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派遣労働者に聞く                    かけはし2006.3.20号

民間中小派遣労働現場で労働者の連帯をめざして

 労働者派遣は中間搾取の問題があって、厳しく制限されてきたが、一九八六年に労働者派遣法が作られた。最初は派遣できる業務が制限されていたが、二〇〇四年三月施行の労働者派遣法の改悪によって「物の製造業」の現場まで派遣が許されるようになった。総務省の労働力調査(3月3日)によると、非正規雇用が全体の三二・六%で過去最高となった。日野自動車の下請けで正規職として働いたAさん(40代)は五年ほど前に、会社の整理にともない派遣労働者になった。派遣労働者の不安定な雇用、低賃金・長時間労働の実態、そして派遣現場に多くいる外国人労働者問題をAさんに聞いた。(編集部)

あらゆる職種
の外部委託化

――どのような派遣会社に勤めているのですか。

 Bという派遣会社です。主に、ライン作業や機械の操作、維持、管理から部品の組み立て、加工、取付け、製品検査、梱包、出荷までの作業工程全般を手掛けています。
 精密機械、自動車部品、電子部品や食品などの製造業が主な派遣先で北海道から九州まで支社があります。
 他に関連会社があり、病院へ看護師や医療事務員、高齢者施設にヘルパーを派遣するなどしています。医療、福祉に限らず、インターネット接続会社の電話受付、デパート、スーパーの販売員まで、あらゆる分野での「外部委託化」をセールスポイントにしている会社です。
 派遣登録したのは四年くらい前で、今現在の職場は派遣されて約半年になります。派遣契約期間はそれぞれの職種により異なりますが、最短では一カ月です。その後三カ月、六カ月、一年。私の場合は同じ職場で一カ月ごとの更新です。

――なぜ、そんなことになっているのですか。

 派遣労働者の人数や派遣期間は派遣先企業の業績や翌月の生産予定、労働者の増減、人員配置により、すぐさま影響されるし、労働者自身の雇用に直接かかわる重大な問題のひとつだと思います。派遣先から「一カ月でいらない」と言われれば直ぐに切られてしまう。
 派遣会社は右から左に 労働者を派遣先へ振ることで利益を得るために、派遣の空白がないよう次々と職場は用意するのですが、派遣元である派遣会社から新たに紹介された派遣先の労働条件が労働者自身の希望に沿うものであれば、即決配置となりますが、その逆の場合は、紹介される労働条件は狭まることになります。
 派遣先で「パート労働者が 今月で辞めることになり、欠員補充に」とか「設備の稼働率を上げるために深夜勤務を導入したいが人件費を削りたい」となれば「派遣労働者を」ということになります。

限定された条
件交渉の機会

――派遣会社と雇用関係を結んでいるの? 正社員なの?

 派遣会社との雇用契約を結んでいます。ただし、指揮命令関係は派遣先にあり、毎月の賃金も派遣会社から支払われるし、厚生年金、社会保険、失業保険、労災には入っている。派遣先の企業は派遣会社に派遣料を払う。派遣手数料の実際の数字はなかなかわからないが、たとえ短期間でも何人もの派遣労働者を派遣するとなれば、派遣会社は、膨大な利益を得る構造です。

――給料はどうなっていますか。

 時間給で、派遣先の業種によっても変化しますが、私の場合は今の職場で千三百円ほどです。重量物を扱うしんどい作業には五十円から百円アップ。製造現場では平均千円から千五百円前後と聞いています。深夜勤が入れば深夜勤手当が付きます。残業については、「派遣に残業させてどうするの」と派遣先の会社は極力派遣社員には残業をやらせない。正社員は毎日朝八時半から夜九時、十時まで仕事をしている。
 私の勤務時間は、昼の一時から夜の十時までで、派遣先の企業カレンダーに従い休みは隔週二日制 。夏休み、正月休みとか勤務日数が少なくなると経済的には厳しい現状なので、他の業務請負会社に登録して単発の仕事もしています。

――時給千三百円と言いますが、上げさせる方法はありますか。

 派遣会社と賃金交渉をする機会は非常に限定されているというのが現状です。派遣契約時点と契約更新時に、派遣会社の管理専任者と賃金をはじめ労働条件の交渉をすることになります。派遣先での仕事上の苦情、改善要求も同様です。

なぜ派遣労働
が増えるのか

――現在働いている派遣先の会社は?。

 社員、パート労働者含め全体で約三十人くらいの会社で、電子部品や食品の包装容器の製造をしています。外国人労働者も働いています。

――パートと派遣の違いはなんですか?

