| 北朝鮮核実験糾弾 東北アジアの非軍事化を かけはし2006.10.23号 |
| 「周辺事態」の認定、船舶検査特措法立法化は戦争への道だ |
「非軍事的」制裁
は武力衝突の道
十月十四日午後(日本時間十五日未明)国連安全保障理事会は、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が十月九日に強行した「核実験」に対して国連憲章第七章(「平和に対する脅威、平和の破壊、侵略行為に関する行動」)にもとづく「制裁措置」を満場一致で可決した。
決議は、北朝鮮の「核実験」によって「国際社会の平和と安全への明白な脅威が存在する」と明記し、強制措置の根拠となる憲章第七章のもとで安保理が行動し、経済制裁などを定めた第四十一条(注1)に基づく措置を講じるとしている。
決議は、北朝鮮が核兵器と核開発計画、その他の大量破壊兵器や弾道ミサイル計画を「完全かつ検証可能で、逆戻りできない形で」放棄することを義務づけるとともに、核拡散防止条約(NPT)への復帰も要求している。同時に国連加盟国に対しては、核、ミサイル関連の物質・技術や戦車や戦闘機などの大型通常兵器、さらに「ぜいたく品」の北朝鮮への輸出を禁止するとともに、北朝鮮からの核、ミサイル関連物資の調達禁止や大量破壊兵器計画にかかわる人物や組織の資産凍結を規定した。また各国が北朝鮮に出入りする貨物の検査などを通じ、大量破壊兵器の取引防止に向けた「協調的行動」を取るよう義務化し、船舶検査を可能にした。北朝鮮の核、ミサイル計画に関わる人物の入国、通過阻止のため、各国が「必要な措置」を取ることも義務づけられた。
われわれは本紙前号で述べたように、北朝鮮の核実験を糾弾し、北朝鮮が「核開発計画」を断念することを要求する。しかし、われわれはあらゆる「制裁措置」に反対する。何よりもそれが、飢餓と圧政に苦しむ北朝鮮民衆への言語に絶する苦しみを増幅させるからであり、東北アジアの非核化・非軍事化への道を破壊し、軍事的緊張を通じた北朝鮮支配体制の絶望的冒険を駆り立てることになるからである。
確かに今回の国連決議は軍事行動を規定した国連憲章四十二条(注2)に基づくものではない。しかし、四十一条に基づく「制裁措置」は四十二条と直接につながるのであり、現に「船舶検査」に際して軍事的衝突が発生する可能性は小さくないのである。
二重基準の核保
有国に大義なし
北朝鮮の「核実験」の強行と、安保理決議による「制裁」は、核保有大国の特権を保障したNPT体制の「二重基準」をもさらけ出した。ブッシュ政権は、「対テロ」先制攻撃戦略の下で、「悪の枢軸」と名指しした北朝鮮や、「核兵器を製造しない」ことを明言しつつ「核技術開発」を進めるイランへの軍事的圧力と包囲を強めてきた。その一方で、米国はすでに二百発の核兵器を保有していると想定される戦争国家・イスラエルを中東における自らの「代理人」として支えるだけではなく、一九九八年に核実験を行ったNPT非加盟国のインドに対しては「核技術供与」を承認し、また同じく一九九八年にインドに続いて核実験を行ったパキスタンに対してもアフガニスタンでの「対テロ」戦争協力を代償に経済制裁を解除し、多くの支援を行っている。
そればかりではない。この九月にカザフスタン、タジキスタン、キルギス、ウズベキスタン、トルクメニスタンの中央アジア五カ国が、域内での核兵器開発・生産・所持を禁じる内容で調印した「中央アジア非核地帯条約」に対して、米英仏の西側核保有三カ国は「核兵器通過の権利」を求めて、議定書の調印を拒否しているのだ。「核拡散を認めない」という核大国は、自国の核についてはフリーハンドを求めるという偽善性を露骨に示している。
「核拡散のドミノ現象」を阻止するためには、まず何よりも核保有大国が核兵器の廃絶に向かわなければならない。「核戦争の危機」を醸成しているのは根本的にはアメリカを中心とする核保有国の側なのであって、その点からも国連安保理決議による「制裁」に大義はない。こうした二重基準こそ、金正日独裁体制の「核実験」強行に口実を与えるものとなっているのだ。
武力行使正当化
する安倍政権
北朝鮮の「核実験」強行後、十月十日に衆議院で、十月十一日に参議院で共産党、社民党をふくむ与野党の「全会一致」で北朝鮮を非難し、国連決議第七章にもとづく「制裁」を積極的に容認する決議がされた。十月十一日夜に首相官邸で開催された安全保障会議では、七月五日の制裁措置(万景峰号の半年間入港禁止、北朝鮮政府職員の原則入国禁止、北朝鮮との航空チャーター便乗り入れ禁止)、九月十九日の金融制裁措置に加え、@すべての北朝鮮籍船舶の半年間入国禁止A北朝鮮からの全品目の半年間輸入禁止B北朝鮮籍を有する者の半年間原則入国禁止を内容とする「独自制裁措置」を発表した。これによって在北朝鮮被爆者の補償に向けた調査のための来日も、きわめて困難になっている。
