| 民衆の連帯で東アジアの平和を かけはし2007.2.26号 |
北朝鮮核問題
の新しい段階
二月八日から北京で開かれていた朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の核問題をめぐる六者協議は、朝鮮半島の非核化に向けて各国が取る「初期段階」の措置を定めた合意文書を二月十三日に採択した。
合意文書は、二〇〇五年九月の「共同声明」を再確認するとともに、朝鮮半島の非核化に向けた「初期段階措置」として、以下の五項目を並行的にとる、としている。
1 北朝鮮は、再処理施設を含む寧辺の核施設について、それらを最終的に放棄することを目的として稼働の停止及び封印を行うとともに、国際原子力機関(IAEA)と北朝鮮の間の合意に従いすべての必要な監視及び検証を行うために、IAEA要員の復帰を求める。
2 北朝鮮は、共同声明に従って放棄されることになっている、使用済み燃料棒から抽出されたプルトニウムを含む、共同声明に記されたすべての核計画の一覧表について、五者と協議する。
3 北朝鮮と米国は、未解決の二国間の問題を解決し、完全な外交関係を目指すためのの二国間の協議を開始する。米国は、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除する作業を開始するとともに、北朝鮮に対する対敵国通商法の適用を終了する作業を進める。
4 北朝鮮と日本は、平壌宣言に従って、不幸な過去を清算し懸案事項を解決することを基礎として、国交を正常化するための措置をとるため、二国間の協議を開始する。
5 六者は、初期の段階における北朝鮮に対する緊急エネルギー支援の提供について一致した。五万トンの重油に相当する緊急エネルギー支援の最初の輸送は今後六十日以内に開始される。
合意文書は、さらに「朝鮮半島の非核化」「米朝国交正常化」「日朝国交正常化」「経済及びエネルギー協力」「北東アジアの平和及び安全のメカニズム」についての作業部会を設置し、すべての作業部会を三十日以内に開催することをうたった。また初期段階の措置の段階及び次の段階(北朝鮮によるすべての核計画についての完全な申告の提出並びに黒鉛減速炉及び再処理工場を含むすべての既存の核施設の無力化を含む)の期間中、北朝鮮に対して、五万トンの重油に相当する最初の輸送を含め、百万トンの重油に相当する規模を限度とする経済、エネルギー及び人道支援が提供されることなどもうたわれている。
核施設の「停止・封印」(94年の米朝枠組み合意では「凍結」)や「無能力化」という言葉の語義には、なお幾つかの解釈も可能であり、「核兵器」に言及されていない以上、北朝鮮が保有する核兵器を放棄することを前提とするものではない。しかし、米国のヒル代表が北朝鮮が要求していた「金融制裁」の解除問題について「解決」する姿勢を示したことなど、全体としてアメリカ側の「譲歩」の色合いが際立つものになっている。
完全に袋小路に入り込んだと思われていた六者協議は、事実上の米朝直接協議をふくめて今回の「合意文書」採択によって、新たな段階に入ったのである。
状況転換の可
能性を現実へ
二〇〇五年九月の六者協議で朝鮮半島非核化に向けた「共同声明」が採択された後、米国の金融制裁を経て、二〇〇六年七月には北朝鮮によるミサイル発射、同十月には核実験が強行された。こうした北朝鮮・金正日軍事独裁体制の挑発的冒険に対する国連安保理での「非難」「制裁」決議を通じて、六者協議の枠組みは完全にデッドロックに乗り上げ、崩壊寸前にまで至ったかのように主張された。北朝鮮は自ら「核保有国」になったと宣言し、強硬姿勢を貫いた。
われわれは北朝鮮のミサイル発射と核実験の強行を批判するとともに、北朝鮮への一切の経済制裁措置に反対し、さらには北朝鮮に対する米日帝国主義による「先制的」軍事攻撃を含む臨戦体制の構築に反対してきた。そして北朝鮮が日本人「拉致」問題の誠実な解決を行い、日本政府が二〇〇二年の平壌宣言にもとづいた国交正常化交渉を早期かつ着実に実現することを求めてきた。また日本国内での在日朝鮮人民への差別的・排外主義的キャンペーンや朝鮮総連を対象とした財政的締めつけに反対してきた(本紙06年7月17日号、同24日号、10月16日号、同23日号など参照)。
そのような観点からする時、今回の「初期段階の措置」合意文書は、北朝鮮の「核・ミサイル危機」と北朝鮮に対する軍事的・経済的な「制裁」包囲網の強化の流れからの、壊れやすく不安定だとはいえ、一つの転換の可能性を提示している。われわれは、今回の合意について、きわめて深刻な危機の状況から朝鮮半島の「非核化」、さらには民衆自身による東アジアの平和を実現するための一定のスペースを開いたものであると主体的に捉える必要がある。もちろんこの「平和へのスペース」について楽観視することはできない。それを現実化するのは民衆の意識的な闘いなのである。
労働者・市民は、きわめて不安定な局面の中で、その可能性をつかみとり、飢餓や悲惨な人権弾圧に苦しんでいる北朝鮮民衆との連帯・支援の中から、朝鮮半島と東アジアの民衆自身による平和・人権・民主主義のための闘いを切り開いていかなければならない。
「テロ支援国」
指定解除か?