 パートも派遣も正社員と同様にほとんどフルタイムで働いていますが、なかには土曜日は午前中だけという労働者もいます。残業はやっても一時間くらい。パートの人と入れ替わる形で、夜勤のパート労働者数人が出勤します。作業内容自体にさほど大きな違いはありません。

――なぜ、パートだけではだめなの?

 派遣社員を導入する理由としては、そのシフトにパートの人がこない。募集してもすぐ辞めていく。昼からの勤務で深夜まで働く条件で募集しても人は集まらない。しかも現場作業では重量物の移動が多く、労災発生のリスクも無視出来ない。なによりも、企業側の人件費の抑制につきると思います。

――以前なら、職安に行って仕事を探したと思いますが、なぜ派遣を選んだんですか。

 以前は自動車部品を作る会社に正社員として働いていました。そこで働いていた労働者は派遣労働者が圧倒的に多かった、合理化による人員削減でまっさきに職場を追われたのは、派遣労働者だったし、今もそれは変わりない現実です。
 派遣労働者の現実を知りたいということと、現実として自分自身の再就職への難しさが派遣労働の選択の理由です。

外国人労働者
の労働条件は

――外国人労働者は職場にいましたか。

 私が働いている職場はもちろんですが、過去にも例外なく本当に多くの外国人労働者が働いていました。国籍をあげると、ベトナム、イラン、中国、フィリピン、ミャンマー、中国、韓国、タイ、ブラジル、などです。家族を残して来日している場合や、日本国籍を取り働いている場合もあります。

――研修生のような資格で来ている人はいますか。

 Hという金属加工会社で私が働いていた時の話ですが、その職場にはインドネシアの青年たちが、「研修生」として一年働きさらにその後二年間「実習生」として働く目的で来日し働いていました。彼らの仲間のひとりが私に話してくれたのは、「インドネシアの派遣会社で日本語の語学研修を受けさらに体力測定や健康診断と試験に合格してはじめて日本で働くことが出来る」と。
 そしてもうひとつは、インドネシアの派遣会社にはインドネシア軍の上級クラスが経営に関与しているということでした。日本にも外国人労働者を「研修生」「実習生」企業に紹介する団体が存在します。
 そのなかのひとつ「C」という社団法人は、外務省、厚生労働省、経済産業省、法務省、国土交通省の五つの管轄で一九九一年に設立された団体です。「若くて優秀な外国人研修生を受け入れて、企業活性化と国際貢献を」が基調なんですが、この団体のホームページに書かれていた記事で「問題あり」と私が思うところがありました。(注)
 それぞれの国の「お国柄」を紹介しているつもりなのでしょうが、「部屋の使い方がきれい、汚い」「頑固で虚栄心が強い」などという事柄はあくまでもそのひと「個人の持つ個性」の問題にすぎず、決して「研修生」全体の性格や特性とよぶべき性格のものではないと思います。
 外国人労働者を搾取する手段に単に国際貢献というオブラートを被せたにすぎません。このような画一的な表現は、労働者間のマイナスの先入観を増幅させることになるだろうし、なによりも公の五つもの国の機関がこのような団体を後押ししているということが重大な問題だと思います。
 (注 参考記事。「タイ人研修生 まじめで、優しくて、思いやりがあります。素直で、従順です。好奇心も強いようですが、反面、すぐ調子に乗ったり、意外に外怖がりだったり、といった面もあります。……フィリピン人研修生 人当たりが良く、陽気で、優しいです。……反面、頑固で、わがままな面もあります。中国人研修生 家族、兄弟、一族を凄く大切にします。適応能力に優れ、物事の習得が早い。……反面、言葉の表現がストレートなので、違和感を感じる日本人もいます。……自分の間違いを認めたがらないことや、部屋が汚いといった面もあります」)。

分断を超える
可能性の模索

――「岐阜で中国からきた研修生が五万五千円しかもらえず、しかも四万円ほどを強制的に預金させられている、寮からは出られない」ということが『労働情報』で報じられていましたが、このような事例を知っていますか。

