| 日本版US―VISIT反対 かけはし2007.11.12号 |
スタインハードさん(米自由人権協会)を招いて
「テロ対策」を口実に強化される民族差別と排除に反対しよう |
空港で個人の
識別情報採取
十月二十七日、東京・在日本韓国YMCAで「シンポジウム バリー・スタインハードさん(米自由人権協会)を招いて どこまで強まる?
外国人管理〜「テロ対策」と日本版US│VISIT(生体情報の強制採取)」が行われ、百三十人が参加した。主催は、アムネスティ・インターナショナル日本、移住労働者と連帯する全国ネットワーク。
集会は、主催者挨拶から始まり、旗手明さん(自由人権協会)が「日本版US│VISITとは何か」をテーマに日米比較検証をして、「来日・在日外国人の(再)入国時に指紋や顔写真など個人識別情報を採取する日本版US│VISITの実施が迫っている。成田空港に自動ゲートを通過させることによって採取しようとするのだ。多くの人権侵害上の問題があるにもかかわらず、なんら是正されず導入を強行することに抗議する。特定の人種・宗教・民族集団に恣意的に不利益をもたらす危険性と人種的プロファイリングという人種差別の一形態となるおそれは否定しかだい。日本版US│VISITに反対し、その実施中止を求めていこう」と訴えた。
飛行機搭乗拒否
プライバシー侵害
メインゲストのバリー・スタインハードさん(米自由人権協会:ACLU)は、「米国の『テロとの戦い』とUS│VISITの問題」について報告した。バリーさんは、US│VISITの「不公正で不正確な」実態を暴き出し、すでに七十二万人のデータを登録しているが、「テロリスト」だと誤ってデータをインプットし、飛行機搭乗拒否や重大なプライバシー侵害の犠牲者が大勢発生していることを厳しく糾弾した。そして、米国行政監査院が「戦略的方針と運営統制がない。技術的問題をかかえている。プライバシー管理が不適切である。四年間で十三億ドルが投入されたが、国土安全保障省は基本的にUS│VISIT計画の半分しか実施できていない」と結論づけ、US│VISITの「欠陥性」の是正を求めている事実を暴いた。
市民社会は何
をなすべきか
バリー報告は、日本版US│VISIT導入によって将来陥る危険性を示唆している。日本政府によるUS│VISITの危険な事例情報を隠蔽と導入強行を厳しく批判していかなければならない。
パネルディスカッションに移り、「テロ対策と強まる外国人管理 市民社会は何をすべきか」と題して、司会が東澤靖弁護士でパネラーがバリー・スタインハードさん、小倉利丸さん(ピープルズ・プラン研究所)、旗手明さん(自由人権協会)、鳥井一平さん(移住労働者と連帯する全国ネットワーク)で各現場報告と課題について提起した。
集会の最後に参加者全体で「『日本版US│VISIT』施行の中止を求める!」アピールを採択した。(Y)
解説
派兵大国化路線と一体
日本版US│VISITがもたらす監視と弾圧
人権破壊の超
反動システム
福田政権は、十一月二十三日、出入国管理及び難民認定改悪法制定(07年4月)に基づいてグローバル治安弾圧体制作りのためのシステムである日本版US│VISIT(生体情報の強制採取)実施を強行しようとしている。このシステムは九・一一米同時テロ後、小泉政権時において米国グローバル戦争への参戦の一環である「テロの未然防止に関する行動計画」(二〇〇四年四月)を策定したことの具体化だ。国内外民衆一人一人の個人情報、移動情報など管理・監視の貫徹であり、人権破壊のための超反動システムである。
福田政権は、小泉・安倍政権によるグローバル派兵大国化路線を継承し、外国人に対する差別・排外主義的な管理・統制・排除の徹底を狙い、このシステムの施行を突破口にして日本民衆に対する治安弾圧システムとしても拡大適用を行おうとしている。日本版US│VISIT導入に反対していこう。
なお政府は、「話し合うだけで罪となる」共謀罪新設法案とセットでこの改悪入管法施行をねらっていたが、共謀罪新設法案は反対運動の高揚によって衆院法務委員会で審議に入れない状態が続いている。廃案しかないことは言うまでもない。
半永久的に個人
情報を保管する
