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均等待遇アクション2003シンポ          かけはし2002.7.15号より

ILOが是正勧告する日本の女性差別賃金!

ILO平等・雇用部コンスタンス・トーマスさん講演

 七月四日、ILO平等・雇用部のコンスタンス・トーマスさんを迎えて、均等待遇アクション2003のシンポジウム「ILOから是正勧告されている日本の女性差別賃金!」が開かれた。
 日本がILO100号(同一価値労働同一賃金)条約を批准してからすでに三十五年が経過した。しかし、男性と比べて低いままに置かれた女性の賃金水準は一向に改善されず、パートや契約、派遣などの不安定で低賃金の女性は増える一方で、男女の賃金格差はますます広がっている。
 このような状況のなかで、全国のさまざまな労働組合からILO100号条約に違反する差別待遇の実態を訴えその是正を求めるレポートがILOに提出されている。このシンポジウムは、均等待遇アクション2003が、これらのレポートを審査するILO平等・雇用部セクションチーフのコンスタンス・トーマスさんを招いて開催したもので、続いて五日に名古屋、六日に大阪、七日に福岡で開かれた。
 最初に、均等待遇アクション2003が昨年十月にジュネーブのILO本部を訪れ、男女の賃金格差がますます広がっている現実を訴えた行動のビデオが上映された。続いて主催者を代表して、弁護士の中島通子さんがあいさつに立ち、シンポジウムの趣旨について報告した。
 コンスタンス・トーマスさんは、雇用の機会および待遇をめぐるあらゆる差別を禁止した第111号条約、同一価値労働同一賃金を規定した第100号条約、家族的責任を持つ男女労働者の間およびそれ以外の労働者との雇用機会と待遇の均等を求めた第156号条約について、詳しく解説した。
 第111号条約が禁止しているのは、人種、皮膚の色、国民的出身、社会的出身、宗教、政治的見解、性(ジェンダー)、その他国内法令が特定するあらゆる根拠、例えば年令、国籍、家族的責任、言語、健康状態などにもとづく差別のすべてである。例外は、母性保護などILO条約と勧告が規定する特別な保護と援助の措置や、特別な保護と援助が必要であると一般に認められる人々の必要を満たすために立案された特別な措置などに限られる。
 コンスタンスさんは、「消防や警察で見受けられる身長による制限も、一般的に女性の方が背が低い場合が多いために結果的に女性に不利益をもたらすことになるので、禁止された差別に当たる」など、豊富な例を引きながら解説した。
 第100号条約が同一の価値なら同一でなければならないとしている「報酬」(賃金)には、基本給だけでなく時間外手当、ボーナス、制服やパソコンや携帯電話などの道具、家族手当、家族への就学助成金、使用者負担による社会保障給付、有給休暇、企業が支給するスポーツクラブや保養施設などの使用権など、すべての追加的給付が含まれる。
 「『同一価値』を決定するための職務評価は、必要とされる責任、必要とされる努力、必要とされる技能、必要とされる作業条件に関する基準によって分析的に行なう必要がある」。このように解説したコンスタンスさんは、「ジェンダー平等を職務評価のひとつの目的にする必要がある」と提起した。
 そして「この仕事はこれくらい、という固定観念を退けること」「介護などのケア関連の仕事の過小評価を退けること」「正規な経験と同様に、社外での非正規な経験も考慮すること」など、評価に当たっての重要な観点を列挙した。育児なども評価の対象となる「社外での非正規な経験」に当たる。コンスタンスさんは、「育児は同時にいくつもの仕事をこなさなければならない。それは仕事のマネージメントの訓練として非常に役立つ」と解説した。
 コンスタンスさんは最後に提起した。「第100号条約を実施しようとすれば、第156号条約に近づいていく。男女の賃金の差ができてしまう理由の多くは、女性が家族的責任を担っている場合が多いからだ。家族的責任における平等がなければ、真の平等はない。第156号条約は、男女ともに子ども・親・障害を持った家族などへの家族的責任を持つべきだとしている。日本も批准している。家族的責任を持たない労働者と、就ける職業や雇用条件に差別があってはならない」。
 講演を受けて、野党四党の国会議員五十四人で作られているパートタイム労働者等の均等待遇を実現する議員連盟(会長・大脇雅子参議院議員)から、日本共産党の吉川春子参議院議員が、厚生労働省パートタイム労働研究会が今年二月に出した「中間取りまとめ」に対する、坂口厚生労働大臣への意見書について報告した。
 意見書では@労働時間の違いを理由とする差別的取り扱いの禁止A有期契約を理由とする差別的取り扱いの禁止Bライフスタイルに合わせてフルタイムとパート労働の双方向の転換を可能とする制度の整備Cこれらの法的・制度的整備は、民間・公務部門の双方で講じることD税制・厚生年金制度等を個人のライフスタイル選択に対する中立性を保つよう改正することEILO第175号(パート労働)条約、第111号(差別待遇禁止)条約を早急に批准すること\\の六点の要求が掲げられている。
 全医労の北川書記長が、国立病院・療養所の強引な統廃合のなかで退職に追い込むために、男女を問わず家族的責任を全く考慮しない遠隔地への転勤が強要されている現実を訴えた。また、正規職員と全く同じ仕事をしているにも関わらず賃金が六〇%で育児休暇や介護休暇などもない「賃金職員」の労働条件が一方的に切り下げられようとしていることを告発した。
 質疑応答を受け、最後に@ILO条約についての均等待遇アクション2003の解説リーフレットの普及AILOパートタイム労働条約批准の請願署名運動B均等待遇の法制化をかちとる運動への参加\\の三点の行動提起が行われた。 (I)

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