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香港WTO閣僚会議にNO!              かけはし2006.0101号

貧困と不平等の拡大を拒否し
希望と正義のグローバル化を


 12月13日から18日まで香港で開催されたWTO(世界貿易機関)の第6回閣僚会議は、焦点だった農業分野の交渉では重要品目の扱いが先送りとなり、ドーハラウンドの包括合意は二〇〇六四月末まで延期された。貧困と不公正を拡大するWTOに対して、全世界から反グローバル化を闘う多数の人々が香港に集まり討論会やデモを繰りひろげた。香港政府と警察当局は、WTOに抗議する集会・デモを厳しく弾圧し、十二月十七日から十八日にかけて韓国の農民たちを中心に座り込んでいた活動家九百人以上を拘束し、十四人を起訴するという暴挙に出た。日本から参加した仲間の報告は次号以降に紹介するが、今号では閣僚会議開催にあたっての香港民衆連合(HKPA)の宣言と、同会議での麻生外相発言に対する日本からの参加者の反対意見を掲載する。


宣 言
ピープルズパワーで生活の尊厳を防衛しよう
香港民衆連合〈HKPA〉

 今日、香港コンベンションセンター会場内では、世界各地から政財界の要人が集まり、WTO第六回閣僚会議が正式に始まった。今回の会議の議題は、各国民衆の生活と労働に関係するにもかかわらず、市民の声は無視され排除されている。HKPAは「ピープルパワーで生活の尊厳を守ろう」デモ行進を呼びかけ、世界各地からやってきた人々とともに街頭を行進し、われわれの不満と怒りを表現する。
 WTOは一九九五年に結成された際に、自由貿易の拡大を通じて世界的な貧困と収入の不平等の緩和を約束した。だがこれまでの十年、WTOの約束は果たされていないどころか、世界的な貧富の格差は悪化し続け、失業問題は日々深刻化し、環境はすき放題に破壊され、無数の人びとの生活が不安と恐怖の中におかれている。
 今回の閣僚会議は、「ドーハ開発ラウンド」交渉の終結を使命とし、交渉締結の前進を目標としている。しかし交渉全体の枠組みと内容からみて、(WTOの言う)いわゆる「発展」とは、WTOが政界と財界の癒着をオブラートに包むものでしかなく、そもそも民衆の声に耳を傾けるものではない。このような前提におけるいかなる交渉の締結も、世界各地の人びとの苦しみをさらに拡大させるものにしかならない。
 グローバルジャスティスの原則にもとづき、われわれはWTOが農民の生活を破壊しつづけることに反対する。WTOは途上国に対して市場開放を強要する一方で、多国籍企業が補助金をうけた農産物をダンピング(し途上国へ輸出)するチャンスを作り、何百万人もの(農産物輸入国の)農民の生活を破壊し、多くの農民とその家族を絶望のふちへ追い込んでいる。われわれは、社会の持続的発展と、市民、農民の生活という重要な権利を確保するために、食糧主権を防衛しなければならない!
 グローバルジャスティスの原則にもとづき、われわれは多国籍企業による社会資源の分割を許すWTOに反対する。「サービス貿易に関する一般協定」(General Agreement on Trade in Services=GATS)が推進するサービス貿易の自由化交渉は、水、医療、教育、公共サービスおよび社会福祉などの基本的必要を市場化することを目標とし、いずれ市民の権利と就業構成に大きなダメージを与えることになる。われわれは市民が享受する基本的サービスと労働の尊厳という権利を防衛しなければならない!
 グローバルジャスティスの原則にもとづき、われわれはWTOによる人命を省みない知的所有権に関する規定に反対しなければならない。「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」(Trade Related Intellectual Property Rights=TRIPS協定)は人命の安否を省みず、巨大企業が薬品の提供と価格を独占することを許し、無数の貧しい病人たちは治療の機会を喪失している。また、コミュニティの様々な資源、先住民の知識および植物種子などがすべて多国籍企業の特許とみなされ、既存のコミュニティの文化と生態系が侵食されている。われわれは知識の移転と多元的文化の権利を防衛しなければならない!
 グローバルジャスティスの原則にもとづき、われわれはWTOによるグローバルな貧富の格差拡大に反対する。「非農産品市場アクセス協定」(Non-agricultural Market Access Agreement =NAMA)は各国に市場開放と関税障壁の撤廃を強要しており、それは大量の失業と不安定化を作り出すアウトソーシング政策を加速する。同時に、漁業、林業、採鉱業などの部門は貿易自由化の枠組みに組み込まれ、おおくの先住民の生活を不安定にし、天然資源は徹底して略奪される。われわれは先住民の権利と天然資源を防衛しなければならない!
 各地の民衆やコミュニティが連帯し、グローバル市民社会の力を結集し、ともに正義と博愛の世界を築くことだけが、多国籍企業に主導されたグローバル化に対抗することができることを、われわれは確信する。
希望のグローバル化を!
正義のグローバル化を!
民衆の闘争のグローバル化を!
   2005年12月13日
香港民衆連合(HKPA)
2005年12月13日


