「生活重視」の看板に偽りあり!
変わらぬ福祉切り捨てと増税シフト |
貫かれる新自由主義路線
福田政権は、十二月二十四日、二〇〇八年度予算の政府案を決定した。一般会計総額が〇七年度比〇・二%増の八十三兆六百十三億円、一般歳出は同〇・七%増の四十七兆二千八百四十五億円。税収は五十三兆五千五百四十億円で前年度比〇・二%増でしかなかった。新規国債発行額は前年度比マイナス〇・三%減の二十五兆三千五百億円(赤字国債は二十兆千三百六十億円)だが、実は地方交付税特別会計(特会)の借金返済を一般会計から特会へ繰入額を圧縮したりなどやり繰りして取り繕っているにすぎない。国と地方の借金(長期債務残高)は〇八年度末で七百七十六兆円であり、お手上げ状態が続いている。
それにもかかわらず福田首相は、予算案編成にあたって構造改革路線のトーンを巧妙に下げながら、「地域活性化や生活の安全・安心を掲げ、国民生活に配慮した」などと来る衆院選を意識したウソで塗り固めたアピールを繰り返している。福田首相の施政方針演説(一月十八日)では、「生活者や消費者が主役となる社会」と言いながら、財界向けに「活力ある経済社会の構築」で「経済成長戦略を経済諮問会議において具体化」すると強調しておくことも忘れなかった。
つまり、資本のグローバリズムの市場競争に勝ち抜いていく大企業と財界のための経済政策を従来通り推進していくということであり、同時に「国民本位」「生活重視」などといったオブラートで包みながら、その性格は従来どおりの弱者切り捨て・弱肉強食の新自由主義政策の継承であり、貧困と社会的格差を広げていくことである。額賀財務相にいたっては、予算案編成後、「『成長と改革』の予算だ」などと自慢し、「社会保障財源」や「財政再建」を口実にして消費税増税必要論を展開して、その「橋渡し的な位置」にあると発言していた。そして施政方針の財政演説では、ついに「消費税を含む税体系の抜本的改革について早期に実現を図る」ことを宣言した。
予算案の社会保障、文教、公共事業、軍事費、治安弾圧費を見ただけでも、国民生活破壊のための性格が露骨に現れている。福田政権は、予算案の年度内成立を強行し、ただちに消費税増税にむけた回路作りに着手しようとしている。予算案を厳しく批判していかなければならない。
でたらめな「貧困対策」
社会保障関係予算は、前年度同比三%増の二十一兆七千八百二十四億円となった。しかし、小泉政権時の福祉財政削減政策によって毎年二千二百億円ずつ削減し、診療報酬・薬価等改定削減、政府管掌健康保険への国庫負担削減などを立て続けに強行している。また、生活保護の母子加算も引き続き削減した。医療制度、介護保険、障害者自立支援法にもとづく当事者負担の増額も強行してきた。かろうじて医師確保対策の推進や救急医療体制の充実、肝炎患者の治療費助成、障害者自立支援法の一部見直しによる福祉サービス利用負担の軽減(原則一割の「応益負担」政策の変更なし)などを行ったが、暫定的性格が強く、切り捨て政策の基本性格は従来通りである。
生活保護政策も同様だ。生活保護利用世帯は約百九万世帯(〇七年七月)だが、行政の違法な申請拒否や排除によって利用を必要としている人たちのうち二割前後に押し止められている。北九州市など各地で餓死・孤独死が発生する事態にまで追い込んでいる。また、野宿者への人権無視、差別・排除を強化している。
ワーキングプア対策もそうだ。〇六年の年収二百万円以下が千二十三万人。国民健康保険の滞納は四百八十万世帯で過去最高を記録している。さらに若年層の多くが非正規雇用で、三人に一人の年収は百二十万円でしかない。早急な雇用対策が求められているにもかかわらずハローワークの統廃合縮小、民間会社導入を押し進めながら、アリバイ的に「ジョブカード」制度の創設などを押し出したが、中味は企業助成金、貧弱なサポートでしかない。雇用保険への国庫負担金の削減を柱に失業対策費は、〇七年度の二千二百七十億円から千九百五十六円に圧縮してしまった。中小企業対策費は、前年度よりわずか〇・四%増の千六百四十六億円だけだ。雇用対策を本気で考えていないことが明白だ。
