| WTO/FTAにNO! かけはし2006.7.3号 |
大企業と大国が主導する「アジア統合」に異議あり!
六月十七日、文京区民センターで「大企業と大国による『アジア統合』に異議あり!人々のアジアを足元からつくる6・17シンポジウム」が同実行委員会主催で開かれた。シンポジウムには、韓国、タイ、フィリピンの社会運動団体のゲストを招き、アジア各国の立場から、WTO・FTAの推進する新自由主義的グローバル化の問題とそれに抗する社会運動の現状の報告を受けた。
会場には、同日開催される「米軍再編反対・東北アジアに平和を!6・17行動」の仲間も駆けつけ、世界規模での米軍再編は、世界的な反グローバリゼーション運動への軍事的物理力に他ならないとの連帯のあいさつが交わされた。
ジョセフ・ブルガナンさん(フィリピン/ストップ・ザ・ニューラウンド・コアリション)
ジョセフさんからは、まず、六月十五日昼WEF(世界経済フォーラム)東アジア会議議長への申し入れ行動の模様が話され、WEF広報部長は自分たちも世界をよくしたいのだと話したが、彼らの言う開発は私たちの考えと逆であり、新自由主義を広めるものでしかないと断言し、続いて、WTOによってもたらされる途上国の影響について報告した。
たとえば、非農産品市場開放(NAMA)交渉では、「スイス・フォーミュラ」とよばれる関税引下げ方式が導入されたが、それは途上国の非農産品(林水産品・工業製品)の関税収入を現在の四一%まで下落させる。ジョセフさんは、こうした関税収入の低下は、途上国の貧困削減、再配分、開発政策に悪影響をもたらすと共に、WTOの影響で、フィリピンは自国の政策を自国で決める選択の余地を狭めつつあるという。
もともと、フィリピンには国内産業を保護するための法律、条例が数多く存在したが、それらは一九九五年のWTO加盟後、自由貿易の障害になるとして次々と廃止されてしまったという。こうした現状を前にして、途上国はいま経済的にも政治的にも、WTO交渉に疑問を持ち始めている。「今後、フィリピンのような途上国が、どのような姿勢を取るのかが、WTO交渉のカギとなるだろう」と、結論づけた。
キンコン・タリンタラックさん(タイ/FTAウォッチ)
キンコンさんからは、自由貿易体制のもとで、タイの小農民がどのような被害を被っているのかについて図や写真を使って報告がなされた。現在、タイ政府は中国、オーストラリア、日本、ニュージーランド、米国などと二国間FTA交渉をすすめ、輸出指向型の農業を奨励しているが、キンコンさんは、こうした政策がタイの小農民の生活を破壊していると述べた。
たとえば、タイと中国は、アーリー・ハーベスト(早期収穫:農産品の関税撤廃の前倒し実施)として、すでに農産品の自由貿易を実施しているが、その結果、ニンニクなどは三五%も価格が落ちたという。こうした貿易体制のもとでは、輸出指向産品でもうかるのは一、二の大企業だけで、小農民はいくら努力しても借金を増やすばかりである。そして、医薬品などへの知的所有権の強化を目論むタイ―アメリカFTA交渉に反対する最近の大きなデモでは、労働者、農民だけでなく、医療関係者・エイズ患者たちも多く参加したことを報告した。
最後にキンコンさんは、この様な企業主導・先進国主導のグローバル化に反対し、「公正な経済を築かなくてはならない」と話した。
ピョン・ジョンピルさん(韓国/韓米FTA阻止汎国民運動本部)
ピョンさんからは、韓米FTAによって予測される韓国への影響について報告があった。ピョンさんは、韓米FTAが韓国農民を半減させること、ほとんどすべての公共サービス部門を民営化してしまうこと、投資のさらなる自由化を促進することが指摘し、そして、この韓米FTA交渉開始に先立って、韓国政府は四つの規制の撤廃を突然発表したことが民衆の怒りをかっていると話した。それは、アメリカ製薬会社が要求していた薬価上限制の一時廃止、アメリカ産輸入車への排気ガス規制の撤廃、BSE発生で輸入停止となっているアメリカ産牛肉の輸入再開、そして、年間百四十六日あった韓国映画のスクリーン・クォータ制の半減であった。
