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アメリカにおける性と出産の権利            かけはし2006.10.9号

妊娠中絶を拒否する医療機関女性団体攻撃する右翼を許すな


 目標を支持され、あらゆる範囲のオプションを検討するように励まされるならば、女が自らの命に関する聡明な決定を下すことができる、ということは明らかである。これは性と出産の自由から始まるが、教育や医療へのアクセス、きちんとした意味のある仕事の権利、家族を持ち安全な環境の中で子どもを育てる権利を含める必要がある。それを必要とする親たちにとって(ほとんどの親たちが必要としているが)、高品質のデイケアも含まれる。右翼過激派がどんな障害を女たちの前に設けようとも、女たちには障害をくぐりぬける客観的必要性がある。

プロチョイス活動家のデモ

 しかし、二〇〇六年には、性と出産の権利の敵対者たちは、種々の戦線で連続的に手を打ってきた。
 三月には、サウスダコタ州議会が州内で妊娠中絶を禁止する法律を通過させ、マイク・ラウンド知事が署名した。この法律は、一九七三年の「ロー対ウェイド判決」をものともせず、妊婦の健康を保護するための何の条項も含んでいない。禁止に反対する活動家たちが介入する前に、法律は七月一日に発効するように予定された。
 この夏、ミシシッピ州に唯一残っている妊娠中絶医療機関である「ジャクソン女性の健康機関」は、二度にわたって妊娠中絶に反対する抗議の波に直面した。
 最近上院は、六十五対三十四という一方的な票決により、大人が妊娠した未成年者を両親の同意なしに妊娠中絶のために州境を超えて連れ出すことを連邦犯罪とするという法案を通過させた。下院はさらに厳しいバージョンを昨年通過させており、両院が折衷法案について合意できれば、ブッシュ大統領は喜んで署名し法律となるであろう。
 八月一日、食品医薬品局(FDA)は、プランBとして知られるモーニングアフター・ピルを十八歳以上の女性に対してのみ一般市販薬として利用可能にする計画を発表した。これは、処方箋なしの薬に関してFDAが年齢制限を提案した初めてのケースである。プランBは、濃縮された黄体ホルモンを含んでおり、最も一般的な緊急避妊薬である。プランBは一部のヨーロッパ諸国では二十年以上前から利用可能であり、性交から七十二時間以内に妊娠を妨げることができるが、最も有効なのは最初の二十四時間以内である。年齢制限付きの一般市販薬として、薬剤師が立ち会う場合にのみ入手可能になる見込みである。
 どの場合も、性と出産の自由の支持者たちは、これらの処置に反対する行動を組織した。
 サウスダコタ州の場合は、反妊娠中絶法の発効を妨げる嘆願書に三万八千人が署名し、問題を十一月の住民投票にかけることを要求した。オグララ・スー族の族長セセリア・ファイア・サンダーは、このとき次のように宣言した。「私は個人的に私自身の土地に家族計画クリニックを設立する。これはパインリッジ特別保留地の境界内にあるので、サウスダコタ州の管轄権は及ばない。」[1]
 ジャクソン・クリニックは、妊娠中絶を求める女性の権利を防衛するために支持者のネットワークを結集した。
 全国の何百もの新聞の編集者への手紙が、妊娠した未成年者を助ける大人を犯罪人にする問題を論じた。大多数は、ほとんどのティーンエイジャーは少なくとも母親に相談するという現実を指摘した。なぜか母親にも言わない少数のものは、親たちが姉にしたことを見ていて、虐待から身を守りたいと思っているのかもしれない。
 医療専門家も、性と出産の権利の支持者のネットワークも、プランBに関するFDAの年齢制限に反対した。
 何年も昔、右翼は、性教育を攻撃する最善の方法を決定した。それは、唯一有効な産児制限の方法は禁欲であることを教えるように要求することであった。彼らは、コンドームが性病をもたらし、妊娠中絶が乳がんと不妊のリスクを高めると主張している。そのような主張には証拠がないにもかかわらず、複数の州は、このような性「教育」プログラムを立法化した。多くの若い女性にとって、特にミシシッピのような保守的州においては、産児制限情報に関する代替情報源は少ない。
 米国の教育政策は非中央集権的であるが、連邦資金の優先順位は地方教育委員会に大きな影響力を持っている。ワシントンは、現在、唯一禁欲教育を推進するために約八千万ドルを確保し、州はそれに対応する資金として別に三千八百万ドルを提供している。性教育プログラムの五一%は、禁欲を青春期の望ましいオプションとして描くことを規定しているが、避妊に関する情報は許されている。南部の全地区の半数を含む三五%は、唯一禁欲プログラムを規定している。
 これらのプログラムは、性教育の教え方に関する有効性の証拠と合わないだけでなく、現実と合っていない。

