| 「格差社会」と戦争国家体制に今こそ反撃するたたかいを |
悪政を象徴する
「三点セット」
政権最後の年を迎えた小泉首相の「構造改革」路線を直撃する事態が相次いでいる。言うまでもなく、「ライブドア」、「耐震データ偽装」、「米国産牛肉輸出解禁―再禁止」の「三点セット」である。
「官から民へ」と「小さな政府」をスローガンに、「規制緩和」を軸にした新自由主義的・市場万能主義的な「構造改革」をがむしゃらに推進してきた小泉内閣は、昨年の九月にクーデター的に仕掛けた総選挙で、郵政民営化に反対する自民党内「抵抗勢力」を追い落とし、マスメディアの支援も受けて圧勝した。自民党内で小泉はまさに「独裁者」として振る舞い、反対論は影をひそめることになった。しかし、その時が小泉首相の絶頂であった。
昨年の九月総選挙の後、小泉政権の推進してきた新自由主義路線が、いかに「格差社会」を作りだし、「勝ち組・負け組」の新しい二極分化と青年や高齢者などの中に膨大な貧困層を拡大再生産してきたか、という事実が改めて指摘され、マスメディアの中に広がっていった。そうした言説は、反グローバリズム運動や旧来の革新派からのものにとどまるものではない。むしろアメリカ流市場原理主義が「拝金主義」の風潮を促進し、日本的道徳や倫理を破壊してきたと慨嘆する保守派の中に、そうした機運が大きく拡大している。「読売」から「反米民族主義」の小林よしのりに至るまで、小泉構造改革に対する厳しい批判が渦巻いている。
メディアの世論調査によれば、小泉「構造改革」が「格差社会」を作りだしてきたという意見が多数を占めるようになっている。それでも依然として小泉政権への支持率は過半数である。だが同時に、次期総裁ポストを狙う自民党内の抗争の中にもそれが反映しはじめている。一月二十六日の山崎派や津島派の総会でも、それぞれの会長である山崎拓前副総裁と津島雄二元厚相が「改革には『光と影』があり『影』の部分に注意すべき」と語った。小泉の「民営化・規制緩和」翼賛一辺倒だった状況に、いまだ錯綜し、矛盾した未定型な様相を呈しているとはいえ明らかな変化が始まっているのである。
守勢一方で言
い逃れに終始
小泉首相は一月二十日の施政方針演説において、あくまで竹中流の市場原理主義に固執する立場を改めて強調した。
小泉は「ここで改革の手を緩めてはなりません。……郵政民営化の実現を弾みに改革を続行し、簡素で効率的な政府を目指します」と主張するとともに、「経済の活性化」の核心が「『貯蓄から投資へ』の流れを進め」ることであると述べた。
しかし「ホリエモンの逮捕」とライブドアの犯罪の暴露、規制緩和・民営化路線の結果である耐震データ偽装問題、そして輸入解禁したばかりの米国産牛肉に特定危険部位の脊柱が混入していた問題で政府答弁書(昨年11月18日)に反して輸入再開以前の「事前調査」がなされなかった問題などで、小泉内閣は守勢に立たされることになった。
小泉は国会答弁の中で、「格差社会」の拡大を指摘する公明党議員の質問に対して、一月十九日に発表された内閣府の月例経済報告をもとに「格差の拡大」をあくまで否定しているが、それは現実とはほど遠いものだ。OECD(経済協力開発機構)の調査によっても、日本の貧困度(所得が全国民の平均所得の半分に満たない「貧困者」の全人口に占める比率)は右肩上がりに急上昇し、欧州主要諸国の二倍ないしそれ以上に達している。世帯別所得の上位二〇%と下位二〇%の所得総額の開きは一九八〇年代までの十倍以内から二〇〇二年にはなんと百六十八倍となり、その傾向は広がっているのである(本紙05年10月10号1面参照)。
「ホリエモン」を「改革のシンボル」として押し出し、総選挙で武部幹事長や竹中現総務相を応援に派遣した自民党の責任については、小泉は当初「今回の事件とは別問題」と強弁しながら、「総裁としての責任は甘んじて受ける」とかわさざるをえなかった。
明らかに、小泉内閣は「絶頂」からの転落への道を急ピッチで歩みつつある。
靖国参拝への
居直り許すな
九月をにらんだ「ポスト小泉」の総裁―首相レースをめぐるもう一つの重要な政治テーマは、「靖国参拝」強行がもたらした東アジア外交関係の危機をどう打開するかという課題である。
一月四日の年頭記者会見で、小泉は自らの「靖国参拝」に関して自説を繰り返した。
