| 教育基本法改悪は歴史的暴挙だ
かけはし2007.1.1号 |
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国家主義と競争・選別主義に貫かれた教育改革との闘いに全力を |
改悪教基法体
制との闘いへ
参院教育基本法特別委員会で自民・公明両与党は、十二月十四日、安倍政権の派兵大国化作りのための憲法改悪攻撃と連動し、新自由主義的教育破壊と新国家主義に貫かれた教育基本法改悪法案を強行採決し、翌日の参院本会議で法案を成立させた。衆院教育基本法特別委員会(十一月十五日)と衆院本会議(十六日)で野党欠席のまま採決を強行した暴挙に続くものである。われわれは、教基法改悪を糾弾するとともに、この間の共同闘争の成果を防衛し、地域・学園において改悪教基法との対決に向けた闘いの準備に、ただちに入ることを決意する。
そもそも改悪法は、「前文」から現行法の根本理念である「平和を希求する」の文言を「正義を希求する」と書き換え、戦争ができる国作りのための教育へと大変質させてしまった。そして、個人の権利を排除・抑圧するために「公共の精神」と規定し、天皇制と侵略戦争を賛美するために「伝統を継承」した「新しい文化の創造を目指す教育を推進する」ことを強調している。そして、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできたわが国と郷土を愛する」と愛国心条項を明記し、国家に忠実な人材育成と戦争国家を支えるための教育推進法となったのである。
反動的条項はこれだけではない。「義務教育」は、現行法の「九年の普通教育を受けさせる義務を負う」を削除し、小学校段階からのエリート教育の推進、進学競争のための中高一貫教育校の設置、資本が喜ぶ教育特区の拡大など新自由主義的教育改革を押し出した。「学校教育」は「公共の精神」「愛国心教育」「道徳教育」に基づいて、管理・監視・規律を強化していくことを掲げた。「教員」には国家に奉仕することと同時に、全国一律の競争主義、差別・選別主義を促進させていく担い手となることを強要しているのだ。「家庭教育」「幼児期の教育」「学校、家庭および地域住民等の相互の連携協力」では、教育行政や国家権力による家庭・地域への介入を明確にしている。
「教育行政」では、教育への国家・行政権力の介入を禁じた「教育は、不当な支配に服することなく」の文言は残ったが、「国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである」という部分を削除し、「この法律および他の法律の定めるところにより行われるべきものであり」と書き換えた。つまり、この条項とセットで、「教育振興基本計画」を設けて政府・文科省、行政の権限の強化、介入と統制の拡大、予算措置などを強めていこうとしているのだ。具体的には全国学力テストの実施による教育の競争主義の強化、教員の数と給与と財政配分、学校規模と中高一貫校・小中一貫校の設置、学校選択制の導入の計画立案、実施などである。
タウンミーテ
ィングの実態
このように改悪法は、現行教基法の天皇賛美教育の反省、平和主義、教育の自由の体系を根本的に解体し、国家が決めた教育内容を達成するための統制権限を行使するための根拠法となった。その意味では、全く新しい教育基本法と言ってもいい代物だ。この悪法を根拠にして政府・文科省・各教育幹部らは、教育の反動化をやりたい放題で押し進めてくるだろう。
すでにその兆候は、教基法改悪推進運動である内閣府主催の「教育再生タウンミーティング」、文科省主催の「教育改革フォーラム」における「やらせ質問」問題に現れていた。与党による強引な衆参特別委の審議過程において、当時の安倍官房長官、内閣府、文科省官僚のイニシアティブで電通や朝日広告などの広告会社との合作で用意周到に「教育再生タウンミーティング」、「教育改革フォーラム」を準備し、教基法改悪推進派の教育関係者、地域ボス、天皇主義右翼の日本会議会員などを動員して「(教基法改悪支持の)やらせ質問」をさせ、あげくのはてに謝礼金支払い、高額な人件費を支出し、参加者の選別・排除をくりかえしてきたことなどカネと利権にまみれたプロパガンダ戦だったことが発覚していた。
