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                          かけはし2002.5.20号より

『WTO徹底批判』

ATTACジャパンがスーザンジョージ著書出版記念講演集会

 『世界の半分がなぜ飢えるのか』など南北問題についての先駆的な分析で知られ、ATTACフランスの副代表としても活躍しているスーザン・ジョージの著書『WTO徹底批判』の出版(杉村昌昭訳:作品社刊)を記念して、四月二十六日に東京・渋谷勤労福祉会館で「スーザン・ジョージと反グローバリゼーションを考える集い」が開催された。主催はATTAC―Japan。反グローバリゼーション運動と、その先頭に立っているATTACへの関心の増大を反映して、会場には椅子が足りなくなるほどの百五十人の人びとが結集した。
 この一月末から二月初にかけて全世界百三十一カ国から八万人を結集してブラジルのポルトアレグレ市で開催された第二回世界社会フォーラムの模様を伝えるビデオが上映された後、主催者を代表してATTAC―Japan(首都圏)事務局次長の榊原裕美さんが、ATTAC―Japan結成の経過と第二回世界社会フォーラムについて報告した。
 次に『WTO徹底批判』の訳者であり、首都圏より早く結成されたATTAC関西で活動している杉村昌昭さん(龍谷大教員)がATTAC運動の特質について講演した。
 杉村さんは、この間、彼が紹介してきたフランスの哲学者ガタリの思想、その「リゾーム」(根茎)概念とATTAC運動の共通性について語った。
 「ATTAC運動は、さまざまな運動が、ある部分、いくつかの要素が重なり合うことによって結びつき、独自に発展するという構造を持っている。その際、運動として形成されるためにはあらかじめすべての事柄が一致する必要はなく、行動の中で共通点が作りだされればよいのである。そこに、ガタリが追求しようとしてきた運動論・組織論との共通性が見いだされる。日本ではガタリは、もっぱらポストモダンの思想家としてのみ評価されているが、彼はブラジル労働者党(PT)との交流を行ってきた実践家でもあった」。
 杉村さんはさらにスーザン・ジョージの著書についてふれ、WTO(世界貿易機関)は一九八六年時点から米政府と金融資本によって準備されたものであり、グローバリゼーションとはアメリカが主導しEUがそれに追随した思想的装置である、と喝破した。
 つづいて元市民フォーラム2001事務局長の佐久間智子さんが「WTO批判とスーザン・ジョージ」をテーマに報告。佐久間さんは「一九九五年のAPEC大阪会議の時に新自由主義的グローバリゼーションに対する批判の運動を開始したが、その段階ではまだ個別の問題に関わるそれぞれの運動という問題意識しか持てなかった。しかし今日では一つ一つの課題がグローバリゼーションとつながっているという自覚が生み出されている」と語り、小泉政権の推し進める有事立法と資本のグローバリゼーションとの関係についても強調した。
 つづいてこの日の「集い」の呼びかけ人となった人びとからの発言。
 増田一夫さん(東大教員)は、「反グローバリズム」という言い方よりも「もう一つの世界」ということを意識的に押し出す必要性を訴えた。太田昌国さん(現代企画室)、池上善彦さん(『現代思想』編集長)、深田卓さん(インパクト出版会)、塩川喜信さん(神奈川大教員)もそれぞれの立場から、グローバリゼーションに対してオルタナティブを求める闘いの今日的意味を語った。
 日本での反グローバリズムの闘いは始まったばかりであるが、ATTAC―Japanの今後の闘いの可能性について希望を感じさせる「集い」であった。(K)

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