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市長の「容認」表明に抗議の声              かけはし2006.7.3号

原子力空母の横須賀母港化阻止

「米軍再編」報告とワンセット

地域の声を掘り起こし神奈川全県の反基地運動との連携を

また米兵の犯罪が起きた

 横須賀市の蒲谷亮一市長が六月十四日、市議会全員評議会で原子力空母配備の容認を表明した。公有海面の管理権を持つ市長が「やむを得ない」と認めたことにより、十五日に開かれた日米合同委員会は進展し、消極姿勢を攻撃される日本政府は面目を保っている。すなわち、原子力空母が入港できるよう「12号バース」を含む水域で、水深を十五メートルにする浚渫工事が日本政府によって着手をすること、その費用として数十億円にのぼる「思いやり予算」が拠出されることが合意されたのだ。
 同じ十四日に横須賀中央駅前では横須賀基地所属の陸上補給部隊所属の四十七歳の兵士が飲酒の上、十五歳の女性に抱きつきキスをするなどして「強制わいせつ」の容疑で横須賀署から送検された。
 日米地位協定のあまりに不平等な運用が続いたために、「迅速な」送検は一月の女性殺害事件のときと同様、一定の評価が与えられているということに注意が必要だ。女性を殺害した兵士は「迅速な」裁判によって無期懲役の判決を受けたが、他の少年犯罪事件、外国人による殺人事件が起こったときは巻き起こる加害者の死刑推進キャンペーンは、この時ばかりは鳴りをひそめている。女性殺害に抗議する六月十六日の集会(横浜)では、被害者は無残な殺され方をされたのに、加害者は刑務所の中でもビフテキを食べて、毎日風呂に入り(米兵であるというだけで多くの受刑者より優遇されているという点で問題がある)、いずれ本国に送還されるのだということが報告された。
 空母などの常駐を軸とした軍隊社会の抑圧、米本国などでの抑圧の延長として横須賀で米兵が凶悪な事件を起こし続けることを直視せよ、というメッセージを蒲谷市長はどのように受け止めるのか。松沢県知事も米軍再編に対して国から説明がないと発言を繰り返すが、今回の市長発言をそう簡単に「尊重」できるのか。
 小泉政権は高支持率によって反動化をすすめてきたその特徴にふさわしく、米軍再編に際しても地域の反発を恐れ、米国の圧力にお伺いを立てながら民衆に考える余地を与えない、パフォーマンスのみで市長の容認発言にこぎつけた。日米合同委員会の前日に麻生外相を横須賀に派遣するあたりは、お粗末な恫喝(どうかつ)であった。一連の経過で前面に出てこない小泉首相を徹底的に弾劾し、あきらめず原子力空母の母港化阻止を実現していこう。

市民の意見を受け付けず

 蒲谷市長は二〇〇五年二月の市長選立候補以来、通常型空母の継続配備を求める姿勢を示してきた。しかし米海軍十二隻の空母のうち、二隻しかない通常型空母がさらに退役時期も早められるという報道もされる中で、市長のすべての発言は原子力空母容認の消極的表明であり、母港化容認派による今回の「完全な」容認に向けた巧妙な地ならしだったといえる。
 〇五年十月二十八日にいかにも突然に〇八年のジョージ・ワシントン配備が発表された。突然の発表は事故を危惧する市民の議論を受け付けないという雰囲気を定着させるには十分だった。二〇〇六年二月には協議会を設立するものの、参加者を公募しないで非公開で協議を進めようとして横須賀で空母に反対する団体の反対を浴びた。
 同じく二月に地元経済界、保守政治家が、原子力空母ステニスが母港とするアメリカ・サンディエゴを視察した。帰国後、この視察団が原子力空母の安全性を評価する声明を出すと、蒲谷市長は「重く受けとめる」発言をおこなった。
 一九九三年から日本政府が百二十八億円で四百十メートルへの延長工事を開始した空母接岸用「12号バーズ」はさる五月十五日に引渡しがすんでいる。延長工事に対して定例デモを行う非核市民宣言運動ヨコスカなどは、長い間地道な反対運動を行ってきたが、われわれは今回の事態をにらんだ広範な運動は作り出せなかった。

