| 国鉄闘争 1047人の解雇撤回に向けて かけはし2008.1.1号 |
佐久間誠さん(鉄建公団訴訟原告団・事務局長)に聞く
自分たちが汗を流して厳しい闘いを引き受ける覚悟が必要 |
一月二十三日に全動労鉄道運輸機構訴訟、三月十三日に鉄道運輸機構訴訟第二次訴訟の東京地裁判決がそれぞれ出される。国鉄分割・民営化から二十一年、一〇四七人解雇問題はいよいよ、解決に向けた重大な局面を迎える。鉄道建設公団訴訟原告団事務局長の佐久間誠さんに、昨年の闘いの総括と今年の闘いの豊富を語ってもらった。(編集部)
団結の気運が高まった
――十一月三十日に、日比谷野外音楽堂に七千三百人が結集し大集会が開催されました。集会の評価、取り組みはどうでしたか。
今まで、一〇四七人の単一課題でやった集会としては最大規模になりました。一万人という大きな目標には少し届きませんでしたがよく集まりました。
特徴的には前段集会ということで、全国各地で可能な限り四者(国労闘争団、全動労争議団の当事者4者)・四団体(国労、建交労、国鉄闘争共闘会議、国鉄闘争支援中央共闘会議)で協力しながらやってほしいと提案しました。最終的には全国で六十一カ所、二万七千人余が参加し、各地方の集会で盛り上がりました。11・30の七千三百人というだけでなく、波及効果はすごくあり、大きく動きをつくれました。
地方議会での国鉄問題の解決に向けた決議は七百二十九自治体、千九十六本上がっています。昨年は、九州を中心にして空白県で次々と採択されました。
――国労の旗も北海道から九州までありましたね。
共闘会議は全力を尽くしました。また、国労機関も相当がんばって人数を集めました。支部・分会単位で毎日個別に何人増えたかと細かなチェック体制をとったと聞いています。
――四者・四団体の団結が集会の中でも強調されていましたが、それが形としても表現できたということでしょうか。
一面的にそうではなくて、四者・四団体がまとまってよかったという所もあれば、一部まだ割り切れないという所も実際はありました。ただ、一〇四七人解雇問題を解決に向けて大きく動かす時に、四者・四団体の団結というのは最低限担保しなければ解決に至らないとわれわれは考えています。例えば四党合意の総括などいろいろ言われますが、直接的にそこまで言及できなくても、いわゆるその反省のところについては、端々の言葉で証明しています。四者・四団体というところで大きく団結体をつくってきています。国労本部の高橋委員長も「四党合意の二の舞は踏まない」と表明しています。国労三役が集会や学習会でちゃんと言うようになった。反省の上に立って新たな一歩をさらにつくっていくんだということです。
――東京東部集会は国労江東支部・上野支部の共催で開催されました。四党合意問題以降、江東、上野支部では、こうした集会を一緒に開くことができなかった。今回開催できたことに、東部全労協議長が評価していました。
東京南部集会は今まで地域の集会にかんでこなかった国労の機関も協力し、前進面の評価が出来ます。神田香織さんの講談「ポッポや義士伝」などをメインにし、四百人以上を集め成功させました。新たな基点につながる地方、ブロックの運動がいくつか成果として出てきています。
――解雇から二十年ということもあり、「政府に対してなんとかしろ、解決の道筋をつけたい」というみんなの雰囲気がひしひしと伝わってきましたね。
そうですね。二十年という節目に何としても解決させるという大きな気運がありました。同時に解決する内容は「雇用・年金・解決金」を要求項目としています。当事者がいかに納得できるような内容で解決できるのか。そういうところに向けてみんなが団結しました。
判決をめぐる一大攻防戦
――裁判についてですが、全動労地裁判決が十二月末と言われていましたが延びました。これをどう判断していますか。
一月二十三日、午後二時から東京地裁民事一○三号大法廷に決まりました。民事十一部の佐村裁判長が公開法廷の中で約束したことを守らないのはいかがなものか。「子どもが出された宿題の提出に遅れた」というような種類の問題ではない。ふざけた話だと思います。
分析としては、遅れたことについては余り良いことではないのではないかという見方もあります。しかし、11・30であれだけの大衆の盛り上がりを見せつけた。そうしたなかで、どのような判断が出されるか。
国鉄改革法二十三条のところの法理論を地裁段階で破れるかどうか。難しいのではないかという見方もある。地裁段階で仮に破られなかったとしたら、高裁でがんばるしかない。
――第二次訴訟が三月十三日ですね。どういう判決が出るかということが大きな動きになりますね。
良くても悪くてもいずれにしても、今年の年度末のところは大きな動きが出てくると思います。政治の動きも含めて、きちんと解決しろということで、プッシュしているところです。被告側の弁護団は「地裁段階では、被告側が勝つんだからいま和解だとかの動きをすべきではない」と国交大臣の方に言っているように伝わってきています。結局、被告側が何を言っているかというと「9・15判決は金額が高すぎる。あの難波裁判長が出した判決だ」というのが向こうの言い方です。難波裁判長は東京の「日の丸・君が代」予防裁判で画期的な判決を出しましたが、裁判所はやられたことに対する事後救済を本来の仕事とする機関だ。予防としてやることは行政の仕事だ。「行政のやる仕事まで口を出した判決が高裁まで維持できる訳がない」というのが鉄道運輸機構側の見解のようです。相当な確率で打ち破れるという自信を彼らは持っているようです。
