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有事3法案を廃案へ! 継続審議も再提出も阻止しよう! |
今国会が始まる時点では、小泉首相は有事法制や医療改悪法案、郵政民営化法案、個人情報保護法案の主要4法案を成立させて六月十九日の会期末をむかえ、六月二十六、二十七両日にカナダのカナナスキスで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)に乗り込むというシナリオを描いていたに違いない。しかし、その思惑はすべて破綻してしまった。
「陰の外相」と言われ、自民党利権政治の典型であった鈴木宗男元官房副長官がついに逮捕され、「議員辞職勧告決議」が衆院本会議で可決されたことは、小泉内閣がその政策遂行能力を急速に失墜してしまったことの象徴であった。「自民党をこわす」とまで大見栄を切った小泉内閣は、結局のところ、この政官財ゆ着構造に手をつけることができなかったのである。
鈴木宗男の一連の「疑惑」、防衛庁情報公開請求者リスト問題、「非核三原則見直し」発言などの後始末に汲々として有事法制3法案や「個人情報保護」法案の成立は、国会を四十二日間も大幅延長してもなお不可能となった。「小泉改革」の看板の一つである郵政公社関連4法案についても、郵政利権にむらがる自民党内の「族」議員とのかけひきが不調に終わった場合には、成立がきわめて困難になるとの予測が出されている。
一方、むりやり「日本経済に回復のきざし」と楽観論をふりまいてはみたものの、デフレ対策の不十分さが帝国主義諸国から危機感をもって指摘され、景気回復の頼みの綱であったアメリカ経済もニューヨーク株式市場の暴落に示されるように、その先行きへの危機感が広がる中で、「不況からの脱出」の展望はまったく見えてこないのが現実なのである。新自由主義の権化である小泉の「聖域なき構造改革による経済再生」論は、いまや一九九〇年代を主導したグローバル資本主義の危機の深まりの中で、袋小路におちいってしまった。
しかし日本資本主義にとって、今日の危機を克服する唯一の処方せんはグローバル資本主義にもとづく新自由主義的な民間開放・規制緩和政策であり、それにもとづく公的福祉の解体と権利の剥奪による労働者・市民への犠牲の強要以外にない。衆院を通過した医療改悪法案、政府税調が六月十四日に決定した「税制改革基本方針」の中に、それが端的に表現されている。
他方、自民党内での「守旧派」勢力による小泉包囲網の形成にもかかわらず、鈴木宗男逮捕によって大きな傷を負った最大派閥の橋本派には、小泉に代わる首相候補を擁立する条件はいまのところない。この中で、小泉内閣は九月臨時国会前にも橋本派など非主流派の要求を受け入れた内閣改造に踏み切り、政局乗り切りに全力を傾けるだろうと報じられている。こうした党内妥協の産物としての「内閣改造」は、「改革」をスローガンにした小泉内閣の求心力をさらに失墜させ、すでに世論調査で「反対」が「支持」を上回るまでになっている小泉首相を身動きできない状況に追いやる可能性が高い。
だからこそ、危機感にかられた小泉政権と与党は「政治イニシアティブの回復」をかけて、秋の臨時国会で有事3法案などの成立に全力をつくすだろう。われわれは、今からそれに対する闘いを準備しなければならない。
今年前半、日本の労働者・市民運動は、憲法を破壊して日本の「戦争国家」化を推進する有事法制3法案に反対する闘いを全力で展開した。日米新ガイドラインに基づく一九九九年の「周辺事態法」、昨年「九・一一」以後のブッシュの「対テロ」を名目としたアフガン侵略戦争に参戦するための「テロ対策特措法」を受けて、国際法をも無視したアメリカ帝国主義のグローバル戦争に参画し、「自由と人権」を制限して国内の戦時動員体制を作り上げようとする有事3法案の成立は、支配階級にとってまさに最重要の課題であった。
会期延長にもかかわらず、小泉内閣がギリギリまでその成立に固執した有事3法案の今国会での成立が事実上不可能になったことは、もちろん政府側のスキャンダルなど「敵失」の要素によるところもある。しかし「周辺事態法」や「対テロ特措法」の成立を阻止できなかった日本の反戦・平和運動にとって、今回の反対運動の広がりを成果としてどう次のステップに踏み出していくかが問われることになる。
