| 防衛省発足は何をもたらすか
かけはし2007.1.22号 |
| 自衛隊海外派兵をためらわないと豪語する安倍発言を許さない |
政策官庁として対米関係に関与
一月九日、防衛省設置記念式典が開催された。海外派兵を自衛隊の「本務」に組み込み、軍事部面の国際政策画定に主導権を発揮する防衛省の設置は、アメリカのグローバル戦争戦略に組み込まれた「戦争国家」づくりの要であり、憲法改悪の実質的先取りである。
安倍首相は、記念式典の訓示で「省昇格は戦後レジームがら脱却し、新たな国造りを行う基礎だ。この歴史的瞬間に首相として立ち会えたことは私にとって大きな誇りだ」と気負って語った。初の「防衛大臣」となった久間は、同日の記者会見で「防衛庁を省とすることは『国の防衛』という国家として最も基本的な任務を行う行政組織が、真に防衛政策を担っていく上で、大きな意義を有する」と「政策官庁」となった防衛省の役割を強調している。
記者会見の中で、外務省との役割分担について問われた久間は、「対米関係とか条約関係とか、そういうのは本来外務省マターで、外務省でやられるのでしょうけれども、わが国の平和と安全の環境作りという点では防衛省がやはり、もう少し表に出て色々と考えて提案していくというケースも出てくるのではないかと思います」と答えた。つまり外務省をバイパスして防衛省が米国防総省と直接連絡を取って政策決定に関与するケースもあると答えている。
さらに安倍は、一月の欧州訪問において首相として初めてNATO首脳と会談し、「国際平和と安定のために自衛隊を海外に派遣することをためらわず、NATOとの協力を強化する」と宣言した(1月12日、ブリュッセル)。日米安保同盟のアジア・太平洋の枠組みを超えたグローバルな強化は、軍事作戦におけるNATOとの連携にまで発展している。そして安倍も麻生外相も、一月十日(日本時間11日)にブッシュ米大統領が発表した「イラク新戦略」、すなわち米兵のイラクへの二万一千〜二千人の増派を支持する態度を、他の「同盟国」に比べても突出する形で表明したのである。
防衛省の発足とは、たんなる「庁」から「省」への昇格ではなく、まさに米国の先制的「対テロ」グローバル戦争に一体化して自衛隊を「ためらいなく」海外に派遣しようとする重大な踏み出しと言わなければならない。だからこそ安倍は「集団的自衛権」の選択的発動に向けた検討作業を急いでいるのである。
米軍再編関連法案を通すな
一月九日の記者会見で久間防衛相は、一月二十五日から始まる次の通常国会で「恒常的派兵法案」が上程・審議されるのかとの質問に対して、「まだそこまでは至っていない」と答えた。
しかし、一六六通常国会で「米軍再編」関連法案が上程され、その可決・成立が最重点の課題になっている中で、「米軍再編」に伴う一連の措置が次々と実行に移されていこうとしている。
ミサイル防衛関係では今年三月までに航空自衛隊入間基地にPAC3が配備されるのを皮切りに、二〇〇七年度内にも全国の主要な空自基地にMDシステムが導入されようとしている。今年度末には陸自に中央即応集団が新設され(当面は朝霞基地内、その後米陸軍第1軍団司令部に座間移転に伴って座間へ移転)、海外派兵の先遣隊としての機能を果たすことになる。これは派兵のための初の常設部隊となる。また海外に派兵された部隊が、派兵先現地の情報を収集し、協力者を確保するための「現地情報隊」が今年三月にも陸自に作られる。
このようにして海外派兵と戦闘の「本務化」のための実体的基盤は急ピッチで整えられようとしている。米ブッシュ政権の「対テロ」戦争戦略の、イラクに見られるような重大な失敗と破綻が明白になる中で、安倍政権は小泉政権の後をうけて、イランなどへの新たな戦争拡大というブッシュの絶望的試みにあくまですがりつこうとしているのだ。「米軍再編」の本質とは、それ以外のものではない。