60%が原子力空母に反対

 原子力事故の危険性については、市民の心配をかえって逆手に取るかたちで日米両政府はアピールしている。四月十七日、「原子力艦の安全性に関する文書(ファクトシート)」なるものをシーファー駐日大使が麻生外相に提出するかたちで公表がされた。この文書は一九九九年十一月三十日の空母ステニスの座礁による原子炉停止、九〇年代に空母ニミッツ乗務員の原子力安全テストのねつ造証言のような具体的な部分にはまったく触れていない。この文書に対して横須賀市が出した質問に回答する、という名目で麻生外相は突如六月十二日横須賀を訪問したのだった。
 「ファクトシート」に対する詳細な反論は「原子力空母の横須賀母港化を考える市民の会」の公開質問書としてまとめられている。このなかで要求していることは、過去の(空母乗務員による破壊活動、人的要因も含む)事故記録の公開、基地内で独自に作成している事故対策の公開、部品交換作業・汚染除去作業の詳細の公開、乗組員の被爆対策の有無などである。日米両政府はこの要求を軍事機密の保持を理由に拒否し続けるのであろうが、こういったことを公開させることこそが、侵略戦争の殺戮だけでなく、非民主的な社会のあり方を変えていくことにつながるだろう。
 神奈川新聞社が百人を対象に実施したアンケートの結果、六十人は原子力空母母港化に反対であった。賛成の論拠は相変わらず、中国、北朝鮮の脅威、日米安保論だった。今回の基地強化が兵員削減に名を借りた米軍の運用分野の拡大、自衛隊の米軍化であることと、市民の間での基地容認論との食い違いは横須賀でも顕著だ。
 海上自衛隊はキティーホークとの共同演習を積み重ねているが、第五空母打撃群参謀長デイブ・ボロニーノ大佐は「アジアでは他国の軍とも演習をしているが、米軍の艦船に完全についてこられるのは海自だけだ」(神奈川新聞など06年2月8日)と発言している。だがこの米空母群との訓練の強化を背景として、先に述べた米兵による事件だけでなく護衛艦「うみぎり」放火事件(02年1月以降)、護衛艦「たちかぜ」いじめ自殺事件(04年10月27日)のような自衛隊員の矛盾も次第に明らかになっている。自殺事件に対する裁判闘争もはじまり、五月二十五日「たちかぜ」裁判を支える会結成集会が横浜で行われている。
 空母群の北東アジアにおける拠点としてだけではない。横須賀はアメリカにとっての前線ミサイル防衛基地としても位置付けられる。在日米海軍の発表によれば、七月にイージス駆逐艦マスティン、八月にイージス巡洋艦シャイロが配備され、これにより横須賀を母港として配備される艦船十一隻のうち八隻がイージス艦となる。シャイロは最新鋭のMD用ミサイルSM―3を装備しており、六月二十二日にはハワイ州カウアイ島での迎撃実験に成功している。他の艦船も長距離監視・追尾システムを搭載している可能性が強い。相互運用性の高まり、「北朝鮮」、台湾海峡「有事」に向けた即応性確保は、横須賀を拠点として原子力空母配備を前に着々と高まっているのは確かである。
 そして「テポドンの脅威」が宣伝されればされるほど横須賀に米軍が存在する重要性も宣伝されるという仕組みになっている。

市民運動の着実な広がり

 神奈川県内の基地強化との関連では、横須賀の空母から発着する艦載機の拠点・厚木基地では岩国での艦載機移転が発表されたが、六月十五日の衆院安全保障委員会で額賀防衛庁長官は「日常的な整備機能は岩国に移転すると思うが、定期整備、本格的な修理については引き続き厚木に残る部隊が実施する」と答弁した。
 これでは移転、負担軽減ではなく単なる空域の拡大であることがはっきりしてきている。「移転」の代わりに厚木基地に自衛隊機が移駐する計画は、自衛隊機が米軍に代わり、空母を拠点とした離発着訓練に突入することを物語っている。
 相模補給廠では米陸軍の訓練センターの建設も予定されており、キャンプ座間と連動しながら都市型実弾演習による流弾事故、訓練で抑圧された兵士の地域住民への暴力事件が心配されている。そして海軍同様、米陸軍と陸上自衛隊の共同演習が公然と行われることになる。事件を起こした米兵の責任を問えない状況を解決することなく、日本兵が事故を起こし、民衆に暴行を働き、外国で殺戮を遂行する時代を予見させる段階に入った。
 市民の会などはビラ配布、市長へのリコール請求を行い、ヨコスカ平和船団は海上抗議行動、定例デモを続けている。横須賀中央駅前では市長の原子力空母容認に抗議する座り込みが始まっている。原子力空母入港と日米軍の機能強化を阻止する運動の、さらなる広がりのために原子力空母の隠蔽体質を暴露していこう。
 入港のためのしゅんせつ工事を阻止しよう。母港化に向けた既成事実作りとしての原子力艦船の民間港立ち寄りに反対しよう。キャンプ座間のゲート工事を止めよう。日本政府が原子力空母の情報公開を実現させるよう要求していこう。(海田昇)


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