| 免状等不実記載弾圧国賠請求訴訟 かけはし2008.2.18号 |
「証拠調べの必要なし」との国の
強引な主張はしりぞけられた |
検証に値しない
国の粗雑な釈明
二月五日、横浜地裁第6民事部(三代川俊一郎裁判長)五〇三号で「10・24免状等不実記載弾圧を許さない!国家賠償請求裁判」の第六回が行われた。
第一に報告しなければならないのは、原告が国(横浜地方検察庁)に対して「本件逮捕及び捜索差押が、嫌疑なく、かつその必要性が存在しないにもかかわらずなされた事実」を立証するために、各文書(逮捕状および請求書)の提出申立をしていたが、地裁は国に各文書を提出せよと決定したことである(2・1)。
この決定は、どういう意味があるのか。これまで被告の国と神奈川県は、Aさんの免状等不実記載罪の実行がJRCL(日本革命的共産主義者同盟)の組織的犯行だから、強制捜査・逮捕勾留が必要だったという主張をしてきた。だがその証拠というものは、Aさんの日常生活と活動、ウェブに公開されているJRCL、JCY(日本共産青年同盟)の規約と歴史、内ゲバ党派の事件と新聞各紙のスクラップ、三里塚闘争の歴史などであった。要するに組織的犯行を立証するための具体的な根拠を提示できず、「武装闘争を堅持しているJRCL」の構成員だから強制捜査、逮捕勾留が必要だったのであり、違法性はなかったといういい加減なストーリーでしかなかった。
しかし地裁は、被告の「証拠」と称するものが、本件と関連性が薄く単なる「資料」の羅列であり、検証しようにもまともにできないから各文書を提出せよと決定したのである。司法官僚としての任務を遂行するためであるが、逆に、いかに被告の主張が検証に値いしないレベルかを証明したとも言える。
拒否自体が裁量
権の範囲を逸脱
地裁による各文書提出決定に至る概要は、以下の通りだ。
原告は「文書提出命令申立書」(逮捕状、捜索差押許可状、各令状に関する請求書)を提出した。国(横浜地方検察庁)は、各文書における「手続違背がない」から「証拠調べの必要が認められない」と提出拒否。
神奈川県は、「刑事訴訟法第47条により守秘義務が存在するものであって、……申立が却下されるべきもの」と述べ、提出する必要性はないと主張した。
国、県(意見書)は、各文書について、「捜査の秘密や捜査手法、関係者の協力を得て取得した情報秘匿性の高い事柄が記載されているほか、第三者のプライバシーに属する事項が記載されており、これらが開示されることによる弊害は大きい」と反論する。
具体的には、「一、被疑者の氏名、年齢、職業及び住居 二、罪名および被疑事実の要旨 三、被疑者の逮捕を必要とする事由 四、請求者の官公職氏名 五、逮捕状請求までに警察がいかなる者に対して捜査を行い、どのような情報を得ていたのかといった逮捕状請求当時の捜査状況や捜査手法が反映されている」。
「逮捕状請求書が開示されれば警察官が被疑者逮捕に至るまでに収集した情報が被疑者らのうかがい知れるところとなって捜査の密行性を害する上、情報の提供者に対し危害が及ぶおそれは否定できず、そのことが公になれば、今後一般市民が警察官に対して協力することは期待できないというべきであるから今後の捜査に与える影響も大きい」などと手前勝手なストーリーをでっち上げて開示を拒否するというのだ。
しかし、地裁は、「申立人は、国家賠償法一条の違法を主張する根拠として、一、事件についての嫌疑の不存在 二、逮捕及び捜索差押えの必要性の不存在 三、.逮捕及び各捜索差押えの目的の違法性」を主張しているから各文書が「立証に直接関係する証拠といえるから、取調べの必要性があることは明らかといえる」と判断した。
さらに「一、各文書が開示されることによって公判に悪影響が生じるおそれがあると認め難い。二、犯行態様も単純であることから、模倣犯の出現等をおそれて特に犯行態様等を秘匿する必要性もない。三、公益に対する罪である本罪には、いわゆる被害者は存在せず、犯罪行為の客体も公務員であるから、犯罪事実の要旨が明らかになったとしても被害者のプライバシー等が侵害されるおそれもない」と諭すほどだ。
あげくのはてに被告の主張が、「一般論として主張しただけ」であり、また、「事件が組織的犯行であることも窺われ、……各種弊害が十分に認められる旨主張する」が、これも「一般的主張の域を出ていない」とまで言われ、拒否自体が「裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものというべきである」と結論づけたのである。
幼稚きわまる
パフォーマンス
第二のポイントは、またしても県は、混乱した主張を自己暴露したことだ。