労働者・市民は沖縄・辺野古への新侵略基地建設に反対する闘いをはじめとした米軍再編に反対する各地の取り組みに連帯し、「米軍再編」関連法案を阻止する行動に全力を上げよう。とりわけ在沖縄米海兵隊のグアムへの移転に伴う予算支出に反対する運動は、グアム現地のチャモロ民族の人びとに反基地の意思に具体的に連携する共同の行動としてきわめて重要である。
そして七月三十一日に期限切れとなるイラク特措法の延長に反対し、航空自衛隊のイラクからの即時撤退、海上自衛隊のインド洋・アラビア海からの即時撤退を求めるキャンペーンをねばり強く拡大しよう。(K)
声 明
米軍のイラク増派に抗議し、すべての外国軍の撤退を求めます
WORLD PEACE NOW
一月十日、ブッシュ米大統領は二万千人以上もの米軍をイラクに増派する「新戦略」をTV演説を通じて発表しました。私たちは、歯止めのない殺戮と暴力を絶望的なまでに拡大するこの「新戦略」に心の底からの怒りをもって抗議します。
イラクでは一日で百人もの人々が殺され続けています。平和や復興がますます遠ざかるこの耐え難い状況は、ウソで塗り固められた口実で始まった米国の戦争と占領がもたらしたものです。米兵の死者も、開戦以来すでに三千人を超えました。
昨年十二月には、ベーカー元国務長官を座長とする超党派の「イラク研究グループ」が、米国の戦争の失敗をはっきりと認め、イランやシリアとの対話、パレスチナを中心とする中東問題の包括的解決を通じて、二〇〇八年三月までに米国の全戦闘部隊を撤退させるという長文の報告書を提出しました。
しかし今回、ブッシュ大統領が発表した「新戦略」は、「イラク研究グループ」の提言ともまったく相反するものです。ブッシュ大統領は、「イラク政策の変更の必要性」を認め、失敗の責任は自分にあるとした上で、失敗の原因は「治安維持のために必要な十分な数の米兵がいなかった」こと、「駐留米軍部隊に多くの制約があった」ことにあると語っています。つまり、現在十三万人もいるイラクに駐留させている米軍を撤退させるどころか、もっと多くの米兵を送り込み、「活動の自由」を与えて、「武装勢力の掃討」という名目でさらに多くのイラク市民を虐殺し、人権蹂躙を続けようというのです。「イランやシリアとの対話」というイラク研究グループの提言はあっさり無視され、反対に「テロ支援」や「核開発」を口実にして、イランやシリアにも侵略の矛先を向けようというのです。とんでもないことです。
ブッシュ政権は、「テロとの戦い」をソマリアにまで広げました。ブッシュ大統領は「この重要な時期に米軍を増派することが、イラクにおける暴力の連鎖を食い止め、駐留米兵の帰還を早めることになる」と叫んでいます。「武力で平和は作れない」「武力が作り出すのは破壊と憎悪だけだ」という当たり前の教訓を絶対に認めたがらないようです。
「もうたくさんだ」という声がアメリカの中でも多数となっています。昨年十一月の中間選挙で共和党が大敗したことは、その現れです。
イラク戦争と占領に反対してきた私たちWORLD PEACE NOWは訴えます。
イラクでの、歴史上まれに見る、耐え難い「暴力の連鎖」を断つ道は、戦争を始めた米国が自分の誤りを率直に認めて謝罪し、ただちに占領を終わらせ、軍隊を引き上げ、イラクの人びとの平和と復興への努力を、武力によらない方法で国際的に支援することだと。
私たちは、日本の安倍首相にも訴えます。欧州を訪問中の安倍首相は、ブッシュ大統領と電話で話し合い、「イラクの安定化と復興にむけた米国の努力が効果的に進められ、良い成果を上げることを強く期待する」と激励しました。航空自衛隊のイラク派兵を延長し、米国のイラク軍事占領を支援している安倍政権は、米国の戦争犯罪の共犯者です。
イラクの人びとの悲しみと苦痛をこれまで以上に積み重ねて恥じない安倍首相の発言を、私たちは許すことはできません。私たちは、航空自衛隊をただちにイラクから撤退させること、海上自衛隊をインド洋から撤退させることを求めます。
これ以上殺すな! そして殺されるな!
