| イスラエルは直ちに攻撃を停止せよ かけはし2006.7.31号 |
レバノン攻撃をめぐって緊急講演会
内戦後築き上げられた社会を根底から破壊 |
アメリカの「対テ
ロ戦争」の下請け
七月二十一日、明治大学リバティタワー一階リバティホールで「時計の針を24年戻す?――イスラエルの対レバ ノン攻撃をめぐって」の緊急講演会が日本学術振興会人社プロジェクト「地域研究による『人間の安全保障学』の構築」の主催で行われた。若者からアラブ人と思われる人々をはじめ外国人が多数参加し、関心の高さをうかがわせた。
講演会の主旨は次のようなものである。
「七月十二日から開始されたイスラエル軍によるレバノン攻撃は、ヒズボラによる人質作戦への反撃をきっかけとしつつ、急速に展開してレバノンに対する一方的かつ全面的な武力行使の姿を見せています。これにより、多くの市民が殺傷されるのみならず、内戦後十五年にわたって築き上げられたレバノンの社会基盤が根底から破壊されようとしています」。
「これはアメリカの『対テロ戦争』をイスラエルが下請けしているものといえますが、果たして中東に安定した秩序をもたらすでしょうか。一方で、イスラエルはガザのパレスチナ政府に対してもハマス打倒のために猛攻を加えています。中東のみならず地球全体に深刻な影響を及ぼしつつある今回の軍事行動について、滞日中のレバノン人研究者による分析を中心に、中東全体と欧米・日本を視野に入れながら考える機会を提供します」。
イスラエルの中
でも意見が割れる
司会を佐原徹哉さん(明治大学政治経済学部)が行った。黒木英充さん(東京外大AA研)が「イスラエルのレバノン攻撃に対して、西側の沈黙がきわだっている。日本政府も意見表明していない。二日前に来日したマスウード・ダーヘル氏になぜ、今回の事態が起こったのか、中東全体の中でどういう意味をもっているのか、講演を受けたい」と講演の主旨を説明した。
マスウード・ダーヘルさん(レバノン大学/東京外大AA研フェロー)が「イスラエルによる対レバノン攻撃の真の動機」と題して講演を行った(別掲)。続いて、イラク戦争問題に著書も多い酒井啓子さん(東京外大大学院教授)が「イスラエルのノバノン攻撃が、国際政治を崩壊させる危険がある」とコメントを行った(別掲)。
臼杵陽さん(日本女子大教授)は「七月十二日、小泉・イスラエル・オルメルト首相との会談の時、イスラエルはレバノン攻撃を行った。この時、小泉は会談日程を変えるとか、席をはずすかすべきだった。そうしないと日本がノバノン攻撃を追認したと国際的には見られるのだ。オルメルトはシャロン路線をついでガザから撤退するといってきたが、六月には海岸で遊んでいた子どもをイスラエル軍が虐殺した。戦争状態が続いていて、人質事件が起きた。イスラエルは自らの安全保障にとって、レバノンの安定が必要であったが、今回の攻撃で自ら安定を壊した。アメリカの対テロ戦争のもとでイスラエルもバランスを失ってしまっている。占領地を放棄するとしてきたイスラエル国民にとっても不幸である。今回のレバノン攻撃については、イスラエル人の中でも意見が割れているだろう。イスラエルの中で反対運動が起こってくるだろう。しかし、平和運動の質が問われる。安全保障の問題となると平和運動を否定する力学が働く」と指摘した。
「すべての宗派が
住める民主国家を」
以上のような提起の後、会場の意見をまじえて、活発な討論が行われた。その中で、ヒズボラの今回の攻撃についてどう評価するのか、国際部隊の派遣が取りざたされているがどうか、今後の見通しについてなどであった。
マスウード・ダーヘルさんは「イスラエルは過去にもやったように、捕虜の交換のような形で交渉によって解決も可能であったのに、即時に全面戦争に打ってでた。これが一番の問題だ。シリア軍が来てもらいたいとは思われない。一番いいのは国連を使ってイスラエルの攻撃を止めることだ。レバノンでは六カ月にわたって国民対話によって問題の解決にあたってきた。今後もすべての宗派の人たちが住める民主的国家をつくりあげていきたい」と意見表明した。イスラエルのレバノンへの侵略戦争を止めさせよう! (M)
