| 大江・岩波沖縄戦裁判第11回口頭弁論 かけはし2007.11.26号 |
被告・原告本人が法廷で証言
『沖縄ノート』で書いた主題を堂々と語った大江健三郎さん |
【大阪】十一月九日大阪地裁大法廷で開かれた沖縄戦裁判第十一回口頭弁論では、梅沢裕元少佐(原告:旧日本軍の座間味島での第1戦隊長)・赤松秀一さん(原告:渡嘉敷島での第3戦隊長であった赤松嘉次元大尉の弟)・大江健三郎さん(被告)に対する本人尋問が行われ、六十五枚の傍聴券を求めて七百人が並んだ。
当日夕刻からは、大江・岩波沖縄戦裁判を支援する三団体(支援連絡会・首都圏の会・沖縄から平和教育をすすめる会)主催の報告集会がエルおおさかで開かれ、二百二十人が参加した。
はじめに、支援連絡会の小牧事務局長があいさつをし、「二〇〇五年十月二十八日に第一回口頭尋問が始まってから約二年。検定問題が起き、沖縄から次々と新証言が出る中で、多くの人が強い関心を持ってきた。この裁判を支援する三つの団体を立ち上げることができ、支援運動は全国的なものになった。」と発言。沖縄戦の真実を伝え、裁判に勝利し、教科書に真実が書かれ子どもたちに伝えられるよう今後もがんばっていきたいと述べた。
岩波を代表して登壇した岡本厚さん(雑誌「世界」編集長)は、「原告・被告側の証言は、両方ともいい証言だった。原告側は逆の意味で。これを聞いて、この訴訟は成り立たないと思った。この裁判の勝利によって検定意見も撤回させねばならない。もうひと踏ん張りしたい」とあいさつした。
強制を間接的に
認めた梅沢証言
続いて弁護団から尋問の報告があった。近藤弁護士は原告に対する尋問、秋山弁護士は大江さんに対する尋問の報告をした。
梅沢氏は主尋問では当然のこととして軍命令を否定し、住民が自主的に自決を選んだと述べたが、反対尋問でいくつか注目する証言をした。日本兵から手榴弾が住民に渡され、これで自決するようにと言われた事実は知らなかったと言ったが、「自決」のときに住民が使った手榴弾が、隊長である自分の許可なしに渡ることはないことを認めた(日本軍の強制命令を間接的に認めた)。また、主尋問では、自決するなと言ったのだから集団自決の責任は自分にはないと言ったが、一九八〇年に宮城晴美さん宛に自分が書いた手紙に、軍に責任があると書いていることを認めた。「沖縄ノート」は二〇〇六年に初めて読んだこと、そこには梅沢隊長の自決命令は書いてないことを認めた。
赤松氏は、集団自決のことは兄から聞いていないこと、「沖縄ノート」はパラパラッと読んだ程度で、難しくてよくわからなかったと言った。兄に対する敬愛追慕の情の侵害があるのかなと疑わせる証言だった。近藤弁護士は、「二人が原告側としてあらためて訴えることはなかったように思う。」と述べた。
曽野綾子の批判
は「誤読」の結果
大江さんは、「沖縄ノート」のテーマは何かから証言した。
「沖縄は戦前・太平洋戦争中・戦後一貫して本土のために犠牲になってきた。その戦争中の犠牲の一つとして集団自決を取り上げた。このことについて、本土の人たちは自分も含めて無自覚であること、その無自覚の例の一つとして、渡嘉敷島の元守備隊長が、おりがきたと言って、那覇空港に向かったところ、現地の人々に拒絶された。この事件を取り上げ、沖縄の人と本土との間の大きな裂け目を取り上げた。渡嘉敷の戦隊長の名前も挙げていないし、名前は必要ではなかった。それは、本土の一般的な日本人の典型として取り上げただけだからだ。『沖縄ノート』は集団自決の責任者のことを『大きい罪の巨魁』と指弾し、隊長のことを大悪人のように書いていると曾野綾子氏が批判しているのは誤読だ。『大きい罪の巨魁』とは集団自決そのもののことだ。『沖縄ノート』では隊長が自決を命令したとは書いていない。日本軍、第三十二軍、守備隊、公民化教育を受けてきた住民というタテの構造の中で、住民は降伏してはならぬと言われ、集団自決以外に道はないという認識に追いつめられていった。日々、住民に向けて徹底されてきた命令が現実のものになったと言うことだ」と述べた。
「美しく清らか
な死」の欺瞞