「靖国参拝は外交問題にはしない方がいい。一国の首相が一政治家、一国民として戦没者に感謝と敬意、哀悼の念を持って参拝することに、日本人からおかしいとの批判が出るのはいまだに理解できない。まして外国政府が心の問題にまで介入して外交問題にしようとする姿勢も理解できない」「靖国参拝をしたら交渉に応じないということでは外交にはならない。一つの問題があるから中国側、韓国側が会談の道を閉ざすことはあってはならない」。
「靖国参拝して何が悪い。心の問題に介入しようというのは内政干渉だ」と中国、韓国を高飛車に批判する小泉のこのような姿勢に対しては、「日米同盟」を東アジアにおける自らの軍事的・政治的覇権の機軸に据え、その共同したイニシアティブによって中国を牽制しようとするアメリカ支配階級にとっても「懸念」の種となりつつある。その「懸念」の内容には、靖国神社とりわけ遊就館の展示に見られる「大東亜戦争肯定史観」そのものへの本質的批判も含まれている。
新自由主義的「構造改革」路線の暴走に対する「見直し」とともに、この「靖国」問題は、自民党の次期総裁選の争点の一つに浮上した。小泉首相が推している安倍官房長官は、「靖国を次期総裁選の争点にすべきではない」と訴え、「靖国参拝見直し」派を押さえ込もうとしている。総裁候補の一人麻生外相は「日本の外相が国内でここに行ってはいけないと外国から言われるのは通らない。中国が言えば言うだけ行かざるを得ない。たばこを吸うなと言うと吸いたくたるのと同じだ」と挑発するとともに、「天皇陛下が参拝なさるのが一番」と主張した(1月28日)。
この安倍、麻生らの動きに対して、山崎拓は一月五日の新春パーティーで総裁選出馬を匂わせながら「対中関係の改善」を語って小泉を批判し、山崎とともに超党派の議員連盟である「国立戦没者追悼施設建設を考える会」を再開させた福田康夫元官房長官と連携して安倍に対抗する意向を示した。加藤紘一元幹事長もそこに合流している。一月二十六日の国会内で行われた同「考える会」の会合では、山崎、福田、加藤も出席して『靖国問題』の著者・高橋哲哉東大大学院教授の講演を聞いたと報じられている。財界でも日本経団連の奥田会長は、一月五日の経済三団体の会見で、ポスト小泉をにらみつつ「アジア外交路線については変えていただきたい」と述べた。
これらの事例は、自民党総裁選を見据えた綱引きが熾烈に繰り広げられていることを物語っており、その中で小泉首相のトップダウン的指導力は急激に衰退しつつある。
広がる社会的
抵抗の裾野
小泉首相の新自由主義的「構造改革」路線と「靖国参拝」強行に対する東アジア外交関係の危機をめぐる批判の広がりは、もちろん直接的には自民党総裁選をめぐる駆け引きという色合いを帯びている。
しかし新自由主義的「構造改革」路線に関しては、竹中平蔵総務相と中川秀直総務会長のラインは小泉路線の継承を強力に主張して「改革」の見直し論議を批判している。また改憲のための「国民投票法案」の上程・成立と「米軍再編」を通じた日米軍事同盟のグローバルな拡大、すなわちアメリカの「反テロ」グローバル戦争への自衛隊の能動的組み込み方針に関しては、自民党内での異論の余地はほとんどない。そして民主党の前原執行部もまた、「官から民へ」の新自由主義「改革」路線と「集団的自衛権」の発動をふくむ日米軍事同盟の世界大の強化、憲法九条の改悪については、事実上の与党となっている。
この政治的流動の中でわれわれは、「三点セット」問題に示された小泉の市場原理主義的「改革」路線への批判の高まりという情勢を活用し、あらためて新自由主義的「構造改革」への労働者・市民の社会的抵抗の運動を大きく発展させていく必要がある。新自由主義「改革」への批判は、多くの場合、グローバリゼーションと市場化への流れを「既定の現実」として受け入れながら、その是正を求めるという意識から出発せざるをえないだろう。しかし「構造改革」批判が、そのような形で労働者・市民の大衆的意識の中に浮上しているという現実がきわめて重要なのであり、その局面に分け入って「反グローバリゼーション」=「オルター・グローバリゼーション」の運動、「平和・人権・公正・民主主義」のオルタナティブを目指す闘いのための積極的な討論を発展させる必要がある。
同時にわれわれは、新自由主義的「構造改革」への批判と抵抗とともに、今日の憲法改悪や教育基本法改悪への動きを阻止し、沖縄・横田・座間・岩国などを結ぶ「米軍再編」に反対する闘いを共同の力で作りだしていくために全力を上げよう。
戦争国家と「格差社会」を作りだす小泉政治を拒否しよう! (純)
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