| 遠藤一郎さん(全国一般全国協書記長)に聞く かけはし2006.2.27号 |
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雇用破壊・賃金破壊に直面する一人一人の労働者を闘いの中心に |
06春闘は、景気回復を背景に久しぶりに連合各単産から賃上げ要求が出ている。しかし問われていることは、無権利と超低賃金の攻撃にさらされている非正規職労働者の訴えを中心に闘いを組み立てることだ。全国一般全国協書記長の遠藤一郎さんに今春闘の焦点となる課題についてインタビューした。(編集部)
賃上げ要求復活は本当か?
――景気がよくなっていると言われていますが益々格差が広がっている。他方小泉も行き詰まり始めている。〇六年の労働者の課題についてお話しください。
賃金問題で久しぶりにIMF―JCが賃上げ要求をすることになった。日本経団連が一定の割合で賃上げを認めると発言したことが根拠となっている。賃上げの復活だという話もあるが、実際に景気の回復というのは一部上場企業の、しかもその中の勝ち組に限られている。
その連中の復活の要因は、ひとつは世界で稼いでいる。とりわけ中国の著しい経済成長、それを巨大な市場としながら、全世界で稼いでいる。典型的にはフィリピン・トヨタのように犠牲者を出してまで稼いでいるのがいい例だ。もう一つ、企業収益をべらぼうに上げている理由は、リストラだ。本当にバブル崩壊後、激烈なリストラをやって、企業収益の回復を図ってきた。世界で稼いで、リストラで稼いだ。
リストラの一つの特徴になるけれど、企業は非正規化で稼いだ。企業が非正規労働者を雇う理由は、いつでも首が切れることと、低いコストで使えるのが主な要因だ。
そのことは日本経済の底上げにちっともつながっていないことに見事に表現されている。また昔のように、大企業の業績回復が地方を含めての回復につながっていない。業績が回復したからといって、鉄鋼など基幹産業が二千円の賃上げを要求するとか、いろいろ言っているけれど、巨大企業での春闘への対応の基本は一時金となっている。これが実際には全体の底上げをぶっ壊している。数年間、業績回復は一時金でとされた。一時金は絶対に相場にはならない。業績回復の企業内的配分だ。
もともと春闘とはそうではなかった。企業横断的に底上げして、生活を改善するというものだった。そのことが定期昇給のない中小にも波及していくことだった。ところが、大手の業績のいいところも、賃上げはしない。これをやられるとどうなるかというと、業績の悪いところは最初から相手にならない。影響が全部企業内で遮断される。これがここ数年間の傾向で、文字どおり春闘が終焉したことだ。
経団連の経営労働政策委員会報告のタイトルは「経営者よ正しく、強かれ」というものだ。ものすごく不遜なレポートだ。
バブル崩壊の建て直しは経営者が全世界で努力したからだと。失業率も最高五・五%で、いまは四%に落ちたのではないか。ヨーロッパでは一〇%なんだから。これをやれたのは全部企業努力だ。こういうことで、「正しく、強かれ」という。これは最初から二極化構造を容認しているということだ。
いまでは、規制改革民間開放推進会議の座長をやっている宮内義彦・オリックス社長は次のように主張している。
エリートとアナザーの時代だ。付加価値の高い労働を行っているエリートが大企業を中心にして、世界戦略を練って知的な付加価値の高い労働を行っている。そして企業は全世界で稼ぐ。それに対して、いわゆる一般的サービス業、製造業は全世界、例えば中国で自動車を作る、電化製品を作る、服を作る、世界で一番安いところに平準化されるのだ。だから、日本全体を豊かにしようと思ったら、底上げしようなんて思うのは間違いだ。知的な労働で企業が全世界で稼ぐということに寄与する労働と、全世界の一番低いコストにひきつけられる産業に分れる。
これは当たり前なのだ。エリートでない方にあわせて経済政策を立てたら、日本は自由競争の中で勝てない。問題は国際競争でエリートが勝ち抜けるという前提があって初めてアザーズ(その他)もエリートになりなさい、努力しなさいと言える。もともと二極化は前提なんだ、というのが宮内の主張だ。
