【大阪】八月十日、大阪北区民センターで「アジア民衆とともに8・15を問う! 小泉靖国参拝を許さない8・10大阪集会」が大阪平和人権センター(旧総評系、JPUなどは脱退)と日朝日韓民衆連帯八月行動実行委員会の主催で開かれ、八百五十人の労働者市民が参加した。
尾辻かな子大阪府会議員が司会をし、田淵理事長が主催者あいさつで、「次期首相の最有力候補の安倍は小泉以上のタカ派だ。靖国も平和も今後も厳しい情況だが、政治的にやっつけることだ。次の参議院選挙では野党が過半数になり、衆議院では自民党に変わる政権の展望を開こう」と述べた。
侵略戦争を肯定す
る安倍晋三の思想
続いて、森田実さん(政治評論家)が「小泉政治全面批判―8・15と靖国」と題して、また朴一さん(大阪市立大教授)が「アジアに対する戦争責任と靖国」と題した講演をした。
森田さんは、『米国に食い尽くされる日本』(文藝春秋から出版の森田さんの対話集で、最近よく売れているとのこと)の例を上げながら、小泉政権はブッシュの傀儡政権だ、日本は米国の属国になった、日本は戦前の大政翼賛会と同じようになった、と次のように述べた。
「戦後のジャーナリズムは米国を美化しすぎた。今のジャーナリズムは、完全に小泉を後押ししている。イラクの陸上自衛隊は撤退したが、航空自衛隊は戦闘地域に加わるようになった。この明らかな憲法違反を日本のどの大新聞も批判していない」。
「安倍が出版した『美しい国へ』の内容の半分以上は中西輝政京大教授と櫻井よし子との対談だ。この二人は日本の対中国軍事行動を主張している。彼らが安倍のブレーンだ。安倍は、極東裁判を受け容れる必要はないといっている。小泉ですら尊重するといっているのに。自民は安倍になびき、公明党までついて行こうとしており、これを新聞記者が応援している。戦前の日本政府は、一九四五年七月に出たポツダム宣言を無視したため、広島・長崎の悲劇を招いた。その後天皇を戦犯に問わない代わりに戦争指導者を問うとして極東裁判を受け容れたのだ。今になって何を言うのだろう」。
「東京では、政治家が米国批判をすると、事務所にものすごい数のファックスが入るという。中国は内部矛盾を外に向けるために日本批判をしているのだという経営者がどこにでもいるようになった。百六十万人の農業人口の四十万人を減らすと言っている。日本は格差社会だ。食えない者の犯罪が増加する。それが爆発しそうになったとき、安倍は外に向かって出て行くのではないか。こういうことは平和と思っている時代に準備される。このまま行けば、日本の若者は米国の弾よけにされるおそれがある。元自衛隊最高幹部などのOBも将来を憂いている」。
最後に森田さんは、「今日本は戦争へか思いやり政治へかに二分されつつある」と述べ、思いやりのある平和な政治を求めて闘うべきだ、自分も運動に身を投じていくと語った。
危険な排外主義的
国家主義の浸透
朴さんは、「市の税金で雇われている反日教授!韓国人で公務員なのに内政干渉をしている」とバッシングを受けている。最近も学長に呼び出されて注意されたという。しかし、朴さんは内政干渉ではないと、次のように述べた。
「朝鮮人軍人軍属の遺書を調べている。台湾人や朝鮮人はあの戦争に巻きこまれ、鉄道建設などで上官の命令でやったことが、捕虜虐待であるとして(B・C級戦犯として)処刑された。戦後は援護法の対象から外された。しかし、戦争責任だけはしっかりとらされている」。
「学生は、同じようなことを英仏等もやっていると言うが、彼らは補償は植民地人を先にやっている。日本は違う。しかも日本は戦死者になっても国のために利用している。靖国には二万人の朝鮮人が合祀されている。靖国とは何か。戦争で無駄死にした人の死に、国のために命を投げ出したと意味を与えるところだ。靖国は、日本は欧米からアジアを守る戦争をしたのだと言っている。朝鮮人の親たちは、『息子の死は無駄死にだった、無駄死にさせたA級戦犯と一緒に祀られているのは悔しい』と訴えている。これは内政干渉ではない。小泉や安倍は、靖国参拝に国民の半分以上が反対しているのに、中韓の批判だけを取り出してナショナリズムに訴えている。日中韓関係をどこかで区切りをつける必要がある。それは靖国参拝しないことだ」。
そして最後に、「どうすればグローバリゼーションの中で生きのびていけるかを考えなければいけない。配慮ある外交をしてほしい。韓国・中国ではなく、日本人の手でけりを付けてほしい」と述べた。
講演の後、日本の台湾侵略と原住民の闘い・靖国合祀取り消しの闘いのビデオ上映と、翌八月十一日に合祀取り消しで大阪地裁に提訴する原告からのアピールがあった。閉会のあいさつは、合田さん(源氏ヶ丘教会牧師、ヨンデネット大阪共同代表)が行った。
(T・T)
「魂を返せ」と遺族が提訴
靖国神社合祀取り消し求める初めての裁判
【大阪】旧日本軍人・軍属の遺族が八月十一日、靖国神社合祀の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。原告は日本人が浄土真宗の僧侶ら八人、台湾原住民が一人。靖国神社合祀取り消しを求めた訴訟は初めてである。
