| 「教育再生」関連三法案法制化阻止へ かけはし2007.2.19号 |
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批判的教員を排除し財界主導の競争原理屋「規律と秩序」を強制 |
「教育再生会議」第一次報告
安倍政権は、グローバル派兵大国化路線の下、改憲の前段攻撃としてあった教基法改悪を強行し、新国家主義とセットで新自由主義的教育改革のイニシアチブである教育再生会議に第一次報告を提出させた(1月24日)。報告は、「公教育改革」と称して派兵大国化に貢献する教育再編であり、そのための作戦図である。
安倍首相は、報告をバネとしながら施政方針演説において「戦後レジーム(体制)を、原点にさかのぼって大胆に見直し、新たな船出をすべき」だとして、通常国会において改憲を前面に押し出し、改憲手続き法案の成立を強調した。与党は五月三日の憲法記念日までに成立させることをめざしている。
また、グローバルな戦争と資本大競争を勝ち抜く人材育成という国家的要求に応えるための第一歩として、「愛国心」教育の強化などの目標や学校運営を定めた学校教育法改悪、外部評価導入・人事権の委譲など教育委員会制度を定めた地方教育行政法改悪、当局の一方的な「不適格教員」認定によって教員排除を可能とする教員免許更新制を導入した教員免許法の改悪を早期に成立させていくことを表明した(1月26日)。
報告は、日本経団連の「これからの教育の方向性に関する提言」(05年1月)と「義務教育改革についての提言」(06年4月)をバックボーンにしている。それは資本のグローバル競争に勝ち抜くために、これまでの年功序列賃金と終身雇用形態などの高コスト労働力雇用の解体をめざした日経連「新時代の『日本的経営』」(一九九五年)路線に基づいて、これまでの画一的教育政策からの解体と再編を課題とする公教育のスリム化、複線型学校教育など新自由主義的教育改革の転換を求めてきたことへの忠実な回答なのである。教育再生会議路線は、文科相の諮問機関である中央審議会の答申と具体化のテンポを乗り越え、既成事実として報告を押し出し、その勢いで教育再生関連法案を成立させていくことをねらっている。
政府・文科省の責任棚上げ
報告は、「社会総がかりで教育再生を〜公教育再生への第一歩〜」と題して、「第一次報告に当たっての基本的考え方」と「7つの提言」と「緊急対応」として「いじめ」問題対応法案、学校教育法改悪法案、地方教育行政改悪法案、教員免許改悪法案を提出することを明らかにしている。
「基本的考え方」では、「公教育再生のために」「我が国が永年培ってきた倫理観や規範意識を子供たちが確実に身に付け」させるための目的を冒頭から提示し、これまでの天皇制を賛美し、侵略戦争の反省と戦後補償をしてこなかった歴史を肯定するところから始まる。このような前提認識のうえで「21世紀は知識基盤社会」であり、「世界的規模でグローバル化が進み、世界的『知』の大競争時代に突入」しているから、「イノベーションを生み出す高度な専門人材や国際的に活躍できるリーダーの養成が急務」であるとし、新自由主義的教育改革を推進し、差別・選別・競争主義に貫かれた教育コースで勝ち抜いていける「人間」を要求している。そして、この結論を達成するためにのみ報告を作成し、これまでの政府・文科省の教育政策を総括することもなく、破綻の結果現象としての「深刻な教育」問題を並べたて、自らの責任性を棚上げしたままで説教をたれるのである。
「ゆとり教育」批判の合唱
提言一では、「『ゆとり教育』を見直し」「教育格差を絶対生じさせない」と掲げた。そのために「基礎学力強化プログラム」として「授業時数の10%増加、基礎・基本の反復・徹底と応用力の育成、薄すぎる教科書の改善」することによって目的を達成できるがごとく安易に描きだしている。
さらに改悪教基法による愛国心条項の具現化なども含めた「学習指導要領改訂」。差別・選別と競争主義教育の促進である習熟度別指導の拡充と学校選択制の導入。学校序列化政策を全国一律に押しつける「全国学力調査」の実施を提示している。
教育破綻の原因の一つとして、「ゆとり教育」政策に集中砲火を浴びせている。そもそも一九八〇年以降、受験のための「詰め込み」教育と偏差値主義偏重の修正をめざしつつ、授業時間の削減を軸に押し進めていったのが「ゆとり教育」であった。だが、九二年の学週五日制、中高一貫校・学校選択制、習熟度学習クラスなど次々と新制度を導入し、教員と生徒に混乱と過重な負担を押し付け、競争と選別主義を本格化していったのが実態だ。余裕ある教員数に支えられた少人数学級づくりの否定、十分な時間と丁寧なコミュニケーションの空間が次々と解体していった。
このような教育破壊に加え、米国の「対テロ」戦争に自衛隊を参戦させ戦争ができる国家づくりの本格化、バブル経済の崩壊と産業の空洞化、新自由主義社会による弱肉強食競争、リストラと合理化攻撃、不安定雇用の全面化、治安弾圧の強化などによって社会全体が閉塞感に追い込まれ、「格差社会」「二極化」が進行していったのである。このような社会の反映として子どもたちの在り方があり、教育現場の深刻性があるのだ。