安倍は、「NHK女性国際戦犯法廷」番組改ざん介入を手がけたように、プロパガンダ戦の重要性の観点から「教育再生タウンミーティング」、「教育改革フォーラム」の最高責任者として「活躍」していた。だから、この実態が全面暴露し、自らの犯罪が追及される前に、早々と給与の三カ月分を国庫に返納すると表明し、閣僚らにも給与返納を表明させ、隠蔽工作に入ったのである。教基法改悪法制定のために「なんでもあり」の暴挙は、全国的な改悪法に対する反対、危惧の声を無視して強行採決に突進したように、これからの教育破壊においても同様の姿勢で対応してくるだろう。
政府・内閣府・文科省が改悪法案成立にむけた世論誘導を繰り広げてきたことに抗議するとともに、政府は全面的な事実関係を開示せよ。「未履修」問題、「いじめ自殺」問題が続いているにもかかわらず、改悪法案を強行採決によって成立させ、これまでの教育行政の破綻を覆い隠し、棚上げすることによって問題の所在をあいまい化させようとしている。安倍政権と与党の逃げ切りを許してはならない。
「愛国心」教育
の強制許すな
教基法改悪法成立を実現した安倍政権は、次期通常国会において学校教育法、産業教育振興法、私立学校振興法、人材確保法、教員免許法など多くの関連法の改悪をねらってくる。また、学習指導要領改定作業は中央教育審議会で審議中だが、「愛国心」「公共の精神」などの徳目を盛り込んでくるだろう。
愛国心教育について安倍首相は、特別委員会で「(伝統や文化を)調べたり勉強したり研究したりする姿勢、学習する態度を評価するということではないか」と答弁し、愛国心を学ぶ姿勢や態度を評価対象とすることを明言している。つまり、これまで以上に教員に対して「日の丸・君が代」強制などの愛国心教育を担わせ、生徒の内心にまで貫徹させていくと宣言したのである。
すでに教育現場では、愛国心教育が押し進められてきており、一挙に拡大することは間違いない。「日本の伝統・文化の尊重」「国を愛する心」の教育と称して全国国公立私立の小中学生に国定教材「心のノート」をばら撒き、同時に教員を「日の丸・君が代」強制教育の担い手として強要してきた。その成果として「愛国心通知表」が、全国五十三市区町村二百五十六校で小学校六年生の社会科で採用されていたのだ。改悪法を根拠として不当な「愛国心」教育と通知表が広まるだろう。そして、抗議、反対する教員は、処分乱発で弾圧し、排除を強行してくる。
まさに「都教委に続け」を合言葉とする事態が進行してしまう可能性があるのだ。都教委は、教基法改悪を先取りして「日の丸・君が代」強制を職務命令(2003年10・23通達)として行わせ、不起立など抵抗・抗議する教員には大量処分を強行してきた。そして、「君が代」斉唱時、生徒の声量にまでチェック対象を広げ、内心の自由の侵害を強行してきた。公然と憲法と教基法違反を立ち振る舞っていたのである。
東京地裁判決の
勝利を生かそう
しかし〇六年九月二十一日、東京地方裁判所は都立高校の教職員らが原告で、東京都と都教育委員会(都教委)を被告とした国歌斉唱義務不存在確認等と損害賠償を求めた訴訟(いわゆる「予防訴訟」)について、原告らの訴えを全面的に認めた。10・23通達を憲法19条の保障する思想・良心の自由を侵害するものであると規定し、違法と判断したのである。そして、@原告らに卒業式等における国歌斉唱の際に、起立・斉唱・伴奏の義務がないことを確認 A起立・斉唱・ピアノ伴奏をしないことを理由にいかなる処分もしてはならない B10・23通達によって原告らが被った精神的損害に対する慰謝料の支払いを命ずる判決を言い渡したのである。
また、都教委の「不当な支配」の下で出された校長の職務命令は、教職員の思想・良心の自由を侵害し、教育基本法10条1項で定めた『不当な支配』に該当し違法だとした。完全勝利判決だ! 憲法で保障された思想・良心の自由の重要性を強調し、現行教育基本法の観点から、行政権力による教育への不当・不要な介入を厳しく批判したのである。
石原都知事は、九・二一判決に対して「式典で国旗・国歌に敬意を払う行為は(学校に)規律を取り戻すための統一行動の一つ」だと管理・統制強化の手段として「日の丸・君が代」強制を利用していることを本音で叫び、「義務を怠った教師が懲戒処分を受けるのは当たり前だ」とヤケクソで怒鳴り散らし、控訴した。都教委は、現行憲法と教基法からすれば当然といえる判決であったがゆえに、校長などの管理職の動揺と混乱が発生することを懸念して、都立高全二百七十四校を対象に十月からヒアリングと称して「逆オルグ」を実行した。
