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電磁波問題国際フォーラムに参加して         かけはし2002.6.10号より

電磁波公害はごめんだ!

「産官学」連合と闘い「知らせていく運動」の必要性を実感

 五月十一〜十二日、両国の江戸東京博物館で、電磁波問題国際フォーラムが開かれた。開催場所の両国では、通信施設を含む高さ二百メートルものタワーの建設計画に対して反対運動が巻き起こっている。今回のフォーラムは両国で反対運動を行っている市民グループと、電磁波問題に取り組んでいる市民団体「ガウスネット・電磁波問題全国ネットワーク」との共同で行なわれた。
 フォーラムでは、米、英、ニュージーランド、イスラエル、日本の研究者や市民運動代表者がそれぞれの視点から電磁波に対する「予防原則」への早急な取り組みの必要性を訴え、日本の市民団体が各地の現状報告を行なった。「危険性が確立していなくても、危険性を示唆する研究がたくさんある」という理由で、「予防原則」を取る国が増えている中、日本の対応の大幅な遅れが目立った。
 報告では、身長、体重、臓器の個人差(体内の磁気器官の大きさなど)、金属フレームメガネ・金歯の使用、近くに高いビルがあるかなどでも電磁波の影響は変わってくるという報告。電磁波によって血液の凝結が起こること。脳の中のある部分が活性化することによる幻覚の発生\臭覚を感知する部分が活性化されることで無いはずの臭いがしてしまう\など多くの報告がされた。
 余談だが、日本テレビの「特命リサーチ」では電磁波により幻覚(幽霊)を見ることがあると放送されていた。また日本からは、労働組合が労働者の電磁波の影響を取上げていたのは「総評」までで、「連合」からは取上げられなくなったこと。メディアに関しては、電磁波問題を取上げると企業などからの圧力、集中攻撃にさらされ、廃刊などに追いやられることがあること。企業が「ミリガウス」を「ミリメートル」と意図的に間違えて報告した例。TVでは、核心に触れる報告になった時にCMに切り替えられた例などもあった。
 協力しない研究者をサポートしないなど、法律には触れないこのようなレベルでの膨大な妨害や、法律を無視した妨害活動によって、必要な情報が国民に届いていないということを痛感した。国内の活動報告では九州で園児を含め二十八人の子どもたちが原告団となった裁判なども報告された。
 昨年六月に国際がん研究機関(IARC)は、極低周波電磁波を「2B」(発がん性の可能性あり)と結論した。そして、今回のフォーラムで目立ったのは、携帯電話基地などから出るマイクロ波の危険性を指摘するものだ。マイクロ波に関しては携帯電話が普及して歴史が浅く、低周波以上に情報に大きな偏りがあると感じた。
 電磁波の危険性が唱えられて歴史はまだ浅い。タバコの危険が認められ箱の裏に「健康を損なう恐れがあるので……」と書かれるまでに最初の訴訟から三十年以上かかった。しかし、JARCが「評価1」(発がん性あり)を出す前から、また企業の「安全論」がまん延する中、それでもタバコ「NO」の選択をする人々は増え続けた。企業に追従した研究者がどう評価しようと、多くの人々は自らの命を守るために、より信頼できる情報を選択しているのである。
 公正な情報があれば、「信頼できる」情報を選択することが出来るが、電磁波に関しては(関しても)圧倒的な資金力や人手などの格差から、情報量に格差が生じている。「安全論」に都合の良い情報はすぐに翻訳され、しかも安価に出版されるが、危険性を証明する研究結果などは、資金力、人手の圧倒的に不足している市民団体などの血のにじむような努力の末、長期間を要してやっと出版されるという具合である。
 「評価2B」にコーヒー、漬物が含まれることで、企業は「問題ない」とアピールするが、「評価1」のダイオキシン以上の発がん性を指摘する研究結果も出されている。「2B」というJARCの「評価過程」と「評価」の意味、その「限界」を判断基準の一つとして位置づけることなしには正確な判断は出来ない。
 また研究者の価値観、何を重視するか、がんや白血病で死んだ人や家族の思いをどこまで共有できるかといった共感能力によっても「評価」や「立場」は左右される。そしてメディアの姿勢や政治のウソにその研究者がどういう立場で臨んでいるかということも知らなければ私たちは現時点での判断を誤る可能性が大きい。
 電磁波の問題が、純粋な科学的根拠を証明するという作業以上に、「薬害エイズ」「BSE(牛海綿状脳症病)」「環境ホルモン」などと同様、「産・官・学」の強固な連合体に対する闘いであることは明らかだ。会場から「因果関係の完全な証明が本当に出来るのか。」といった声が聞かれた。純粋な研究のみの姿勢が、如何に多くの過ちを犯してきたかは歴史が証明している。そして、国民が知ること、知らせていく運動の必要性を再確認した。(Y・N)

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