出入国管理及び難民認定改悪法は、第一に、日本に入国する十六歳以上の外国人に、電磁的方式によって個人識別情報を提供しなければならないとして、指紋採取や顔写真撮影を原則として義務づけている。とりあえず成田空港に日本版US│VISITシステムを設置し、今後、各空港に拡大していこうとしている。「出入国チェックは、自動ゲートのほうが早いです」などというインチキな誘導を行いながら民衆の生体情報を蓄積しようとしている。国内法では現行犯や裁判所の令状によって逮捕された場合、指紋採取・顔写真撮影の強制が可能となっているが(不当であることは言うまでもないが)、こうした最低限の人権保護プロセスをまったく無視して外国人を潜在的な「テロリスト」、犯罪者予備対象者とするものだ。
法務省官僚は、指紋情報・顔情報という生体情報は、コンピュータに登録し犯罪捜査などに利用するということも言っている。明らかに外国人のプライバシーを侵害するものだ。これだけではない。IC在留カードの取得及び携帯の義務化、勤務先・学校等の受入機関の報告義務、旅館業者による外国人宿泊客の本人確認の強化までも強要しているのだ。そして、関係省庁の協議により認定された「テロリスト」の上陸拒否・退去強制ができることになっている。
ところが米国行政監察局は、US│VISITによって三万人以上の人々が「テロリストと関連する人物」だとする誤認によって航空機搭乗拒否、不当拘束を繰り返してきたことを報告している(2006年)。米国の「ブラックリスト」は、七十二万人も登録されているという。そして、毎月二万人のペースで登録者を増やしている。このリストは、そのまま日本版US│VISITにおいても適応しようとしている。あげくのはてに国内における「政治犯」とレッテル張りした膨大なリストもプラスされるだろう。
すでに政府は、この新システムによって、過去に退去強制処分にした約八十万人分の生体情報リスト、国際刑事警察機構(ICPO)の一万数千件の手配者リストなどと照合し、犯罪捜査などに利用すると公言している。さらに取得情報の保管について法務省は、「十六歳以上から採取するので七十年〜八十年は保有したい」と衆院法務委員会(06年3月17日)で答弁している。つまり、当局の恣意的な判断によって、半永久的に個人情報を保管し、他国捜査機関との情報交換など使い放題していくことを宣言している。
ところが人権防衛の基本原則である情報流出対策は、防衛庁、自衛隊、警察など内部機密情報、個人情報が大量に流出しているにもかかわらず、「綱紀粛正」「情報管理徹底」「情報持ち出し禁止」などを繰り返すだけで、システム上のセキュリティーも含めてなんら具体策を明らかにすることができないのだ。プライバシー権、自己情報コントロール権の侵害を許さない。われわれは、このような人権破壊システムである出入国管理体制そのものに反対する。日本版US│VISITが反民衆システムであることを暴き出していかなければならない。
08年G8サミット
と治安弾圧体制
このような重大な人権破壊システムの導入にあわせて鳩山邦夫法相はテロキャンペーンの一環として外国人記者クラブの講演(10月29日)で、「友人の友人がアルカイダのメンバー」などと発言し、その後も「日本中、テロリストだらけだ」などと外国人に対する露骨な差別・排外主義煽動を繰り返している。福田首相は、「不適切な発言」などとあわてて修正を求めたが、事前弾圧情報を治安関係者に伝えていなかったことを叱責したにすぎない。
さらにマスコミは、鳩山発言を報道しながらも人権侵害に満ちた日本版US│VISITの導入についてまったく報道しなかった。意図的な隠蔽報道に抗議していかなければならない。
そもそも日本版US│VISIT導入は、反グローバリズム運動諸団体、一方的な「テロリスト」外国人事前摘発を目的としている。とりわけ〇八年七月の「北海道洞爺湖サミット」対策である。警察庁は、ドイツ反G8運動弾圧の下手人であるドイツ刑事庁幹部を訪日させ、欧州における反グローバリゼーション運動の活動家リストの情報交換をすでに行っている。