2007年1月12日
廃港を見すえて直接的対峙からの「転換」模索
空港はいらない静岡県民の会
一月八日、空港はいらない静岡県民の会は、第十二回総会を行い、百人以上の参加者があった。
開会あいさつを鈴木卓馬さん(共同代表)が行い、「日航、全日空は、採算が悪化している地方路線を廃止するという経営状態に入っている。この流れから行けば静岡空港には、いったいどこの空港会社が就航するというのか。赤字が必至な空港建設は、止めなければならない。県民の会を十一年、大衆運動としてやってきた成果を確認し、新たな意志一致を行おう」と発言した。
来賓あいさつとして、泉州沖に空港をつくらせない住民連絡会、静岡空港・建設中止の会から運動紹介と連帯アピールが行われた。
さらに松谷清県議会議員は、「石川知事は、○九年三月開港に執念深く、力尽くで実現しようとしている。立木トラスト、オオタカの森の小屋の行政代執行に対して、どう立ち向かうのか。すでに県は、収用費用として一億四千七百万円を補正予算で成立させている。土地収用法に基づいて収用費用を地権者に請求することができる。このような圧力に対して、どうしていくのか論議を深め、今後の運動の方向性を出していこう」と発言した。
桜井建男さん(事務局長)は、〇六年度の活動報告と〇七年度の活動方針を提案し、「静岡県政として初めての『行政代執行』が影響するところは大きく、空港反対運動にとってきわめて重大な通過地点となることは明らかである。代執行をふりかざす公権力の悪逆非道との対峙を超えて、その先にある空港の絶望的な将来をより鮮明に提示し、いささかもひるむことなく闘い続けることが求められている」と提起した。
さらに事務局から会計報告、事業認定取消裁判、県収用委の裁決の取消裁判についての報告が行われた。また、土地収用反対署名の取り組みを強化していくことを確認した。
地権者の提案
を受けとめて
全体討論に入り、当面の行政代執行に対する方針論議を深めていくために本来地権者から次々と提案と闘う決意表明が行われた。
檜林耕作さんは、「昨年十二月十九日、土地の明け渡しの日に土地と別れの儀式を行った。自らの身体がもぎとられる思いだった。これからも空港反対闘争を続け、この土地で生き続けていくために、収用対象であるオオタカの森の小屋は、松本さんの畑に移転し、新たな闘う拠点としたい」と提案した。
松本吉彦さんは、「山林部分の明け渡しは、一月十日だ。反対闘争を継続していくために、代執行は一つの通過点だ。収用対象である立木は、トラストの会で自主伐採するしかない」と述べた。
村田利廣さんは、「空港反対運動をいかに続けていくのかという問題だ。今後に生かし、プラスにしていく闘いをしていきたい」と発言した。
大井寿生さんは、「西側制限表面部の山林の裁決はまだだが、同様に対応してくるだろう。行政代執行費用請求によって、新たな負担がかかる。つまり泥棒に追い銭をあげるようなことはしたくない。敗北しないように闘っていきたい」と訴えた。
討論は、オオタカの森の小屋自主移転と立木トラストの木自主伐採をめぐって賛成、消極賛成、反対などの意見が出た。地権者の提案を受け止め、空港廃港にむけた新たな運動作りにむけて取り組んでいこうと集約した。
最後に島野房巳さん(共同代表)は、「オオタカの森の小屋自主移転と立木トラストの木自主伐採は、今後の反対運動の長期戦略からいって『戦略的後退』としてとらえたい。また、膨大な収用費が請求されるという『玉砕』に飛び込む必要もない。そもそも静岡空港は、乗らなければ自滅する空港だ。税金をがぶ飲みする空港はいらない。空港ができたとしても廃港しか選択はない」と今後の会の方向性を提示した。
さらに事務局は、「一月十日、オオタカの森トラスト小屋前現地、供養祭、土地収用手続き即刻中止のための抗議文提出・県庁行動。十八日、土地収用裁決取消訴訟提訴。二十八日、現地抗議行動を行っていきたい」と行動提起を行った。(Y)
解 説
厳しい討論の末に方針決定
行政代執行による反対運動解体に抗して
静岡県は、ムダ・環境・人権破壊に満ちた静岡空港建設を二○○九年三月開港に間に合わせるために反対派の土地強奪にむけて
立て続けに収用裁決を出させた(〇六年十月二十日が畑、十一月八日が山林部分)。そして、本来地権者の檜林耕作さん、松本吉彦さん、村田利廣さんの畑の強奪のために明け渡し期日を十二月十九日と通告してきた。山林部分も本来地権者と多くの共有地権者、立木トラスト所有者に対して〇七年一月十日と明け渡し通告を行ってきた。空港西側制限表面部の山林(大井寿生さんが本来地権者)などの収用委員会審理も、十二月十五日に審理終了を強行し、収用裁決を出し、強奪しようとしている。