教育再生会議は、こういった社会様相にアプローチしたり、教育現場で苦闘する教員たちの生の声を聞いたり、実践例を検証するのではなく、委員の体験と主観主義にもとづく大放談会に終始し、無責任に「公教育の機能不全」と断定し、「授業時数の10%増加」をすれば「学力向上」するという思いつきでしかない。ただでさえ長時間過密労働に追い込まれている教員に対して過労死につながるサービス残業を強要し、新たな政策を教育現場におしつけ、混乱を拡大させるものでしかない。あげくのはてに「社会総がかりで教育を再生」だと声高に叫びつつ、子どもに対しては「規範意識を身に付ける」させることによってハードルを越えることができると言っている。
こんなレベルだから、「教育は保護者の経済力にかかわらず、機会の平等が保証されるべきであり、絶対に教育格差を生み出してはいけません」などと、みえみえの嘘をついていても平気なありさまだ。教育予算は次々と削減され、義務制だけでも教職員定数を今後五年間で一万人程度の純減をめざしている。政府与党の本音は「教育の機会均等」を破壊する義務教育費国庫負担制度の廃止と削減をねらい、教育格差を作り出そうとしているのだ。
私学助成予算についても削減ではないか。政府・与党による教育の機会均等条件整備義務の放棄である。報告は、こんなことも指摘せず、全く批判せず、黙認しているのだ。
警察と連携し「毅然たる指導」
提言二では、「学校を再生し、安心して学べる規律ある教室にする」と題して「いじめている子供や暴力を振るう子供には厳しく対処」し、「出席停止制度を活用」するという厳罰主義の適用による排除の強制だ。この延長には、体罰を容認した「毅然たる指導」と「警察との連携」(すでに学校当局は、問題生徒のリストを警察に提供する関係となっている)で力の強制によって押さえ込もうとしている。文科省は、肉体的苦痛を伴わない限り体罰ではないと手前勝手に拡大解釈し、その範囲を広げようとしている。言葉の暴力と物理的暴力による脅迫を子どもたちにおしつけていくことを奨めているのだ。
このような主張は、教育改革国民会議提言(2000年)で行っていたが、なんら検証・総括をすることもなくほぼ同様な提言をしている。あらかじめ破綻が準備されている。要するに、「子どもの権利条約」に基づいて人権を尊重し、真摯にいじめの解決をめざす方向性を創造していこうとする姿勢が全くない。この集約として、「暴力など反社会的行動をとる子供に対する毅然たる指導」を正当化し、根拠法まで制定しようとしている。
提言三は、「すべての子供に規範を教え、社会人としての基本を徹底する」として「愛国心教育」を取り入れた学習指導要領、「道徳の時間」の確保と充実、高校での奉仕活動の必修化を強調している。
社会奉仕活動については、教育改革国民会議において主張していたが、「憲法が禁じる苦役につながる」と批判され、「高校や地域の清掃、校内のトイレ掃除」といった程度の思いつき的内容であったため実現しなかった。ところが安倍首相は、規範意識の育成のための唯一の方法などとシンボル的にアピールするために取り入れられたのが実態だ。
すでに東京都教育委員会は、「日の丸・君が代」強制とセットで奉仕活動の必修化を決定し、二○○七年度からすべての都立高校で導入する。再生会議は、都教委の実践を取り入れながら具体化しようとしている。
かつて中央教育審議会が、青少年の奉仕活動・体験活動推進に関して答申し、奉仕活動を小中高校で義務化することを求めていたが、それは(1)高校や大学で単位として認定し、入試などにその実績評価を反映させる(2)実績をポイント化して公共施設などの割引利用ができる「ヤング・ボランティア・パスポート」制度を創設する(3)地域、学校ごとの奉仕活動状況を全国調査して公表、競争を促すという内容であった。要するに奉仕活動の強要でしかないのだ。文科省は、社会奉仕活動の全国的実施率を公表し、社会奉仕活動を媒介とした競争を煽っていくのであろう。いったいこのような形で子どもたちに内発的な自主性が育成されていくのだろうか。文科省、教育再生会議らの手前勝手な「願望」でしかない。
「教員免許更新制」の導入
提言四は、改悪教基法にもとづく教育推進の担い手としての「教員の質の向上」と設定し、文科省の方針に反する教員を排除していくシステムの構築をねらった教員免許更新制を導入した教育職員免許法の改悪の実現だ。第一次報告で最も押し出したかったテーマだ。
文科省は、これまで各地の教育委員会による「指導力不足教員」認定基準(例えば、授業を成立させられないなど指導力に欠ける教員、生徒の心を理解する能力や意欲に欠けるなど)を全国的に統一し、「指導力不足教員」排除を貫徹していくことを目指している。具体的には、「指導力不足教員」として認定された場合、@指導力不足で研修中の教員は、研修終了まで免許を更新しないA研修でも改善が見られない場合、分限処分などによって学校現場から排除していく。