額賀財務相は「財政健全化に向けて強い意思を示した」と豪語したが、その本音はこのように雇用対策も含めた社会保障分野への予算配分を意図的に薄くすることだった。政府は、「社会保障国民会議」なるものを立ち上げ、放談会を繰り広げながら対策ポーズをとろうとしている。財政破綻のツケを民衆に押しつけ、搾り取る姿勢は、全く変わっていない。福田首相が言う「国民が安心して生活できる『社会保障制度の確立と安全の確保』」(施政方針)の姿が、いったいどこにあるのか。小泉・安倍政権による新自由主義政策に対して、全国各地で怒りのうねりが巻き起こり、その結果として参院選で与党は大敗北した。「国民本位」「生活重視」などといったコマーシャルだけで逃げ切ることはできない。民衆のための社会保障関係費の修正・再編成を強く求めていき、欺瞞的な社会保障対策を厳しく批判していこう。
教育を破壊する文教予算
文教予算は、二兆九千四百九十四億円で前年度比〇・三%の微増だ。だが福田首相は、「故郷と国を愛し、国際的にも十分通用する、明日の日本を担う若者を育てる環境」(施政方針)づくりを行っていくと主張し、国家主義と新自由主義的教育改革を合体させた教育路線の継承を強調した。そのために改悪教基法の実働化のための諸施策に予算をばらまいたのである。
改悪学校教育法にもとづいて教育労働者に対する国家的忠誠の強要を行い、管理支配を強化する主幹教諭の千人配置のために二十四億円を予算化した。逆に、超激務な勤務状態を少しでも是正するために教員の増員が求められているにもかかわらず、不安定な労働条件で使い捨てへと追い込むことができる非常勤講師七千人配置のために二十九億円しか盛り込まなかった。さらに、成果主義や勤務評価を導入し、教員間の格差と分断をねらっている。その強力なテコとなる教員免許更新制の実施準備のために三・九億円を充てた。
国家的事業として強引に展開していくための全国一斉学力テストに六十二億円を盛り込んだ。新自由主義的教育改革の推進力として全国学力テストを導入し、教育族議員、文科省官僚、教育企業との利権関係を温存させながら競争・選別主義を強めていこうとしている。その延長上にグローバルな技術立国などと称して大企業のための研究開発に取り組む大学機関などに手厚い予算をつぎ込んだ。
しかし少子化を理由にして大学予算、私学助成予算を軒並み削減し、学費値上げなど教育費負担増を学生・保護者に押しつけていこうとする政策を強化した。低賃金・リストラ・非正規雇用政策によって保護者たちは、学費が払えず子どもたちの進学を断念せざるをえなくなったり、中途退学に追い込まれる深刻なケースが増大している。だからこそ充実した奨学金事業、学費値上げにつながらない教育予算配分が求められている。「若者を育てる環境」づくりではなく、教育破壊が文教予算案の実態なのである。
軍事化とサミット警備費
公共事業関係費は、前年度比三・一%減の六兆七千三百五十二億円となったが、「持続的な経済成長」(施政方針)路線に基づいて重点配分を行っているのが大きな特徴だ。空港、港湾などの国際物流を支える基幹道路網の整備などに五百五十一億円(前年度比一〇・六%増)、首都・中部・近畿の三大都市圏環状道路建設費が二千五十三億円(前年度比一・八%増)、スーパー中枢港湾の整備に六百一億円(前年度比十四・七%増)など大型公共事業は軒並み増額した。
整備新幹線も前年同額の七百六億円を確保し、与党運輸族と地元利権集団のために東北新幹線の八戸―新青森、九州新幹線の博多―新八代に優先的に重点配分した。
福田首相は、「低炭素社会への転換」「温室効果ガスの削減」などと環境問題対策を重視しているかのようなことを施政方針で表明したが、そうであるならばなぜ優先政策として航空運航、自動車などの過密状態による事故多発、排気ガスまき散らし、関連企業への規制を強化しないのだ。明らかに予算案は、空港、道路を無政府的に造り続けていく編成となっているではないか。この面だけでも福田政権の環境問題対策のペテン性を自己暴露してしまっている。予算案はゼネコン・大企業を潤す偏った予算配分だ。無駄で環境破壊につながる巨大プロジェクトなどの公共事業はやめろ!