また、「沖縄ノート」が美しい心で死んでいった住民の清らかさをおとしめたと曾野綾子氏が批判していることに対して、「悲惨なものを清らかとすること自体が欺瞞で、人間をおとしめることだ」と述べた。原告側が反対尋問で、「タテの構造の中での命令とは『沖縄ノート』には書いてない。読者がそれを読み取るのは無理だ」というと、「あなたがそう読まれたら私はショックだ」と切り返した。報告は以上である。裁判を傍聴できた参加者から「大江さんの証言は堂々としたもので、感動した。本土の人間としてどう考えるのかを語った証言だった。梅沢氏は反対尋問で、なぜ戦後六十年近くもたって訴訟を起こしたのかと問われ、資金がなかったからと答えた。赤松氏は、自分はよくわからなかったけど山本アキラ氏に勧められた、と証言。訴訟を起こした主体は彼らではないことがよくわかった」と述べた。
秋山弁護士から、裁判の構成について説明があり、「十二月二十一日に最後の口頭弁論が予定されている。来年三月には判決が出るだろう。『沖縄ノート』については、梅沢氏の名誉毀損。しかし梅沢氏のことはここに書いてないから問題はない。赤松氏の敬愛追慕の情の侵害についても、赤松隊長命令とは書いていないから、侵害は関係ない。『太平洋戦争』(家永三郎著)には、隊長が命令したと一行だけ書いてある。これについてはその真実が争われる。この間いろいろな証言が出て、かなりはっきりしてきた。軍命があったというレベルでははっきりした」と述べた。
文科省は検定
意見の撤回を
この後、山口剛史さん(沖縄から平和教育を考える会事務局長、琉球大準教授)が沖縄現地の状況を報告、「九月二十九日の県民大会は本島だけでなく離島でも同時に行われた。文科相は監督指導の責任があることを認めた。教科書会社五社が訂正申請をした。これについて沖縄はエールを送っている。しかしこれで問題は解決しない。三度同じことが起きないよういしなければならない。そのためにはまず、政府が非を認めて検定結果を撤回することが前提だ。沖縄全体がもう一度一致点を確認して中央に働きかける必要がある」と述べた。
石山久男さん(首都圏の会呼びかけ人、教科書執筆者、歴史教育協議会委員長)は執筆者の立場からとり組んできたことを報告、「今回の検定の震源地はこの裁判だ。十一月五日支援の三団体で文科省に要請書を提出した。そこで、根拠のない検定結果、検定経過にも問題あり、責任を明らかにして撤回すること、検定制度の改革と透明性の保障を要求していく。執筆者懇談会を九月二十五日にようやく開けた。九月二十九日の沖縄県民大会にビックリした文科省が訂正申請には乗るという動きをし出したので少し躊躇はあったが、四月に間に合うためには十一月がリミットだと考え、訂正申請に向け努力しようと申し合わせた。しかし本筋は検定結果の撤回だ。それを声明で明らかにしている」と述べた。
この後、二人の報告について質疑応答があった。(T・T)
市民ネットが国際行動デー集会
劣化ウラン兵器を禁止せよ
イラクの子どもに医療支援を
志葉玲さんが
イラク情勢報告
十一月十一日、劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワークの主催で、劣化ウラン兵器禁止を求める国際行動デー集会が東京の文京区民センターで開催され、百二十五人が参加した。国際行動デーは今年で四回目となる。「戦争と武力紛争による環境収奪を防止する国際行動デー」とする国連決議(二〇〇一年)に合わせて、ICBUW(ウラン兵器禁止を求める国際連合)が二〇〇四年以来毎年取り組んでいるものだ。「劣化ウラン兵器を禁止させよう」「イラクの子どもたちに医療支援を」がメインの行動テーマである。
この日の集会では最初にフリージャーナリストの志葉玲さんが、ますます報道されることが少なくなった最近のイラク情勢について報告した。志葉さんはイギリスの医学誌「ランセット」の06年10月号がイラクの死者数を二〇〇六年七月までで六十五万五千人と試算していること、また米独立系外交研究機関「ジャスト・フォーリン・ポリシー」の調査では、今年十一月九日現在でイラク戦争開始以来の死者が百十万人以上に達している、と紹介した。
「UNHCR(国連難民高等弁務官)によれば国内避難民と国外難民は合計で四百五十五万人、失業率は四割、水を十分に与えられない人は七割、約四百万人が緊急の援助を必要としている」とイラクの民衆が被っている苦難について語った志葉さんは、米民間軍事企業「ブラックウォーター」による市民射殺、米軍、イラク国軍、警察、民兵、武装勢力などによる殺害、襲撃、拉致などの「地獄の戦場」の現実と、最近のトルコ軍によるイラク北部クルド人自治区への攻撃などによって緊張はさらに拡大していることを強調した。