安倍首相にいたっては、衆院代表質問(10・3)で「今後とも全国の学校で指導が適切に行われるよう取り組んでいく」、「学校教育で国旗、国歌の意義を理解させ、尊重する態度を育てることは重要だ。学習指導要領を踏まえ、都は適切に判断し、対処してもらっている」と悔しさ一杯で語気を強め、九・二一判決を完全否定し、都教委を防衛した。
伊吹文科相も「法律に基づいて行われる教育行政は正当なものであるとはっきりしている。むしろ、特定の組合に属している教職員の人たちに分かってもらなわければならない」と居直り、「日の丸・君が代」強制に反対する教育労働者への階級的憎悪まるだしの敵対発言を行った。伊吹の主張は明らかに憲法十九条の思想・信条の自由に対する侵害だが、改悪法施行後は『日の丸・君が代』強制を批判する教員を「教基法違反」として処分するという事前通告でもある。
あげくのはてに旭川学力テスト事件最高裁判決(1976年)││1961年の中学全国一斉学力テスト反対闘争をめぐる事件。学力調査が教基法十条にいう「不当な支配」にあたるかどうかが論争点だった││を取り上げ、国には「広く適切な教育政策を樹立、実施すべく、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容について決定する権能がある」などと一面的な判示を強調するだけで、「教育内容に対する国家的介入はできるだけ抑制的であることが要請される」として、「国の決定範囲は無制限ではない」と判断しているという有名な論点を意図的に無視し、動揺を正直に現していた。
被処分者たち
と連帯しよう
石原、安倍、伊吹のグラツキと居直りでわかるように、九・二一判決を防衛し、押し出していくことは、改悪教基法下において強力な反撃のための「武器」となり、有利な攻防局面を作り出していく可能性があるということなのだ。
改悪教基法は、現行憲法の観点からすれば九・二一東京地裁判決が判断したように違憲性が十分に高いのである。つまり、憲法十九条と対立し、矛盾した関係が当面続くことになる。憲法改悪反対闘争は、改悪教基法が違憲法であることを暴き出し、九・二一勝利判決を対抗軸として押し出していくことができる。
さらに有効な「武器」が手に入った。北海道人事委員会は、十月二十三日、中学校の卒業式(二〇〇一年三月)で君が代演奏のカセットテープを止めた教員への道教委による懲戒戒告処分に対して「教職員にも個人としての思想、良心の自由が保障されるべきことは当然であり、式での日の丸・君が代の強制は思想・良心の不当な侵害と解される」、「式の運営について生徒や保護者にも意見表明の機会が与えられるべきであり、こうした過程がなく斉唱・演奏の実施、不実施が決まることは、子どもの権利条約に反する」と明快に判断し、処分取り消しの裁決を行った。九・二一東京地裁勝利判決に続く快挙である。
改悪教基法によって吹き荒れる愛国心教育と不当処分攻撃と対抗するために、九・二一東京地裁判決、十・二三道人事委員会裁決の地平を防衛し、はねかえしていこう。
被処分者たちの新たな闘いが始まろうとしている。都教委は〇四年春の卒業式や入学式で校長の職務命令に従わずに、君が代斉唱時に起立しなかったり、ピアノ伴奏を拒否した小中学校を含め二百四十三人の教職員を懲戒処分を強行した。しかし、約百六十人の被処分者たちは、〇七年一月に都教委を相手取り、処分の取り消しと国家賠償を求める訴えを東京地裁に起こす。改悪教基法、石原都知事・都教委と真っ向と対決する被処分者たちの闘いに連帯していこう。
民間企業型学
校経営の導入
安倍政権は、愛国心教育の推進とセットで新自由主義的教育改革のイニシアチブとして「教育再生会議」を設置し、派兵大国化に貢献する教育再編戦略を提示しようとしている。会議は、日本経済団体連合会のグローバルな戦争と資本大競争を勝ち抜く人材育成のための戦略ビジョンである「これからの教育の方向性に関する提言」(05年1月)、「義務教育改革についての提言」(06年4月)をベースに動き出していた(10月18日)。
会議は、「学校教育の改革」の第1分科会、「規範意識・家族・地域教育再生」の第2分科会、「教育再生」の第3分科会の三作業部会に分けて審議してきており、この間〇七年一月にまとめる中間報告の素案を公表した。〇七年六月までに予算化が必要な施策をまとめ最終提言する予定だ。
