かけはし重要記事

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読書案内 スーザン・ジョージ著/杉村昌昭訳――作品社かけはし2002.6.17号より

『WTO徹底批判!』

超国家的巨大企業の代弁者の正体を暴く

 現在、貧富の格差を広げ地球環境を破壊する新自由主義的グローバリゼーションに反対する運動が世界中で大きく高揚している。この新自由主義的グローバリゼーションを推進している中心的な存在であり、反グローバリズム運動の攻撃の的となっているのがWTO(世界貿易機関)である。
 本書は『なぜ世界の半分が飢えるのか』(朝日新聞社)などの著作で知られ、ATTACの副代表も務めているスーザン・ジョージが、WTOの成り立ちや仕組み、ねらいなどについて徹底的に明らかにし、その危険性を暴露したものである。

 本書では、WTOが「超国家的企業」(スーザン・ジョージは普通言われるところの「多国籍企業」についてその出自の国の政府との緊密な結びつきを強調するためにこの用語を使っている)の利益の代弁者と化してしまっていることが詳しく明らかにされている。アメリカやヨーロッパの実業界のロビイストたちの具体的な活動の様子も紹介されているが、WTOと超国家的企業の結びつきのあまりの露骨さにはただもうあきれるばかりだ。市民はもとより途上国の政府までも排除したところでつくられた、一握りの超国家的企業の利益を優先する規則が、市民生活と民主主義にたいして重大な脅威になっている――これが本書から浮かび上がってくるグローバル経済の姿である。
 本書のなかでも特に力が入れられているのが「サービス貿易に関する一般協定」(GATS)への批判である。WTOの前身であるGATT(関税と貿易に関する一般協定)が工業製品や農業製品のみを対象としていたのに対し、WTOは知的所有権やサービスといった非物質的な分野に対しても強力な権限を持っている。
 スーザン・ジョージは、極めて意味の捉えにくいGATSの条文の「テクスト解釈」を試みることによって、WTOのねらいが、郵便や保健・社会福祉、教育などほとんどすべての公共サービス分野を民営化し、超国家的企業のもうけのために開放することにあることを暴露している。まさに人間活動のありとあらゆる側面を商品化し、もうけの対象にすることがねらわれているのである。このことが貧困の拡大や環境破壊などをますます激化させるのは想像に難くない。反グローバリズム運動においてなぜ「世界は商品ではない!」というスローガンが掲げられているのかがよくわかる。

 スーザン・ジョージは、WTOは「ドラキュラ戦略」におあつらえむきの組織だと言う。ドラキュラは日の光にさらされることに耐えられない。WTOのやろうとしていることはあまりにひどいので、それが十分に暴露されるならばWTOは市民からの強い批判にさらされ、これに耐えることができない、と言うことであろう。新自由主義的グローバリゼーションに反対する運動の前進にとって、WTOの超国家的企業の利益代弁者としての正体を暴露していくことが大きな力になることは間違いない。
 このことは、WTOがどのような機関であるかが十分に知られているとは言えない日本においては特に重要だと思われる。日本では、WTOとはブロック経済化の危険をはらんだ保護貿易主義に抗して自由貿易体制を守ることを目的にした国際機関である、といった理解がいまだに一般的なのではないだろうか。そのため、WTOをめぐっては「自由貿易か、保護主義か?」と言った議論がなされがちである。
 しかし、WTOの具体的な活動についてふれることのないままこのような抽象的な議論に終始するのは全く不毛である。反グローバリズム運動は保護貿易主義やブロック経済化を主張しているわけではない。WTOのつくる規則が一握りの巨大企業の利益のために世界中の人びとの生活を犠牲にし民主主義を破壊していることに反対しているのである。

 このことをWTOの現実の姿に即して具体的にあきらかにし、WTOが推進しているような貿易の自由化が本当に望ましいものなのかどうかを大きな争点にしていくことがもとめられている。本書はそれを成し遂げていくための最良の手引きとなるであろう。
 この日本でも東京、大阪に続いて京都でもATTACが結成され、新自由主義的グローバリゼーションに対抗する運動のうねりが始まろうとしている。この運動を力強く大きく発展させていくために、一人でも多くの人に読んでもらい、また学習会などで大いに活用してもらいたい本である。(堀川俊弘)


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