県は、内田準備書面(本紙〇七年十二月十七日号に掲載)に対して「第四インターの過去の違法行為を認める一方で、『Aらの活動は、褒められこそすれ、警察によって監視の対象となるような類のものではない』」などの部分を取り上げ、批判するために十三頁にもおよぶ「成田空港管理棟侵入事件第一審判決」(判例特報)を地裁に提出した。
内田書面の新関判決に関する箇所に対して「本件と関係ない」などと言いながら、「本件と関係ない」事件である「成田空港管理棟侵入事件第一審判決」(判例特報)を地裁に提出したのである。全く意味不明でしかないが、県の目的はただ「武装闘争を堅持しているJRCL」を印象づけるだけの「幼稚」なパフォーマンスでしかないということだ。このようなふざけた主張展開を繰り返す神奈川県を許してはならない。
本裁判で原告証人としてAさん、越境社、関西新時代社を申請していたが、第七回裁判(五月二十日)で証人尋問を行うことが決まった。また、県側証人として10・24弾圧を指揮した佐藤道男(県警本部警備部公
安第三課課長補佐)を申請してきたが、出廷日程は次回以降に決 定することになった。傍聴と裁判カンパを呼びかける。 (Y)
b第七回裁判/五月二十日(火)午前十時〜十二時、午後一〜三時/横浜地裁第6民事部503号
b裁判カンパ(郵便振替口座 00290―6―64430 新時代社〈かならず裁判カンパと明記してください〉一口 二千円)
読書案内 渥美文夫著 現代企画室刊 1500円
『金日成・金正日体制と東アジア』
日本左翼への鋭い批判
著者は、二〇〇二年九月の小泉首相(当時)の北朝鮮訪問の中で、金正日が日本人拉致問題を公式に認め、「謝罪」したことが、日本の左派、とりわけ彼もかつてその流れの中に存在した新左翼にとってどれほど深刻な衝撃を与えたか、という立場から、本書を書いた。「中核派、ブント諸派、革労協、等の左翼や革マル派はこれまで、拉致問題には関心を示してこなかった。左翼諸派は、日本帝国主義の朝鮮半島への再侵略、反革命の動向を強調し、日本帝国主義を厳しく批判する朝鮮労働党にはむしろ肯定的な立場をとる傾向が強かった」とする著者の冒頭での批判的言及は、本書を貫くモチーフである。
「主体思想」の
体系的な批判
本書の構成は「金正日の拉致犯罪」「九〇年代の北朝鮮」「在日朝鮮人の北朝鮮帰国」「抗日パルチザン部隊の指導者・金日成」「朝鮮民主主義人民共和国の建国と朝鮮戦争」「重工業優先、農業集団化」「金日成個人独裁」「党の唯一思想体系確立のための十大原則」「金父子体制」「金日成・金正日の対外工作」「金日成・金正日の朝鮮総聨支配」「金正日の軍事独裁体制」の十二章から成っている。朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)成立の過程、朝鮮戦争とその結果、金日成・正日父子独裁体制の形成、「唯一思想体系」としての「主体思想」、さらに今日の金正日独裁の政治・社会構造とその下での北朝鮮民衆の餓死をふくむ絶望的状況について、著者は歴史的経過に即しながら、さまざまな既刊資料を用いてコンパクトにまとめている。
その分析には、とりわけ新しい材料が含まれているわけではないが、あらためて北朝鮮の軍事独裁体制の諸特徴、儒教的な封建的「忠孝原理」に貫かれた「主体思想」の本質を見極める上で便利である。
北朝鮮人民との
連帯の道を模索
著者は、日本帝国主義の朝鮮侵略と植民地支配の犯罪性に対して日本の労働者民衆が引き受けなければならない負債の補償について、決してあいまいにしているわけではない。しかしそうであればこそ、金日成・金正日体制への批判をあいまいにし、さらにはその「反米日帝」のポーズに引きずられて実質上その軍事独裁体制を防衛する多くの「新左翼」の傾向が、北朝鮮民衆への敵対に他ならないと批判している。
そうした著者の厳しい批判は小田実の『私と朝鮮』や和田春樹の『北朝鮮 遊撃隊国家の現在』などをも対象としている。著者の新左翼批判は、その「スターリン主義批判」が反帝一元論的な政治力学主義を一歩も超えることができず、「スターリン主義」の政治・社会的な支配体制の内在的批判に至っていないところに集約される。私は日本新左翼の「スターリン主義批判」への著者の批判が、いまだあいまいであると考えている。
しかし「日本の左翼諸潮流がなすべきことは、米帝・日帝の侵略・反革命からの`共和国防衛aではなく、金正日への闘いを開始しつつある北朝鮮人民への連帯である」とする著者の立場は、私たちもまた基本的に了解するところである。 (純)
抗議声明
3人の死刑執行に抗議する
死刑廃止フォーラム90
