もどる

                            かけはし2006.3.6号

終わらせよう! イラク占領終わらせよう! 戦争の時代

WORLD PEACE NOW3・18(午後1時日比谷野音 )へ

「内戦」状況の深まり

 二月二十二日、イラク中部サマラのシーア派聖廟「アスカリ聖廟」が爆破された事件は、ただちに全国でシーア、スンニ両派による報復合戦を拡大することになった。両派の宗教指導者が暴力の停止を呼びかけているにもかかわらず、スンニ派聖職者への銃撃、両宗派モスク爆破のエスカレートはおさまらず二月二十五日までの三日間で全国で二百人以上が殺害されている。
 イラクでは昨年十二月十五日に行われた連邦議会選挙の投票結果がようやく今年一月二十日になって公表され、定数二百七十五議席のうちシーア派宗教勢力系の「統一イラク同盟」が百二十八議席を獲得して勝利した。クルド人の「クルド集会」は五十三議席を獲得し、第二勢力の地位を確保した。他方、昨年一月の移行国民議会選挙をボイコットしたスンニ派も、今回は多くが選挙に参加し、「イラク調和戦線」と「国民対話戦線」の両派で合計五十五議席を獲得していた。
 しかし選挙結果を受けた本格政権樹立は、宗派間・政治勢力間の対立で難航し、その間も武装勢力のテロは収まらず、とりわけ移行政府の内務省が管轄するイラク警察内部のシーア派民兵組織によると思われるスンニ派聖職者などへの逮捕・暗殺事件が続発していたことで、両宗派間の不信と敵対が拡大の一途をたどっていた。「移行政府の要職が、ダアワ党やSCIRI(イラク・イスラーム革命最高評議会)などのシーア派イスラーム主義勢力に占められたことの問題は、政権成立直後から懸念されてきたが、とりわけ治安機関がイスラーム主義旧民兵組織によって担われたことは、深刻な宗派間不信を生んだ」(酒井啓子「イラク――選挙で浮き彫りになる宗派亀裂」、『世界』06年2月号)。
 今回のアスカリ聖廟爆破事件は、この武装対立を一挙に収拾不可能な段階にまで悪化させている。このため二月二十五日に予定されていた連邦議会招集のメドは立たず、政治情勢は混迷をさらに深めている。
 イスラム教の礼拝日にあたる金曜日の二月二十四日、バグダッドならびに近隣の三県では、日中としては異例の外出禁止令が出され、金曜礼拝も禁止された。治安の悪化は収まるところをしらず、占領軍とジャアファリ移行政権の責任を問う声が高まっている。バグダッドのシンクタンク「中東研究所」のディアア・アラミ研究員は、シーア・スンニ両派の対立がこのまま拡大し続けた場合「@内戦に突入し、クルド人が独立を宣言し国家が分裂Aシーア、スンニ両派の対立が同じ宗教問題を抱えるレバノン、バーレーン、パキスタンにまで拡大」という可能性さえ指摘している(毎日新聞、2月25日)。

占領が閉ざす再建の道

 「イラクの民主化」を、侵略戦争の「成果」として誇っている米ブッシュ政権もまた、この状況に危機感を強めている。二月二十四日、ワシントンでの演説でブッシュは「イラク国民にとって選択の時だ」と語り、「内戦回避」を呼びかけた。ライス国務長官は、イラク情勢について「きわめて困難で微妙」と焦燥を隠していない。
 米政権の側は、アスカリ聖廟爆破はザルカウィの指揮する「イラクの聖戦アルカイダ機構」の犯行であるとにおわせている。しかし今回の「アスカリ聖廟爆破事件」について、昨年夏に来日して各地の集会で報告したイラク人ジャーナリストのイサム・ラシードさんは、現地でのインタビューを通じて多くのイラク人が爆破のエスカレートの責任が、混乱を長期化させることに利益を見いだしている占領軍とそれに呼応するバース党残党勢力などにあると考えていること、ジャアファリ首相の責任を問う意見が多いこと、占領の即時中止を訴える声が大きいことなどを紹介している。
 いずれにせよ、ブッシュ政権が本格的な「内戦」の可能性さえ指摘せざるをえないほどの宗派間対立と殺戮をもたらしている混乱が、ブッシュのイラク戦争とその後の占領政策の破綻の結果であることは、火を見るよりも明らかである。二〇〇四年の二度にわたるファルージャでの米軍による市民の無差別虐殺、アブグレイブ収容所での非道きわまる拷問と虐待や新たに発覚した英占領軍による「捕虜」凌辱事件などに加えて、戦争・占領からすでに三年近くなる今日でも電気・水道などの基本的インフラの提供すらおぼつかず、失業と生活苦がかつてないほどに悪化している社会的崩壊の現実は、「民主化」「復興」が全くの空語にすぎないことを明らかにしている。
 かつてシーア派・スンニ派間の共存で保たれていた秩序が解体し、憎悪が渦巻く宗派間の対立の激化をもたらした原因は、戦争と占領の長期化による民衆の絶望に最大の社会的原因があることは間違いない。こうした中で、占領の即時停止を求める声は、宗派を超えてイラクの一般民衆の間に大きく広がっている。
 ブッシュのイラク戦争・占領政策はいっそう泥沼の中にはまりこんだ。米兵の戦死者が二千三百人に達する中で、国内の反戦世論に追い詰められたブッシュ政権は、イラク「本格政権」の樹立と「民主化・安定」の達成を大義名分にして「地上軍の漸次的撤退」と米空軍を主力としたイラク軍への支援体制への移行を構想していたに違いない。しかし「核開発疑惑」による対イラン関係の軍事的攻撃をも射程に入れた緊張の醸成、イラク・シーア派主導政権へのイランの影響力、パレスチナ評議会選挙でのハマスの圧勝という事態の発展は、中東「民主化」による石油資源の安定的支配を土台にした米国の戦略を危機に追い込んでいる。
 「大量破壊兵器の開発」や「アルカイダ支援」というサダム・フセイン政権に対する侵略戦争の口実がまったくの虚偽にほかならなかったことを自認せざるをえなかったブッシュは、最後の「切り札」とした占領によるイラク「民主化」構想の破綻に直面する中で、出口を見い出せないまま占領の長期化にしがみつく以外になくなっている。
 今こそ、ブッシュ帝国の歴史的犯罪に終止符を打たなければならない。 

