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構造改革の現場から(7)                  かけはし2006.5.1号

無人化と差別賃金で長時間労働強制される私鉄労働者

 大都市圏の私鉄とJRは、工場が海外に移転し、産業の空洞化が進み、沿線の乗降客の減少と少子化の中で、乗客を奪い合う激しい競争を強いられている。競争に打ち勝ち、利益優先をあげるため安全対策をないがしろにした結果、JR尼崎大事故が起きたと言われる。競争相手である私鉄職場はどうなっているのか。首都圏の大手私鉄に勤めるBさんに実情を聞いた。(編集部)

IT化の進行で急激な人員削減

――勤務はどのようになっていますか。

 七〇年〜八〇年代は隔勤でした。一日置きに二十四時間拘束された。例えば朝九時から翌日の朝九時まで(仮眠時間含む)。そして明け番になり翌日また出勤。その後労協改正がされて、拘束九時間弱で二交替です。日勤と泊り勤務があります。泊り勤務だと朝九時から翌朝七時まで。隔日勤務から八時間弱労働時間+休憩一時間の拘束九時間労働になり、労働時間は短くなりました。

――ということは労働者が増えたということですか。

 そうです。増員されました。バブルがはじける前までは。
 しかし、私鉄産業は労働集約産業だったので人件費が高くなったので、コンピュータ化にともなって、労働集約の形態がITで代われるものはすべてITでこなせるようにした。乗車券・定期券の発売、集札・改札が機械化された。電車の乗務もワンマンカー(車掌がいなくなる)がどんどん導入された。
 駅で今、人間がやらなければならない業務は、お客様案内・ホーム案内と苦情処理ぐらいだ。後はITを管理する作業だ。電車の運行もITのATS、TTC、PTC、ATCなどが運行カバーをしてくれ、それを安全管理する仕事に変わってきてしまっている。どんどん労働者の数は減らされています。

――この十年間ぐらいで何人ぐらい減らされましたか。

 会社は二〇〇六年位までに電気職場を含め二百何人削減という目標をたてて、それを実行してきた。しかも、新入社員を正社員だけの採用で雇うのではなく、派遣社員を導入している。駅で正社員と同じ制服を着ていますが派遣や出向、学生アルバイトが増えている。
 駅自体も無人化駅を増やし、正社員を退職期限を延ばす約束で出向社員化して配置、更に学生アルバイト、退職者の再採用などをして無人化駅に宿泊などもさせている。

――都営地下鉄でも駅長以外はすべて派遣職員だという駅がある。交替制で賃金も良くないので、しょっちゅう人が替わってしまい安全管理に不安がある、と聞いたことがありますがBさんの職場ではどうですか。

 先ほど言ったように、私の勤めている会社でも無人駅が相当増えています。駅長所在駅ですべてITによる遠隔操作でその駅を管理している。駅の案内業務は出向職員と学生アルバイトがしている。賃金待遇が悪いためにやめたというのは聞いていないが、利用客側にとっては、不安だと思います。

安全対策はどうなっているのか

――例えば、無人駅でお客の転落事故が起きたり、病人が出た時はどうするのですか。

 モニターテレビでの監視や、非常通報装置を駅に設置しておくことによって遠隔操作で見て何かあったり、気が付いた利用客が通報装置を押して警報が鳴ったら係員をその駅に行かせる。つまり、起きるのを防ぐのではなく、事故が起きてからそこに駆けつけることになっている。
 線路に人が落ちれば、ITで転落防止装置が働き、運転士は電車を止めるようになっている。「IT作動への信頼」と「利用客からの協力の前提」で成り立っている。

――こうしたシステムの導入によって事故は起きていないのですか。

 「幸い」にしてJRのような事故は起きていないとしか言いようがない。事故が起きれば、対応できる人がいないのですから後手後手にまわる。これがITまかせと人減らしによる被害だという社会的に非難される事故は起きていない。

――サービス残業の問題などはありますか。

 助役など管理職はいまだに二十四時間、隔日勤務とサービス労働を強いられている(駅長は日勤のみ)。駅で問題になるのは、人減らしが進み、欠員(途中退職者など)が出れば以前は随時補充していたのに、最近では欠員のままにしていて、四月の派遣社員の補充まで放置している。そのため36協定が守られないくらいの長時間労働になってきていることです。
 つまり欠員体制を慢性にしているために、36協定違反が労働基準局からたびたび指摘されている。今年は、私の会社でも36協定の労働協約改定期限が切れる当日まで交渉が続いたくらいに長時間過重が起きている。