 先に紹介しました「H」の職場でも同様の話を聞きました。インドネシアの「研修生」が寝起きする部屋は六畳や八畳の部屋に二人から三人。部屋代は無料と言っていました。仕事を終えても外出する際には、派遣会社には外出する時間、帰宅時間というようなことを記入して報告書類を出す必要があるとの話です。

――その他の外国人労働者に対する扱いはどうでしたか。

 外国人労働者も世代交代が進んでいるということがいえると思います。一九八〇年初めから一九九〇年代中頃に来日した人たちはそれぞれの事情で帰国、あるいは、日本に残り日本国籍を取るなどして定住をし家族とともに暮らし、職場の中でも必要不可欠な人材として働いていますが、現場で働いているのはそういう人たちばかりではありません。
 現場担当者が「ここの仕事は、日本人に頼んでもなかなか続かないんだ。だから外国人労働者を雇うんだ。外国人労働者は多少しんどい仕事でも、いっしょうけんめいやってくれるし、残業代さえ払えば喜んで朝まででもやってくれる。やめたければ止めろ、派遣で労働者はいくらでもいるから」と平気で差別発言する。依然としてそれが当たり前の現実です。
 そんな中で多くの外国人労働者は低賃金で、朝早くから夜遅くまで残業をやらされる。過酷な労働条件のもとで働いている。働くのが嫌になり帰るとはいっても、帰るために多額の借金をする。来日のために借りた費用をしっかり稼いで持って帰ってから家を建てたというラッキーな人もいるらしいが、そういう人は極稀なケースだろう。

――売り上げ高一千億円という派遣会社があり、何万人もの労働者を全国に派遣している。そうだとすれば、派遣会社は正社員として給料を時給ではなしに、ちゃんと食える給料、退職金なども払うべきだ。それを要求する労働組合がない。そうした点について、どう考えますか。

 派遣労働者のための労働組合がないというのが大きい。労働条件を話し合う交渉の場がどこにもない。あるのは派遣先企業の窓口でもある営業担当者が決められているだけです。
 派遣会社の個人と個人の労働者は分断されてしまっていて横の連帯意識が作られない。百人規模の労働者が働くの会社にぽつりと一人派遣され、なんとかして派遣労働者どうし繋がろうと思うが、翌日にはもう辞めて居ない。。このハードルを越えるにはどうしたらいいのだろう。
 それにはまず派遣労働者の現状をひとりでも多くの人たちに知らせ、問題を共有し合えるような労働者との連帯を少しでも築いていくことから始めたいと思います。

 ――ありがとうございました。(文責編集部)



外国人行動マーチ・イン・マーチ
20カ国の労働者が各国語で公正な権利を要求

 三月五日、新宿・柏木公園で「外国人行動(雇用保障と平等な社会をみんなに)マーチ・イン・マーチ」が行われた。「生活と権利のための外国人労働者総行動」は今回で十三回目をむかえた。二十カ国にもおよぶさまざまの国から来た労働者たちが母国語で書いたプラカードやむしろ旗を掲げて参加した。
 日本人労働者以上に有期不安定雇用を強制している外国人労働者が置かれている深刻な状況を打破するための闘いに立ち上がった外国人労働者は口々に訴えた。
 「外語学校で、有期雇用の契約が終わると簡単に首を切られる。長く働く講師は、賃金が高くなりすぎると解雇する。私たちが安定した生活をするために、雇用破壊をやめろ」。「賃金未払いや労災隠しをやめてくれ」。
 こうした不安定雇用の問題とともに、政府が「治安の悪化」や「テロの恐怖」を叫び、警察庁や法務省が中心となって「テロ対策、外国人犯罪対策、不法滞在者半減政策」などを推し進めている。外国人に限って上陸審査時に指紋、顔画像など個人識別情報の提供を導入する「入管法改正案」を今国会に上程しようと目論んでいる。
 こうしたことに対して、外国人労働者は怒りをこめて、「外国人をすべてテロリストとみるのはやめてくれ。警察官はすぐに職務質問をする。そんな人権侵害をやめてくれ」と訴えた。
 全国一般東京なんぶ、全統一、神奈川シティユニオンを主力にしながら、電通労組、郵政ユニオン、鉄建公団訴訟原告団などの各組合も参加した。新宿を一周するデモを行った。この行動には四百人が参加した。東京の行動の他にも大阪、名古屋、福岡でも一斉に同様の行動が取り組まれた。(M)

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