| 破綻した「戦後レジームからの脱却」戦略 かけはし2007.9.10号 |
| 野党の攻勢から身をかわすためだけの「挙党体制」は分解必至 |
延命のための
改造は失敗作
八月二十七日、七月参院選で歴史的大敗北を喫した安倍首相は、自民党の新三役を決めるとともに、改造内閣を組閣した。党幹事長に麻生太郎・前外相を起用し、安倍―麻生ラインを固めた首相は、内閣人事で町村外相、伊吹文相(留任)、高村防衛相を任命するなど、派閥の会長を内閣・三役に五人も登用する派閥均衡型人事を採用した。安倍首相への歯に衣を着せない批判を繰り返してきた舛添要一を改造人事のメディア向け看板として厚労相に登用したことも、「苦肉の策」だった。
極右国家主義の「お友達」で固めた改造前の内閣の顔ぶれとは異なり、今回の安倍人事は参院選で与野党が逆転し、民主党が第一党となる追い詰められた危機の局面を、「挙党体制」で乗り切ろうとする色彩がきわめて濃厚のものとなった。すなわち党内から噴出した「首相辞任」の声を押し切り、あくまでも政権の座にしがみついた安倍首相は、小沢・民主党からの「政権交代」の攻勢をかわすためにも、谷垣派を除く党内各派閥の力を借りざるをえなかったのである。
もちろん国家主義的教育改悪や「従軍慰安婦」や「拉致」問題の分野での「安倍カラー」も目につく。「ジェンダーフリー・バッシング」で名を売った山谷えり子と、北朝鮮の金正日・軍事独裁政権による日本人「拉致」犯罪問題で安倍首相と足並みを揃えて強硬姿勢を取ってきた中山恭子の二人だけを首相補佐官に残したことは、その表現である。
しかしその人事は、基本的に「靖国不参拝」や「従軍慰安婦」問題での安倍の「後退」に不満をつのらす極右陣営をなだめるためのものと言えるだろう。
安倍改造内閣への支持率は、参院選敗北前後に比べれば持ち直してはいるが、八月二十九日の朝日新聞の世論調査によれば支持は三三%にとどまり、不支持は五三%と過半数である。改造政権発足直後の「ご祝儀相場」としては低率であり、有権者の不信は弱まっているわけではない。こうして安倍の改憲戦略、「戦後レジームからの脱却」というプログラムのためのスケジュールは、大きな障がいに突き当たっている。
自民支持基盤
の衰退と「続投」
麻生太郎・新幹事長は、就任会見で「『自民党をぶっ壊す』という人をみんなで選んだ。ぶっ壊された後の自民党をどうやって立て直すか。われわれに与えられた使命だ」といみじくも語った。ここから二つのことが読み取れる。
第一は、小泉新自由主義的「構造改革」路線の下で、地域の疲弊が進行し、自民党の旧来の利益配分型支配体制が「ぶっ壊された」ことが、今回の自民党惨敗の最大の要因であるという認識に基づいて、地域格差の是正に配慮する政策を推進する必要に迫られていることである。それは安倍―中川秀直・前幹事長の「景気加速化」(上げ潮)戦略の一定の修正を必然化する。安倍―中川(秀)の「上げ潮」戦略に批判的だった与謝野薫を「内閣の顔」である官房長官の重職に任用したことは、その表れである。
第二は、小泉が「ぶっ壊した」自民党を「立て直す」としても、それは決して旧来的な「官」主導の利益配分・調整構造にもとづいた旧来的な自民党の「立て直し」ではありえない。
われわれは、本紙新年号の巻頭論文で「(「格差社会」の矛盾の噴出の中で)安倍政権の『再チャレンジ計画』の幻想性が暴き出され、安倍政権の政策展開の余地を縛るものとならざるをえない。それは政権基盤を浸食するものとなるだろう。安倍は前任者の小泉のような『パフォーマンス』による大衆煽動を駆使した強力なリーダーシップに欠けることともあいまって、より与党内『調整』的手法に依存することになるだろう。それは、また小泉によって抑えられてきた諸派閥勢力からの『抵抗』を広げ、政権の安定性を奪うのである」と書いた。
実際、今年前半の政治過程と参院選敗北を契機にした党内からの批判の拡大は、このような予測を裏書きするものであった。しかし同時に、この批判が結局のところ「ピッチャー交代」とはならず「安倍続投」へと収束することになった背景は、小泉―竹中の新自由主義的「構造改革」路線が、地方における自民党の集票基盤と、それに依拠した旧来の派閥関係を決定的に弱体化させてしまったこと、そしてそれが党内の権力闘争の余地を縛るものとならざるをえなかったことを示している。
