| 「操業延期」に追い込まれた原燃 かけはし2008.3.3号 |
| ガラス固化施設の運転を中止せよ核燃料サイクル政策との訣別を |
遅れが必至な本格稼動
二月十四日午後、日本原燃(以下、原燃)は六ヶ所再処理工場試運転の第四ステップを終了し、最終段階である第五ステップを開始したと発表した。第五ステップでの主要な試験は高レベル放射性廃液のガラス固化である。だが、現時点でガラス固化をはじめ、使用済み核燃料のせん断・溶解などは再開されていない。
ガラス固化試験は第四ステップ中の十一月初めに開始したが十二月末に溶融炉内の不溶解性の白金族の堆積により中断している。国は第四ステップ開始を前にした昨年七月、ガラス固化性能が国の検査で合格できる結果を試験で得られているかの報告を第五ステップ開始の条件としていた。原燃は二月四日にガラス固化試験の状況を報告した。国は原子力安全・保安院の核燃料サイクル安全小委員会(以下、小委員会)のワーキンググループを二月八日に非公開で開催し報告を検討した。十四日午前になり公開で小委員会を開催、第五ステップ開始を容認する一方、「追試」として溶融炉内の点検結果とトラブル防止対策の報告を求めた。原燃は二十日にやっと炉内点検を開始、点検には数日を要すると報じられている。国は報告後にワーキンググループと小委員会を開催し、ガラス固化試験の再開の是非を判断することになる。六ヶ所再処理工場は試験の最終段階をむかえて混迷を深めている。
第五ステップにはどれだけの期間がかかるのか。原燃の計画書によればおよそ三カ月間を要すると図示されている。BWR燃料は一体およそ百七十五キロ、六ヶ所再処理工場は一時間で一体を処理する能力がある。使用済み燃料を三〜五センチに切り刻むせん断工程では、これまでの実績で一日に二十体前後の処理実績を残している。第四ステップでは、第五ステップで計画していた百六十トンのうち約六十トンを前倒し処理しているため、半月程度の短縮も考えられる。
本格稼動のために原燃は六ヶ所村と青森県などと安全協定をあらためて締結する必要がある。締結の作業に入るには、すべての試験が終了し、試験結果を国が妥当だと評価することが前提となる。また地元ではこれまで、核燃料サイクル施設の運転開始時の安全協定締結では、県議会の全員協議会、市町村長会議、有識者等の審議会での承認手続きをへてから調印しており、一カ月前後を要した。さらに、再処理工場のウラン試験やアクティブ試験開始の際には、住民説明会が開催されたため、これにも期間を要した。さらに、ガラス固化設備や工程などで欠陥が露呈した場合には、大幅な延期も考えられる。
原燃は「本格運転」とは別に、試験の終了を「竣工」と発表している。現在の竣工予定は二月中で、原燃によるスケジュールの延期発表は現在行われている溶融炉点検終了後に行われると報じられている。また、原燃の主要株主で再処理契約をする電力各社は、来年度に六ヶ所再処理工場で分離するプルトニウムの利用計画を公表しなければならない。これは原子力委員会が二〇〇三年に決定した「毎年度プルトニウムを分離する前に公表しなければならない」という規定によるもので、年度開始前のおおむね一カ月前までの公表が求められている。
これまで公表は毎週火曜日に開催される原子力委員会定例会議で行われてきた。二月二十六日の議題は高レベル廃棄物の最終処分に関する基本方針と計画についての答申で、処分場の調査と建設期間を短縮する一方、操業開始は従来どおりの二〇三五年頃とする内容で、三月上旬の閣議決定に付される。また臨時の二十八日の議題は「原子力の革新的技術開発のロードマップについて」と原子力委員会HPで発表されており、高速増殖炉や第二再処理工場の実用化計画が審議されるものとみられる。プルトニウム利用計画が公表される原子力委員会は三月にずれこむものとみられる。
ブルドーザーで地方と住民を踏みにじるように進められてきた核燃料サイクル政策は、その中軸である六ヶ所再処理工場の本格稼動の遅れにより混迷が明らかとなった。本格稼動は報道各社によれば「初夏」と表現されており、洞爺湖サミット、あるいはそのちょうど一カ月前に青森市内で開催されるG8エネルギー相会議の時期と重なることも予想される。
経産省に市民の反対の声