マスウード・ダーヘルさんの講演から
レバノン南部を併合し大イスラエル構想
七月十日に、原理主義者のヒズボラが監獄にいる囚人の解放、ハマスへの攻撃の緊張を緩和するために、イスラエルを攻撃し、二人の兵士を拉致した。それに対して、イスラエルは十日間に千カ所を空爆した。三つの空港、学校・病院などインフラを破壊している。村人全員を虐殺した。レバノン全土の破壊が行われている。レバノン政府の瓦解が起こっている。
イスラエル軍の攻撃がこれほど大規模でかつ用意周到であったことからみると、拉致事件の発生前からイスラエルはレバノンを攻撃する計画をしていたのだ。
アラブ連盟が国連に介入を申し入れたが、国連安保理は何もしなかった。
なぜ、イスラエルはレバノンへの戦争を起こったのか。本当の理由は何なのか。
ヒズボラをつぶしたいのだ。〇〇年五月にイスラエル軍がレバノン南部から撤退した。国連は二〇〇四年に民兵組織のヒズボラの武装解除を決議した。〇五年二月にレバノン首相が暗殺された。三月にこれに抗議する大きなデモが起きシリア軍撤退を要求した。内戦のためにレバノン政府は弱体し、西欧とシリアに分裂した。ヒズボラは強力な軍隊に成長した。ヒズボラはその後の議会選挙で約二割を占める十二議席を獲得し、二人の大臣を出している。シーア派の長老たちが支持しているヒズボラをイスラエルは壊滅できない。
イスラエル首相は二〇一〇年に国境を確定したいといっている。イスラエルは大イスラエル圏構想をもっている。レバノン攻撃の直後にブッシュはイスラエルを支持した。イスラエルはアメリカと組んで攻撃をしている。今後もしばらく攻撃を続けるとイスラエルは言っている。イラク情勢が事態を複雑にしている。アラブ諸国は分断されている。アメリカとイスラエルはイスラム原理主義者を増やしている。イスラエルとシリアあるいはイランとの戦争に拡大はしないだろう。レバノン国民は結束している。イスラエルの目標は達成できないだろう。独立国としてレバノンを守る。(発言要旨。文責編集部)
酒井啓子さんのコメントから
攻撃は国際政治を50年も後戻りさせた
今回のレバノン攻撃はたいへん深刻な事態である。国際政治のメカニズムを五十年も後戻りさせるようなものだ。ヒズボラは民兵を抱えて武力を行使するということはあるが、民主的に選ばれた合法政党だ。ハマスも合法的に与党になった。合法政党がイスラエルに攻撃されている。これは政治政党の非武装化の道を閉ざすものだ。
イラクで分かるように、いったん戦争や内戦を経るとイスラム政党が伸びてくる。アフガンではタリバンが出てきた。これらの政治勢力は、社会サービスを行い支持を集めた。住民が軍に守られず、暴力にさらされる。そうすると自警団や民兵に頼らざるを得なくなる。武装した社会集団が出てくるのは当たり前だ。こうした政治団体をどう扱っていくのかが最大の課題だ。
とりあえず政治参加させる。参加させて武器をおいてもらう。武器で戦うのではなく、座って話をする。これしかない。今回のイスラエルのレバノン攻撃はこうした方法を崩壊させかねないもので大きい懸念を持っている。シーア派のネットワークを軽視できない。ヒズボラがイランからの支持を受けているというが国家として支援しているか疑問を持っている。政府としてはシリア、イランも動かないだろう。イラクの中で、サドル派や同じヒズボラという名前の組織がヒズボラへの連帯を表明している。
レバノン支援で国境から出ようとしてもシリア、イランは国境をしめるだろうが、イラクはそうはいかない。イスラエルはアフガン、イラク、レバノンなどで国家の制約を受けることのないいろんな活動をする人々をわざわざつくっている。ヒズボラがレバノンから追い出されたら、イラク南部に来ることもありうる。シーア派間の共鳴は新たな対立をつくりだす。スンニ派はなぜヒズボラを支援しないのかと挑発し、対立が激化するのを懸念する。
最後に、今回の事態は遠い中東で起こっていることではない。日本はレバノンの復興のために税金で援助している。それで作られた橋や学校がイスラエルによって破壊されている。われわれが作ったものが破壊されていると実感してほしい。(発言要旨、文責編集部)
|