会議は、改革の方針の柱として「教育ガバナンス(統治)の確立」などとシンボルを掲げた。これは経団連など財界が「コーポレートガバナンス(企業統治)」をキーワードにして企業の透明性確保や経営管理者の責任の明確化などを示す考え方として使ってきたものを、そのまま教育に適応するというのだ。つまり、すでに行政改革のためにNPM(ニューパブリック・マネージメント、新公共管理)を指針にして合理化を推し進めてきた手法を導入し、マネジメントサイクルと成果・業績主義を導入し、教育再編をねらっているのだ。具体的には、最高経営方針の決定↓具体的な経営目標の設定↓事務事業の現場への権限移譲↓人事・給与を通じた業績達成↓成果に関する評価↓予算・人事・組織の配分などである。
こういったシステムは、すでに東京都教育委員会が都立学校におけるマネジメントサイクルの導入に向けて学校経営計画を策定し(二〇〇二年一一月)、採用してきたものだ。「経営資源」としての教職員の活用のために校長が経営目標を立て、教員に対しては目標を出させ、目標達成度によって評価し、給与も含めて個別管理・統制していくのである。
要するに、会議が言う「教育ガバナンス(統治)の確立」と称する民間企業型経営手法の導入は、石原都知事・都教委による学校経営(人事考課体制、主幹制度、人事異動、教職員管理、学校の統廃合など)方式を全国的に導入していくことになっていくにちがいない。教育を市場原理・効率主義に委ね、教職員を成果・業績主義による管理主義で縛ることをねらっているのだ。
教育の過酷な労
働と成果主義
「学校教育の改革分科会」の第1分科会の第1次中間報告素案は、各学校が1日7時間授業や夏休みの短縮など授業時数を決められるよう、学校の権限を強化することを提唱した。しかし、公立小中学校教員の教員の勤務は、超過密労働、大量の書類作成によって慢性的な過労死労働状態にある。文科省は、〇六年教員勤務実態調査を実施したが残業が平均二時間強という結果で、さらに病気休職七千十七人で、このうち四千百七十八人がうつ病、ストレスという結果をまとめている(十二月十五日)。この過労による病気休職の傾向が、年々増えてきているという評価を出している。
このような実態から明らかなように、教員が忙殺され、健康を害しているにもかかわらず会議は、教員の過密労働を軽減するために、そして子どもたちと丁寧なコミュニケーションを作り出していくために、教員増員と少人数学級を提言をするのではなく、限られた人員でもっと働けという逆行した提言をしているのだ。
すでに小泉政権時に「三位一体の改革」の一環として義務教育費国庫負担金の国庫負担率を現行の二分の一から三分の一に引き下げることを強引に決定し、義務教育費国庫負担金制度廃止をめざしているため、絶対に教員増員を言うことができないのである。会議は、「教育再生」と言いながら、率先して憲法第二六条「教育を受ける権利」、第一四条「法の下の平等」を否定し、憲法改悪と教基法改悪の先取りを行っているのだ。
会議は、あげくのはてに「教員全体の数に比べると、ダメだとレッテルを張られて辞めた先生が少なすぎる」「基準を明確にし、どんどん排除するべきだ」と発言し、「不適格教員を排除するため、あらゆる制度を活用する」との姿勢を打ち出した。
〇六年七月に中教審は、十年ごとに教員に三十時間の講習を義務づける免許更新制を提言しているが、この提言に対して白石真澄・東洋大教授は「中教審の議論を前提に考えるのではなく、ゼロから考え直す」、山谷えり子首相補佐官が「(中教審の答申が)本当に先制の質の向上につながるのか、免許更新制の制度設計について再生会議で議論を詰めたい」と批判し、教員研修を問題のある教員に重点化することも提言した。
教員の評価については、「校長や教育委員会だけの目で行う現状を改め、保護者、学校評議員、児童・生徒などが参画した第三者評価を実施する」と明記しつつ、学校教育法を改正し、副校長や主幹という職を設けることで教職員の階層化を強め、成果・業績主義によって給与配分を行っていこうとしている。教員の試用期間についても「1年から3年に延長すべきだ」との意見が出ており、教員の養成、任用の抜本的改正を検討するとしている。
新自由主義教
育への批判を
このように教員に対する差別・選別・排除を貫徹しようとしているのだ。このシステムは、同時に愛国心教育の担い手として忠実に行っていくのかどうか「あぶり」出し、抵抗教員を改悪教基法違反だとして処分を強行しようとしている。