軍事費は、四兆七千七百九十六億円で前年度より〇・五%減だが、米軍再編経費を増額し、グローバル派兵国家にむけた軍備増強路線のために強化されている。兵器商社の山田洋行をめぐる軍需産業、防衛族、防衛省官僚などの癒着・利権犯罪の全体像がいまだに暴き出されていないにもかかわらず、福田首相は「防衛省の再生に向けて改革します」(施政方針)と居直り、事件終結を策動しながら、日米同盟を再確認し、「平和協力国家」として押し出すことを通して憲法改悪を先取りした恒常的派兵体制を構築しようとしている。「迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施」(施政方針)するために派兵恒久法制定を宣言した。この軍拡姿勢は、新テロ特措法案が成立していない〇七年十二月時点において、海上自衛隊の派兵経費(四月〜六月末)約二十二億円を盛り込んだことに現れている。
さらに装備の拡充面でも巨額な予算をつけた。ミサイル防衛(MD)関連費と地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の能力向上に五百六十二億円、次期固定翼哨戒機(P│X)導入(4機)に六百四十六億円だ。在日米軍再編経費は前年度比二・六倍もの特段の増額で百九十一億円である。在日米軍への「思いやり予算」も二千八十三億円と高水準を維持した。米国からわざわざ「謝意」が届くほどだ。グローバル派兵大国にむけた巨額な軍事費はいらない!
七月北海道洞爺湖サミット警備費にも巨額な予算を配分し、国家的面目をかけて乗り切ろうと必死である。警察庁予算案は総額二千七百三十五億二千九百万円だが、とくにサミット警備のために前年度よりも百三十億二千二百万円も増加した。
また、関係省庁サミット関連予算は、三百十九億円も盛り込んだ。とりわけ外務省関連が百三十四億円と手厚い予算をつけた。防衛省関連は九億四千万円で統合幕僚監部内に「サミット班」を設置し、軍事作戦を遂行中だ。また地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)配備、空中警戒管制機(AWACS)や迎撃戦闘機の緊急発進(スクランブル)態勢を準備している。海自も洞爺湖に近い内浦湾にヘリ搭載護衛艦、日本海や太平洋にイージス艦を配備する。巨額なカネを使い、戒厳態勢下で諸大国の政治談合を防衛しようというのだ。無駄なカネを使ったサミットを包囲していかなければならない。
住民のための予算組み替えを
このように予算案は、民衆の生活に関わる社会・教育・雇用分野の予算を軒並み削減し続け、グローバル派兵大国のための軍事費、治安弾圧費に大盤振る舞いを行い、成長戦略にもとづいた公共事業の拡大など、財政破綻に陥っているにもかかわらず、これまでと同様な予算配分である。
これまで政府は二〇一一年度に国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化するなどと言ってきたが、すでに五兆二千億円の赤字になっている。「骨太方針」は破産に陥っているのだ。社会保障歳出を抑制し、経済成長によって税収を増やすという手法は、もはや通用しないことを自覚すべきなのだ。
政府は社会保障財源確保と財政再建を繰り返しているが、法人税の基本税率(三〇%)と法人事業税(七・二%)、所得税・住民税の最高税率(五〇%)の引き上げを絶対に主張しない。〇八年度税制「改正」でも、研究開発減税、減価償却制度「見直し」などの大企業減税、資産家には証券優遇税制の一部温存・拡充などの減税も打ち出した。
さらにゼネコン・地域ボス・道路族議員を潤してきた道路特定財源の一般財源化を拒否し、ガソリン税の暫定税率の延長を主張し民衆の生活破壊者として居直り的に登場しているほどだ。
労働者の低賃金状態は続き、原油高騰による物価上昇が進み、生活の困難状態が拡大している。内閣府でさえ「日本経済二〇〇七│二〇〇八」で「景気回復の家計部門への波及が停滞した状況にある」と認めているではないか。これ以上の生活・雇用破壊を許さない。〇八年度予算案を批判し、民衆のための予算組み替えを主張していかなければならない。福田政権を打ち倒していこう。 (遠山裕樹)
5・3憲法集会実が院内集会
派兵恒久化法をつくるな憲法審査会の始動NO!
