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「対テロ」戦争戦略強化のブッシュ一般教書演説      かけはし2006.2.20号

イラク戦争と占領を終わらせよう在日米軍基地の再編強化に反対!

戦争こそ「歴史的使命」

 ブッシュ米大統領は、一月三十一日に毎年恒例の一般教書演説を上下両院合同会議で行った。ジョージ・W・ブッシュは、イラク侵略戦争の口実とされた「サダム政権のアルカイダへの支援」や「大量破壊兵器の脅威」がすべて捏造であったことを自ら認めざるを得なかった。さらに国内外からの反戦世論や、国家安全保障局の(NSA)による令状なしの盗聴、キューバにあるグアンタナモ米軍基地やアフガニスタン、東欧諸国に設置した秘密収容所での「テロリスト」への拷問、裁判ぬきでの長期拘留という人権侵害犯罪への批判に追い詰められて、現職大統領としては異例の低支持率にあえいでいる。しかし、今年の一般教書演説でもブッシュは「戦争大統領」としての本領をいかんなく発揮した。
 一般教書演説がメインテーマにしているのはイラク戦争・占領の継続であり、中東の「民主化」であり、イランとの戦いであり、全世界での「圧政の終結」である。すなわち端的に言って、グローバルな「対テロ」戦争戦略の継続と強化である。それこそが米国に課せられた「歴史的使命」だというのだ。
 ブッシュは述べる。「二〇〇六年、世界の半数以上の人々は民主主義国家に生きている。われわれは他の半分、すなわちシリアやミャンマー、ジンバブエ、北朝鮮、イランの人々を忘れない」「われわれが放置しても、卑劣な攻撃者たちはわれわれを放っておかない。彼らは戦場をわれわれの土地に移すだけだ」「米国は欧州の自由を守り、ホロコーストの死の収容所を解放し、悪の帝国を屈服させた。再びわれわれは、歴史の要請を受けて世界を平和へと導く」と。
 この欺瞞に満ちた宗教的アメリカ原理主義の衝動に駆り立てられているブッシュは、帝国の戦争機構をフル稼働させている。

イラン・シリアもターゲットに

 具体的に見よう。まずイラクについて。
 「イラクにおける米国の任務は困難だ。米国の敵は残忍だからだ。……急激なイラクからの撤退は、われわれの盟友であるイラク軍兵士を死や監獄へと置き去りにする。米国の選択肢はただ一つ。われわれは約束を守り、敵を倒し、過酷な任務に立つ米国軍を支援することだ」。
 すなわちブッシュは、イラクの本格政権が出発しても長期にわたって占領と戦争を継続・強化することをあらためて宣言しているのである。
 さらにパレスチナの選挙でのハマスの勝利にふれて、ハマスが「イスラエルを承認し、武装解除を行い、テロリズムを根絶しなければならない」と圧力を強化した上で、イランについて取り上げている。
 「(イラン)国家は今、国民を孤立させており、ごく一部の聖職者エリート集団によって国民は人質となっている。国家がパレスチナやレバノンのテロリストを支援する政治は終わりを告げるに違いない。イラン政府は、核兵器開発の野望を持ち、世界を無視している。そして世界の国々は、イランが核兵器を保有することを許してはならない。米国は、これらの脅威に対峙するため、世界を結集し続けるだろう」。
 こうした主張と、「米国のリーダーシップに代わるものは、より危険で不安定で劇的な世界だ。私たちは世界を主導することを選ぶ。なぜならそれが私たちに与えられた特権だからだ」という信条を重ね合わせた時、ブッシュ政権が残された三年足らずの任期のうちに、イランやシリアへの新たな「対テロ」戦争を発動する可能性を決して排除することはできないのである。

軍備増強進む太平洋海域

 「戦争帝国」としての米国の姿は、二月三日に米国防総省が発表した長期国防計画「4年ごとの国防政策の見直し」(QDR)でも浮き彫りになっている。二〇〇一年の「9・11」直後に発表された前回のQDRを引き継いだ今回の「戦時QDR」では「テロ・ネットワークの打破」、「強力な本土防衛」とともに、イラン、インド、ロシア、中国を、強権政治や軍拡が強い懸念をもたらしている「戦略的岐路にある国家」として位置づけ、とりわけ中国を「軍事的に米国の競争相手となる高い潜在性を持つ」として、明確に「中国の軍事的脅威」にシフトした内容となっている。
 「長期にわたる戦争」と位置づけられた「対テロ」戦争では、二〇〇七会計年度(二〇〇六年九月から)中に、現在約五万二千人の特殊作戦部隊を一五%も増強し、さらに機動的統合作戦本部や海兵隊特殊作戦本部も創設するという方針を提起した。また中国を主要な「脅威」とした「戦略的岐路にある国家」に対しては、ミサイル防衛(MD)の構築、偵察機やステルス機の前線配備、そして在外米軍基地の再編を通じて対抗することを明確にしている。
 中国を「主要な軍事的な脅威」とする方針は、「対テロ」戦争の主要な戦場が東アフリカから中東を経て東北アジアに至る「不安定な弧」に設定されていることともあいまって、太平洋地域への米軍事力の集中をもたらしている。とりわけ、新たにハワイの海軍基地に空母を配属することを含め、太平洋海域には六隻以上の空母が展開する。とりわけ潜水艦は現有約七十隻の六割以上が太平洋に配備されるのだ。沖縄をはじめとした在日米軍基地は、米帝国主義の世界的な司令・情報・作戦・出撃の最重要の戦略的中枢基地としての任務を背負わされる。