学力向上のため学習指導要領を改め、「ゆとり教育を見直す」と明記した。「ゆとり教育」政策は、一九八〇年以降、「詰め込み」の是正を軸に導入されたが、九二年の学週五日制導入から変質が始まり、中高一貫校・学校選択制や習熟度学習クラスを導入し競争と選別主義が本格化していったのが実態なのだ。
会議は、競争主義に貫かれた学校選択制、国家主義的統制と序列化のための学校評価、教育予算削減と差別予算配分化のための教育バウチャー制度などの導入検討を強調しているように、「ゆとり教育」の見直しではなく、より小学校段階からの競争と選別主義の強化こそが獲得目標なのである。だから〇七年四月に約四十年ぶりに実施する全国学力テストで、成績のよかった学校の取り組みを公表しろと提言していることに、その真のねらいが明らかではないか。全国学力テストは、子どもと学校を競争させる仕組みであり、点数によって評価し、競争と成果主義に追い込もうとしているのだ。
会議は、教育委員会制度について「硬直化した文科行政の上意下達システム」と批判し、教委の権限を首長に移すために設置義務の撤廃を主張している。さらに、教育委員から互選される教育委員長の輪番指名の排除、問題のある教育委員会に対する国の是正・改善措置要求権限の確保、国が教委の評価のガイドラインを作成するなど、国・文部科学省の関与の拡大や市区町村教委の権限強化をねらっている。
「規範意識・家族・地域教育再生分科会」の第2分科会は、改悪教基法の「教育の目標」の「徳目」、すなわち国家が要求する人間像に到達させるための提言に貫かれている。徳目を身につける具体策として、地域に伝わる伝説や童謡、言い伝えなどを学校で教え、国や地域の伝統を尊重する心を養うという名目で天皇制賛美と愛国心教育を押し進めていくことを強調している。「家族の日」を創設し、「国民運動として家庭教育の再生に取り組むべきだ」と合意し、新たな家父長制の再編と家族主義の強化をメインに押し出そうとしている。
いじめ問題に関しては、新自由主義的社会と差別・選別・競争主義、強者による弱者への権力関係などのあり様を分析し、掘り下げ、総括するのではなく、かつ文科省の「いじめ」の実態を隠蔽してきた教育政策の破綻としての責任性の所在を対象することもなく、いじめた子どもと教師を「懲戒」するという厳罰主義の観点から対処するレベルでしかない。一九九四年、日本も批准した「子どもの権利条約」の視点からの意見は、ほとんど出ていない。上からの政策的押しつけで「いじめ問題」をとらえているにすぎないのだ。
さらに、いじめ問題克服の梃子として社会奉仕が突然、出てきた。社会奉仕は、臨時教育審議会(86年)、教育改革国民会議(00年)で愛国心教育、道徳教育とセットで取り上げられてきたように、この流れの延長にあり、改悪教基法の愛国心条項を根拠として、国家への忠誠心の度合いを点検するために社会奉仕活動を引っ張り出してきたのである。
「教育再生」の第3分科会は、大学や大学院の国際競争力を強化、大学の九月入学を検討するよう明記した。従来どおりの産学協同路線を継承しつつ、大学の研究のあり方、教育研究組織、研究資金配分などについて財界との共同作業によって教育振興基本計画で具体化する。すでに科学技術創造立国政策による科学技術基本計画によって選別的に大学の研究組織に財政配分し、管理・統制を行っているが、このシステムをより拡大化していくことをねらっているのだ。
以上のように会議は、改悪教基法制定を前提のうえで、第十七条「教育振興基本計画」によって策定権限を政府が確保したことによって、教育現場への直接介入と統制、予算措置などを行使していくための青写真を提示することに任務がある。これまでは中教審が基本的なたたき台を提示してきたが、経団連の「教育改革の足取りは遅く、全体としては十分な成果はあがっていない」「教育の質の向上にむけたダイナミズムを生み出していけ」(義務教育改革についての提言)という批判を強めていた。安倍政権は、財界の要求に忠実に応え、トップダウン方式で新自由主義的教育改革を推進していくために会議を設置し、提言をまとめようとしている。改悪教基法との攻防は、教育再生会議の提言、教育振興基本計画の内容に対する監視と批判を強めていく闘いも求められている。