声 明
第6回WTO閣僚会議における日本政府の「途上国支援パッケージ」に反対します


 麻生外務大臣は、2005年12月14日のWTOの閣僚会議において以下の三つの政策を表明しました。
 第一に、インフラ関連分野で合計100億ドルの資金協力を実施する。
 第二に、合計で1万名の途上国への専門家の派遣と、途上国からの研修員の受け入れ。
 第三に、後発開発途上諸国(LDC)の全産品に対し、原則無税・無枠の市場アクセスを提供する。
 私たちは、日本政府の政策が、途上国の貧困を本気で解決するための提案とは考えません。以下の理由から、日本政府の支援策は、WTOのプロセスを通じて日本の国益や多国籍企業の利益を実現し、むしろ途上国の貧困をより拡大させる可能性があります。
 とりわけ、これによる輸出指向の農業の推進は、農業生産のいっそうの効率を求めて、化学化・機械化・単一生産化など農業の変質を促し、自然環境をも破壊するものとなります。私たちは、この日本政府の提案には反対します。

(1)100億ドル
資金協力の問題点

(a) 今回の100億ドルは、新規の資金提供ではありません。従来のODA枠組みで提供されている資金を積み上げた金額の合計を、WTO閣僚会合に際して言い換えたものにすぎません。
 したがって、この提案は、WTOでの交渉に際して途上国政府を日本政府の方針にひきつけようとするレトリック以上のものではありません。
(b) 日本のODAは日本の国益や安全保障を中心に実施することが基本方針となっています。今回の100億ドルの支援もこの枠組を前提としているとみなければなりません。
(c) これまでの日本政府の対外援助は、その多くが、途上国を経由して日本企業の対外投資を支えるものでしかありませんでした。今回の100億ドルがインフラ関連分野(とりわけ貿易関連支援)に限られていることから、この援助資金もまた最終的には多国籍企業によるインフラ受注を通じて、日本や先進国に還流するだけでしょう。
 その結果として、途上国の人々が自力で自分達のコミュニティのインフラを整備できる可能性が奪われる結果になりかねません。

(2)途上国への専門家の派遣および途上国からの研修員受け入れの問題点

(a) 今回の研修員受け入れ表明については、具体的な制度枠組みが不明確であり、この点で無責任です。
(b) この受け入れが、従来の途上国からの民間企業への研修生制度であるとすれば、研修員の多くは、労働者の権利を奪われた期限付き・使い捨ての低賃金労働力として働かされる可能性があります。
(c) これが日本政府が受け入れる研修員となる場合、短期滞在のため実質的な研修にならないという問題点が指摘されています。
(d) 日本からの専門家の派遣は、相手国のニーズを無視した派遣になりがちです。

(3)無税・無枠の市
場アクセスの問題点

(a) 日本が無税・無枠の市場アクセスを提供することによって、途上国の産業が輸出指向となります。それは、途上国の人々が自分達の生存に必要な基本的な生産を破壊し、そこに住む人々が安心して暮らせるための食料主権を脅かします。
(b) 他方、無税・無枠の市場アクセスは、40%にまで落ちた日本の食料自給率をさらに悪化させ、日本の農業に打撃を与える恐れがあります。また、これは、WTO交渉の日本の従来からの主張と矛盾しています。