さらに成果主義評価・給与制を導入し、教員間の分断・競争を押し進めていくこともねらっている。免許剥奪という脅迫と成果主義によるアメを使い分けながら、国に忠実な教員作りを強化していこうとするものだ。超過密長時間労働に追い込まれている教員たちに対する精神的圧迫を強め、ストレスと健康破壊を重ねていくものでしかない。このような状態は、教員と生徒との豊富なコミュニケーションを作り出していくものとはならない。
提言五は、「教育システムの改革」として「第三者機関(教育水準保障機関(仮称))による外部評価・監査システム」を導入し、文科省による評価・監視・指導を強化していくことを目的としている。学校システム上の管理機構の強化として「校長を中心に、副校長、主幹等の新設」する。これらをまとめたものとして学校教育法改悪法案として提出する。職員会議での民主的論議を否定し、教員間の協同作業、信頼関係を分断し、上からの統制・支配をねらっている。
提言六は、「教育委員会の在り方そのものを抜本的に問い直す」として「文部科学省、都道府県教育委員会、市町村教育委員会、学校の役割分担と責任を明確にし、教育委員会の権限を見直す」として、国の権限強化をめざした教育委員会制度を定めた地方教育行政法(地教行法)の改悪をねらっている。現行では文科省が教委に対する法的拘束力がない指導・助言などができるが、強制力を伴う権限を持っていない。報告による提示を取り入れる形で、文科省の指導・処分・統制権を明確化し、改悪教基法の現場レベルでの実現を徹底するのが目的だ。
例えば、正当な組合活動に対して文科省がクレームをつけ、教育委員会に処分するよう指導・要請したが従わないケースがあった。だから文科省は、ストレートに処分権限を与えろということなのだ。地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改悪(教育委員会制度の抜本改革)を許してはならない。
提言七は、「『社会総がかり』で子供の教育にあたる」と叫び、国家のための家父長制と家族主義を押し出し、そのシンボルとして「家庭の日」をデッチ上げようとしている。教育・福祉予算を立て続けに削減し、増税によって家計を直撃しているにもかかわらず、「多世代交流、食育の推進、子育て支援窓口の整備」を掲げたてが、その成立と有効性を証明することもできていない。ているのかを提起することもできていない。さらに「企業も『仕事と生活の調和(ワークライフバランス)』を実現し、教育に参画する」などと財界が望む教育像を代弁するのだ。
政府内での対立と強行突破
報告をめぐっては、教育再生会議と旧来の権益を防衛しようとする伊吹文科大臣や文教族議員、文科省官僚との間で摩擦を発生させきた。教育再生会議のスタート時から伊吹文科相は、「再生会議と中教審が衝突することがないような姿勢で臨みたい。再生会議で大きな枠組みを作り、中教審で実務をこなしていくことになる」と釘をさしていた。
また、教基法改悪に続く安倍首相の成果として演出するために放談会のままでやらせておいて、事務方で報告案を強引にまとめてしまった。教育再生会議の委員でさえも事務方の手法に反発する者も現れるほどであった。
結局、塩崎官房長官は、「閣議決定より本当に実現するという政治的な意図が大事だ」などと意味不明な記者会見を行い、第1次、第2次、第3次報告を各省庁を拘束する閣議決定にしない方針を明らかにせざるをえなかった。
このようなドタバタは続いており、山谷首相補佐官(教育再生担当)が二月七日の講演で(中教審が)「何とかかんとか、大ざっぱなことを延々と議論している」と批判し、中教審のあり方の見直しまで踏み込んでしまった。たが、この発言に対して自民党文教族議員が「中教審にけんかを売ることになりかねない」と反論し、安倍があわてて山谷発言を否定せざるをえなかったのだ。安倍首相は、トップダウン方式で教育再生会議路線の貫徹をめざしたが、派閥力学の妥協の産物としてある政権の脆弱性もあって、軌道修正を繰り返してきたのである。つまり、政権・与党内において、諸傾向が入り交じり、公明党・創価学会の力学も作用させながら直線的な形をとれず引っ張り合いながら進行していく。例えば、自民党の教育改革独走を許さないために公明党によって設置された与党教育再生検討会では、第一次報告のゆとり教育見直しに批判を強め、牽制するという事態も発生している。
このようなプロセスをとりながらも、報告という形でまとめあげ、教育の国家介入である教育振興基本計画の策定、関連法案の改悪を次々と提案し、強行成立を積みあげていこうとしている。報告は、今後、五月に第二次報告を提示し、「骨太の方針2007」に反映させ、十二月までに第三次報告を出す。教育再生会議が描き出す反動的教育政策の姿を正面から批判し、改悪教基法に続く攻撃である教育再生関連三法案に反対していこう。
(遠山裕樹)
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