その意味で言うと、総中流化の時代が終わったということだけではなくて、意識的にそのことが進められていることをハッキリみておかなければいけない。
非正規労働者の声を前面に
非正規職問題を具体的に考えると、構造的・政策的に悲惨な状態に置かれている層が現に存在している。例えば、タクシー労働者、零細運輸労働者。昔のバブル華やかなりしころ、夜遅くまで飲んで帰ろうと思ったらタクシー待ちが多い。ここから構造改革を行わなければいけないとタクシーの規制撤廃が進んだ。だが景気が後退してタクシー需要が減っている最中に、増車がOKとされた。料金の設定が自由化された。そのことによって、タクシー労働者に最賃割れがでてきている。しかも労働時間が長時間になり、過労死だとか労災が多発している。さらにその結果タクシーだから、交通事故も多発している。
失業率が高くなった時に、政府は介護労働が新しい雇用を創設するとうたった。だがいま、介護労働現場はどうなっているか。
登録ヘルパーたちが「やっと、十六万円の介護サービス収入があったよ」というのはごくまれだ。十万円以下だ。介護の登録ヘルパーたちはいくつかのセンターに登録して、一生懸命仕事をつないで走り回って、「十二〜十三万円とれれば、よかったね」と言い、多くの人は「今月八万円でひどい」と言っている。今度の介護報酬の見直しでさらに悪化する。
「二百万円で暮らせるか」とスローガンを出しているが、現実の介護労働者はいいとこ百三十万円くらいだ。昔のパートが非課税で親父の扶養手当(年間130万円未満の収入)の中でやれた。それとほぼ同じだ。それが新しい雇用の受け皿などと言うのはふざけた話だ。
外国人労働者。例えば語学学校の先生で、外国人労働者が正規ビザで来るためには、月二十五万円の賃金の保証が法律上ある。月収二十五万円が保証されるからなんとなくいいように見えるけれど、ボーナスはないからちょうど年収は三百万円。そこから保険料などが引かれる。そうすると、現実にはベラボウに安い。実際の手取りで言えば二百二十万円くらいだ。なおかつ、一年の有期雇用。安定した雇用が保障されていない。外国人学校の大手で言えば、「NOVA」がある。十年、十五年働いている人は給料を上げざるをえないが、いまNOVAはどんどんベテランを切ってほとんど毎日のように成田空港に、海外から新しく募集した人を迎えにいって配置している。いつもギリギリの線で回転させている。この人たちはほとんど社会保険に入っていない。雇用保険はやっと私たちの運動で入るようになった。厚生年金と医療の政府管掌保険に入れろとやったけれど、日本の制度上の問題ではじかれている。いずれにしてもセーフティーネットが保障されていない。これも構造的に作られた。
高速道路公団の民営化が進められている。「ムダづかいが多い、天下りが多い、税金の投入が多い、経費を節減しろ、こうやれば料金が安くなる。建設は途中で断念しろ」と道路公団は攻撃された。結果的にどうなったかと言えば、ファミリー企業はそのまま、この前の橋梁の談合で公団の中枢が逮捕された。いままでの公団の体質はまったく変わっていない。その上今回の見直しで計画されている高速道路を全部作ることになった。
そこで何が起こったかと言えば、例えば料金収集所だとかパトロールとかこれらはすべて公団の天下り企業の一種だ。そこに委託する経費を三年間で三割カットだとか、五割カットだとかやられている。うちで組織していた南部支部の首都高速の料金収集所の組合(全体4000人のうち600人)が長い時間かかってやっと、年収四百万円くらいのところにきた。
ところが、「公団の民営化と経費削減で、公団からくる予算が削られた。三割カットで、賃金は三年間で一〇%ずつカットします」と通告された。そうすると、残るのは七割だから二百八十万円になってしまう。当然安定的雇用はできないからパート化・有期化される。こっちはようやく正規化させたのが、そういう事態でどんどん変わってしまう。おまけにそこに、ETC(自動料金読取器)が導入され、事故が多発している。ついこの前も大問題になったのは、故障を修理していたら、車がそこに突っ込んできてはねられてケガをした。うちの組合員だ。この間も死亡事故もあって、なんとか安全を点検しなさいと国交省のチェックが入った。そこでなにを言ったかといえば、「あそこは高速道路なんだ。従業員が飛び出したからいけないんだ」と言って出勤停止の処分が出された。さすがに怒ってしまった。故障が起こって、修理しなければたいへんなことになる。結局、命・安全まで個々の労働者に押しつけて政府も公団も安全策なしだ。