――どういう実態なのですか。

 定時で終わって帰ろうとしても、欠員で人がいないので、残業をやらざるをえない。私も違反ですが、オーバーした労働時間分を翌月回しでやっている。通常勤務より月に七日から十日間多く働いています。これが日常的になっています。
 大手私鉄なので、超勤手当の未払いはありませんが。駅には、(派遣社員が多くいる)旅行業務を担当している職場があるのですが、そこはサービス残業が横行しています。

JRとの競争で乗客の奪い合い

――東京の場合はJRより私鉄の方が運賃が安いなどで、私鉄がJRに勝っていて安定しているのではないですか。

 それは昔のことで、いまやJRは私鉄の独占もゆるがすためのスピードアップ化や貨物線を利用して一般旅客電車を走らせ、私鉄に乗り換えないでも目的地まで行ける運行をし始めた。そのために、小田急、東急、京王などみんな戦々恐々となっている。
 唯一JRに勝てるのがお客サービスしかないというのが私鉄の現状だ。これによってしか、大巨人のJRとの競争に私鉄は勝てない。JRが私鉄の分をとろうとして起こった悲劇がJR尼崎事故だった。

――あなたの会社で、鉄道部門が赤字ということはあるのですか。

 大合理化で人件費が減った分、お客数が減ってもカバーできている。少子化や産業の崩壊による人口減少によって、旅客数が減っている。それをJRと奪い合っている。

――以前のように、赤字になりそうだと運賃値上げでカバーすることはしないのですか。

 人件費を抑えることや特々法(特定都市鉄道整備促進特別措置法)による積立金制度で国からの工事費調達支援制度(本来の運賃に上乗せして乗客より前取り可能、非課税扱いなど)があり、インフラ工事には特別扱いが受けられるので(他にも、連続立体交差事業、鉄建による工事肩代わりのP線方式など)によって表面上運賃値上げを抑えている。

――賃金はどうなっていますか。

 私の会社も、年功序列型賃金から成果主義賃金に変わりました。

――例えば駅務でどうやって、成果や評価のランクをつけるのですか。

 人事評価の基準については非常にあいまいです。私にはわかりません。組合に質してもわかりません。
 ただ分かっているのは、同職間では、A〜F迄のランク分け、各A〜Fの中でもそれぞれG1〜G5の評価分けがされる。年齢の若い方に賃金配分を厚くするということと、役職間での格差を拡大したこと。そのために企業収益の変動に連動すると言って一時金(いわゆるボーナス)格差が大幅に拡大されたこと。

――そういう状態はあなたの職場にどんな影響をもたらしましたか。

 労働者間の賃金格差を大きくする制度を組合に認めさせたことによって、会社に忠誠をつくさせる。これは本当に成果を現わしていて、組合運動に目を向ける人は皆無になった。

ますます企業主義化する労組

――組合に入っている、いないで差別されるの?

 いや、ユニオンショップで全員が組合員になるからそれはない。組合は本工主義なので、派遣社員を組織しようとはしていない。最近、それでも派遣社員が多くなったので、派遣社員の待遇について、組合の議題にはなった。
 左翼組合活動家への昇進差別はかつてあり、一九九五年に裁判でその人たちが勝ってからはなくなった。いまはそうしたことをしなくても、活動家は定年退職でいなくなっている。賃金格差を認める賃金制度が確立したので、左派組合活動家を弾圧しなくても、労働者自ら賃金上昇をめざして会社に忠誠をつくすようになった。そういう状況に抗して新たに組合を作った労働者もいる。敬意を表します。

――バス部門はどうなっていますか。

 赤字のバス部門を分社化し、賃下げ・リストラなど合理化を行っている。組合も別組合になった。
 分社化された時の職員はいままでの賃金体系だったが、新たに入ってきた職員は別の低い賃金で雇われている。同じバス運転手でも二重、三重の賃金体系があるようになった。バス労働者は賃金がいいので、条件が悪ければよそに移っていく。残って組合運動をする人ほとんどいなくなった。バス部門でも新組合を作った労働者はいます。

