決』」について講演し、@「集団自決(強制集団死)」について、どのように取材したかA体験者の話を聞くことの困難性と意味B心の傷C沖縄という土地で生きることとは││などについて語った。
 また、「集団自決の証言を得ることの困難性があったが、教科書検定問題が大きくなるなかで、限られてはいるが体験者が話し始めた。しかし、まだ語れない人たちもおり、亡くなった方たちもたくさんいる。戦前から現在まで軍隊が優先する社会が続いていることを痛感せざるをえない」と批判した。
 最後に「沖縄戦首都圏の会」から高裁裁判の勝利判決をかちとるための署名運動や傍聴参加などが呼びかけられた。     (Y)


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