志葉さんは、「シーア派とスンニ派の内戦」と言われるものは「スンニ派対スンニ派」「シーア派対シーア派」というさらに複雑な形態をとって進んでいることを指摘した。そしてブッシュ政権がイラク政府に強硬にその可決を求めている「イラク石油法」について述べた。「イラク石油法」では国営事業だった石油採掘・輸出事業を民営化し、イラクの油田の六割強の開発権が最長で三十五年間外国企業のものとされる。産油量の上限・下限の決定権がイラク政府にはなく、外国企業も加わった「連邦石油ガス委員会」によって左右されるのである。それがまたイラク国内での、石油利権の分配をめぐる民族・宗派間の対立の要因になっている。
志葉さんは、この「イラク石油法」をめぐるアメリカの圧力は、ブッシュの戦争がやはり「石油のための戦争」だったという疑念を強めるものだ、と語った。そしてイラクにおける平和を作りだす展望として「全般的に言って、米軍には治安を回復させる能力はない。現地情勢の混乱も米軍の占領の失敗によるものであって、米軍は撤退するべきだ。各勢力の停戦と和解を、イラクとの石油取引や復興支援の条件とするなどの国際的枠組み、各勢力による合同監視団を作り、地域での暴力に歯止めをかける仕組みを作る必要があるのではないか」と語った。
使用の影響に
関し国連決議
次にニューヨークで行われたIBUCWの世界大会とイラクへの医療支援についてJIM―NET事務局長の佐藤真紀さんが報告した。JIM―NETは、医療支援、患者支援などを目的に二〇〇四年に出発した。そしてIBUCWとの関係については、それが劣化ウラン被害を受けた米軍兵士の問題だけではなく、何よりもあらゆる戦争に反対し、とりわけ被害を受けたイラクの子どもたちの救済につながるものでなければならない、という観点から関わっている。
十月二日、三日にニューヨークで開かれたICBUW第四回世界大会は、今年三月にベルギーで世界で初めて「国内でのウラン兵器の製造・使用・貯蔵・販売・供給・移送の禁止」を決議したことを受け「ウランおよびその他の放射性物質の軍事利用の全面的禁止」「これらの兵器による汚染地域の除染およびすべての被害者への補償」「ウラン兵器の製造、実験、販売、貯蔵、輸送、輸出の中止、および現存するすべてのウラン兵器の廃棄」「ウラン被曝による被害者への速やかな医学的アセスメント・治療・長期的モニタリング」などをアピールした。
さらに佐藤さんはイラクは小児ガンの発症率が先進諸国の八〜十倍であり、とりわけ南部のバスラを中心とした地域では他のの地域の四倍に上り、イラクでは子どもが五歳になるまでに千人中百二十五人が志望するという事態を指摘し、医療支援の緊急性を訴えた。会場ではただちにカンパが呼びかけられ八万円以上が寄せられた。
次に、今年五月から放送が開始されたIFCサナ衛星テレビの取り組みが紹介された。サナ衛星テレビは欧州と中東に、米軍の占領政策の不当性とそれに抗議する闘い、イスラム武装勢力から市民を守るイラク自由会議(IFC)の活動を報道している。
劣化ウラン研究会の山崎久隆さんが中越沖地震による柏崎刈羽原発の被害を報告した後、「劣化ウラン兵器禁止・市民ネットワーク」の一年間の活動報告を事務局の稲月隆さんが行い、さらに核開発に反対する会の槌田敦さん、もんじゅ西村裁判を支援する会からの報告が行われた。
十一月一日、国連総会第一委員会(軍縮・安全保障問題担当)で「劣化ウラン兵器使用の影響に関する決議」が賛成百二十二、反対六(チェコ、フランス、イスラエル、オランダ、イギリス、米国)、棄権三十五、欠席二十九で可決された。日本は賛成にまわった。同決議は「事務総長に対し、劣化ウランを含む武器・砲弾の使用がもたらす影響に関する、加盟国および関連国際機関の見解を求めること、そして来年の国連総会にこの件に関する報告書を提出することを要請し、来年の国連総会の暫定議題に「劣化ウランを含む武器・砲弾の使用の影響」という項目を含めることを求めている。これ自体は劣化ウラン兵器禁止に向かう重要な一歩である。 (K)
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