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ジルベール・アシュカルとのインタビュー(3)      かけはし2007.3.19号

秩序の崩壊と「内戦」の進行全世界で再びイラク反戦を

ベトナム戦争の二の舞にひた走る米軍

イラン政権とブッシュの攻防

――米国はイラクでイラン人を拘束し、イランがイラクに干渉していると非難してきました。ブッシュ政権は、イラクで米軍に対して使用されている高性能の爆発装置はイランから持ち込まれたものであり、その訓練はヒズボラによってなされていると告発しました。あなたはその責任がイランにあると思いますか。イランが支援するシーア派が、米軍に対する軍事的攻撃を行っているのでしょうか。

 その通りです。イラクのシーア派勢力は有志連合軍に対する抵抗戦闘を行っています。マフディ軍やサドル派が管理するウェブサイトを見れば、占領軍に対する軍事作戦の長大なリストや、メディアの報道管制に対する不満が見られます。彼らは、メディアがスンニ派地域で行われた行動だけを報道し、シーア派地域での抵抗行動は報じないことに不満を述べているのです。
 シーア派地域で抵抗闘争が存在しているのは全くその通りです。それは占領軍に対する直接の前線での攻撃よりも、おもに「IEDS」(簡易爆発装置)を通じて行われています。前者のような行動(直接攻撃)についてもサイトで読むことはできるのですが。イランが幾つかの方法でこの行動を支援しているのは道理にかなったことであり、それは全く不条理な話ではありません。
 イランが、余りにも公然とした形ではないという条件の下でですが、こうした行為を支援することに利害を有しているのはなぜかは、きわめて良く理解できます。イランは、米国が「隠密活動」と呼ぶものに依拠しているのは、きわめてありそうなことです。そうした「隠密活動」の専門家が米国であるのは、ご存じですよね。
 イランはこうした行動を通して何を達成しようとしているでしょうか。一方では、米政府がイランを追い詰め、強力な圧力をかけ、軍事行動などの脅しをかけている時に、米軍をイラクの泥沼にはまりこませておくことがイラン政権の明白な利益になることは、もちろんのことです。
 他方、イランは米政府との地域的闘争を行っており、そこには二つの側面があります。一つは防衛的なものです。米国が「体制変革」その他いろいろのことを語りながら、イランを標的にした攻撃をかけているからです。力で「体制変革」をしようとしているのはイラン政府ではなく米国なのです。イラン政府はブッシュ政権の政治的敗北を促進することに利益を有しているとおっしゃるかもしれませんが、それは正確には米国がやっているのと同じような「体制変革」ではありません! 
 イランが行っている地域的闘争のもう一つの側面は、防衛的という範囲を超えたものであり、イラン政府はある種の緩衝地帯や友好諸国による防護地域のようなものを作って、地域に影響力を拡大することに利益を有しています。経済的分野でも利害関係が存在しています。私が石油について語ったことを思い出してください。私は、イラクはイランの石油企業というカードを切ることもできる、イランはこの点に関して、西側の石油企業とは持っているものとは比較にならないにしても、一定の手段を持っているからだと述べました。
 最後に、軽視すべきではないイデオロギー的要因があります。シーア派であろうとスンニ派であろうとあらゆるブランドのイスラム原理主義に訴えるイスラム原理主義的側面と、宗派的側面の双方においてです。後者に関して私は、イラクやレバノンを超えて、サウジ王国の石油産出地域に住む抑圧されたシーア派、バーレーンの抑圧された多数派を構成する人びと、そしてより広い中東地域全体の多くの少数派シーア派住民にまで拡大するシーア派の宗派的連帯について語っているのです。こうした要因を総合すれば、この地域におけるイランの行動の背後にある誘因と動機のセットについて理解できます。

「成功」しない米国の戦略

――この間、出されたさまざまな政策提案の結果は、どうなるでしょうか。
(a)二万一千人以上の米兵を追加投入するブッシュの「急速展開」路線
(b)ベーカー―ハミルトン委員会(イラク研究グループ)の提言
(c)ピーター・ガルブレイス、ジョー・バイデン、レスリー・ゲルブのイラクを三つの国に分割する提案。

