かけはし重要記事

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                          かけはし2002.6.10号より

「北からの脱出者たちを抱える準備はできているのか」

韓国政府が主導する国際的対策が必要だ

 中国内の脱北者問題をちゃんと解決する方法はないのか。
 あちこちで聞かれるのは、ため息ばかりだ。脱北者たちは生死を賭けて外国公館に身を投じているが、各当事国は足下の火を消すのにきゅうきゅうとしている。日本は、はなから脱北者たちが公館に入って来たら追い払えと指示しており、世界の人権の番人であるかのように「北韓は人権を改善せよ」と攻勢を浴びせていた米国も、いざとなると脱北者たちを無視している。韓国政府も情けなさという点では同じだ。どうにもこうにもならず、こっそり蜜をなめた人のようにただ心配ばかりという体たらくだ。
 脱北者の問題は、まるで時限爆弾のようにカチカチと音を立てて周辺国を超緊張状態に追い込んだ。計画的脱北活動によって注目を受けているドイツ人医師ノルベルト・フォラツェン博士はワールド・カップの期間に千人以上の北韓住民を中国から船で韓国に送る計画だと豪語したところだ。
 だれもが根本的対策を立てるべきだと遅ればせに振る舞っている。けれども挙げる声は高まったものの、まるで中味がない。「ハンギョレ21」は脱北者問題との関連で、現場で、あるいは研究室で長い間、並大抵でない苦労をしてきた専門家四人に解法を聞いてみた。座談会にはチョ・サンホ北韓離脱住民後援会対外協力部長、イ・ウヨン統一研究院専任研究委員、イ・スンヨン「良い友達」平和人権監事、キム・ヒョンドク脱北者・前国会議員補佐官が出席した。



――脱北者たちの外国公館への進入の試みが相次いでいる背景は何だと思うか。

 イ・ウヨン(以下、イウ) ただ座していては苦痛だけが増すばかりなので、外国公館への進入という最後の選択をしているようだ。脱北者問題も累積し、いまや臨界点に達したのではないかという思いがする。
 キム・ヒョンドク(以下、キム) 中国政府の脱北者探索や強制送還のせいで、このような現象が生じているのではないかと思う。中国の脱北者政策は「黙認」ということに近い。脱北者たちが必死になって南韓に来ようとするようになったのは、彼らが中国で暮らしながら南韓関連の情報をたくさん耳にするようになってからだ。中国・朝鮮族も南韓の地を一度踏んでみたいというのが夢なのではないのか。
 脱北者たちは、これまで中国で隠れて生活することにきゅうきゅうとしていて、南韓に渡る方法を知らなかった。外国公館にひとたび足を踏み入れれば南館に行けるという成功の事例が伝わるとともに、外国公館への進入の試みが相次いで増えているのだ。
 イ・スンヨン(以下、イスン) 中国政府は脱北者たちを最初は黙認していて、マスコミに知られて国際社会が問題視すると取り締まりを徐々に強化した。脱北者たちは北韓ではもちろん、中国でもキチンと暮らしてはいけないという自覚を持つに至った。民間各団体は、九七年から脱北者たちを難民として規定することをずっと要求してきた。けれどもこのような要求が国際社会にキチンと伝達されはしなかった。中国や韓国も消極的に対処し、この立場にまでは到達できなかったと思う。