安倍改造内閣と自民党の新執行部体制は、当面、「憲法改正」を前面に掲げた「美しい国」という露骨な極右国家主義のイデオロギーを後景に退け、「格差社会の是正」にも取り組むというポーズを取って、民主党との「話し合い」を進めざるをえない。しかし言うまでもなく、安倍内閣と自民党は新自由主義的な資本のグローバル化に対応した、雇用破壊・地域破壊と貧困化をもたらす「構造改革」戦略の枠組みに縛りつけられている。また米国の「対テロ戦争戦略」への自衛隊の実戦的動員である「米軍再編」――日米軍事同盟のグローバル化路線をさらに推進していかざるをえない。そのことが自衛隊の海外派兵と参戦、「集団的自衛権」の行使容認、そして憲法九条改悪の「先送り」が決してできない状況を作りだしているのである。
参院でのイニシアティブを民主党に奪われた安倍政権と自民党は、「戦争国家体制」づくりが要請する強力なリーダーシップ不在のままに、これらの課題に直面している。そのことが安倍政権の迷走をさらに深刻なものにしている。
安倍政権打倒へ
攻勢を強めよう
九月十日召集予定の秋の臨時国会は、参院第一党となった小沢・民主党がリードするものとなるだろう。民主党の小沢体制は、「日米同盟優先」論者でテロ特措法延長にも賛成の立場を取ってきた前原誠司・前代表を副代表に取り込んで自民党との対決姿勢を鮮明にしている。
とりわけテロ特措法延長に対する小沢・民主党の批判は揺らいでいない。八月三十日付の朝日新聞は、民主党は医療・食糧などの民生支援を柱にして、米軍などの「タリバン掃討作戦」のための海上自衛隊による給油支援作戦を行わない独自の対案を準備している、と報じている(ただし同日の毎日新聞は、民主党には独自の対案を出す用意はない、と正反対の報道を行っている)。安倍内閣と自民党は、民主党を「修正協議」に巻き込んで、テロ特措法の延長をなんとしても合意させたい、としているが、それは容易なことではないだろう。また民主党は、先の第166通常国会で付帯条項付きで成立した改憲手続き法に基づく「憲法審査会」に関しても、予想される解散・総選挙の後まで引き延ばし、今臨時国会での設置には応じない姿勢を取っている。
もちろんわれわれは、「政権交代」をめざす民主党が、改憲・日米同盟堅持と新自由主義的グローバル化の戦略において自民党との共通の枠組みの中にあることを決して忘れてはならない。「政権交代可能な二大政党」という政治構造は、新たな政界再編や「大連立」の可能性もふくめて、この共通の枠組みを前提とするからである。この点で民主党は日本帝国主義を支える「もう一つのブルジョア政党」である。
しかし今日の政治局面で安倍・自公連立政権からの政権奪取をめざして対決姿勢を鮮明にしている民主党と、安倍・自民党との相違を過小評価すべきではない。安倍・自民党政権の危機を政権打倒に向けてこじあける労働者・市民運動のために、この相違を見据え、最大限に活用すべきなのである。
安倍・自民党と小沢・民主党との相違の中には、今日の政治の流れを変える契機となる対立がふくまれている。
第一は、それ自体末期症状を呈しているブッシュ米政権の「対テロ」グローバル戦争戦略への無条件的追随か、「日米同盟」をより相対化して捉え、ブッシュの「対テロ」戦争戦略への批判的スタンスを取ろうとするのかの対立である。
第二は、安倍が体現する極右国家主義イデオロギーに反対し、「東アジア共同体」に接近するための障がいをなくそうとする傾向である。
第三は、新自由主義的グローバル化への対応において、市場原理主義的「規制緩和」をさらに促進しようとするのか、貧困化と地域社会の破壊という「歪み」を緩和する国家的・社会的規制の必要性を主張するのか、という対立である。
民主党の中にも、この対立は内在しており、それは新たな政界再編への基盤となるものであることにわれわれは注意を払わなければならない。しかし、とりわけ新自由主義的な「底辺への競争」の拡大と、改憲強行突破路線への批判が、七月参院選での自民党の大敗をもたらし、参院第一党となった民主党内で自民党への対立のベクトルが強く働いている現在の局面で、このスペースを活用して労働者・市民の運動を広げていくことは、自民・民主の「ブルジョア二大政党システム」に対する左翼的なオルタナティブを準備していく上で決定的に重要なのである。オルタナティブは、机上の論議ではなく、現実の政治的攻防関係の中から作り出されていくものである。
護憲政党である共産、社民両党も、この情勢の中で民主党との野党共闘路線に向かう動きを見せている。労働者・市民は独自の立場から議会内の動向に注目し、テロ特措法延長・集団的自衛権容認阻止、憲法審査会設置反対、労働法制改悪反対などの闘いを強めていく必要がある。
(9月1日 平井純一)
追記:九月三日、就任したばかりの遠藤武彦農水相は、自らが組合長を務める農業共済組合の補助金不正受給を追及され辞任した。坂本由紀子外務政務官も、政治活動費の不正計上で辞任した。安倍改造内閣の混迷と危機はスタート早々から深まっている。
意気高く都庁包囲アクション
石原・中村都教委の暴走を
止めよう!処分連発許すな