妊娠中絶に対する制約


 妊娠中絶を合法化した一九七三年の「ロー対ウェイド判決」以来、右翼は、病院が中絶処置を行うのを妨げることを追求し、一連の規制によって診療所を制約し、診療所や医院の医療関係者に嫌がらせを行ってきた。連邦レベルでは、政府は、軍隊内で妊娠中絶を女性に対する医療保障から除外し、公共補助を受けているほとんどの女性に対して国内および外国における中絶処置を拒否し、妊娠中絶サービスを提供する家族計画プログラムへの財政援助を撤回している。
 米国の全郡の九〇%以上で妊娠中絶を受けられないとすれば、農村地域の女性は何時間もかけて診療所に行くことを強いられる。十五歳から四十五歳までの女性の三五%が出産年齢中のある時点で妊娠中絶を経験するが、その三分の一は診療所のない郡に住んでいる。アクセス手段を持たない女性は、彼女が望む妊娠周期の早い時期に中絶を受けることができない。妊娠後期の中絶はさらに費用がかかり、合併症の可能性が高まる。
 一九九二年に、最高裁判所は堕胎の権利に重要な制約を課した。「南東ペンシルバニア家族計画対ケーシー」の件において、最高裁判所は、州が「不当な負担」を再び作り出さない法律を通過させる権利を持つと判決した。女性の権利の支持者もその敵対者も、この事件を逆行と見ている。右翼は合法的妊娠中絶の転覆を望んでいるが、女性の性と出産の自由の支持者のほとんどは、どの制約が「不当」とみなされるかに関する闘いが始まったばかりであることを理解している。
 昨年一年間に、約五百の反妊娠中絶法案が州議会に提出され、二十余りの法案が署名されて法律となった。今年はさらに多くが提出されるだろう。このような悩ましい立法のすべてが診療所に影響を与えている。今や、十年前に比べて診療所の数は約一〇%減っている。
 今日、三十二の州とワシントン特別区が、連邦資金が利用可能な場合を除いて州資金の使用を禁じている。四十六の州が、個々の医療プロバイダーが妊娠中絶への関与を拒否することを許容しており、四十三の州が、医療機関が妊娠中絶の実行を拒否することを許容している。二十二の州が、妊娠中絶を求めるティーンエイジャーに関して両親の同意を要求している。両親の署名を要求しているのは二つの州だけで、大部分は、ティーンエイジャーが迂回路を追求できる追加のメカニズムを定めている。七つの州が両親による届けを要求している。他の七つの州は立法を通過させたが恒久的に差し止められた。(二〇〇〇年に妊娠中絶を行った十八歳以下の女性の数は、九万五千人であった。)
 二十八の州が、妊娠中絶を行う前に「カウンセリング」を受けることを義務付けている。カウンセリングには以下が含まれる。妊娠中絶と乳がんの間の想定される結びつき(三州)、胎児が苦痛を感じる可能性(四州)、女性にとっての長期的な精神衛生上の結果(三州)、あるいは妊娠を出産まで続けることを決心した場合に利用可能なサービスおよびお金(二十六州)。二十四の州が、一日の待機期間を規定している。これは遠距離を出かけてくる女性にとっては特に問題である。最近の統計は、妊娠中絶を受ける女性の二五%が五十マイル以上を移動し、八%が百マイル以上を移動している。

