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「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」判決        かけはし2007.8.13号

米国の原爆投下は戦争犯罪

日本の核政策を変更させる
闘いが私たちに問われている

 【広島】七月十六日、広島平和記念資料館メモリアルホールで、「原爆投下を裁く国際民衆法廷・広島」の判決公判が開かれた。昨年の七月十六日には判決要旨が述べられたが、この日は判決全文の言い渡しであった。参加者二百人。
 開廷に先立ち、映画「最後の原爆」が上映された(ヒロシマ平和映画祭2007協賛)。長崎の被爆者・下平作江さんが学生とともに、米国、英国、フランスを訪問し、核兵器廃絶を訴える行動のドキュメントである。

三人の裁判官が
判決文にサイン

 午後一時、総合司会の舟橋喜惠さん(広島大学名誉教授)が開会あいさつをし、経過説明を田中利幸さん(広島市立大学広島平和研究所教授)が行い、三人の判事団が登壇した。判決公判の開廷を裁判長のレノックス・ハインズさん(ラドガーズ大学教授)が宣言し、判決文朗読を開始した。パワーポイントで要点を写しながら、カルロス・ヴァルガスさん(コスタリカ大学教授)、家正治さん(姫路獨協大学教授)が判決文を引き続き読み上げた。日本語に翻訳して一万七千字の量である。

 判決文によれば、以下のとおり。
A 当法廷の普遍的管轄権
B 適用される国際法
C 訴訟手続(昨年法廷での証言、提出文書、近年までアメリカ合衆国の機密文書に入っていた「アメリカ合衆国国立公文書館コレクション」の64の公文書吟味)
D 事実認定(直接原爆投下命令に関与した者に係る事実など) 
E 法的結論(「人道に対する罪」「戦争犯罪」「無防備都市への無差別爆撃であり、違法である」)
F 共同謀議に関して(被告人フランクリン・D・ローズヴェルト米大統領、ハリー・S・トルーマン米大統領、ジェームズ・F・バーンズ国務長官、ヘンリー・L・スティムソン陸軍長官、ジョージ・C・マーシャル陸軍参謀総長、トーマス・T・ハンディ陸軍参謀総長代行、ヘンリー・H・アーノルド陸軍航空隊総司令官、レスリー・R・グローヴズ、マンハッタン計画総司令官、J・ロバート・オペンハイマー・ロスアラモス科学研究所所長は、戦争犯罪および人道に対する罪を犯す共同謀議について有罪)
G 人道に対する罪に関して(ハリー・S・トルーマン米大統領、ジョージ・C・マーシャル陸軍参謀総長、トーマス・T・ハンディ陸軍参謀総長代行、ヘンリー・H・アーノルド、カール・A・スパーツ、カーティス・E・ルメイ、ポール・T・ティベッツ、ウィリアム・S・パーソンズ、チャールズ・W・スウィーニー、フレデリック・L・アシュワース、以上の被告人は、人道に対する罪について有罪)
H 戦争犯罪に関して(ハリー・S・トルーマン米大統領、ジョージ・C・マーシャル陸軍参謀総長、トーマス・T・ハンディ陸軍参謀総長代行、ヘンリー・H・アーノルド、カール・A・スパーツ、カーティス・E・ルメイ、ポール・T・ティベッツ、ウィリアム・S・パーソンズ、チャールズ・W・スウィーニー、フレデリック・L・アシュワース、以上の被告人が、戦争犯罪について有罪)
I 国際法に関して(被告人らと、その政府を有罪と結論)
J 国際慣習法に関して(広島と長崎の民間人を標的とした非人道的な核攻撃について、被告人ら、およびその政府に有罪)
K 勧告(アメリカ合衆国政府に対して、5つの要求)。