さる二月一日、鳩山邦夫法相は、持田孝さん、松原正彦さん、名古英司さんの三人の死刑を執行した。十二月に続き、法相就任以来二回目の執行である。死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90は、即日以下の抗議声明を発表した。(編集部)
本日(2月1日)、持田孝さん(東京拘置所)、松原正彦さん(大阪拘置 所)、名古圭志さん(福岡拘置所)への死刑が執行されたことに対し、強く抗
議する。
鳩山邦夫法務大臣は、前回12月7日の3人への死刑執行から、わずか2ヶ 月も経たないうちに就任以来2回目の執行を強行した。
就任時に鳩山法相は、死刑執行のあり方について見直す考えを示し、「勉強 会」を持つなどしてきたと伝えられるが、それが、執行の責任を誰も負わない
「自動的」な執行への道を切り開くものにすぎなかったことが今や明らかとな った。鳩山法相は自らが執行への「ベルトコンベア」をフル回転させているの
だ。
昨年12月18日には国連総会において「死刑執行停止決議」が104ヵ国 の賛成によって採択されたばかりである。死刑存置国に対して「死刑の廃止を
視野に入れて、執行の停止を確立すること」を求めるこの歴史的な決議に見ら れる世界の流れに、日本は全く逆行している。決議に反対した54ヵ国の中で
も実際に執行を行っているのはさらに少数である。この16年間にわたって死 刑執行のない年を作らず、それどころか、死刑判決数、死刑確定者数、死刑執
行数のすべてを急増させている日本は、もはや「死刑大国」と化しつつある。 今こそ、なぜ世界の多くで死刑制度の廃止が求められてきたのかを、謙虚に受
け止め、直ちに死刑執行の停止に踏み切るべきときである。
「情報公開」の波に押されるようにして、法務省は前回の執行から、執行さ れた方の氏名を発表するようになり、それとともに「事件の概要」を公表して
いるが、それは死刑確定判決をなぞっただけのものであり、処刑された人たち の裁判にどのような問題点があったか、その身心の状態はどうであったか、等
の、執行にあたってもっとも配慮されなければならない情報は隠蔽されてい る。
持田孝さんは一審では無期懲役判決だった人だ。松原正彦さんは再審請求が 昨年10月に棄却されたばかりだった。名古圭志さんは控訴を取下げて死刑判決
が確定してしまった人だ。死刑という極刑を求めての検察官控訴というものが 果して許されるのか。死刑事件での再審の門が1986年の島田事件以来、全
く閉ざされているのは、現在の再審システムに問題があるのではないか。昨年 5月には、死刑事件についての「必要的上訴制度」の欠如の問題が国連拷問禁
止委員会から日本政府に対して指摘されているところではないか。
法務省は、これらの問題をどう考えているのかを明らかにするとともに、な ぜ、3名の死刑を執行しなければならなかったのか、一人一人について理由を
明らかにすべきであるし、執行が本当に適正に行われたか否か、残酷に行われ ていないか、その手続のすべてについて事実を明らかにすべきである。
こうした問題点を全く無視して強行される死刑の執行は、すでに「ベルトコ ンベア」化されているといえる。この機械を止めよう。
死刑は、残虐な刑罰であり、民主主義の理念に真っ向から反するものであ る。死刑には犯罪抑止効果がないばかりか、かえって、社会の倫理観を荒廃さ
せる。死刑に必ず冤罪があることは、免田事件、財田川事件、松山事件、島田 事件の再審無罪で証明されたところである。死刑は直ちに廃止されなければな
らない。
われわれは、日本政府および法務省並びに法務大臣に対し、今回の死刑執行 に強く抗議するとともに、直ちに以下の施策を実施するよう求める。
1 死刑の執行を停止し、死刑廃止に向けて努力すること。
2 死刑に関する情報を公開すること。
3 死刑確定囚に対する処遇を抜本的に改善すること。
4 犯罪被害者に対する物心両面にわたる援助を拡充すること。
また、最高裁判所並びに全国の裁判所に対して直ちに死刑の濫用を止め、死 刑判決を差し控えるよう強く求める。
さらに、昨年の「被収容者等処遇法」施行以降も、死刑確定囚の外部との交 流はいまだに制限が厳しく、全く孤立の状態にいる死刑囚は数多い。各施設が
「死刑に直面する者の権利」を保障することを求める。
そして根拠なき「体感不安」を煽るかのようなマスコミの事件報道につい て、裁判員制度の導入が予定されている今日であればなおさら、被疑者・被告
人たちが予断によって裁かれることのないよう、配慮されることを求める。
2008年2月1日
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