このように、アメリカのFTA戦略は、WTOでできなかった分野の自由化をすべて盛り込み、全体的・包括的な内容でアメリカ的基準=ゴールド・スタンダードを作っていくことにあり、また、FTAと軍事の関係にもふれ、アメリカがFTAを結ぶのは軍事的に重要な拠点となる国々であることが指摘された。
そして、こうした大きな権力に対抗するためには、「民衆サイドも共同戦略、共同行動を具体的に練り上げなくてはならない」との力強い提案がなされた。
輸出指向型農業と
労働力移動自由化
報告後、会場からはゲストにたいして、日本との間で進められているFTAやEPA(経済連携協定)などについての質問が投じられ、意見交換がなされた。とくに、輸出指向型農業に対する農民の考えについて、キンコンさんから、日本とのFTA協定成立の時、政府やマスコミは日本に農作物が輸出できるようになり喜ばしいことだと宣伝したが、タイの農民はだまされ続けてきたことをよく理解している。例えば、タイ農家は、鶏肉など輸出用に飼育してきたが、結局大企業に安く買いたたかれるだけだった。輸出指向型農業より小農民の食料主権を求める関係を作るべきだと補足した。
また、看護師・介護師の移動の自由化については、ジョセフさんから、貿易の自由化の進行でフィリピンでは国内産業が崩壊し、国内での雇用が少ない。これが海外へ出稼ぎに行く圧力となる。そして、フィリピンでは看護師が大量に海外へ流出したため、深刻な医療低下に悩まされている。また、海外での移住労働者の労働条件の酷さも問題となる。
最後に、日本政府の対応について、日本社会の少子高齢化対策から看護師・介護師の移動の自由を認めるというのは勝手すぎる、自国の責任で医療制度の充実を図るべきであると批判した。同時に、今後はこうした特定のイシューについて、「密接な情報交換のメカニズムをつくり、共同のキャンペーンをはっていくことはできないか」という提案もなされた。この情報共有、共同行動の必要性については、ピョンさん、キンコンさんも同様の意見を述べており、最後に日本側からもアジア民衆の共同のネットワーク・行動をつくりあげようとの提案があり、シンポジウムは幕を閉じた。 (S)
「働きすぎの時代を変えよう」
日本型エグゼンプションを許さないシンポジウム
六月十三日、総評会館で「『働きすぎの時代』を変えよう! 日本版エグゼンプションを許さない」シンポジウムを日本労働弁護団が主催、過労死弁護団全国連絡会議が協賛して開かれた。
冒頭、労働弁護団の宮里邦雄会長は「わが国の雇用における最大の問題は長時間過密労働だ。自律的な働き方にことよせて労働時間規制を改悪するたくらみに強く反対する」とあいさつした。
『働きすぎの時代』(岩波新書)の著者である森岡孝二関西大学教授は「米国のように企業が短期的利益を求められる結果、常に人員削減が行われ労働者が働きすぎに陥っている社会でいいのか」と警鐘を鳴らす講演をした。
シンポジウムでは過労死弁護団の川人博さんは「総合職だった二十代女性の過労自殺の事例を紹介し、新制度が導入されれば多くの労働者が一層の長時間労働を強いられ、過労死の危険がより深刻になる」と統計資料を見せながら新制度導入を強く批判した。 同日、厚生労働省は、米国のホワイトカラー・エグゼンプション(労働時間規制の適用除外)を参考にした「自律的労働にふさわしい制度」の創設を盛り込んだ労働政策審議会労働条件分科会に提示した「素案」を発表した。この分科会に出席していたJAMの仲間が、早速「素案」を資料として会場に配布、分科会で出された労使それぞれの意見を紹介した。また、シンポジウムの司会をしていた日本労働弁護団幹事長である鴨田哲郎弁護士が「素案」のキー概念になっている「自律的労働」がいかにいい加減なものかを労働現場の状況にそって指摘した。
最後に、「21世紀にふさわしい人間らしい労働時間規制を」と訴えるアピールを確認し、ホワイトカラー・エグゼンプションの導入を阻止する闘いを全国的に強めていくことを確認した。 (D)
解説
残業代不払い制度などに固執
厚労省が契約法・時間法見直しで「素案」提示
六月十三日、厚生労働省は労働政策審議会の労働条件分科会に対し、「労働契約法制及び労働時間法制の在り方について」(案)と題する文書を提起した。七月に予定されている「中間まとめ」の素案になるものだ。「ホワイトカラー」労働者に残業代を払わないで済ませる制度(自律的労働時間制度)や、解雇の金銭解決制度、経営者による一方的な作成・変更が認められている就業規則を労働契約とみなす仕組みづくりなど、労働側が反対してきた項目が並んでいる。