今回の「初期段階措置合意」は、民衆に慢性的飢餓をもたらす北朝鮮・金正日独裁体制が直面する出口のないエネルギー危機・経済危機が、最終的な体制的崩壊の可能性までもたらす段階にまで至っていることと、イラク侵略戦争・軍事占領支配の泥沼化がブッシュ政権に一定の「転換」の圧力を強めていることの両面から捉えることができる。
とりわけ注目すべきなのはブッシュ政権の対応である。ブッシュ政権は北朝鮮政府に対して「テロ支援国家」指定を解除する作業の開始と、「対敵国通商法」にもとづく制裁措置の適用を終了する作業を進めるとの、政策転換に乗り出した。米国内においては、ボルトン前国連大使など「ネオコン」グループから「テロ支援国家」指定取り消しに対する批判が渦巻いている。
しかしブッシュは「これまで北朝鮮との間で結ばれた合意とは違い、北朝鮮の隣国すべてと米国が連帯してあたっている。さらに国連安保理決議によって支えられている。正しい方向に向けた重要な一歩だ。われわれは突破口を手に入れた」と評価し、ボルトンの批判に対しても「彼の見方にはまったく同意できない。間違っている」と反論した。
われわれはもちろん、ブッシュ政権の対応を、朝鮮半島の「平和」に向けた戦略的転換だなどと評価することはできない。
ブッシュ政権は、イラク侵略・占領の破綻に直面して二万人以上の軍隊を増派し、首都バグダッドを中心としたイスラム武装勢力への大掃討作戦を展開するとともに、イランへの新たな軍事的攻撃の可能性をもさぐっている。いまだ「核開発疑惑」の段階にすぎないイランに対しては軍事攻撃の態勢をとり、核実験を強行して「核保有国」宣言を行った北朝鮮に対しては「テロ支援国家」指定を解除しようとする明らかなダブルスタンダードは、イラク・中東に集中しなければならない米戦略の危機の表現なのであり、北朝鮮にまで手が回らないというのが本音のところであろう。
日朝国交正常
化実現に向けて
しかし六者協議におけるブッシュ政権の政策変更は、対北朝鮮強硬路線と制裁圧力の先陣を切ってきた安倍政権の危機感と孤立感を強めている。安倍首相は北朝鮮へのエネルギー支援について「支援国に加わることはできない。拉致問題で前進できないのなら日本は支援できない」とする立場を繰り返している。
安倍内閣の対北朝鮮「圧力」政策は、北朝鮮を「悪の枢軸」と規定したブッシュの「対テロ」戦略に依存したものであり、ブッシュの政策変更は安倍政権の土台を揺るがすものにならざるをえない。小池百合子首相補佐官は、バーンズ米国務次官に「テロ支援国家指定解除」への慎重な対応を求め、塩崎官房長官も「指定解除には拉致問題の解決が重要な要素の一つだ」と念を押している。しかし一月に訪朝した山崎拓・自民党安全保障調査会長は「わが国も応分の負担を行うことは当然だ。圧力だけでは何の前進も見られない」と述べ、安倍政権の対応を批判している。
われわれは、今こそ安倍政権に対し、北朝鮮への「制裁」措置を撤回し、平壌宣言にもとづく日朝国交正常化交渉の着実な推進を要求していかなければならない。朝鮮総連や朝鮮学校への排外主義的な攻撃をただちに停止しなければならない。同時に北朝鮮政府による核実験を糾弾し、核兵器の廃棄を求めるとともに、拉致犯罪の全容解明と拉致被害者の解放、責任者の処罰を求めるものである。