二月十四日午前中に開催された小委員会では、原燃に対する厳しい意見が委員から発せられた。この開催を前に、多くの市民が小委員会委員あてに要請書を送った。また、核燃サイクル阻止1万人訴訟原告団などが呼びかけた「六ヶ所再処理工場のアクティブ試験を憂慮する全国の市民」による委員への要望書の送付、当日の傍聴行動、そして経済産業省に対する抗議と宣伝活動が行われた。こうした市民の行動が、核燃料政策を推進する委員が原燃に対して厳しい意見をぶつけ、慎重な審議によりガラス固化試験の強行を食い止めたとも評価できるだろう。
保安院が用意した五十の傍聴席に対し、申し込みは九十を超えたという。この数字は保安院のFAXが故障のため、受信できない期間があったため、さらに上回る。小委員会開催を前に、資源エネルギー庁と保安院が同居する経産省別館前には約二十人の市民が集まり、ガラス固化の欠陥を指摘するチラシを配布するなど宣伝行動を行った。小委員会会場前の通路には、抽選で傍聴不可となった市民も集まった。また、FAX故障により「不受理」とされた市民は係官に詰め寄った。
ガラス固化の欠陥とは、主要には不溶解金属類が溶融炉の底に溜まり、容器への注入速度が遅れることで欠陥ガラス固化体を製造することにある。速度遅れが続けば、廃液処理が間に合わず、廃液貯槽タンクの空きがなくなり、工場全体を止めねばならないとうことにもつながる。また、不溶解金属の堆積により、溶融炉の詰まりや寿命短縮などの問題も指摘されている。
小委員会終了後は経産省別館前で、第五ステップ容認に対する抗議の宣伝活動を行った。傍聴者によるリレー報告も行われた。昼休みなどを利用してかけつける市民も多数で、入れかわりに常に三十人前後がチラシ配布を行い、用意された千五百枚がなくなった。これまで、「再処理とめたい!首都圏市民のつどい」主催で毎月第四水曜日の夕方六時半からの定例行動が職場帰りの市民によって支えられてきた。今回は平日の日中にもかかわらず、多くの市民がかけつけた。近日中に、原燃に溶融炉点検結果の報告を求めた小委員会の開催が予想される。また、第四ステップ報告を検討する審議会などの開催も計画されるだろう。委員への再度の働きかけが必要だ。本格稼動に向かう動きを一つでも封じるため、全力で取り組んでいかなければならない。
「超党派」で問い詰める
二月十六日、ハーネル仙台を会場に、『六ヶ所再処理工場稼動阻止みやぎネットワーク』主催により「核燃料サイクル政策にもの申す!」と題した集会が開催され、二百人を超える市民・労働者が集まった。もの申したのは、東京海洋大学名誉教授の水口憲哉さんと自民党の河野太郎代議士。みやぎネットワークは超党派の運動をめざし、県内の労働組合や市民運動、地方議員など幅広いよびかけ人により賛同者を募っている。会場には、地元選出の民主党参議院議員の岡崎トミ子さん、衆議院議員の郡和子さんらも訪れた。
河野代議士は与えられた一時間をめいっぱい使い、「自民党から除名しろ」と青森県連から追及されたこと、電力会社の圧力でニュース番組の特集が途中で中断させられたことなどのエピソードを交えながら、核燃料サイクル政策の問題点をわかりやすく説明した。
「一人で逆立ちしているだけで、あんた恥ずかしくないのか、当選四回じゃ、なにもできないだろうという」という河野代議士への会場からの意見に対し拍手が沸いたが、河野代議士が「批判しあっていては何もはじまらない。みんなで手を結んでいく時期だ」と答弁すると大きな拍手が送られた。河野代議士自身、民主党の細野豪志代議士や松井孝治代議士らと核燃料サイクルの勉強を重ねてきたという。仙台ではさらに一カ月後の三月十六日に若者中心に本格稼働中止を求める集会の準備が進んでいる。
二月十七日には東京で「再処理やめなさい!2・17パレード」が行われ、主催者発表で百四十人が参加した。著名なスピーカーや音楽家などの名前を前面にして人集めをめざしたこの間の東京での催しとは打って変わって、パレードと街頭ビラを通じて渋谷に訪れている若者たちに六ヶ所再処理工場の問題点を訴えるだけの行動にこれだけの人数が集まること自体が画期的だと言えるだろう。パレード前と後の集会では、いつもの顔なじみの市民らが情報交換を行った。パレードでは何種類ものチラシが準備され、歩行者に配られた。また、短い距離だが、歩道からパレードに加わる市民も多数いたようだ。毎月デモという位置づけで、三月は十七日に予定されている。青森県反核実行委員会や原水禁で組織する「止めよう再処理!全国実行委員会」によって、三月二十九日に青森市内での全国集会、これに向けた東北キャラバン行動や経産省前での座り込み行動などが準備されている。