 三人の判事がサインをし、傍聴人全体の大きな拍手で確認した。カルロス・ヴァルガスさんが判決文を坪井直さん(日本被団協代表委員)に手渡し、坪井さんがあいさつをした。

核抑止力に依存
する日本政府

 閉廷宣言・休憩をはさんで、記念シンポジウム「―判決の意義と今後の核廃絶運動―」が開かれた。昨年証言した三人の被爆者、高橋昭博さん、下平作江さん、郭貴勲さんと、レノックス・ハインズさん、カルロス・ヴァルガスさん、井上正信さん、前田朗さんが発言した。とりわけ、井上弁護士は次のように述べた。
 「ヒロシマ判決は、原爆投下に関わった者たちが戦争犯罪を犯し、有罪であると断罪した。その内容は、国際法の専門家が、証拠に基づいて広島・長崎への原爆投下に至る過程を認定し、認定した事実に第二次世界大戦当時の国際法を厳格に適用した結果であり、論旨は極めて明快である。ヒロシマ判決は、核兵器の使用が戦争犯罪であるという法的確信を諸国市民が共有するに至る基礎となる」。
 「私たちは何をなすべきか。日本政府の核政策を変更させることである。日本政府の核政策を見ておこう。日本は憲法九条の平和主義の下で長く専守防衛政策を採り、個別自衛権についても必要最小限度にとどめるという憲法解釈をとってきた。過去形で述べた意味は、これらの政策がすでに大きく変更されつつあるからである」。
 「核兵器は自衛のための必要最小限度のものであれば保有ができるし、核兵器の使用もできるという解釈をとっている。しかしながら他方で広島・長崎の被爆体験を踏まえた国民世論を配慮して、非核三原則を採用している。安全保障政策としては、核兵器の脅威に対しては米国の核抑止力に依存するというものである。このことから、日本政府の核政策は、核兵器を安全保障の重要な手段としていることが理解される」。
 「日本政府は核兵器の使用・威嚇が国際法に違反し、核兵器の使用が戦争犯罪であるという認識は持ち合わせていない。日本政府は、広島・長崎の被爆体験から何らの教訓も学んでいない。日本政府のこの政策を多くの日本人が、ほとんど違和感もなく支持している。核抑止力に依存する政策とは、日本の防衛のために核兵器を保有し、そのためのターゲッティング政策を米国へ要求することに他ならない。言い換えれば、米国が北朝鮮や中国に対して先制核使用政策を放棄したり、消極的安全保障を誓約することは、『核の傘』の信頼性を損なうとして反対することになる」。
 「北朝鮮の核開発を巡る六者協議では、北朝鮮は米国に対して消極的安全保障の誓約を求めるかもしれないが、その場合日本政府が六者協議合意への障害になるおそれがある。日本政府は、国際社会に向かっては唯一の被爆国を自称しながら核兵器廃絶(究極的廃絶論)を主張するが、これでは二枚舌。辞任した久間前防衛大臣は、長崎への原爆投下は仕方がなかったと発言したが、これは彼個人の本音や失言ではなく、日本政府の採っている核政策の本音である。自らの安全のため、米国が他国に対して核攻撃することを要請するという核の傘政策であるから、広島・長崎への原爆攻撃を戦争犯罪行為であるなどとどうして批判できるであろうか。日本政府にこの様な国内政策、外交政策を可能にさせているのは、他ならない私たちである」。

認識を共有させ
る運動が重要

 「日本人の核兵器に対する曖昧な姿勢は、広島・長崎の被爆体験の意義を損なうものである。核兵器廃絶を求める世論が強いことは認めるが、それが現実の政治過程や日本政府の政策を批判することとは結びついていないという非政治性を問い直さなければならない。核兵器廃絶を求めることは、現実の政治過程をその基準から批判し、日本政府の政策の変更、日米安保体制の見直しを含めて、を迫る政治性の強い運動なのである。九条二項を廃止し、自衛隊を自衛軍として集団自衛権行使を容認し、自衛軍を海外へ積極的に派遣するという改憲には、核兵器廃絶を求める以上強く反対しなければならない」。
 「ヒロシマ判決は、未来につながる重要な勧告を行っている。この勧告は、核兵器が国際法に違反し、原爆投下が戦争犯罪であるとの判決を踏まえて、米国に対して核兵器廃絶と被爆者への謝罪と補償、核兵器が国際法違反であることを国内外に宣言し、モニュメントに残し、教育により語り伝えるという趣旨である。この勧告には強い道義的正当性はあるが、法的拘束力はない。現在被爆者団体と日本反核法律家協会とが、原爆投下による被爆者の受けた損害の賠償を合衆国政府に求める法的手続きを検討しているが、これとても極めて困難な途である。
 核兵器使用がいかに残虐な戦争犯罪であるかという認識の共有が必要である。ヒロシマ判決の勧告を合衆国政府に受け入れさせる運動はこの認識の共有を拡大するであろう」。
 最後に、実行委員会アピールを横原由紀夫さんが行い、閉会あいさつを佐々木猛也弁護士が行った。(久野成章)


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