――あなたが、所属している組合はどうなっていますか。

 私の組合はいままで鉄道部門から組合の委員長を出していましたが、本社の人間が組合委員長になるようになった。私鉄総連を脱退するかどうかが問題にされるようになったが、私鉄総連に残るかわりに独自の方針を持つようになった。例えば成果主義賃金制度の導入問題がそうです。
 反戦集会などへの組合の動員は私鉄総連の枠でちゃんとやっています。組合員はその問題に自覚的でなくても、動員費が出るので出ていきます。民主党や社民党議員を応援する選挙支援を行うのはかつてと変わっていません。スト権は高率で必ず通っています。
(文責編集部)


春の共同行動で銀座デモ
使い捨てはゴメンだ!安心して働ける職場を

 四月十九日、新橋の交通会館で、「使い捨てはゴメンだ!勝ち取ろう、安心して働ける職場と生活できる賃金を! 4・19春の共同行動中央集会」を行い、五百人が参加した。午後には、経団連と厚労省に、格差社会を広げる「労働法制の規制緩和」反対、外国人研修生に正当な権利を、国鉄争議の解決、タクシーの規制緩和をやめろ、生活できる賃金、最低賃金制などを要求する中央行動が取り組まれた。
 田宮高紀中小ネット共同代表が昼間の中央省庁への申し入れ行動で「雇用、生活、企業モラル崩壊、安全の破壊を厳しく追及したこと」を主催者あいさつとして行った。全労協藤崎議長の来ひんのあいさつの後、ハイタク共闘・北海道交運共闘の仲間が「この間の規制緩和で、年間で五十万円の賃下げで、年収が百八十万円になっている。こんな生活破壊は許せない。タクシーの安全輸送が破壊されている。今のタクシーはいつ事故が起きるか分からない状態だ」と訴えた。
 次に、北関東キャラバン・共同代表の中村宗一さんは「群馬など三つ県で最賃制や外国人研修生問題、地元の交通体系の崩壊についてなどで、訴えを行ってきた。栃木県の労基署が五千の企業のうち、二百五十社に監査に入ったが六割が労基法違反がみつかっている。こうした雇用破壊を許さず、闘いを現在三県だけだがもっと広げて行きたい」と報告した。参加した衆議院議員の保坂展人さんが「共謀罪が金曜日に審議入り、教基法も四月二十八日に法案の主旨説明をしたい、政府与党は重要法案の早期成立を目論んでいる。国民投票法もアクセルがかかってきた。闘いを盛り上げて阻止しよう」と訴えた。
 最後に参加したフィリピントヨタを支援する労組、エイシンテクノ分会、埼京ユニオン、ネットワークユニオン、全日建連帯、東水労、東京清掃、全国一般神奈川、郵政ユニオン、全統一、電通労組、全国一般南部、オリジン労組などが解雇などそれぞれ抱える闘いの課題を報告して、ともに闘う団結を固めた。
 集会後、新橋から銀座まで、「労働者をもの扱いするな」「外国人労働者への差別反対」「小泉の構造改革をゆるさいぞ」と元気よく道ゆく人に訴えた。(M)



東京北部で共同決起集会
JR採用差別事件の勝利解決へ


 【東京北部】四月十三日、北部春闘共闘と北部労協は「06国民春闘勝利、憲法改悪反対、JR採用差別事件の勝利解決をめざす北部共同決起集会」を開いた。会場の中池袋公園には四百人が結集。「憲法9条を守れ」の横断幕や板橋区労連や豊島区労協などの北部五地区労の旗やオリジン電気労組や東水労などの全労協系の旗などが林立した。
 主催あいさつで北部労協の二瓶議長は「国鉄闘争の大同団結による闘いの強化」を訴え、北部春闘共闘の広瀬議長は「昨年に引き続き共同の集会を開催したことの意義は大きい」と訴えた。決意表明ではJMIU北部地協の上野事務局長が「組合員が二十五人の職場で九十五人の9条の会の作った」と報告した。全国一般東京労組の平田執行委員は「中小は五月の連休をこえて春闘が継続する。未解決組合への支援を」と述べ、国鉄問題では国労池袋地区協の野口議長が鉄建公団訴訟団の酒井団長と全動労争議団の渡部副団長とともに登壇し「総団結して国鉄闘争を強めたい。支援を」と訴えた。
 集会は北部労協の小泉事務局長の頑張ろう三唱で終了し池袋デモに出発。色とりどりの横断幕や旗、そして久しぶりの大きな地域デモに沿道から大きな注目が寄せられた。五、六月は国鉄闘争の最大の山場となりつつある。国労の全国キャラバンふくめ地域からの闘う陣形が求められている。北部の共同集会はこの陣形作りの可能性を示している。       (S)

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