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「エクアドルの不当な債務を帳消しに」大阪集会      かけはし2008.1.14号

債務問題は単に北と南の問題ではなく資本家と労働者の矛盾



 【大阪】十二月十七日、大阪市立文化交流センターで、エリック・トゥーサンさんとセザール・サコットさんを迎えて講演集会が開かれ、六十人以上が参加した。この講演集会は、「エクアドルの不当な債務を帳消しに!全国講演ツアー」の一環として開かれたもので、トゥーサンさんとサコットさんは午前中にも、龍谷大学(京都市)の公開講座で講演するというハード・スケジュールだったが、元気にこの講演集会に臨んだ。
 「小さな国エクアドルの大きな挑戦:貧困と債務からの脱出のために」と題されたこの集会は、アタック関西グループ、ODA改革ネット、関西NGO協議会、ジュビリー関西などの呼びかけで作られた実行委員会の主催で、会場を提供してくれた大阪市立大学大学院創造年研究科都市共生研究分野が共催に名を連ねた。
 集会は、定刻よりやや遅れて、二人の司会の軽妙なやりとりでスタートした。最初に、大倉純子さん(債務と貧困を考えるジュビリー九州)が、債務問題の基礎知識をパワー・ポイントも使いながら、わかりやすく説明した。
 続いて登壇したエリック・トゥーサンさん(CADTM・第三世界債務廃絶運動ベルギー代表)は、債務の起源、債務の構造的な問題、エクアドルの挑戦、「南の銀行」の四点について、スペイン語で講演を行った。トゥーサンさんは、エクアドル政府の「公的融資に関する統合的監査委員会(CAIC)」に海外専門家として招かれ、多国間債務について監査を行っている。山本奈美さんの的確な通訳もあって、債務の持つ本質的な問題がよく理解できる講演であった(講演要旨は別掲)。
 また、セザール・サコットさん(グアヤキル大学経済学教授、弁護士)は、立ち上がってジェスチャーを交えながら、時にはホワイトボードにイラストを描いて、熱のこもった講演を展開した(講演要旨は別掲)。サコットさんもCAICの委員である。講演のあと、参加者から活発な質問が出され、時間一杯まで熱心な討論が行われた。  (O)

エリック・トゥーサンさんの講演より
日本も含め国際的支援を


 私がお話したいのは次の4点についてである。つまり、債務の起源と不当・不公正な債務、債務の構造的な問題、債務帳消しというエクアドルの挑戦、設立されたばかりの「南の銀行」の四点である。
 債務問題とは、単に北と南との間の矛盾ではなく、資本家と労働者との間の矛盾のメカニズムである。
 富が南から北へと移っていくメカニズムとして、南の国の政府が借金をすると、政府が借金を返済するというよりは、その国の生産者や労働者に税金その他の形でその借金を押し付ける。南の国にも債権者、つまり資本家がいて債権を買い取る形で、彼らも富を蓄積している。南の国の公的債務の支配者は、北の債権者だけでなく、南の資本家も含まれている。彼らは債務の帳消しには反対であり、いつまでも債務の返済を続けてほしいと願っている。

債務は約三十年
で五十三倍にも

 二〇〇一年十二月、アルゼンチン民衆の行動で政府が倒れ、次の政府は公的債務のモラトリアムを宣言した。しかし、アルゼンチンの資本家は反対運動を起こした。それは国債償還ができなくなり、彼らが損失を蒙るからだった。
 しかし、債務は実は南の国だけの問題ではない。エクアドルはGDPの二二%にあたる借金を抱えているが、日本は実にGDPの一七五%の借金を持っている。日本の人々も、この借金から逃れる必要があるのではないだろうか。
 債務を通じての支配のメカニズムは、債権者、債権国が債務国への政治的介入を行うことである。その際に道具の機能を果たしているのは、IMF、世界銀行などの国際機関である。政治的介入の内容は、「公営企業を民営化して、多国籍企業に売却しなさい」「教育、医療などへの公的支出を減らして、赤字を削減しなさい」「北の商品が入りやすくするために自由化を進めなさい」などである。したがって、債務からの抜け出すことが必要なのだが、それは上で述べた支配のメカニズムからの自由を意味するからだ。
 エクアドルでは、一九七〇年から二〇〇七年の間に債務の額は五十三倍にもなった。その間の返済額は百七十倍にもなっている。それは永久に課せられた悪循環のメカニズムである。どうしたらこの悪循環から抜け出せるのか。それには債務の帳消ししかない。
 二〇〇六年、コレア大統領が選出された。二〇〇七年の国家予算では、国内債務を含めると四〇%を債務の返済に充てなければならず、社会的支出はわずか二二%しかない。コレアは、彼の公約の中で「北の支配からの自由」を掲げた。二〇一〇年までに、債務の返済には予算の一二%を充て、三八%を社会的支出に当てるという方針を打ち出した。