安倍政権は「北朝鮮の脅威」を煽り立て、それを利用する形で、アメリカ帝国主義の「対テロ」戦争戦略と一体化した米軍・自衛隊再編、海外派兵、「集団的自衛権」の発動を推進し、憲法改悪への政治日程を早めてきた。われわれが朝鮮半島をはじめとする東アジア民衆と連帯して作り上げようとする平和のための闘いは、まさにこうした「戦争国家」への流れを止め、憲法改悪を阻止するために全力を上げることを、緊急の課題として提起している。戦争と飢餓、独裁をなくし、平和・人権・公正・民主主義のために闘う東アジア民衆の連帯の可能性を大きく切り開くために!(平井純一)
東京招致の問題点を検証
国家主義鼓吹とカネもうけのための五輪はいらない
石原都知事が招致
に乗り出した理由
二月十日、渋谷区勤労福祉会館で、「オリンピックはいらない! 検証〜東京招致の問題点」が東京にオリンピックはいらないネットの主催で開かれ、七十人が参加した。
二〇一六年夏季オリンピック大会の招致を目指し、昨年八月三十日に、日本オリンピック委員会(JOC)は国内候補地の選考を行い、東京都を日本の立候補都市に選んだ。開催地の決定は二〇〇九年十月にコペンハーゲンでのIOC総会で決められる。
最初に東京都議の福士敬子さんが、東京都が進める招致の問題点を明らかにした。
「@オリンピック憲章に反して、石原都知事はナショナリズムを称揚するためにオリンピックの招致を行うことを公然と語っている。『私たち日本人が失いつつある自信をこの手に取り戻すための大きなきっかけとなる。……日本の存在感を様々なかたちで世界に示す絶好の機会』(06年第2回都議会定例知事施政方針表明)、A莫大な費用がオリンピックを利用して投入されようとしている。招致費は五十五億円、大会運営費は三千億円、関連施設の整備は五千億円。これはあくまで予算。都は五輪予算として毎年千億円を積み立てることを決めている。石原は『最優先で取り組むべきは、首都圏全体をにらんだ環状道路のネットワークの整備』であると発言しており、オリンピックに伴う開発費で七兆円はかかるのではないだろうか。道路建設に伴う環境破壊問題もある」。
「さらに、都が推進した臨海副都心開発で第三セクター三社の負債総額は三千八百億円。この臨海地区にオリンピックを呼ぶことで失敗の穴埋めをしようとしている。B札幌市はいったん招致に乗り出したが、財政難で辞退した。その札幌市は一万人のアンケートを実施して、市民の意見を聞いた。しかし、東京都は情報の公開や住民へのアンケートを行っていない」。
五輪に反対する
者は「非国民」
次に、スポーツジャーナリストの谷口源太郎さんが、オリンピックの運営がいかに腐敗堕落したものになっているのか、痛烈に批判する講演を行った(講演要旨別掲)。
長野冬季五輪に反対して闘いぬいた江沢正雄さん(オリンピックいらない人たちネットワーク・長野)が長野冬季五輪が何が起こったのかをユーモアをまじえながら報告した。
「長野県は長野冬季五輪の招致費用がどのように使われたのかを隠すために帳簿を消却するという許し難いことをやった。われわれは招致費の返還を求めて裁判を起こして闘った。これからの東京での招致の問題はカネの行き来を徹底に明らかにすることだ。招致委員会を作り、そこに寄付をさせる。長野では寄付した企業に五輪関連事業が落札された。カネもうけのための五輪があったのだ。スポーツマフィアがカネのなるオリンピックを高く売る。招致の裏で動いているのは電通だ。長野五輪は一兆五千億円が二兆三千億円にふくらんだ。結局一兆六千億円の借金が残った」。
「五輪は県民の総意・悲願とされ、子どもたちが徹底的に利用された。授業で五輪がたたきこまれ、IOC委員が来県するたびに、道路に並ばされ、旗を振らされた。子どもたちの作文や絵がそこらじゅうに貼られた。一方、五輪は反対する者は『非国民』扱いだ。長野市長選に立候補して五輪反対を訴えた候補者の選挙ポスターは長野県の業者はだれも引き受けてくれなかった」。