――今回の事態を契機に脱北者問題の根本的解決策を求めるべきだ、との声が集まっている。だが、その中味はない。本当にその解決策はあるのか。

 イスン 脱北の事態は食糧難から始まったものだ。短期的な解決策としては食糧支援以外にはないようだ。北韓住民らが、ひき続き彼らの地でずっと暮らしていくという動機の付与をしてやらなければならない。最近、脱北者たちに会ってみると、食べる問題さえ解決されれば再び祖国(北韓)に戻って暮らしたいという人々が少なくない。
 だが食糧難の解消は長期的課題だ。当面、中国で安全に生きられるのであれば、あえて危険な試みはしないだろう。したがって中国で安全に暮らしていける方案も探さなければならない。現実的に難民規定は困難だ。これは北韓内部の脱北現象を一層、あおるおそれがある。現実的な対案としては脱北者たちに臨時居住証を出してやることだ。中国当局は最小限、彼らを犯罪者と規定してはならない。
 チョ・サンホ(以下、チョ) 脱北者の規模を見ても、この問題は国内外的に「火中の栗」であることに間違いない。みんなが中国を非難するけれども、はたして他の国々もこの問題を簡単に解決できるのかは疑問だ。韓国政府も同じことだ。根本的な対策は北韓の経済的自立を早めればよい。中国内の脱北者たちの人間らしい暮らしの条件を作りあげることも重要だ。韓国政府は北韓とも協議して彼らをして自国民を保護できる最小限の諸措置を用意できるように導くべきだ。
 キム 脱北者問題は未来の南北韓の統合形態を勘案して取り扱うべきだ。つまり急進的であるのか緩やかな統合であるのかによって解決は異なるだろう。根本的な対案を準備するためには世論をまとめあげることが必要だ。北韓住民を積極的に吸収しようとすれば韓国、中国、日本はもちろん米国とも額を寄せてともに悩まなければならない。
 失望すべきは米国が、自分たちは脱北者を受け入れないとしつつ人権保護を云々している態度だ。米国はそれを言う資格がない。穏やかな統一を望むのであれば忍耐心をもって北韓を援助しなくければならない。北韓体制の属性上、すぐにも大きな変化を期待するのは難しい。これを考慮して北韓にも時間を与えつつ、支援を惜しまないようにしなければならない。
 イウ 脱北者をどう見るのかを根本的につきつめてみるべき時だ。憲法によれば彼らは韓国国民だ。憲法の精神に忠実であろうとするなら、彼らを無条件でみんな連れて来なければならない。いったい南側の国民はこれに同意するのか。本当にわが国民として見るのか、単に人道的支援の対象として見るのかなどを、じっくりと推し量ってみなければならない。
 確かにだれもが頭の痛い問題だと言って論議を避けている。韓国は建国以来、たった一人だけを難民として認定した。他の国に、人権を掲げて、ああだこうだと要求する資格はない。中国当局に臨時居住証を発給してくれと要請することもできるだろう。だが韓国も中国・朝鮮族の韓国不法滞在者にこのような措置をしてもいないのに、はたして中国当局にこのような要求をできるだろうか。さまざまな対案が論理的には口にできるようだが、現実性に欠けるのが問題だ。
 そもそもすべての脱北者たちを韓国民として取り扱うとしても、そこから派生する問題はなま易しいものではない。脱北者支援のシステムを全面的に変えなければならない。各種の恵沢も大幅に減じることになりかねない。脱北者たちをすべて受け入れる場合の社会的費用も膨大だ。脱北者たちや南側の国民が、このような不利益をすべて甘受できる姿勢を備えなければならない。
 イスン 脱北者たちを自国民として考え、すべて連れてこなければならない。このためには中国当局の許可が必要だ。彼らが外国公館に飛び込む理由は、韓国領事館や大使館では門前払いをするからだ。少なくとも彼らが中国の地にいる限り、中国当局の許可なしには多くの人々を連れてくることはできない。それに、すべてを連れてくることばかりで事足れりというものでもない。脱北者の収容施設である「ハナ(一つ)院」も彼らをすべて収容できない状況だ。社会的費用などを考慮すれば、やはり食糧支援が最も根本的な脱北者問題の解決策だと思う。
 キム 中国当局の許諾を得られなくて彼らを連れてこられないのではない。より正確に言えば韓国政府が大規模な脱北者たちを収容できないからだ。物質的にはもちろん、国民情緒としても準備ができていない。中国も近頃は以前とは違って国際規範に従う常識的な行動をしている。
 イウ 北韓が問題だ。脱北者たちの現実を改善するためには早く南北関係が好転し、脱北者たちの居住、移転の自由を保障してやらなければならない。持続的な食糧支援に加え、南北関係の改善がなされていけば脱北者たちの苦痛は相当程度にやわらぐだろう。


