かけはし重要記事

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ベネズエラ                      かけはし2002.7.8号より

クーデターで弱体化したチャベス体制は右翼勢力との和解に向かう

ダグラス・ブラボーとのインタビュー


解説
ブッシュ政権に支援された反チャベスクーデターの失敗

クーデターは2日で失敗した

 四月十一日、南米のベネズエラで財界などに支援された軍隊の一部によるチャベス大統領に対するクーデター事件が発生した。世界第三位の産油量をほこるベネズエラ経済の実権をにぎる石油資本や、マスメディアが軍の一部と手を組み、アメリカ帝国主義の支援を受けて計画したクーデターだった。
 すでに四月初めから、大労組の一部と手を組んだ経営者たち、都市上層市民による反チャベスのデモやストライキが行われ、メディアは連日のようにチャベス政権打倒の宣伝を繰り返していた。軍の一部は、こうした反チャベス・キャンペーンを背景に、チャベス大統領に退陣の圧力をかけていた。これに対して、貧困層を中心とするチャベス支持派も動員を強め、情勢は一挙に緊張の度を増していたのである。
 クーデターは、四月十一日に首都カラカスで行われたチャベス支持派の数十万人のデモに対して、反チャベス派の市長の指揮下にある首都警察隊の狙撃兵が銃撃を行い、多くの死傷者が出たことが引き金となった。反チャベス派のメディアは、この銃撃を大統領が軍に対して反政府デモへの発砲を命じたと事実を百八十度まげて宣伝し、この混乱の中で軍部の一部指導者がチャベスを拘束したのである。
 四月十二日には、経団連会長のカルモナが「暫定大統領」に就任し、国会解散、最高裁長官の罷免などの政令を発した。しかし四月十三日には情勢が逆転した。チャベス大統領が監禁されていたティウナ要塞前に、「クーデター反対・民主主義防衛」を訴える巨万の民衆が自然発生的に集結し、チャベス解放を訴えた。ついに要塞司令官は、チャベス解放を宣言し、クーデターは二日で失敗した。米州機構も四月十三日の緊急常設理事会でクーデターに反対する声明を発した。チャベスは大統領に復帰したのである。

新自由主義に屈服するチャベス
 
 一九九八年十二月の大統領選挙で七〇%以上の支持で当選し、新憲法下の二〇〇〇年七月の大統領選でも再選をかちとった元空てい部隊司令官ウーゴ・チャベスは、「貧しい者の味方」を掲げ、石油資本に代表されるベネズエラのエリート層の支配と、IMF―世界銀行による新自由主義政策によっていっそうの貧困化を余儀なくされていた民衆に訴えて一連の所得再分配政策を行ってきた。
 チャベス政権は、国際政策の面でもキューバのカストロ体制と親交を結び、リビアのカダフィやイラクのサダム・フセインを訪問するなど、反米色を濃厚にしていた。チャベスはまた「テロ組織・麻薬一掃」を掲げた「プラン・コロンビア」(アンデス・イニシアティブ)という、アメリカ帝国主義の新自由主義的・軍事的介入に反対するとともに、ブッシュのアフガニスタン「報復戦争」をも批判していた。
 こうした反米姿勢の深まりに対するアメリカの危機感と、ベネズエラ国内の特権的エリートのチャベスに対する反発が結びついて、昨年末以後、アメリカCIAの直接の支援の下にクーデター計画が進められてきた。石油価格の低下による財政危機の急速な深まりによって、チャベスの看板であった「貧者救済」のための所得再分配政策が行き詰まったことも、アメリカと国内のエリート支配層によって利用されることになった。
 反チャベス・クーデターの挫折は、ブッシュ政権の失敗である。しかし、ポピュリスト・チャベスの「貧者救済」政策の基盤も大きく損なわれている。チャベスの強権的で代行主義的「反エリート」路線は、ますますベネズエラのブルジョア支配階級との妥協を余儀なくされ、グローバルな新自由主義の下に組み込まれていくことにならざるをえない。
 チャベスへの貧困層の期待が急速に失われていく中で、ラテンアメリカレベルの新たな民衆運動の可能性がどのように発展していくのかについて注目する必要がある。(純)                                



 ダグラス・ブラボーは一九六〇年代のベネズエラのゲリラ戦士であり、現在は「第三の道運動」の指導者である。このインタビューはアルゼンチンの日刊紙「パジーナ12」に掲載されたもの。インタビューアーはベロニカ・ガゴ。