江沢さんは「たった二週間のために、十二年間かけて招致活動をするのに対抗するのはたいへんだが、絶対に招致をやめさせよう」と強く訴えた。さらに、IOC委員たちが各国の招致合戦にのっかった、ありとあらゆる美食・プレゼントそして、女性の性の提供まで受けていることを暴露し、厳しく批判した。
天野恵一さんは、一九三六年にナチスが行ったベルリンオリンピックの聖火リレーや表彰台などを現在も継承していることを明らかにし、オリンピックの堕落した姿は、特別にオリンピックだからではなく、われわれが享受している商業性の延長戦上にあること、インターナショナリズムとナショナリズムの対立と言うよりも、すでにインターナショナリズムがナショナルになっているのではないかと提起した。
こうした提起をうけて、今後もねばり強く招致反対運動を続けていくことを確認した。 (M)
谷口源太郎さんの講演より
現在のオリンピックの改革などありえない!
オリンピックはいいものだろうか。オリンピック憲章はすばらしいと言われるが、現実はどうなっているのか。理想は吹っ飛んでいる。
JOCは「二〇二〇年を目標にメダル獲得数で世界第三位を達成する」ことを盛り込んだゴールドプランを打ち出している。こうしたオリンピックの根本原則なんて問題にしていないJOCにこそ、そもそも問題がある。それに輪をかけて悪いのはメディアはオリンピックをビックビジネスとしている。だから、オリンピック批判は一切しない。たった二週間の放送権料はアメリカが九億ドルで日本が二億ドルと莫大なものになっている。オリンピックは視聴率だ。ナショナリズムをかきたてる種目・選手を初めてから選んでいる。そして選び取った映像を何度も流す。オリンピックの背景にある政治や経済を見えないものにしてしまっている。
IOCは巨大な商業企業と化している。放送権ビジネス、スポンサー料など。多国籍企業の十一社とPOP契約をしている。コカ・コーラやパナソニックなどだ。アメリカのNBCは世界の放送権料の八割を独占している。こうした巨大企業がIOCをコントロールしている。一九八八年のソウルオリンピックの時は、マラソンの決勝の時間をアメリカのゴールデンタイムに変えさせた。北京オリンピックでも、NBCの要求で体操と水泳の時間を変えさせた。
オリンピックは国威発揚のための最大のイベントであり、国家が一番利用している。一八九六年、オリンピックの最初は参加は国別ではなく、大学・個人・クラブであった。「勝つことより参加することに意義があるとされた」。その後、インターナショナリズムとナショナリズム(国家主義)の対立が深刻になった。一度は国旗・国歌の廃止が提案されたが、全会一致で否決された。一九六三年のIOC理事会で、国旗・国歌の廃止が三十七対三十二で廃棄が上回った。しかし、各国のNOC代表が集まった会議で棚上げにされた。
一九八〇年モスクワオリンピックは、ソ連のアフガン侵攻を理由に、アメリカなど西側諸国がボイコットした。オリンピックが完全に政争に使われた。その後、商業主義が全面化した。今のオリンピックの改革はありえない。オリンピックは壊すしかない。ナショナリズムを克服するには徹底したインターナショナリズムで選手の連帯が必要だ。
石原は東京招致名誉会長に皇太子夫妻を据えたいと考えている。さらに、憲法改悪と一体でオリンピック推進が進むだろう。(発言要旨、文責編集部)
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