規制撤廃と超低賃金化攻撃
今の二極化社会というのは、安全の問題、命の問題のところまで、ぶっこわしている。非正規問題というのは、一般的に言うのではなくて、タクシーの労働者、介護の労働者、外国人労働者などがどうなっているのか、われわれが組織している労働者の声をどれだけ突き出せるのかが問われている。
数年前から、非正規、有期雇用労働者問題と言ってきたけれど、それを具体性を持った闘いにする。主人公は一人一人の労働者であり、その労働者が登場して怒る、主張する、そういう春闘にしていかないと、もうダメだと思う。一般的な宣伝ではないと思う。
宮城県に縫製企業の組合があるが、最賃と同じレベルの給料だ。そこに、中国から研修生がきている。実習生・研修生が寄宿舎に入って、生産の調整の時には日曜日でも夜中でも働かされる。つい最近、全統一が岐阜で問題にしたけれど、時間外でも二百円とか三百円だよ。時間外手当として二百円、三百円が加算されるのではなく、時間外の仕事をしてもらう全支給額が一時間二百円とか、三百円なのだ。ここに表現されている現実は政策的に分断していこうという資本の意図である。一方ではトヨタでは中小非正規労働者の年収を超える二百四十万円の一時金をとる労働者がいる。
公務員叩きにどう反撃するか
今年も企業の方は一時金は満額回答という話になってきている。昔のように企業と交渉しても前に説明したように他の企業の労働者には波及しない構造になっている。一般的に横につながる春闘というよりは、公務員で言えば、ゆうメイトとか公務員臨職とつながるんだけれど、こういう人たちの怒りの声と要求、生活上の要求、安全と命を守る要求をどうやってつき出していけるかが課題だ。
もう一つ。小泉が九月の選挙で圧勝して、公務員改革と言ったが、これがスムーズに進むかわからない。耐震偽装問題、BSE問題、防衛施設庁の談合などあまりにもミスが多過ぎる。小泉政治は政権末期の症状だと言われている。だが政府はこうした中でも、公務員の定員削減と人件費削減は公約だといって政策的に進めている。
問題はこれと闘う公務員はどういう姿勢を持っているかということだ。非正規の労働者が公務職場でべらぼうに増えている。さらに指定管理者制度を民間委託化している。大阪の市職が公務員の厚遇問題で、さんざんたたかれた。それに対して反撃しえなかった。
公務員問題は、自治体労働者が同じ自治体の中で働く臨時職員の冷遇問題をどうとらえて、闘ってきたのかが問われる。例えば共済にも入れない。特別な手当なども全部除外されている。そういう人たちのためにどう闘ってきたのかが問われている。今度のように公務員労働者に直接攻撃がきたときに、臨職の労働者が半分くらいの賃金で働いているというのを放置したままでは、公務員攻撃とは闘えない。臨職の問題を自分たちの問題としてどう闘ってきたかということが、逆に公務員労働者に対する攻撃に、公共サービスをきちっと守っていかなければいけないという闘いを触発させる要因になる。生活できる賃金条例と言われているアメリカで始まったリビングウェイジの運動みたいなものがきちんと取り組めるのかが問われている。
二極化分解の中で、一番大事なのは生活できる最低賃金の闘いだ。最賃が改悪されて産別最賃がはずされた結果、地域最賃は東京で七百十四円だからどうにもならない。自治体関連の仕事全体に対して生活できる賃金条例みたいなものを最賃の課題と結びつけてやってゆく必要がある。
労働法制改悪を阻止しよう