資金調達のため
「南の銀行」を設立

 これを実現するためには、日本の市民も含めた国際的な支援が必要である。日本はエクアドルに対して、三億三千八百万ドルの公的債務を持っており、第三位の債務国である。この債務が帳消しになれば、その分社会的支出を増やすことができる。
 債務帳消しには、債務の詳細な分析が必要である。そのために特別委員会が設置された。その構成は、政府から四人、社会運動から十二人、債務帳消しの国際運動から六人で構成され、私もそのメンバーのひとりとなっている。この委員会は全ての債務契約を調査し、二〇〇八年G8サミットまでには報告書を完成させて、いくつかの債務が不当であるとエクアドル政府が宣言できるようにしたいと考えている。
 ノルウエー政府の一方的な債務帳消しの事例がある。ノルウエー政府は、エクアドルの漁船購入資金として借款を供与した。しかし、実はノルウエーの造船業救済のために、その資金でノルウエーから漁船を購入させたのだった。実際にはその漁船は全く役に立たず、しばらくはバナナ運搬に使われていたが、今は全く使われていない。そのため、ノルウエー政府は、この債務を不当な債務と認め、一方的な債務帳消しを行ったのだ。こうしたことは日本でも可能なはずである。
 さらに、債務帳消しの上で、新たな資金調達のための機関が必要である。それが「南の銀行」の設立である。外貨収入は、従来はアメリカの国債購入を通じてアメリカに還流していた。それを「南の銀行」が運用することで、途上国に貸し出すことができる。しかも、地域の発展、人間的な生活の発展をまず第一に考えて、社会的事業に優先的に投資する。つまり食料主権、農地改革、ジェネリック薬の生産、南における大学教育などである。投資先としては、小生産者や公営企業などに優先する。(講演要旨、文責編集部)

セザール・サコットさんの講演より
北に富が集中、南は貧困

 債務とは、国際的な金融上の奴隷を作り出すシステムである。十九世紀の奴隷制を思い起こすと、確かに奴隷制は廃止されたが、その主人たちは奴隷購入時に支払った金が補償されるべきだと考えた。以前の奴隷たちは、主人からわずかばかりの給料を主人から購入する食料などの生活必需品などで天引きされ、ほとんど残らなかった。しかも、それらの価格は高く設定されていた。したがって、自由にはなれなかったのだ。これは、奴隷たちがあるシステムの中に取り込まれていったことを意味する。奴隷の負った借金は子孫に引き継がれ、奴隷状態のまま彼らも主人に仕えざるをえなかった。
 これと同じシステムが北と南との間で起こっている。一時商品の価格が下落することで、北へと富が集中し、南がますます貧しくなる構造がある。富を作り出せば出すほど、その富は北の企業へと流れてしまう。
 ノルウエーの例をあげてみよう。ノルウエーの資本家は政府に圧力をかけて、援助の形で漁船二十四隻をエクアドルに押し付けてきた。エクアドルの漁民にとって必要かどうかは関係ない。汚職によって、上級役人にサインさせただけのことだ。その債務は五千万ドルだが、すでに六千四百万ドル返済したにもかかわらず、三千七百万ドル残っている。誰が利益を受けるのか。北の国民ではなく、北の多国籍企業が利益を受けている。
 フィリピンの例では、ヨーロッパ諸国によって原子力発電所が建設されたあと、国連がやってきて、「稼動させるな」と言った。原子力発電所が地震多発地帯にあったため。一度も使われないまま残っている。高価な原子力発電所の債務をフィリピンの人々は払わされ続けている。
 日本では、憲法9条の改定の動きがあり、巨大企業の利益になるように大きな圧力がかけられていると聞く。日本の人々に訴えたいことは、「南の人々との連帯に加わってほしい」「飢餓・貧困に目を向けてほしい」ということだ。(講演要旨、文責編集部)