米帝の世界戦略と自衛隊

 こうして、三月に最終報告が出される「米軍再編」、すなわち「日米同盟・未来のための変革と再編」は、たんなる在日米軍基地の再編にとどまらず、アメリカの全世界的な先制的・攻撃的な戦争戦略を先端で担う、日米軍事同盟の全地球的な再組織化にほかならないことがいっそう鮮明になっている。三月の「最終報告」とともに日米安保同盟の「新宣言」が発表されることが、日米両政府は合意した。われわれは一九九六年の日米安保「新宣言」を、旧来の安保条約の枠組みを超えてアジア・太平洋全域を射程に入れた日米共同作戦体制の形成と捉えたが、今や、この日米軍事同盟はアメリカのグローバル「対テロ」戦争、そして中国を「主要な脅威」と見なした戦略に自衛隊を完全に組み込む体制となっている。
 QDRは「同盟国はアメリカの力の源泉」と評価し、「同盟国」の軍事力をアメリカの「国力」の一部として位置づけている。この余りにも露骨な表現は、自衛隊がまさに徹底的に米帝国主義の利害にもとづいて世界の戦場に動員される時代の到来を意味している。自民党新憲法草案が言う「国際社会の平和と安全を確保する」ための「自衛軍」の任務とは、徹底的にアメリカ帝国主義のグローバルな軍事的覇権のために使用されることなのだ。支配階級が押し進める憲法改悪は、そうした体制を「国益」の名の下に作り上げることにほかならない。
 沖縄では、三月五日の県民大集会を当面の焦点としながら、米軍基地の新設・強化に反対し基地の撤去を求める闘いが自治体当局をも巻き込んで展開されている。座間・相模原などでは、市長自らが先頭に立って米軍司令中枢の移転と自衛隊中央即応集団司令部の建設に反対する運動が発展している。岩国では市長が発議して、厚木の米航空部隊の移転の賛否を問う住民投票が行われようとしている。
 われわれはこうした新たな反戦・反基地闘争の強化のために全力を上げなければならない。


3・18日比谷野音集会へ

 アメリカではブッシュの一般教書演説に示される侵略戦争の拡大路線に反対し、米軍のイラクからの即時撤退を求める運動がさらに発展している。一月三十一日は、民主党と無所属の下院議員六十二人が参加する「進歩議員団」と民間組織の「政策研究所」、そして雑誌『ネーション』が共同で、ブッシュの「一般教書演説」への対案を公表し、パネルディスカッションで「イラクからの撤退」を訴えた。またこの日、「平和のための戦死者家族の会」(GSFP)と女性反戦団体「コード・ピンク」は、ワシントンで「国民の一般教書」集会を開催し、記者会見をを行った。イラク戦争で息子が戦死したシンディ・シーハンさんは「国民の六〇%以上がイラク戦争は間違いだと考えている」と指摘し、ブッシュを厳しく批判した(「しんぶん赤旗」2月2日)。シンディ・シーハンさんはその後、議会内で「ブッシュの一般教書演説を妨害しようとした」として警察に逮捕された。
 すでにブッシュ政権は、イラク戦争に二千百五十億ドル(二十九兆三千七百八十七億円)もの膨大な国費を投入しており、その額は戦争の継続とともに一兆三千億ドル以上に膨れ上がるという試算がある。ブッシュはまさに福祉・教育予算を切り捨て、貧富の差をさらに拡大する新自由主義路線を強行しながら、この天文学的なカネをイラクや自国民、そして全世界の人びとを殺戮するために注ぎ込もうとしているのだ。
 「日米関係の強化によってこそ、アジア諸国との関係も改善する」とうそぶく小泉は、ブッシュ「戦争帝国」にあくまでもつき従っている。サマワの陸上自衛隊は五月に撤退すると報道されているが、空自のイラクでの米軍支援作戦はさらに強化されるのだ。
 イラク侵略戦争の開戦三年を迎えて、アメリカ、イギリスなどでイラク反戦・占領中止・外国軍の撤退を求める集会とデモが呼びかけられている。WORLD PEACE NOWは三月十八日に「終わらせようイラク占領 終わらせよう戦争の時代 WORLD PEACE NOW 3・18」を開催する(午後1時 東京・日比谷野外音楽堂 パレード出発予定午後3時半)。
 全世界の平和を求める人びととともに、各地の「米軍再編」に反対する運動とともに、そして憲法改悪に反対する闘いと連携して、この集会を大きく成功させよう!
(2月9日 平井純一)                             


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