――脱北者問題を見ている中国、日本、米国など周辺諸国の立場が今回の事態を通じて、よりハッキリと現れたようだ。これら各国が脱北者を見ている視点や政策についての評価は。

 チョ 国際世論の力を改めて確認させられた。計画的脱北の試みによって、脱北者たちに対する国際社会の関心を引くことに、ある程度成功したようだ。脱北問題をこれ以上放置してはならないという雰囲気を作ることの一助となった。各国の身の処し方をめぐって、漠然と批判的な立場を取ることはできないと思う。特に中国政府が脱北者たちを北韓に強制送還せず第三国に追放したことは肯定的に見るべきところだ。いまや第三国への追放は、ほとんど制度化段階にまで入ったものと見られる。
 イスン 中国政府がチャン・ギルス家族の件以後、脱北者たちを第三国に追放するのは大きな転換であるとともに責任ある姿勢を示したものだ。けれどもある瞬間に態度が突然変わる可能性もあると思う。米国や日本からは脱北者問題に介入しないとの立場をうかがわせた。
 イウ 中国政府は国内問題を優先視する。最も苦心しているのは少数民族と宗教問題だ。脱北者問題は、この二つが結合している。したがって敏感に反応せざるを得なかった。米国であれ日本であれ、彼らは根本的に国益を最重要視する。人権は副次的な問題だ。冷静な国際的現実を理解しなければならない。
 キム 韓国や中国政府はそれなりに最善を尽くしたものと思われる。まず両国は脱北の根拠地を用意してくれた。事実、中国公安当局がこうと決めて脱北者の探索に乗り出せば、ただの一人も中国の地に踏みとどまれないようにすることができる。
 イウ 韓国政府としても積極的に当事者として進み出る名分が立った。脱北者問題が国際的にイシュー化されたからだ。公開的に、国際的に韓国政府がもっと積極性を持つことが必要だ。脱北者たちを援助している市民団体との関係も再確立しなければならない。世論の形成にももっと積極的に出てくる必要がある。国際機構との連帯も模索しなければならない。いまや南北当局間の会談のときも脱北者問題を議題として入れなければならない。公式的に取り上げにくければ、非公式の協議を経てでも共同で対処する必要がある。
 キム 中国にいる脱北者たちに会ってみると、北韓政権が脱北者たちを積極的に連れてくる意志がないということを、たやすく確認できる。中国当局もこれをよく承知している。結局、脱北者たちの相当数を南韓政府が抱きかかえざるをえないだろう。
 中国にある脱北者たちを多く連れてくるためには世論の形成が重要だ。全国に散在している廃校などを脱北者の収容施設として作るなど、前もって準備しておき連れてくるのでなければならない。そうすれば北韓や中国当局も協議する可能性が高い。南側での国民的合意がなされ、国際社会で公論化されれば各当事国も反対する名分がなくなるものと見られる。
 中国に出てきている脱北者たちにとって一番良いのは故郷である北韓に再び帰って行くことだ。けれども資本主義社会の甘い味を知った脱北者たちは北韓に帰って生きることはできない。結局、南側が収容する方へと進むべきだ。
 チョ 韓国に入ってきている脱北者たちは二千百余人に達する。今年だけで千人レベルに達するものと見られる。この四年間は毎年倍々ペースで増えている。北韓の食糧難はある程度良くなっても、このような流れはずっと続くものと思われる。いまは、単純で一時的な食糧難から抜け出ようという動機よりは、自発的な脱北、つまり自由に豊かに生きたいという動機の脱北者も少なくない。脱北者問題を一時的な縫合でない、統一に備えた観点から考えてみる時だ。
 キム 急進的な統一も想定することができる。われわれが望まなくとも、そうなることもありうる。世論の集約が急がれる。東西ドイツは最も成功的に統合した国だ。西独政府は道徳的優位に立つために東独の政治犯たちをカネを払って買ってきた。そうすれば統合の後にもリーダーシップを行使できる。韓国政府はわずか五年前まで、政治的価値のない脱北者たちは受け入れなかった。