県は、土地収用法に基づいて反対運動解体にむけて行政代執行を強行することをねらっていた。つまり、地権者が収用対象の土地などの明け渡しを拒否し、行政代執行を行った場合、その費用を全額請求することができる。支払いを拒否しても、差し押さえができるのだ。土地を泥棒し、地権者の生活財産さえもはぎ取ることができるのが土地収用法という悪法の本質である。命令者である石川知事は、収用費用(暴力ガードマン費用、オオタカの森の小屋撤去費、指揮本部テント、作業員など)として、すでに一億四千七百万円の補正予算を県議会で成立させている。地権者に対して多額の収用費用を請求し、反対運動を解体しきるというのがねらいだ。
地権者は、石川知事の空港反対運動解体の一環である土地収用法による行政代執行の強行という挑発に乗らず、空港廃港にむけて大きな世論を作り出していく新たな闘いに入った。その決意として三人は、十二月十九日、畑部分の「明け渡し日」に県への抗議の意味を込めて、先祖代々からの土地への感謝と別れの儀式を行った。
檜林さんは、「土地は失うが、ずさんな計画の空港建設に反対する気持は変わらない。仲間とともに運動を続け、空港の行方を見届けたい」と決意を表明した。
村田さんは、「私たちを育ててくれた先祖伝来の土地よ、守ることができなくてすみませんでした」と畑に抗議の看板を立てた。
このような本来地権者の新たな決意と取り組みの開始という中で総会が行われた。しかも山林部分の明け渡しを一月十日を目前にして、どのような態度をとるのかというところに論議が集中した。
「戦略的後退」と
いう選択の意味
総会のポイントは、直近の県による行政代執行に対する戦術方針の確定だった。結論から言えば、「戦略的後退」(島野代表の発言)を選択した。県の収用費用請求による反対運動への解体という「挑発」に乗らず、整然と開港後をも射程にした空港廃港のための新たなサイクル構築にむけて運動ポイントを移動させたのである。
本来地権者の檜林、松本、村田さんは、収用対象である畑、山林の明渡期日(06・12・10)以降、「自分の身体がもぎとられる」という悔しさを噛みしめながらも、県への土地所有の移動を認めざるをえなかった。
大井さんの畑、山林については、まだ収用裁決が出ていないが、三人の態度と同様に対応すると表明した。
四人の本来地権者は、今後も空港廃港をめざす長期の闘いと生き続けるために「収用対象のオオタカの森の小屋を松本さんの土地に移転する。収用対象の立木は、トラストの会が自主伐採する」という「苦渋の選択」を行い、総会参加者に提案した。
この二点の提案を受けて県民の会として、どのような態度を決めるかを論議した。
新しい運動サイ
クルをつくろう
多数派は、「収用時、木に鎖で縛って抵抗する腹づもりだったが、地権者の『苦渋の選択』を受け止め、空港廃港にむけて新たな運動サイクルを再構築していこう」、「世論をもっと広めていこう。マスコミに対しても積極的にはたらきかけていこう」、「収用問題は、一通過点としてとらえる。反対運動を続けていくために長期戦略の観点から考えていこう」、「空港反対運動は土地を媒介にした闘いから新たな展望を切り開いていかねばならない。今後、どのような形で展開していけるのか、大きな転換点だ」という主旨の発言があった。
少数派は、「権力の暴力に屈服はできない」、「もっと違った闘い方は考えられないか」と強調した。
二点の提案に対する賛成、やむをえない賛成、反対など色々と意見が出た。
最終的には、多数派は、「多額の収用費用請求を全額引き受けるという『玉砕』方針を選択することはできない。もっと長期的な観点から運動方針を練り直す必要がある。そもそも静岡空港は、赤字が必至であり、乗らなければ自滅する空港だ。結局、赤字を県民に押しつけ犠牲を強要することになる。開港しても、その問題がすぐに浮上する。石川県知事とゼネコンの合作による空港建設の破綻を突き、県政改革をめざしていくことだ。静岡問題を全国の公共事業のあり方の問題として暴露していくことが必要だ」というところで集約した。
以上のように石川県知事の暴挙、土地収用法の重圧下、本来地権者と県民の会は、非常に厳しい選択をした。空港反対運動、環境破壊・乱開発反対運動の困難性を直視しつつ、総会でも多くの会員から出たように長期戦略の観点から静岡空港廃港にむけて新たな運動サイクルをともに作り出していくことが求められている。
静岡空港事業取消訴訟と収用取消訴訟、「静岡空港」土地収用に反対する賛同署名に協力しよう! 1・28オオタカの森の小屋前現地集会に駆けつけよう!
(遠山裕樹)
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