サミット関連会議は、〇八年三月気候変動問題に関する閣僚会議(千葉市)から始まる。続いて労働相会議(5月11日〜13日、新潟市)、環境相会議(5月25日〜27日、神戸市)、開発相会議(6月前半、青森市)、内務・司法相会議(6月11日〜13日、東京)、財務相会議(6月13日〜14日、大阪市)、外相会議(6月26日〜27日、京都市)が行われ、北海道洞爺湖首脳会議(7月7日〜9日)までの約五カ月間を「日本列島反テロキャンペーン」をまき散らそうとしている。すでに警察・自衛隊は、サミット警備作戦に基づいて任務に着手している。現代版隣組である防犯協会、安心・安全まちづくり協議会の動員徹底を強要しながら、外国人に対する差別・排外主義意識を動員しようとしている。同時に、国内弾圧対象者、諸団体・グループをあぶり出し、予防拘禁をも前提にした弾圧を強行していくことをねらっているのだ。日本版US│VISITの導入に反対し、治安弾体制構築の強化を許してはならない。 (遠山裕樹)
フォーラムに6000人
「今こそ変えよう障がい者自立支援法」
障がい者の大きな反対の声を押し切る形で、障がい者自立支援法が成立してから二年目の十月三十日、日比谷公園に六千人の障がい者・支援者が結集し、フォーラムが開催された。
今回のフォーラムは、先の自民党総裁選で、福田現総理が「支援法の抜本的見直し」を公約に掲げたことに加え、現在開会中の国会に民主党が「障がい者自立支援法改正案」を提出している現局面を好機ととらえ、世論の一層の高揚を目的に開催された。
正午から開催されたフォーラムでは、冒頭に六つの政党の立場表明がなされた。野党四党は民主党案に一本化し(民主党の改正案は、負担軽減や報酬の見直しに限定した緊急措置の意味合いが強い)、そのうえで、来年度通常国会でより一層の改正案を成立させるという立場を明らかにした。
一方、自民・公明両党は「見直し作業を進めている」ということにとどまり、見直しの具体的な中身には一切言及しなかったのである。
先の参議院選での自民惨敗の原因が、「消えた年金」問題をはじめとする社会保障政策の失敗への国民の怒りにあったことは自明である。
間近にせまった衆議院選を考え「参議院選惨敗の再来」を懸念する与党議員からは「何らかの見直しをせざるを得ない」という声も上がり始めている。支援法成立時の国会の付帯決議でも「三年後の見直し」がうたわれており、見直し必至の情勢だ。
しかし、ここにきて厚労省からの「見直しを行うとしても激変緩和措置の枠内で」という内容の強力な巻き返しが行われ始めた。
激変緩和措置
とはなにか?
昨年十月三十一日には、支援法に怒る障がい者・支援者一万五千人が日比谷公園を埋め尽くした。日比谷公会堂での政党シンポジウムと野音での集会、厚労省前でのアピール行動が平行して行われ、国会請願デモが夕暮れまで続いた。
日本の障がい者運動史上かつてない高揚に驚いた政府・厚労省は、昨年十二月二十六日突如として千二百億円を投入する「激変緩和措置」を二〇〇七年四月より二年間行うことを発表した。
その内容は大きく分けてふたつだ。第一点は障がい者の自己負担の上限を四分の一に減らすということ。これによって最大三万七千二百円の負担が九千三百円に縮小することになった。
第二点は報酬の引き下げによって経営が困難になっている障がい者へのサービスを提供している事業所(通所施設や訪問介護事業所)に従前の九割の収入を保証することである。
しかし問題は、この措置が二年間の期間限定であるということだ。そこで、厚労省はこれをあと二〜三年延長し、運動の息切れを目論んでいるのである。
すべては二〇一二年度の介護保険と障がい者福祉の統合(当初の2009年統合論は財界・市町村の反対で頓挫)に的を絞った策略であることは明らかである。支援法ですでに導入した、一割負担や日払い方式といった介護保険のシステムをなんとしても維持し、二〇一二年度統合にスムーズに軟着陸したいという厚労省の意図が明確に読み取れるのである。「見直しを行うとしても激変緩和措置の枠内で」とは厚労省のどうしても譲れない、死守線なのである。
運動の沈静化をねらうごまかしの「対策」であったが、効果はなかったことが、今回の大フォーラムが明らかにしている。 (赤井)
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