 「急速展開」政策の主要側面は、米兵二万一千人の追加投入ではありません。もしそれだけのことだったのなら、それは実際にはほとんど奇怪で愚かなことだったでしょう。もうすでに十三万人が投入されている場所に二万人を追加し、そのことで情勢に質的な変化がもたらされると信じることなど、完全にナンセンスだからです。
 いわゆる「急速展開」とは、実際には全体的な作戦の一部です。私がすでにお話ししたように、ブッシュ政権はこの全体的な作戦を通じて、一方ではスンニ派の過激派による暴動、他方では主要な敵と目されているムクタダ・アル・サドルを孤立化させるために、クルド人とアラブ人スンニ派、シーア派の一部をふくむイラクの連合勢力を設立しようと試みています。ブッシユ政権は、こうしたことのすべてを、ベーカー―ハミルトン委員会の提言の最も重要で「オリジナル」な部分を構成する実体的中身ぬきにやろうと試みているわけです。ベーカー―ハミルトン委員会提言の最も重要な部分とは、米国の宗主権の下でイラクを安定化させる支援を獲得するために、イランやシリアとの一定の妥協と地域的関与を追求しようとするものです。ワシントン内の潮流のものであるこの戦略には成功の現実的チャンスがないということを、私が確信している理由はまさにここにあります。実質上ブッシュ政権は、現実に妨害行動を加速させているのです。彼らは完全な頑迷さと自分たちの経験から現実的には何も学べないことをを示しています。
 ベーカー―ハミルトンの提言に移りましょう。それは米国がベトナムから撤退したシナリオに基づいています。ニクソン政権下のこのシナリオは、ベトナムでの泥沼の深刻さ、国内戦線での状況の悪化によって極めて複雑化された米国が直面する困難の巨大さを認識した後に、ソ連と中国を関与させようとするものでした。ニクソン―キッシンジャーの政権は、この全般的情勢と逆境に対して、最も「現実的」な手法でベトナムの抵抗運動の支援者国を関与させ、相互に対立させることを決定しました。彼らは中国とソ連との亀裂をさらに促進しようと試みました。
 それはベーカー―ハミルトン路線の支持者たちも実施しようとした戦略的マヌーバーです。つまり彼らは、シリアをイランから切り離し、両国に対して違ったカードを切り、この二つの体制の矛盾の可能性を引き出そうと試みているのです。これは弱い立場からするブッシュの全面的衝突路線よりも理にかなったものです。これは、現在米国がイラクで直面している非常に不利な状況を考えれば、より合理的な戦略です。しかしベトナムでそうであったように、成功の保障はまったくありません。それは米国がイラクから解き放たれる役に立つかもしれませんが、米国によるイラクへのいかなる長期的支配をも保障できません。それは一九七五年のベトナムのように、短・中期的にイラクの完全な喪失をもたららすだけです。
 次にイラクを三つの部分に分割するという提案についてですが、少なくとも現在の条件では、こうした提案はイラクの主要な勢力によって、中東の現代史の中で多く見られたような国を分割する帝国主義的陰謀だとして非難されることが確実です。その上、米国の帝国主義的利害の観点から見て最も深刻な問題は、この提案がイラク南部でのシーア派国家の創設に帰結することです。イラク南部のシーア派地域は、イラクの石油資源が大量に埋蔵されている所であり、したがってこのシーア派国家は当然にもイラクの石油の最も重要な部分を支配することになります。
 これは米国にとって重大な問題を作りだす可能性があります。こうしたシーア派国家は、現在のイラクのシーア派の最も重要な部分がイランにきわめて近いという問題は言うまでもなく、地域的政治力学そのものによってイランと結びつき、サウジ王政に対立する立場を取ることになります。私が指摘したような、シーア派が居住するサウジ王国の石油産出地域ということから見ると、それは現在よりも米国政府にとってさらに悪いシナリオをもたらすことになります。しかしまず何よりも、三つの政治的実体に分割するというアイデアの実施は、現実には全面的内戦という危険を伴います。それはこうした戦争の結果ではなく、戦争の原因になるのです!
 これらの提案はすべて、イラクを支配しようという米国の構想が現在きわめて折衷的なものになっていることを示しているだけです。完全な混乱をもたらしたとしてブッシュ政権を非難し、少なくとも現代史における米国の帝国的構想の最も重大な敗北をすでにもたらしたように見られる現実の責任を追及する多くの文章が書かれている理由は、ここにあります。

反戦運動と「有志連合」

――米国政府は次に何をするだろうと思いますか?

 私にはその答えはありません。ブッシュ政権のメンバー自身が、自分たちは次に何をするかを分かっていないと思っているからです。彼らは、船が沈みつつあることの認識を拒否したまま目視航行をしようとしているのです。

――反戦運動は政策や政策決定者に対してどれだけの影響を与えてきたのでしょうか。

 これは米国の人びとの問題であり、皆さんは米国に住んでいるのですから、それに回答する上で、私よりも有利な位置にいます。しかし米国以外の参戦国を見れば、反戦運動はまさに違った結果を作りだしたことを見てきました。私は、スペインやイタリア、そして反戦運動が「有志連合」からの離脱を作りだした他の諸国のことを考えています。さらに、イラク戦争問題でトニー・ブレアの面目を失わせた決定的な貢献は、良く知られていることです。
 米国では、ブッシュ政権が選挙で多数を獲得してきたかぎり、政権は多かれ少なかれ反戦運動の圧力を無視することができました。とりわけこの運動が、何度かのピークを除けば、持続的な形でその活動を高水準に維持できなかったからです。しかし現在われわれは、戦争に反対する持続的な政治キャンペーンとイラクで起こっていることの暴露が、最近の選挙でブッシュ政権と共和党多数派への拒否をもたらしたことを見ています。そのことで、私は現在の議会多数派が戦争反対だと言おうとしているのではありません。全くそうではありません。
 しかし彼らは、ブッシュの政策を拒否して現在の多数派になっているのです。イラクでの冒険に体現されたブッシュの対外政策への拒否、そしてもちろんカトリーナ災害によって示された彼の国内政策への拒否の双方が、現在の議会多数派をもたらしました。イラク問題で示されている体制側のこのようなきわめて厳しい分裂という現在の事実も、反戦運動とその圧力の重要性の証拠になっています。それは、事実が議論の余地なきほどに確認される時、いっそう効果的なものになります。それがまさにイラクで起こっているのです。

――反戦運動は、いま何を訴えるべきなのでしょうか。

 当初から呼びかけられ、かつ呼びかけられるべきだったことと同じです。それは「アウト・ナウ」(いますぐ撤退を)です。米国ではイラクへの介入を終わらせるという要求です。それは、米国政府がイラク撤退を決定し、数カ月を超えない範囲で米軍撤退の日程表を設定せよ、という要求を意味します。それはイラクの人びとの多くの要求、そしてアメリカの人びとの多くの願いにかなったものです。     (おわり)
(「インターナショナルビューポイント」電子版06年2月号)


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