新自由主義と国家
主義で教育を破壊
八月二十七日、石原・中村都教委の暴走をとめよう!都教委包囲・首都圏ネットの呼びかけで、「都庁包囲Action 処分・処分と暴走する都教委を止めよう」を掲げ、都庁前集会・都教委申し入れ行動を行い、三百五十人の教育労働者、市民が参加した。
安倍政権は派兵大国化路線にもとづく改憲を射程にした前哨戦として教基法(二〇〇六年十二月成立)・教育関連四法(学校教育法、教員免許法、教育公務員特例法、地方教育行政法が本年六月成立)改悪制定を立て続けに強行した。
東京都教育委員会は、教基法改悪を先取りに実践し、次々と新自由主義と新国家主義を両輪とした教育破壊を推し進めてきた。○三年十月二十三日に「入学式・卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱の実施について」の通達を出し、本年三月二十九日には、〇六年度の都立高校、養護学校、小・中学校の卒業式・入学式で「君が代」斉唱強制に抗議して不起立・不伴奏をつらぬいたことを理由に四十一人の教職員の不当な懲戒処分を出した。すでに被処分者は三百五十人以上にも達している。
さらに「学校経営支援センター」による日常的な教育活動への監視、職員会議での採決禁止、都立の中高一貫校に天皇制・侵略戦争賛美の「新しい歴史教科書をつくる会」教科書の追加「採択」、教員に対する管理・統制を強化していくための「主幹」と「主任教諭」の導入など次々と教育破壊を深めていった。
首都圏ネットは、被処分者とともに都教委の連続的暴挙を許さず、学校に自由を取り戻すためにスクラムを強化してきた。
日教組大会へ
ビラ入れ行動
前段の闘いは、社会文化会館で開催されている日教組第九十五回定期大会へのビラ情宣。大会に参加する代議員に対して、首都圏ネットは、「日教組六十年の歴史の原点にたちかえろう!日教組の仲間はパートナー路線を断ち切り、改悪教育基本法の具体化を許さない闘いに立ち上がろう!」と呼びかけた。日教組中央は、一九九五年、政府・文部省と「パートナー路線」と称して闘う五項目(@日の丸・君が代A学習指導要領B職員会議C官製研修D主任制)を降ろしてしまった。以降、政府・与党の教育反動化攻撃を阻止する闘いが後退し、「国旗・国歌法」(一九九九年)が成立し全国的な「日の丸・君が代」強制が強化され、教基法・教育四法が改悪されてしまった。
このような事態に入っているにもかかわらず日教組中央は、「パートナー路線」を見直すのではなく、「協議をさらに強化する」ことを表明してしまっている。改悪教基法の具体化を許さないために教育現場での取り組み、地域も含めた反撃の共闘陣形を構築していくことが求められている。
日の丸・君が代
強制に怒りの声
後半の闘いは、都教委がある都庁第二庁舎前で要請・抗議行動が行われた。
冒頭、参加者全体で都教委に対して、「『日の丸・君が代』強制をやめろ!不当処分を許さない!都教委の暴走を止めるぞ!中村教育庁は辞任しろ!石原は都知事を辞めろ!」と抗議のシュプレヒコールを行った。
実行委を代表して見城赳樹さんが開催あいさつを行った。
次に要請団を代表して増田さん(学校ユニオン)が自らの不当解雇攻撃を糾弾し、都教委の数々の悪行を暴露し、闘う決意を表明した。要請団は、「10・23通達を撤回し、権力的な教育行政を改めることを求める要請」を持って都教委に面会を求め、入庁した。
「日の丸・君が代」強制処分撤回を求める被処分者の会は、「安倍政権は、参院選で歴史的な大敗北をしたにもかかわらず、依然として教育改革を第一の課題としている。教育再生会議の動向に合わせて改悪教基法の実質化としての教員免許更新制、副校長・主幹の設置、奉仕活動必修科など都教委が行ってきたことを後追いしながら教育関連法の実施を急いでいる。大量処分を許さない闘いは、民主主義を守り抜くことだ。改悪教基法・愛国心教育を許さない闘いの最前線としてともに闘っていこう」と訴えた。
続いて、「日の丸・君が代」不当解雇撤回を求める被解雇者の会、「君が代」不当処分撤回を求める会など首都圏で闘う仲間、組合、グループ十九団体が発言した。
要請団が抗議行動を終了して集会に合流した。都教委は、終始門前払いの沈黙態度か、官僚的事務答弁を繰り返すのみだったことを糾弾した。最後に参加者全体で抗議のシュプレヒコールを行い終了した。
引き続き西新宿こども館に移動して本集会を行う。「参院選挙後の情勢下で、私たちに求められる闘い」をメインテーマに大内裕和さん(松山大学教授)をはじめ被処分者などが様々な観点から今後の運動の方向性など問題提起を行った。
(Y)
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