もう一つは、労働法の改悪の問題だ。いま出ている労働契約法は二極分解を法的に加速化させる。業務請負だとか委託の労働者の権利をどう保障していくのかということが労働法の本当の主旨である。だがいま提出されようとしている労働契約法は本来のあり方にまったく逆行している。今回の労働法のポイントは一つは労働時間規制を適用しない労働者を膨大に増やす、ホワイトカラーイグゼンプションの導入だ。ホワイトカラー労働者は何人いるか。厚生労働省が試算では約三千万人いるという。ホワイトカラー労働者を全部はずすというわけではないけれども、日本経団連が要求しているのは年収四百万円をひとつの分岐点とみている。三千万人のうちの半数を労働時間規制からはずされてしまう。約千五百万人の労働者が週四十時間労働の規制がなくなり、さらに残業代を払わなくていい。年間の休日だけ与えればいい。後はいくら働かせてもかまわない。これは全世界的な労働時間短縮の流れを真正面から否定することになる。それはIMFなどの関係でまずいので、実際は労働法の規制からはずしてしまえばいいわけだ。これが労働法の改悪の最大のポイントだ。
もう一つは解雇の金銭解決。労働者が不当だといって解雇が無効になっても、戻すのはたいへんでしょう。だから、使用者が申し出れば金銭でやめてもらえるということを制度化しようということだ。労働条件の切り下げをどんどんやりやすくするための制度を作ろうとしている。きわめつけは労使委員会の新設だ。労働組合の組織率が下がっているので、労働者の声を労働条件を決定する時に反映させることができない。そこで経営者が設置する労使委員会でやりましょうと。これは労働組合法の全体の改悪はできないけれども、労働契約法によって実質的に労使委員会が制度化されれば、労働組合法を骨抜きできるという意図である。
個別の労使紛争は増えている。それをきちっと裁けるというのが労働契約法だったはずだ。入り口の所で、ヨーロッパでは安定した雇用が基礎だから、有期雇用は特別の条件があった時だけ認められる。ところが、準備されている労働契約法では、非正規雇用は現実に三二・七%にもなっているのに、それを規制するつもりはありませんと。解雇の制限についても、解雇制限法的なものを契約法制に入れるんではなくて、逆に金銭解決なんかを認めるような方向になっている。入口も出口も改悪するというのがいま出ている労働契約法である。
労働契約法はさらに非正規労働者を拡大し、二極分解構造をさらに拡大させる。労使委員会で労働条件を決めるというのがまさにそれだ。入口、中間、出口すべての面で二極化を促進する。今春闘の課題としてきっちりやらなければいけない。
一〇四七人の国家的不当労働行為をめぐる国鉄闘争が今年で二十年目をむかえる。昨年9・15鉄建公団訴訟の東京地裁判決が出されたことを契機にして、闘争団、組合、支援を貫いた不団結状況を克服する動きが出てきた。最大の首切り争議を勝利的に解決するための闘い、国鉄闘争をはじめとするすべての争議勝利の課題が〇六春闘の中心にすえられる必要がある。
今年は増税問題が大事だ。年金も医療、介護もどんどん負担増になっている。そこに増税だから、これはたいへんだ。この間の議論で一番頭にくるのは、国家財政が破綻しているから、増税はやむをえない。したがってそれを解決するために消費税の引き上げだと。ひどい学者は、一番平等な税は消費税だと平気で言っている。ところがこの間で言うと、いわゆる金持ち優遇税制で、累進課税がものすごく引き下げられた。高額所得者の最高税率は八〇%あった。いまは三五%だ。それから法人税も五五%だったのが三五%と下げられた。だから、企業と高額所得者の税の優遇の減税でバブルの頃からの推計で言うと、約二十兆円近い税収のダウンがあった。このことに触れないで消費税値上げだ。こんなひどい話はない。
最後に、憲法問題と米軍再編・基地問題。憲法問題で加憲がどうの、創憲がどうのと、議論いくらやっててもダメだ。むしろ米軍再編、特措法で沖縄、岩国、横須賀と座間などの基地再編強化が進められ、現に9条を突破するような軍事的な米軍との協力体制ができている。基地撤去の反基地闘争を闘って、その具体性の中で若い人も含めて憲法改悪反対闘争の基礎を作っていくことが必要だ。3・5の沖縄県民大会とか2・23の基地問題の集会とかそういう闘いと9条改憲反対闘争を結びつけていかなければならない。(文責編集部)
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