香港WTO対抗行動に参加している団体・個人有志一同
賛同団体(アイウエオ順)ATTAC Japan/脱WTO草の根キャンペーン/ピープルズ・プラン研究所
賛同者(アイウエオ順)市村忠文(フォーラム平和・人権・環境)/大野和興(アジア農民交流センター)/大屋定晴(ピープルズ・プラン研究所)/河添誠(レイバーネット日本)/栗原康(ATTAC Japan)/越田清和(市民社会総合研究所)/小林和夫(日本ネグロス・キャンペーン委員会)/柴田晴七(協同・未来)/瀧本昌平(ジュビリー九州)/仲田教人(ATTAC Japan)/安田幸弘(レイバーネット日本)/山浦康明(日本消費者連盟)/吉田真貴子(Agri―Project in 九州)/渡田正弘(グローバリゼーションを問う広島ネットワーク)
連絡先 +81-90-6496-8049 ogr@nsknet.or.jp/toshimaru@t.vodafone.ne.jp/小倉利丸(ピープルズ・プラン研究所)

   2005年12月15日

参考
麻生外務大臣演説
麻生外務大臣ステートメント
第6回WTO閣僚会議
(仮訳)平成17年12月14日
於:香港
英語版はこちら
 議長、わたくしも皆様と同様、曾蔭権香港特別行政区行政長官、ならびに香港の人々に対し、この重要な会議を主催頂いたことを感謝したいと思います。
 議長、かつてGATT35条の下で辛酸をなめ尽くした国に属する一人として、わたくしは、世界の貿易システムから排除されることがどれだけ辛いことか、よく承知している者です。WTOのルールは、まず何よりも小さい国、脆弱な国にこそやさしい規則でなければならない。日本は、これまで常にそう信じてやって参りました。
 本日わたくしは、ある具体的な方策を提案するため登壇しております。日本がその提案によって目指すところは、すべてのWTO加盟国を、多角的貿易体制へ十全に統合しようとすることにほかなりません。
 そのための第一歩として、途上国、なかんずく後発開発途上国を、貿易システムへと参加できるよう促すことが重要になります。
 うまく貿易に加わるには、まずそれら諸国において生産能力の向上を見る必要があります。次に製品が円滑に港へ届いて輸出され、海外市場で消費者のもとへと届かなくてはなりません。
 日本のパッケージは、これら三つの欠くべからざる環をすべてカバーし、一つの鎖をなそうとするものです。それは、農場で、また工場で働く者を、ともに益する連鎖となるでありましょう。
 具体的には第一に、インフラ関連分野で合計100億ドルの資金協力を実施します。
 第二に、途上国への専門家の派遣と、途上国からの研修員の受け入れを行います。双方向での人数は、合計1万人となるでしょう。
 第三に、全LDC諸国の全産品に対し、原則無税・無枠の市場アクセスを提供します。
 60年前、日本人は戦争による廃墟の中、ろくな資源とてないまま、みな無から立ち上がったのでした。けれども国の再興へ向け働いた人々は、明日が、今日よりきっと明るいことを知っていた。希望というものを胸に、日本人はある善の循環を達成しました。「オーナーシップ」と、「パートナーシップ」の間の好循環であります。すなわち自分たち自身が自国の運命を所有する「オーナー」であると知り、またそれゆえに、他国との「パートナーシップ」が欠くべからざるものであることを知っていたのであります。
 お金というものは、決して万能薬とはなりません。いわんやただの言葉は、足しになるものではない。希望と、そして自尊心の根づくことこそがはるかに重要です。結局のところ、人々自身が自らの所有者とならねばならず、そうして初めて、人々は歩みを進め、やがてWTOファミリーの確かな成員となることができるのです。
 開発問題においてカギをなすのはこのような善の循環であって、またこれこそは、多くの日本人が開発途上国と分かち合いたいと念じているものにほかならないのです。
 過ぐる10年というもの、日本は世界の全ODAの20パーセント、ないしそれ以上を、たった1国で供与して参りました。小さくない達成ではありますが、わたくしがいささかの誇りとするのはむしろ、われわれが弛むことなく追い求めてきたある一つの目的についてであります。議長、その目的とはまさに、途上国の人々に、自らに対する希望を抱かせることでした。そのうえで、オーナーシップとパートナーシップの間に、あの善の循環を築かせることだったと言うことができます。そしてこのたび発表いたしました日本のパッケージも、まさしくこの目的に資するものだと言えましょう。
 ご清聴大変有難うございました。


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