――脱北者問題を放り出したまま、いかなる対案をも準備できない場合にやってくる最悪のシナリオは。

 キム 脱北者問題をこのまま放置すれば後になって内戦が起きないという保障はない。
 イウ 事前計画的であれ、自発的であれ、脱北者たちが集団行動をする可能性もある。中国当局が突然、態度を変えて脱北者たちをことごとく探し出して北韓に送り返すこともありうると思う。脱北者たちの現在の暮らしは、もともと地をはうようなありさまで、これ以上の最悪はあるのだろうかと思う。
 イスン 現在が最悪だ。南北韓、中国などが全く手を出せない状況だ。韓国政府が、うって出るべき時だ。中国、北韓に大きな期待がかけられないのなら韓国政府が授権能力を示サなければならない。「われわれが責任をとる」と国際社会にハッキリと宣言すれば、問題は意外にたやすく解決、ということもありうる。
 北韓崩壊の可能性もみている。改革・開放が成功すると見ている脱北住民らは、ほとんどいない。改革・開放に成功すれば最も少ない費用や犠牲によって脱北者問題を解決できるだろうが、そうではなくて、ある日、突然に体制が崩れてしまえば外勢の介入や国論分裂など、最悪の状況に直面する可能性もある。

――脱北者問題と関連した国内マスコミの報道の姿勢についての評価は。

 イウ 幾つかの主要マスコミは脱北者問題を、現政府を批判する材料として使っている。問題の本質よりは政府批判にのみ焦点をあてている感じだ。本質をキチンと把握できないので対案の提示も問題の周辺をぐるぐる回っているだけだ。一応、中国内の臨時居住施設、定着村づくりなどの対案が出てきているが、これは中国の現実からは到底、受け入れられない事柄だ。


――韓国政府や民間団体が採るべき措置は何か。

 イウ 優先的で最も重要なことは正確な脱北者の実態調査だ。そもそも脱北者たちが、どんな状態におかれており、どれほど多くの脱北者たちが韓国に来たがっているのかを把握しなければならない。中国当局と協議をして政府が直接乗り出すのであれ、それとも非政府機構を押し立てるのであれ、実態調査は最も急がれる課題だ。その次にキチンとした対策が立てられる。
 事実、脱北者問題が複雑になっていく過程を見ると民間団体にも過ちは多い。彼らは脱北者たちの組織を維持、強化したり、布教の目的に活用するケースが多い。彼らのこのようなアプローチの姿勢が変わらない限り、副作用だけを生まざるをえない。厳しい言い方だが、彼らはいますぐにでも手を引くべきだ。彼らの活動の度が過ぎた場合には社会的制裁も加えなければならない。そうした後に政府と非政府機構との間の役割分担がなされるべきだ。
 重要なことはドイツの事例でも見られるように、北韓当局を刺激せず、脱北者たちを静かに連れてくることだ。関連当時国間の協議体も必要だ。あるいは政府が後ろに下がって後援するやり方で国際機構を前面に立ててもよい。脱北者たちを受け入れるという国もあるかも知れないので、ロシアなど周辺諸国の受容の意思を打診する必要もある。
 イスン 韓国政府が対北包容政策をもっと果敢に推進する必要がある。大規模に支援すれば脱北者問題も解決し、戦争の不安感をいまよりもはるかに減らせるだろうと思う。中途半端な援助をするから、あちこちから批判されるのだ。北韓の食糧難は一年に四千億〜五千億ウォン程度の支援をすれば軽々と解決できる事案なのだ。(「ハンギョレ21」第410号、5月30日付、司会・整理イム・ウルチュル記者)


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