素案は、「自律的な働き方をすることがふさわしい」労働者を対象に、労働時間、休憩、割増賃金、深夜割増の規定を除外する制度(自律的労働時間制度)の導入を打ち出した。
アメリカのホワイトカラー・エグゼンプションを参考にしたもので、経営側が導入を強く求めてきた。アメリカで「残業代取り上げ制度」と言われて、不払い残業を合法化するねらいが明らかな制度である。
厚生労働省は八時間労働制など国際的労働基準を踏まえ、労働者保護行政をまがりなにも推進してきたはずなのに、残業代不払い制度を提起するのは「過労死」など労働者への苛酷な労働条件を押しつけるものだ。
労働契約法に関して、素案では裁判で解雇が無効とされた場合に労働者の職場復帰を拒める制度(解雇の金銭解決制度)、複数の労働者代表と使用者が合意すれば就業規則の不利益変更に合理性を認める仕組みづくりなどを求めている。
さらに、審議会では以前に出された研究会報告(今後の労働契約法制の在り方に関する研究会報告)を検討のベースにしないことを約束していた。ところが、「検討の視点」も「素案」も報告の内容そのものだ。しかも、審議の中で使用者側は「労働契約のルールは必ずしも新法で定める必要はない」と主張している。
厚生労働省は年内に最終まとめを行い、来年の国会に労働契約法案、労働基準法改正案の提出をねらっている。これを許してはならない。 (M)
投書
韓国映画「クライング・フィスト」を見て
S M
4月に、新宿武蔵野館2で「クライング・フィスト」(リュ・スンワン監督作品)を見た。
ストーリーを紹介したい。アジア大会の銀メダリストとして名を馳せた人気ボクサー、カン・テシク(チェ・ミンシク)は事業に失敗し、莫大な借金を抱えてしまう。テシクは、生きるために「殴られ屋」として街頭に立っている。テシクは、妻(ソンジュ/ソ・ヘリン)と息子(ソジン/イ・ジュング)にも去られてしまう。酒に酔うテシクの目に「新人王戦」のポスターが焼きつく。ケンカとカツアゲの荒んだ毎日を送るユ・サンファン(リュ・スンボム)は少年院に送られる。サンファンは、そこで刑務主任(アン・ギルガン)にボクシング部へと誘われる。サンファンは、ボクシングに夢中になる。だが建築現場で働く父(キ・ジュボン)は事故死し、祖母(ナ・ムニ)も病に倒れてしまう。サンファンは「新人王戦」に出る決意を固める。そして「新人王戦」の予選が始まった……。
これは、社会の「負け組」に光を当てた映画だ。そういう意味では、この映画には「シンデレラマン」(ロン・ハワード監督作品)と共通する部分がある。ただ、「シンデレラマン」の場合は主人公が1人だけだが、この映画には主人公が2人いる。その点が異なっている。「シンデレラマン」の場合は映画を見ていて1人を応援したくなるが、この映画の場合は2人共応援したくなってくる。両方を応援したくなる軍国主義的映画があり得ないとすれば、この映画はある種の反戦映画或いは反戦的映画であると言えるかも知れない。この映画は、人が人を殴る事を美化してはいない。この映画は、人が人に殴られる事の痛みを描いている。そういうボクシング映画だ。この映画は、「シンデレラマン」よりも面白くはないかも知れないが、内容は「シンデラマン」よりも良いような気がした。「安楽死」を肯定する「ミリオンダラー・ベイビー」(クリント・イーストウッド監督作品)は、ぼくは好きになれない。
ぼくの誤解でなければ、この映画には「精神障害者」を差別する表現があった。字幕が白くて見過してしまう部分があった。
ストーリー紹介の部分で、この映画のプログラムを引用に近い形で参考にした。なお、「クライング・フィスト」は、2005年第58回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞している。(06年5月28日)
「クライング・フィスト」/2005年/韓国映画/英題 CRYING FIST/ホームページ http://www.crying-fist.com
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