靖国の神は戦没者であるが、戦争にかかわって死んだすべての者ではなく、空襲や艦砲射撃によって命を失った市民は含まれない。戦争に役立って死んだと見なせる者を、祀る側が一方的に選別して神にし、見習うべき模範とするのだ。それゆえ、靖国を利用する者は必ず「敬意と感謝」を強調する(靖国合祀取り消し訴訟提訴の経緯より)。
過去何十年以上も前から合祀取り消しを要求してきた遺族に対し、靖国神社はことごとくこれを拒否し続けてきた。この人たちは、靖国神社に合祀されている親族を取り戻して、別の宗教によって靖国と同じように丁重に祀ってもらいたいとか、分祀されたいと思っているのではない。このような祀り方、このような死者の意味づけ自体を拒否している。国が植民地化され、高砂義勇隊として戦争にかり出された台湾原住民の遺族は、「高砂義勇隊は日本人ではない。靖国は霊を返せ(還我祖霊)」と要求している。
日本・韓国・台湾・沖縄の人々が小泉靖国参拝違憲訴訟をともに闘ったことの延長線上に今回の訴訟が準備された。
被告は国と靖国神社。原告らの請求は、@被告は連帯して原告各自に百万円の損害賠償を支払えA靖国神社は、合祀者一覧表の原告名に対応する合祀者欄記載の氏名を、霊爾簿・祭神簿・祭神名票から抹消せよ、である。
靖国神社は戦後一宗教法人となった。しかし、遺族の承諾を得ることもなく、遺族からの申請がなくても、戦没者の名を明らかにした英霊・神として合祀する祭祀を続けてきた。それを可能にしたのは、一九五六年四月十九日、厚生省引揚援護局長名の各都道府県宛の通知「靖国神社合祀事務に対する協力について」(合祀協力通知)と地方公共団体による全面的な協力により、靖国神社に提供された戦没者の氏名・階級その他死亡の事実関係等に関する情報であった。
原告らの追悼の自由は靖国神社によって違法に侵害され、また国による合祀協力によって違法に侵害された。国と靖国神社は原告らの同意を得ることなく、積極的に靖国神社独自の宗旨にもとづく合祀を進めてきた。原告らの損害賠償請求の根拠は、憲法20条1項(国の宗教活動の禁止・政教分離)と同89条(公の財産支出・利用の制限)違反であり、民法709条により権利を侵害した場合、損害賠償の責めを負うというものである。また、霊爾簿等からの氏名抹消は、憲法13条によって保障されているという包括的基本権としての追悼の自由・自己決定権にもとづくとしている。
これ以上死者を
おとしめるな!
提訴の日の夕刻からエルおおさかで「合祀はイヤです訴訟」決起集会、ともに闘う会の発足集会が開かれた。
最初に、原告が一人ずつ思いを述べ、弁護団からも一人ずつ裁判に臨む態度表明があり、加島弁護士が、この訴訟の特徴を解説した。
原告は、この件で訴訟をする最後の世代であるとの思いが共通していた。「合祀は明治以来の伝統を受け継いでおり、事前に遺族の承諾を得ることはない」と靖国神社に言われたという。靖国は民衆の要求でできたのではなく、死んでも死者を利用していることにがまんができない、死者がおとしめられ続けているのを止めさせなければならない、合祀は人間存在の抹殺だ、戦没者を解放し、自らも靖国思想から解放したい、との意見表明があった。
戦後六十年たった二〇〇五年、こちらから「お伺い」して初めて合祀されていることがわかった、との報告もあった。原告団長の菅原さんは二十年間十回にわたって合祀取り下げを求めてきたが、無視された上、「お父さんも英霊として祀られることをよろこんでいるかもしれない」と言われたという。台湾立法院議員のチワス・アリさんは、立法院議員二十八人の合祀反対署名を持ってきたと語った。
加島弁護士は、「今までと違うのは、今回の訴訟が靖国そのものをターゲットとしていること。合祀に協力した国にも損害賠償請求している。戦後すぐ、祭神の名がわからない状態で臨時招魂祭をした。その後、靖国は十万、二十万と戦没者を選別して合祀をふやした。逃亡兵や治安維持法違反で逮捕歴のある者は合祀されていない。こんな事が靖国に分かるわけがない。それは国の協力があったからだ。このようなことが十五年間、一九七一年まで続いた。現在二百十万人が合祀されているという。この訴訟では、靖国に対しては信教の自由も政教分離も持ち出さない。合祀取り下げとなれば、裁判所が宗教法人に宗教行為を命令することになり、政教分離に違反するからだ。でも、この裁判によって新たな政教分離の地震が起こるだろう」と語った。
この後、合祀取り下げ訴訟の初めての訴訟を闘った中谷康子さん(山口自衛官護国神社合祀拒否訴訟原告)が当時のことを静かに語り、今回の訴訟に対する期待を表明した。続いて、韓国・沖縄の合祀取り下げ訴訟の準備が報告された。最後に、「合祀はイヤです訴訟」の事務局長の菱木さんが発言し、「今までどうしてこの訴訟ができなかったのかというと、宗教行為を要求することには無理があるからという理由からだった。簿から氏名を取り消せ、では全弁護人が一致している。この訴訟を通して、靖国はこんなおかしな所だということが広く知れわたれば、靖国はなくなったも同然だ」と述べ、靖国にはA級戦犯だけ残ればいいと言って参加者を笑わせた。(T・T)
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