「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」をはじめ全国の反対運動を取り組んできた仲間たちは、十数波にわたる国会前の座り込みと包囲行動、地域草の根集会、抗議声明と署名運動のひろがりなど歴史的な闘いを最後の最後まで闘いぬいた。教基法改悪をめぐるこの四年間の大きな前進と成果を確認しつつ、改悪教基法成立後の闘いを準備していこう。(遠山裕樹)
「お国」のための教育はゴメンだ
採決強行に抗議し座り込みとヒューマンチェーン
十二月十五日午後六時前、参院本会議で教育基本法改悪案が自民・公明の賛成により可決・成立した。われわれは憲法改悪の前哨戦と位置づけられ、教育の国家介入、「日の丸・君が代」と「愛国心」の強制を容認し、教育への市場競争原理の導入と「格差拡大」を促進する教育基本法改悪案の成立を怒りを込めて糾弾する。
九月二十一日の東京地裁で、東京都教委による「日の丸・君が代」処分を「違憲・違法」とする画期的判決が出た。それは教基法改悪案そのものを「違憲」とする論理を内包していた。国会審議の過程の中で、各地の「教育再生タウンミーティング」で政府自ら教育委員会などを通じて「やらせ質問」を組織し、「謝礼金」を支払うなどの世論操作を行ってきたことが暴露され、伊吹文科相自ら「教育基本法改正問題について国民的理解を深めてきた」との政府見解が「適当ではない」と認めてきた。
本来ならばこの時点で教育基本法改悪案は撤回されるのが当然だった。しかし追い詰められた政府・与党は、これ以上長引かせてボロが出ることを恐れ、遮二無二可決・成立路線を突っ走った。
政府・文部省の教育基本法改悪にかけた意図は明白だった。伊吹文科相は、現行基本法と同様に改悪案でも明記された「不当な支配を排除」との文面の「不当な支配」の意味を問われ、「国会で決められた法律、政令、告示、これが国民の意思だ。国民の意思でない力によって教育が行われることを不当な支配という」と答弁した(11月22日)
。つまり政府による介入は「不当な支配」ではなく、日教組などの活動こそが「不当な支配」にあたるというのだ。
伊吹はさらに自民党の岡田直樹参院議員の質問に対して「政府案を作成する段階で、現行憲法はもちろんのことでございますが、自民党が作っております憲法草案との整合性も一応チェックして、この法案を提出しています」と答弁したのである(11月27日)。現行憲法と自民党新憲法草案はその理念、方向において根本的に異なるものである。「自民党新憲法草案」との「整合性」を持つ改悪案は、それ自体ですでに違憲の法案ということになる。こうしたデタラメきわまる法案だからこそ、世論調査でも七割に上る人びとが反対ないし「慎重審議」を求め、臨時国会での成立を望んでいなかったにもかかわらず、安倍政権は「最重要法案」として成立を急いだのである。
学生たちも怒
りをぶつける
国会最終盤の十二月十二日から十五日にかけて国会前には、連日、数千人の抗議の人波が押し寄せた。十二月十二日の参院議員会館での院内集会、「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の行動に引き続き、十三日には午後五時から第四回目の「ヒューマンチェーン」が降りしきる雨の中で四千人を結集して行われた。十四日、十五日には「全国連絡会」が午前九時からの座り込み行動を貫徹した。十四日の参院特別委員会採決に際しては三千五百人が、十五日にもさらに多くの人びとが駆けつけ、怒りに満ちた抗議のシュプヒコールをたたきつけた。
八波にわたり、のべ千五百人の組合員を国会前座り込み行動に動員した北海道教組は、それぞれの集会で闘いの自信に満ちた発言を行った。首都圏や京都などからも初めて政治的活動に参加した学生たちが元気良くアピールした。
闘いは続く。東京都教育委員会から「君が代」斉唱の強制を拒否して起立しなかったことを理由に懲戒処分を受けた百六十人の教職員が、処分の取り消しと国家賠償を求めて十二月二十三日に原告団を結成する。「教育再生会議」をイニシアティブ装置とした新自由主義的「差別」教育と国家主義教育の推進と対決し、「日の丸・君が代」処分を撤回させる裁判闘争を支援しよう。
教育基本法改悪を突破口とした憲法改悪プロセスの加速化をはね返す共同の闘いを、大きく発展させ、「改憲手続き法案」(国民投票法案)の通常国会への上程を阻止しよう。 (K)
「三悪法を廃案へ」緊急行動
反対運動を拡大し戦争国家づくりに対決を!