12・14院内集会
国会議員も監査に賛意


 十二月十三日から十八日にかけて、CADTM(第三世界債務帳消し委員会)のエリック・トゥーサンさん、エクアドルのグアヤキル大学経済学部教授のセザール・サコットさんを招いて「岐路に立つラテンアメリカ エクアドルからの証言――エクアドルの不当な債務を帳消しに」をテーマに全国スピーキングツアーが行われた。東京、福岡、大阪、京都で行われたこの報告会は、明治学院大学、上智大学、龍谷大学、大阪市立大学での講演会、公開講座をふくめて関心ある学生、労働者、市民が参加し、盛況だった。このキャンぺーンを主催したのはATTACジャパン、債務と貧困を考えるジュビリー九州などで構成する実行委員会。
 エクアドルでは二〇〇七年一月に前年の大統領選挙で当選した左派のラファエル・コレアが大統領に就任した。コレア政権は、新自由主義に反対してFTAA(米州自由貿易協定)交渉を拒否し、二〇〇九年に使用期限が切れる米軍マンタ基地の使用契約更新をしないことを言明している。また世界銀行やIMFではなく、貧困を解消し、社会福祉や教育、そして地域の中小生産者の利益のための金融政策のためにベネズエラ、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンとともに「南の銀行」を十二月に発足させている。
 コレア政権は、債務監査委員会を発足させ、不当な契約による債務の返済を拒否する姿勢を打ち出した。日本はエクアドルにとっては世界第三位の債権国であり、日本の責任は非常に重大である。
 十二月十四日には参院議員会館で、同講演ツアーの一環として院内集会が行われた。院内集会には、社会民主党党首の福島みずほさん、民主党参院議員の藤谷光信さん、無所属参院議員の川田龍平さんなどが参加した。福島さんや川田さんは、日本のエクアドルへの債権を監査し不正な債権の放棄を求めるトゥーサンさんやサコットさんの訴えに賛意を表明した。福島さんはG8洞爺湖サミットに向けて市民の側からの「宣言」を準備していると語り、二〇〇四年、〇七年の世界社会フォーラムにも参加した川田さんは、ATTACの提起する通貨取引税の導入にも前向きに取り組むと述べた。      (K)


投書
「9・11 米政権による陰謀」
の謎は解明されていない
             S・S


 「かけはし」二〇〇四号(12月3日号)の『陰謀論の罠』の読書案内は、全くひどい文書である。このような文書を貴紙が掲載したことに驚いている。筆者のふじいえいご氏はこの本を、9・11陰謀説を「余すところなく、豊富な資料と情報ソースの提示によって丁寧に一つ一つ付き合って反論・論破した」と絶賛している。そんなことが出来るのかと思って買って読んでみたが、実にお粗末な内容で、そのほとんどの論証を米政府の公式報告書に依拠して強弁しているに過ぎないものである。
 筆者(ふじい)は、果たして自分の頭で陰謀といわれている疑問を解明できたのだろうか。
 例えば、ペンタゴンに突入したとされるボーイング757機の残骸が全く見つからないことに対して、奥菜は、超低空飛行で突入したから、芝生にあとがつかなくても不思議はないなどと、反論にもならないことを並べ立てている。突入したのは巡航ミサイルではないかとされペンタゴンの壁に直径五メートルほどの穴しかあいていないことについても、説明らしい説明はなく、政府の報告書を対置しているだけである。
 また、世界貿易センタービル、ツインタワーと第七号ビルが、ほとんど一瞬に崩壊したことについて、爆薬による爆破ではないという説得性ある説明はなく、あれこれけちをつけた上で、「アメリカ政府の公式報告書には、別におかしいところはないのである」と明言している。
 筆者はこの本の説明ですべての謎が解明できたというのだろうか。[LOOS CHENGE](DVD)
(http://store.globalpeace.jp/index.php?main_page=product_info&cPath=2&products_id=85)
や関係書籍を読んで書いたとは思えない粗雑な論評である。
 米政府は、事件解明の鍵となるボイスレコーダーなどの証拠物件を隠し、ツインタワービル解体の現場目撃者などの証言を封じ込めるなど、隠蔽工作を続けている。ニューヨーク市民の六六%が、米政府の陰謀を疑い、事実の公表を求め、また、米国民の三割が米政府の関与を疑っている。そのように重大な問題を米政府の報告書をなぞったに過ぎない奥菜の『陰謀論の罠』を百%支持しているこの論評は、滑稽としか言いようがない。

アメリカ帝国が
世界の悪の元凶

 筆者は、陰謀論者は「アメリカ帝国が『悪』として、それに対抗するアルカイダなどイスラム主義者も『悪』である、という世界の構図に耐えられない」と批判し、「一元的な『悪』では解き明かせない世界の現実に正面から立ち向かおう」とメイン見出しを出している。その上で、「9・11陰謀論を熱心に宣伝する『良心的』平和運動人士」を「平和運動を分裂させ」「ユダヤ人を差別する`平和運動a」と批判している。
 また、「ビン・ラディンやアルカイダは一体どのような存在なのか」と問うているが、アメリカに都合よく使われていることは明白ではないか。アメリカ政府は、9・11を口実にアフガニスタンに侵攻し、続いて、イラクに侵攻したが、これはアルカイダの存在なしにはありえないシナリオである。アメリカ帝国が世界の悪の元凶であることに異論があるのだろうか。「イスラム主義も悪である」という呪縛から抜け出さない限り、アメリカ帝国の傲慢極まりない「悪」も相対的な「悪」に見えるのだろうか。
 反帝国主義を立場とするはずの機関紙『かけはし』が、この読書案内では、奥菜の論証をそのまま認めることによって、米政府と同じ立場に立っている。もし、9・11が米政府による陰謀であったと判明したら(次期大統領選挙によって政権交代があればその可能性はある)、一体どうするつもりか。米政府による陰謀の可能性が、百万分の一でもあるなら、その可能性を徹底的に調べるのが、反帝国主義の立場ではないのか。


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