安倍政権は、さらに国連決議に基づく「船舶検査」などの制裁措置に日本が責任を果たさなければならない、という理由で、今回の北朝鮮の「核実験」を「周辺事態」として認定し、「周辺事態法」による米軍への後方支援、船舶検査活動法の適用などを進めるとしている。もともと「周辺事態」とは事実上の武力紛争の発生を意味する、と説明されてきた。久間防衛庁長官は、国会答弁で今回の「核実験」を「周辺事態」と規定するには無理があると答弁していた。しかし今やこの「無理」が通ろうとしている。もはや「戦争状態」という暴言が自民党などから公然と語られているのだ。
さらに自民党は、「周辺事態法」の適用によっても自衛隊の「後方支援」の対象が米国に限られることになるので、対象を米国以外にも広げ、公海上での給油活動を可能にし、自衛隊が「船舶検査」を行う際の要綱を定める特措法の準備を進めている。
石破元防衛庁長官(自民党防衛政策検討小委員長)が中心になってまとめた特措法の骨格は@自衛隊員の正当防衛などに限られている武器使用条件を緩和し、船首前方の海面への警告射撃などを認めるA乗船検査の結果、禁輸対象の物資を輸送していたり、その疑いがあったりする場合、日本や目的地以外の国への回航を命じるB乗組員を一時的に拘束できる、などの措置を盛り込むとされている(読売新聞10月15日)。
まさに一瀉千里に北朝鮮への「武力制裁ムード」が作られている。そしてそれは、安倍訪中・訪韓による東アジア外交関係の「改善」の兆し、米中露一体となった北朝鮮「制裁」決議と表裏一体の関係で進行しているのである。
憲法破壊へ暴走
するメディア
右派マスコミもそれを煽っている。読売新聞10月15日付社説は「日本の安全を損ねる憲法解釈」という見出しで次のように述べている。
「北朝鮮の核武装という事態に直面して、日本の安全を守る上で、憲法解釈が障害になっているのではないか」「船舶検査の際に、相手の船舶に米艦船が攻撃された場合、仮に海上自衛隊の艦船がすぐ近くにいても、何もできない。海自艦船が米艦船を守るために相手船舶を攻撃すれば、集団的自衛権の行使と見なされるからだ。/こんなことが起きれば、日米同盟の信頼性は一気に崩れてしまう。日本の平和と安全は守れるはずもない」。同社説は安倍首相が「いかなる場合が憲法で禁止されている集団的自衛権の行使に当たるのか、個別具体的な事例に即して研究する」と語っていることを捉えて「だが、今、国際社会が北朝鮮への制裁に踏み切ろうとし、日米が共同で対処しなければならない局面が現実になろうとしている時だ。『研究』などと、悠長に構えている場合ではあるまい」とハッパをかける。
「読売」社説の結論はこうだ。「現実にそぐわない憲法解釈に固執すべきではない」。日本最大の発行部数を誇る「読売」は、安倍首相の先を走っている。十月九日の北朝鮮「核実験」という北朝鮮軍事独裁体制の暴走は、一週間もたたないうちに、「集団的自衛権」行使は違憲とする従来の政府見解を一挙に反故にする状況を生み出そうとしており、憲法破壊の武力行使を煽動するメディアの暴走を引き起した。
中川昭一・自民党政調会長のTV番組(10月15日「サンデープロジェクト」)での発言に見られるように、「日本核武装」論も今や公然たる形でメディアでの論議の俎上に乗せられている。この流れに棹さしながら、安倍政権は「集団的自衛権発動」の「研究」から「行使」に突進しているのだ。
「制裁措置」を撤回せよ。「周辺事態」の認定を許すな。「船舶検査特措法」を阻止しよう。「集団的自衛権」行使の容認を絶対に認めない。
WORLD PEACE NOWは十月二十二日(日)に「北朝鮮の核実験反対」「戦争につながる制裁反対」などをメインテーマにして「STOP戦争! 10・22緊急アクション」を開催する(東京駅近くの常磐橋公園に午後1時半集合、午後2時パレード出発)。今こそ、東アジアの非核化・非軍事化のために労働者・市民は緊急の訴えと行動を!
(注1)第四十一条「安全保障理事会は、その決定を実施するために、兵力の使用を伴わないいかなる措置を使用すべきかを決定することができ、且つ、この措置を適用するように国連加盟国に要請することができる。この措置は、経済関係及び鉄道、航海、航空、郵便、電信、無線通信その他の運輸通信の手段の全部又は一部の中断並びに外交関係の断絶を含むことができる」。
(注2)第四十二条「安全保障理事会は、第四十一条に定める措置では不十分であろうと認め、又は不十分なことが判明したと認めるときは、国際の平和及び安全の維持又は回復に必要な空軍、海軍又は陸軍の行動をとることができる。この行動は、国際連合加盟国の空軍、海軍又は陸軍による示威、封鎖その他の行動を含むことができる」。
(10月16日、平井純一)
|