地裁判決がどうなるか別にしても、三月の末は一大攻防になってくる。政治の動き、省庁の動きが始まるでしょう。ただ仮に負けたとすれば、こちらとしても和解などの話を進めるのは得策でない話で、控訴審で巻き返すという形になるでしょう。
――そうした厳しい見方もあると思いますが、一方では参院選での与野党逆転という流れがあるわけで、これを利用した動きはどうですか。
政治のところは非常に難しい。政治家だけがリードしてこの問題をなんとかできるという構造ではない。裁判の動きと大衆運動。ここの動きで落ち着きどころがある程度定まった時に、政治が後押しし、流れができるのではないかと思います。
地裁で判決がそろっていない段階で、政治だけが単独で動いてなんとかできるかというとそれは非常に難しい。「司法の判断も一定程度揃った、そして二十一年目を迎え、紛争の年月も相当経っている」というところで、政治サイドの働きかけで、収めるところに収めるべきだと、そういう流れがあって初めてこの問題というのは「和解」に至ると考えている訳で、そういう気運がなければ難しい。
それが無理だったら、裁判で最後まで決着をつけるという流れになるしかないでしょう。
――C型肝炎問題で、名古屋地裁で勝利判決が出て、大阪高裁で和解が勧告され、厚労大臣が患者に謝罪しました。」解決」に向けて攻防が続いています。こうした動きは国鉄闘争にも影響しませんか。
トンネル塵肺問題なんかもそうですが、塵肺や薬害の問題とわれわれの問題はいっしょにならない。C型肝炎は国民のだれもが感染したり、被害にあったりする可能性がある。だから世論の後押しが得られる。そういう問題とわれわれのような国策によって、デマ宣伝もやられ、解雇された不当労働行為を争う問題とは、別だと見るべきでしょう。
われわれは闘いの中で、政治的和解も模索し、最終的に決着をはかるしかない。あるいは法廷の場で潔白を証明して、国民に実はこうしたことだったと知らせるしかない。そこがまた難しいところでもあります。
政治状況をどう活用するか
――二回続けて公明党から国交相が出ています。公明党と自民党はまったく一体ではない。微妙な違いもあります。そうしたところで、何か変化のようなことはありますか。
独立行政法人の数が余りにも多い。民営化しても官僚の天下り先をどんどんつくって百一ぐらいあるといいます。天下り先の給料は国家公務員賃金プラス二〇から三〇%アップというからアキレます。減らせといっても官僚は猛反発する。百一のうち三つだけ廃止もしくは統廃合が決まっているだけです。官僚は天下り先の利権を守るために、大臣にプッシュする。国鉄分割・民営化については、「百年先であっても、これは正義なんだ」と貫き通すという官僚の思いがあるから、公明党から国交大臣が出ているからなんとかなるかというと、そういう甘いものでもない。
いずれにしても自民党が最終判断をする。だから、自民党と最終的には交渉しなければならない。衆院の解散はいつか分かりませんが、今年の早い時期に動きがあるでしょう。そうすると公明党から三回続けて国交大臣が出ることはないでしょう。今の公明党の国交大臣に、われわれが望むことは解決に対する道筋をきちんと後任に伝わる形でつけてほしい、ということです。
政治はまだ入り口のところです。大きな期待はできない。政治は「一寸先は闇」だと言われますが、われわれの問題でも同じですよ。政治の力を借りるということはある意味では他力です。われわれは自分たちの問題を自力でなんとかしなけりゃならないでしょう。後押しをしてもらう役回りを政治のところにお願いはしている。それが主ではないのです。自分たちが一番汗を流して、厳しい闘いを通してしか最終的には解決の道はないと思っています。政治のところに過度に期待すると闘いにならないのです。結局、楽な道はないのです。一定の流れをつくった時に初めて政治の力、後押しが効いてくる。運動全体のつながりが重要なことです。
――民主党は北海道と九州の議員団を中心に動いてもらうとなっていますが、全体としての動きがまだまだ見えませんがどうでしょうか。
民主党は最大野党ですので、なんとか解決に向けなければならないということで努力していただいています。九月の星陵会館の集会には民主党議員がたくさん参加してくれました。
――ILOが日本政府に解決に向けた七次の勧告を出していますが。
結局ILOに一番カネを出しているのは日本政府などの国ですから、スポンサー国に対して、国際労働機関がどこまで意見を言えるのか。カネ引き揚げられたら終わりなのですから、それは難しいですね。限界性をわれわれは考えている。しかし、国際機関からも七回にわたって勧告が出されている。それをちゃんと守れという切り口にはなります。さまざまな力を活用しながら、解決に持ち込みたい。
労働者の反撃へ道しるべ
――今後の闘いは?