右翼による診療所封鎖行動

 このような制度的戦略には、診療所に対する右翼の直接行動が伴っている。二十年前には、一週間におよぶ数千人の動員が可能であった。女性の権利の支持者たちは対抗ピケットを組織した。右翼過激派の行動はピケットだけではない。彼らは、女性を妊娠中絶から「守る」ために、医療従事者をつけまわし、診療所に向かう車のナンバーを追跡し、指名手配ポスターを貼りまわした。結局、議会は診療所を保護する立法を制定することを強いられたが、それは妊娠中絶を実行した医師たちに対する殺人が起こった後であった。殺されたのは、ジョージ・ティラー(カンザス州ウィチタ)、バーネット・スレピアン(ニューヨーク州バッファロ)、デイビッド・ガン(フロリダ州ペンサコラ)と彼の護衛のジョン・ブリトンである。
 この夏、オペレーション・セイブ・アメリカ(アメリカを救え作戦)(「堕胎からの救援作戦」の後身)とオー・サラトガが、完全に無防備のジャクソン女性医療機関に対するピケットに出た。二十五人から百人の抗議者たちが、大きく引き伸ばした胎児の写真のプラカードを掲げた。また、オペレーション・セイブ・アメリカの抗議者たちは、診療所の婦人科医ジョゼフ・ブーカーの隣人たちをターゲットにした。彼らは戸別訪問し、隣人たちに、ブーカーは「嬰児殺し」だと電話した。ブーカー医師は六十二歳のアフリカ系アメリカ人であるが、警察官の護衛を受けている。しかし、他の妊娠中絶提供者と同様に、彼はこれらを苦にしていない。
 多数のフェミニスト組織、特にNOWとフェミニスト・マジョリティは、ジャクソン診療所を支持する動員を組織し、女性の出産医療の防衛と診療所が直面している余分の支出に対応する資金集めのための集会を開催した。

緊急避妊ピルに対する制約


 妊娠中絶の場合と同様に、右翼は緊急避妊薬も戦場にした。右翼が緊急避妊薬に反対した理由は、それが「破滅に至る道」を表しているからである。緊急避妊薬は妊娠中絶と同じように作用し、したがって「命を取る」ことだと主張する者さえいる。
 二〇〇三年十二月に、FDAの諮問委員会は二十八対ゼロでプランBを「処方箋なしの使用に関して安全」であると票決し、二十三対四で、それを一般市販薬として認めることに賛成した。しかし、二〇〇三年の票決の後、キリスト教保守派でブッシュが指名した委員であるデイビッド・ヘイガー博士は、プランBが自由に入手可能になると、ティーンエイジャーの間で無差別な性交が増加する恐れがあると述べた。
 二〇〇四年五月、FDAは、ヘイガーの主張の一部を引用して、製薬業者の申請を却下した。二カ月後、製薬業者は十六歳以上の女性に対する販売の許可を再申請した。二〇〇五年八月に、FDAが決定の延期を発表すると、FDA女性健康部の医師であるスーザン・F・ウッド博士が抗議して辞任した。
 この引き伸ばし工作に対して、フェミニスト・グループの草の根連合であるモーニングアフター・ピル連盟は、市民的不服従運動を行った。四千人以上の女性が、それを必要とする人々にピルを配布するという誓約に署名した。FDAに反対する訴訟の原告代表であるアニー・トゥミノは、「妊娠するのに十分な年齢になっていれば、妊娠したくないと判断するのに十分な年齢になっている」と述べている。
 ガットマッチャー研究所による二〇〇六年の研究によれば、米国においては年間六百四十万の妊娠があり、そのうちの三百十万は意図せざるものであり、百三十万は妊娠中絶に至っている。この研究以降の七年間に、意図せざる妊娠の比率(約半分)は変化していないが、貧困レベル以下の女性が予定外の妊娠をする率は四倍、予定外の出産をする率は五倍であった。しかし極右は、お仕着せの解決策を用意している。すなわち、結婚していない貧しい女性は結婚するように奨励されるべきである、というものである。
 女性団体に反対する右翼のレトリックのほとんどは、妊娠中絶へのアクセスを制約することであったり、レズビアンや、右翼が性的逸脱とみなすその他の人々に対する攻撃をめぐるものであるが、彼らの計画はもっと広範である。彼らは「伝統的家族」の再確立を追及しているのであり、彼らはそれによって「価値」と「安定」が今日のアメリカ人が直面している社会的経済的問題を覆い隠すと想像している。このイデオロギーは、現実と合っていない。
[注1] ファイア・サンダーは、その後、提案されている診療所のために評議会の承認なしに部族の名において寄付を勧誘したと申し立てられ、部族評議会によって弾劾された。彼女はこの弾劾に異議を申し立てている。
(「インターナショナルビューポイント」電子版06年9月号)
 


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