一九九九年の「周辺事態法」国会審議の最終局面において、陸海空港湾労組二十団体と宗教者が呼びかけて東京で行われた五万人集会の構造は、今年の有事3法案反対運動の中でさらに広がった。東京での四・一九日比谷集会(五千人)、五・二四明治公園集会(四万人)、六・一六代々木公園集会(六万人)と連続して行われた「STOP!有事法制大集会」は、ナショナルセンターを横断した労働組合と宗教者、青年・学生、市民を結集する共同行動としてかちとられた。大阪、京都、愛知など各地においてもこの共同行動が拡大した。
連合の一部労組が参加する「平和フォーラム」も市民グループとの共催で、三月から六月まで四次にわたる「異議あり!有事法制」集会を数千人の規模で開催し、五、六月の集会では全労連系をふくむ陸海空港湾労組二十団体が呼びかける集会との「アピール交換」を行った。そして「テロにも報復戦争にも反対!市民緊急行動」などの市民グループも波状的な独自行動で、有事法制反対の世論を喚起する役割を果たした。日本弁護士連合会も有事法制3法案に反対する態度を明確に示した。イスラエルのシャロン政権によるパレスチナ人民への大虐殺反対キヤンペーンも、ブッシュ―シャロンの「対テロ」グローバル戦争と、それに参戦するための小泉内閣の有事法制定に反対する気運を醸成していった。
このように多様に取り組まれた労働者・市民のねばり強い闘いは、確実に世論に反映し、六月段階の調査では有事法制3法案に反対する世論が賛成を上回るところにまで至ったのである。われわれは、この成果を衆院での有事3法案の「継続審議」ではなく、廃案にするところにまで発展させていかなければならない。
小泉内閣は有事法制3法案の成立見送りを受けて、民主党などとの修正協議を積み重ね、秋の臨時国会で成立させるシナリオを描きはじめている。これは衆院通過も断念して継続審議にした上で、閉会中に与野党による修正協議を進めるというものだ。他方、自民党と民主党の若手議員の間には、現在の有事3法案をいったん廃案にした上で「国民保護法制」などをふくむ法整備計画を盛り込んだ「プログラム法案」を成立させ、それをもとに来年の通常国会で新たな有事関連法案を成立させる、という動きもある(読売新聞6月25日)。われわれはこうした議会内の与野党による取り引きを許さず、有事=戦時法案の廃案と再提出阻止をめざさなければならない。
ブッシュ米政権は、「対テロ戦争」における先制攻撃を明言し、その際核兵器の先制使用も辞さない新たな戦略ドクトリンの具体化に入っている。六月十一日の演説でブッシュ大統領は「全力を挙げ悪と戦う」と改めて「対テロ戦争」の推進を公言した。
そしてこの核先制使用をふくむ新たな戦略ドクトリンにおいては、日米欧にロシア、中国を加えた共通の「安保枠組み」づくりが必要である、としている(毎日新聞6月18日夕刊)。そして小泉政権が、この核先制攻撃をふくむ「対テロ戦争」を全面的に支援する態度を取っていることは、二月の日米首脳会談でブッシュが「われわれはイラクを攻撃する。間違いなくやる」と明言したことに対し、小泉が「テロとの戦いで日本は常に米国とともにある」と答えたことに示されている。当然にもアメリカは、この小泉発言をもって「イラクとの戦争で日本側の了解をとりつけた」と判断しているのである(毎日新聞6月9日)。
この対イラク戦争とともに、ブッシュ政権はフィリピンにおける軍事作戦をエスカレートし、「残存アルカイーダ掃討」を名目に、アラブ・アフリカなどで新たな大規模軍事作戦を計画している。それがイスラエル・シャロン政権によるパレスチナへの侵略・虐殺の拡大に連動していることは言うまでもない。
小泉内閣が有事法制3法案の成立を急いでいるのは、ブッシュのこうした「対テロ」グローバル戦争の新たな展開に呼応し、それを軍事的に「支援」するためである。われわれは、ブッシュのグローバル戦争を阻止する国際的な運動の一翼を担って、有事法制3法案廃案・再提出阻止の行動を発展させなければならない。(6月25日)
(平井純一) |