対話ムードと
改憲への準備
臨時国会が一月十五日に終わってから三日後の十八日に、第169通常国会が召集された。
同日、福田首相は施政方針演説の中で、「与野党が信頼関係の上に立ってよく話し合い」とか「野党のご意見も積極的に取り入れながら」などと「対話」ムードをかもしだしつつ、「迅速かつ効果的に国際平和協力活動を実施していくため、いわゆる『一般法』の検討を進めます」と述べた。
これは民主党との連携プレーによる「派兵恒久法」の準備作業をスピートアップするという宣言である。また昨年の通常国会での「国民投票法」=改憲手続き法の成立をうけて「今後は国会のしかるべき場において、国民投票法の審議過程で積み残された諸課題や、改正するとすればどのような内容かなど、すべての政党の参加の下で、幅広い合意を求めて、真摯な議論が行われることを強く期待しております」とも述べている。これは昨年五月「改憲手続き法」が成立したものの、同法に規定された「憲法審査会」が実際に機能せず、改憲プロセスの作動が止まっていることへのいらだちを示すものだ。何としても「憲法審査会」の論議を開始する、というのが福田内閣と与党の決意表明でもある。
防衛省疑獄究明し
米軍再編撤回を
一月十八日午後一時半から「5・3憲法集会実行委員会」の主催で「憲法審査会を始動させるな! 政府は憲法9条を守れ! 1・18院内集会」が衆院第1議員会館で開催された。この集会は、通常国会の冒頭にあたり、今国会での憲法改悪のための「憲法審査会」の討論開始と、派兵恒久法案制定のもくろみに反対する意思を明らかにするために呼びかけたものである。
高田健さんの主催者あいさつの後、共産党の志位和夫委員長と社民党の福島みずほ党首が発言した。
志位共産党委員長は、憲法違反の新テロ特措法成立に強く抗議するとともに、派兵恒久法案や憲法審査会を開いて議論を進めようとする動きに反対する「広範な共同関係」の形成を主張し、新テロ特措法案への「対案」で派兵恒久法の制定を盛り込んだ民主党の姿勢を批判した。福島社民党党首も「憲法9条を変えようという動きは続いている」と警鐘を乱打し、「大連立」によって派兵恒久法を作る動きを止めようと呼びかけた。
さらに共産党の穀田恵二、笠井亮、赤嶺政賢、社民党の辻元清美、日森文尋、菅野哲雄各衆院議員も一言ずつ闘いの決意を語った。参院議員からは共産党の井上哲士さんと社民党の山内徳信さんも報告した。井上さんは利権がらみの防衛予算を批判し、山内さんは沖縄の米軍基地強化に向けた攻撃に反対しよう、と述べた。
市民団体からは、日本青年団協議会の大江博美さんと日本山妙法寺の木津博充上人が憲法9条破壊を許さないアピールを行った。
予算審議を通して防衛省・軍産疑獄を究明し、「米軍再編」計画の撤回を求めるとともに、改憲のための「憲法審査会」始動や派兵恒久法制定のもくろみを打ち砕こう。(K)
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