【大阪】臨時国会の終盤を迎え、子供たちに渡すな危ない教科書・大阪の会、大阪労働者弁護団、とめよう改憲!おおさかネットワーク、大阪ユニオンネットワーク4団体が呼びかけた緊急集会が、十二月十一日にもたれ、百五十人の労働者・市民が参加した。参加者は集会後JR大阪前までデモ行進をし、市民に三悪法廃案を訴えた。
集会では、はじめに井前さん(子供たちに渡すな危ない教科書・大阪の会)が、教育基本法改悪案をめぐる国会の状況を報告した。
「十二月に入って民主党の一部に付帯決議があれば採決をのんでもいいという動きがあったが、今のところ四野党共闘は維持されている。国会内ではいろいろな駆け引きがあるだろうが、国会の外では連日座り込み・リレーハンスト・ヒューマンチェーンが行われている。危ないといわれた六、七、八日は組織的な動員ではない人々が二千人、三千五百人と集まり、八日の日教組中央集会には動員規模を大きく超える一万二千人が参加した。マスコミの報道は下火になっているが、運動はじわじわと拡大し、若者にも訴えが届き始めている」。
「与党は安倍が帰国した後の十五日に強行採決をねらっているが、与野党懇談会に向けてファックス・電話で国会外の声を届け、採決をのばさせるためにがんばろう」。
続いて、共謀罪の状況を永嶋さん(大阪労働者弁護団)が報告した。
「現在のところ、一回も定例の委員会は開かれていない。しかし共謀罪は死んだふりをしているだけだ。政府は条約(国際組織犯罪防止条約)の批准には共謀罪創設が条件になると言ってきた。他国はどうなっているのかの質問に対して、政府は調べたがわからなかったと嘘をついていた。反対する側が様々な角度から研究を積み重ねて最近わかったことだが、米国では三州で共謀罪がもうけられておらず、条約の批准の際に、条文に留保がつけられていることがわかった。三州で共謀罪がもうけられなければ米国の完全な批准はできない。野党は、この件がはっきりしない限り審議しないと言っている。ここまでくると、共謀罪は廃案にするか強行成立させるしかない。この状況を乗り切り廃案にしよう」。
最後に、この日の集会実行委員会を代表して中北さん(とめよう改憲!おおさかネットワーク)が「国民投票法案は今国会では成立させないという与野党合意ができているが、水面下ではその内容のつめが行われている。委員会の審議の中で辻元議員が九条の項について投票方法を質問すると、与党は自衛軍の設置と海外派兵とは切り離さず一体として賛否を問うと答えている。来年通常国会で一挙に成立させようと言う危険な動きだ。防衛省への格上げとあわせ自衛隊法の改悪をして海外派兵を自衛隊の本務にしようとしている。その後は、恒久派兵法・集団的自衛権の部分的合憲化・そしてその延長線上に改憲があるのは明らかだ。怒りを継続させながら運動を広げていこう」と訴え、まとめとした。
(T・T)
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