年頭から年度末の闘いの組み立てを柱に考えています。@「首切り通告日」2・16を柱とした取り組み。二月上旬から二月十五日の鉄建公団訴訟控訴審公判日までの効果的な宣伝を組み立てる。前半は、全動労判決が延びたことから、裁判所に向けた行動。控訴審第7期日2・15に合わせた取り組み。15日に集会(午後6時半、中野ゼロホール)を実施する。後半は、政府に向けた抗議行動。「首切り許さぬ!怒りの21周年・責任追及の闘い」。考えられる種々の抗議(決意した原告とサポーターによるハンストなども組み込む)。
そして、A3・13鉄道運輸機構判決日を中心とした取り組み。3月1日〜裁判所包囲・連続宣伝行動。3月13日(木)判決日大動員。夜、全水道会館で報告会。14日、鉄道運輸機構包囲・終日行動などを行いたいと企画しています。
――鉄建公団訴訟の控訴審はどうなっていますか。
控訴審は二月十五日です。主張は全部終わりました。十五日は申請する証人の採用をするかどうかが論点です。こちらは、敵性証人としてはJR東海の会長葛西敬之、原告側証人として、国鉄改革当時の国労本部の副委員長をやっていた嶋田さんなどを立てたい。それから、被告側が原告側の主張にどれだけ反論してくるか。相手の反論への再反論もする事になるでしょう。
――そうしますと控訴審も今年中の判決となりそうで、二つの地裁判決とで今年が極めて重要な年になりますね。
そうですね。決定的な一年になるでしょう。がんばりたいと思います。
――衆院解散・総選挙の可能性が高いのが予算を通しての四月頃あるいはG8サミットを終えてからとも言われています。夏頃に、政治的な動きも含めて極めて重大な山場がありそうですね。
有利な状況が出る可能性はありますよね。ただ、政治的なところはかつて、村山富市と五十嵐広三のコンビの政権ができたことがあり、それでも解決することなく、今日までくぐってきているから、過度な期待はないわけですよ。
民営化の残した陰の部分を政府が全部一掃しなければならないと腰をあげるかどうかにかかっている。それが大きく動かないとなかなかこの問題はうまくいかない。向こうは「民営化失敗だった」なんて言いたくないわけですよ。まだ、民営化をがんがん進めているわけだから。税金のムダをなくせと言いながら、自分たちの天下り先だけは確保している不思議な構造だ。若者の働く場がないという問題、あるいはワーキングプアーの問題だとか格差社会の問題だとかがあります。最終的にはそれらと闘う勢力などと力を合わせ、社会全体のいびつな構造にまでメスを入れなかったらだめだという気がします。社会的課題を背負いながら、白黒つけるには法廷で闘う以外ない。大衆闘争が大幅に高揚してといっても、沖縄みたいに十一万人も集められるだけのものがなかなかない。世界的に見ても日本の運動は、社会を変えられる程に到達していない。単位が少し違う。フランスのデモなどでもケタが違います。全国で七十万人が決起だとか。われわれが一生懸命やっても、地方トータル・全国で二万数千人だから。しかし、憂いてみても仕様がない。ないものねだりはやめ、自分たちで汗かきながらやるしかないです。国労闘争団も平均年齢が五十四歳だし、全動労は六十を超しました。もう、何年もないわけですよ。一つの区切りとしてこの問題を解決に持ち込む。その後に労働運動に必ずプラスに作用するものが出てくると思っています。
――この間の石油の値上がり、小麦粉などで食料品の値上げなどで、闘争団の生活への影響が心配ですが。
北海道なんかは、本格的な冬を迎え、暖を取るのにも灯油の値上がりは死活問題です。まぁ、解雇され二十年間生き抜いてきているから、きっと生きて凌げるとは思いますが(笑い)。今は、闘争団より大変な社会的弱者がつくりだされてきているから、経済的なところだけで大変だと言えないんですよ。生活はわれわれも大変だけど、闘いの意義と社会の構造に対する反撃の道しるべになればいいと思います。
――どうも、ありがとうございました。
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