引き続き空自はイラクへ

      
 ブッシュのイラク侵略・占領に無条件の支持を与え、自らも自衛隊を戦地イラクに送り込んで占領軍の一翼を担った小泉政権は、九月の任期切れを控えて、陸上自衛隊の撤退を三月から開始し、五月末までに完了するための「最終調整」に入ったと報じられている。一月二十三日にロンドンで開催された米英豪日の四カ国による事務レベル協議で、イギリスが五月までにイラク駐留部隊を縮小してアフガニスタンに増派する方針を明らかにし、オーストラリア軍もサマワからの撤退の意向を伝えたことにより、陸自部隊の撤退に踏み切ったとされている。
 小泉内閣は、陸自部隊の撤退は「イラク南部の治安の安定」などの「成果」によるものたと主張するだろう。しかし事実は、サマワなどイラク南部でも拡大する住民の「反占領」意識の拡大に駐留自衛隊は包囲されていたのである。陸上自衛隊の撤退方針にもかかわらず、クウェートを拠点に米軍支援の航空輸送作戦に従事している二百人の航空自衛隊は、引き続き多国籍軍の一翼としての活動を行うのであり、イラク占領軍への自衛隊の参加に変化はない。むしろ昨年十二月に延長されたイラク派兵計画の中で、航空自衛隊の輸送任務はイラク全土の基地へと拡大しているのであり、米占領軍支援活動の性格はいっそう濃厚となる。
 そして決して忘れるべきでないことは、昨年の対テロ特措法の改悪によって、アフガニスタン占領多国籍軍支援のための海上自衛隊のインド洋、アラビア海への派兵が継続していることである。

反基地運動との連携を

 二〇〇四年十二月に閣議決定された新防衛計画大綱と、この三月にも「最終報告」が出される「米軍再編」(日米同盟――未来のための変革と再編)は、まさに自衛隊のインド洋派兵、イラク派兵というブッシュの世界的な「対テロ先制攻撃戦争」に自衛隊を組み込んだ「実績」に踏まえて、「米軍支援」のための補給作戦にとどまらず、情報・指令・作戦系統の日米一体化をはかり、本格的な実戦部隊として自衛隊をグローバルな「対テロ」戦争の戦場に動員し、そのために自衛隊基地と在日米軍基地を米軍と自衛隊が「戦略目標の共有」と「役割・任務・能力」の分担の下て共同使用する構想となっている。
 沖縄・辺野古沿岸への新基地建設をはじめとした米軍基地の強化、座間への米軍司令部機能の移転、岩国への米空母艦載機訓練の移転などの一連の攻撃をそのようなものとして捉えなければならない。そしてその集約が自民党新憲法総案に示される憲法9条の「戦争放棄条項」の放棄と、「国際社会の平和と安全を保持する」という「自衛軍」の海外派兵条項の明記なのである。
 イラク戦争3周年にあたる反戦行動は、今年も全世界で開催される。イギリスではストップ戦争連合によるロンドンでの集会とデモが三月十八日に呼びかけられており、アメリカの「ユナイテッド・フォー・ピース・アンド・ジャスティス」(UFPJ)などは三月に全米各地で波状的な集会を行い、四月二十九日に大統一行動を計画している。韓国でも三月十九日に反戦行動を準備している。
 WORLD PEACE NOWが三月十八日に行う「終わらせようイラク占領 終わらせよう戦争の時代」(午後1時、日比谷野外音楽堂)をはじめ全国で開催される集会・デモは、イラク占領の中止、自衛隊の即時撤退を訴えるとともに、沖縄・座間・岩国をはじめとした「米軍再編」に反対する全国の闘いに連帯し、憲法9条改悪・日本の「戦争国家」体制づくりに反対する上で、国際的にも重要な意義を持っている。
 ブッシュ、ブレア、小泉の戦争と軍事占領に反対する新しい反戦・平和の行動を、日本の地から発信するために、全力を上げてこの行動を成功させよう。
(2月26日 平井純一) 


もどる

Back