クーデターをめぐる政治的構造

――対立は続くのでしょうか。

 一九八九年二月二十七日、一千万人を動員した「カラカソ」(首都カラカスで起きた貧困と飢餓に対決する決起)以来、二つの勢力が対立しあってきました。社会的解放のために闘う勢力と新自由主義を押しつけようとする勢力との対決です。
 この貧しい人びとの反乱は、わが国のとてつもない制度的不安定さを持続させてきました。この民衆の反応を制度化していると主張する政府の下でも、今なおそうした状況があります。私は、今後も一連のクーデター、衝突、蜂起的ストライキがあるだろうと思っています。
 私が言いたいのは、政権や石油資源をめぐる衝突がありますが、おたがいに対立している二つの潮流は、異なった傾向を代表しているとはいえ、いずれも新自由主義的だということです。
 一方には、伝統的右翼政治家、資本家とそのメディア、軍部の一部にいる一揆主義的な要素、労組連合CTV内の一部の「穏健派」労組活動家(社会民主主義ないし社会キリスト教主義)から構成される第四共和国派ともいうべきブロックが存在します。このブロックは、富の分配においては昔ながらの古典的な新自由主義を支持しています。
 他方、資本主義の哲学的概念においてはるかに前進した新自由主義があります。これは政府を支持するブロックです。ここで欠けているのは、革命的かつ愛国的で、ブルジョアジーと帝国主義の権力に対決することができる第三の勢力です。
 この構図の中で、チャベスを防衛するために人びとが街頭に進出し、軍隊が大統領への忠誠を維持した事実をどのように説明すればよいのでしょうか。チャベス支持派の中に、きわめて異なった二つの潮流があることは明確です。軍の高官、最高位の司法、行政担当者をふくむ少数派の一潮流は、イデオロギー的・政治的観点から経済的かつ公的決定を行います。チャベス支持派のカードルを失わせているのはこの潮流であり、それは大きな問題となっています。たとえば、もしチャベスが五人以上の議員を失うならば、彼は国会での多数を失ってしまいます。
 質的ではなく量的な観点から言って多数派である別の潮流は、チャベスを防衛するために街頭に登場した人びとです。それは部分的には、政府を防衛するために闘う用意のある士官たち――彼らは軍部機構を支配しているわけではありませんが――と、ボリバール主義的革命構想を信じている政治的セクターから構成されています。

――政府の現在の状況はどうなっていますか。

 チャベス政権はクーデターによって非常に弱体化しました。しかしこの脆弱さは、政権への復帰以後に彼が採用している和解的言説を実行すれば、続いていくでしょう。
 チャベスが考え出している和解とは、新しい協定です。それは、「プント・フィホ」(軍事独裁者のペドロ・ヒメネス将軍が打倒された後、一九五八年になされた民主行動〔AD〕、COPEI〔社会キリスト教主義〕、民主共和連合〔URD〕の協定)のようなもので、チャベスを支持してきた人びとのことを考慮しないものであり、チャベスを打倒しようとしてきた右翼勢力と交渉するものです。

「第3の道運動」の行動と主張は

――あなた方の運動がクーデター期間中にとった態度はどのようなものですか。

 われわれ「第三の道運動」はクーデターに反対し、街頭に出ていきました。しかしわれわれは、愛国政府の樹立を要求する請願書を配付しました。

――あなたの関わりはどんなものでしたか。

 現在の状況の中で、わが国の多数派の社会・政治的セクター――それは、文民と兵士から構成される愛国的・民衆的ブロックとして考えることができます。現在、その一部は政権内におり、他はそうではありません――は、すぐにチャベス大統領に提出されることになっている文書を完成させているところです。

――それはどういう提案ですか。

 それは、もしチャベスが和解政策、とりわけ石油、ガス、基礎的サービスの民営化などを追求していけば、起きるであろうとわれわれが考えていることへのラディカルな反対となります。われわれのイニシアティブは、軍部内の右翼勢力――チャベスが地位を保障しようとしている連中をふくめて――の追放、チャベスが任命した新指導部――石油企業PDVSAなど――の辞職の受け入れ拒否など合意創出措置の修正、などを提案しています。
(「インターナショナルビューポイント」02年5月号)


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