焦点となる廃棄物問題
二〇〇五年三月三十一日から強行されてきた試験運転により、約三百八トンの使用済み燃料が再処理された。出来上がったウラン製品は二百十トン、プルトニウム製品は約三千五百五十九キログラムと公表されている。なお、プルトニウム製品はウランと五対五の比率で混合されている。使用済み燃料中の約一%がプルトニウム、約五%が高レベル廃棄物、残りが回収ウランと低レベルとされる廃棄物で、クリプトンやトリチウム、炭素14などの核種はほぼ全量が環境中に放出されている。昨年十二月には、九回にわたって放射性廃液が海に流された。高レベル廃棄物中には半減期二万四千年のプルトニウムよりはるかに長い寿命をもつ核種、毒性の強い核種が含まれている。まさに死の灰である。
使用済み燃料中のプルトニウムは高レベル廃棄物を構成する核種から分離されることで、簡単な遮へいで持ち運びなど取扱いが簡単になり、核拡散問題の焦点となる。これまで、反核・反原発運動の中で廃棄物問題が継続的に焦点化されることは地元とされた地域を除いて極めて稀だった。昨年の滋賀県余呉町や高知県東洋町での反対住民の勝利によって焦点化はされたが、残念ながら六ヶ所再処理工場の本格稼動阻止に向けてのネットワーク化にはなってはいない。
今回、ストップ再処理の運動の広がりの中でガラス固化を中心に廃棄物問題がクローズアップされてきた。二月十四日の小委員会に提出された原燃の資料などによれば、製造された五十九本のガラス固化体のうち二十八体が通常運転ではない状態で製造されたガラス固化体である。また、ガラスが容器に落ちきる前に固まり、蓋ができない固化体が一体。不溶解金属類の浮き上がりによって蓋ができない固化体が一体あるほか、溶融炉が止まって一カ月半が経つのに「製造中」が一体という異常な状態だ。欠陥ガラス固化体が地中埋設されれば、死の灰が地下水などを通じて生活圏に漏れ出す危険性が飛躍的に高まる。こうした欠陥情報が公表されたのは国内では初めてで、これも運動の広がりと深まりの成果といえよう。
六ヶ所再処理工場は、通水試験、化学試験、ウラン試験と段階を踏んで進められてきた。ガラス固化施設の試験が行われたのは化学試験のみで、さらに化学試験においても他の施設より一年遅れての開始だった。他の工程がウラン試験で性能が検査されているのと並行して化学試験が続いてきた。化学試験の報告書は「その4」まで公表されているが、ガラス固化を中心とした「その3」のみが概要版のみ公表であり、試験結果に好ましくない情報があることを物語っており、さらなる情報公開を強めていかなければならない。
アクティブ試験でもガラス固化の性能試験は最終段階に回された。これもガラス固化が好ましくない状態であることを物語っていた。前記したように、ガラス固化試験のために前倒しで再処理が行われた。この前倒しは、わざわざ試験結果を出しやすい廃液を調達する目的であったが、ずさんな結果しか出せなかった。再処理の多くの工程では、原子炉内で長期間燃やされた高燃焼度燃料の再処理が困難である。核分裂生成物が多くなることで溶けにくく、高放射線で取り扱いにくくなるからである。
一方、ガラス固化では、一体になるべく多くの廃棄物を含ませることで最終処分場の規模を小さくするという目的があり、高燃焼度燃料の廃液、つまり濃い廃液が好まれる。廃液は水溶液で、低燃焼度の薄い廃液は熱し水分を蒸発させるために時間がかかり、処理スピードで試験の合格点を出せない。アクティブ試験の早期に分離された廃液では合格点を出すことができないため、第四ステップで計画を変更した。
問題の先送りを続けるという官僚的な体質によって隠蔽されてきたガラス固化問題が最終段階で露呈した。ガラス固化体の問題は、青森県にとっては保管期間を制限することから、全国の各地ではいつ札束攻勢で最終処分地の候補にされるかもしれないという問題と直結している。青森では、青森に最終処分場を設置しないための条例を作れという声が大きくなっている。ガラス固化の欠陥問題を広く知らせ、試験停止とガラス固化試験の中止をかちとっていこう。
(2月24日 斉藤浩二)
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