かけはし重要記事

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瀋陽・日本領事館北朝鮮難民事件           かけはし2002.5.20号より

中国・日本・北朝鮮政府の人権弾圧許すな

連行容認は日本政府・外務省の難民排除政策の帰結だ

 五月八日、中国・遼寧省瀋陽の日本総領事館に亡命を求めて駆け込んだ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)難民男女五人を、中国の武装警察(軍直属の治安警察部隊)が領事館敷地内に侵入して拘束・連行しようとし、領事館側がこれを引き渡すという事件が発生した。われわれは、金正日専制支配体制の飢餓地獄から脱出しようとした北朝鮮人民を不当に拘束した中国江沢民官僚支配体制の暴挙と、それを容認した小泉政権・外務省の態度を糾弾するとともに、拘束した五人の身柄を直ちに解放し、彼らが望む国への亡命を認めるよう強く要求する。

中国は北朝鮮難民弾圧をやめよ

 われわれは、中国武装警察による北朝鮮難民の日本総領事館からの連行を怒りを込めて糾弾する。金正日専制支配体制は、北朝鮮を外国からの大量の恒常的食料援助がなければ何百万人が餓死してしまうような飢餓地獄に陥らせた。何万、何十万人もの北朝鮮人民が、文字通り生きるために豆満江を渡り、国境を越えて中国東北部の吉林省と遼寧省に脱出し続けている。
 現在その数は、十万人とも三十万人とも言われており、拘束と強制送還を恐れ、難民申請手続きを行なうこともできないまま、この地方の朝鮮系中国人や韓国や欧米系の援助団体の支援や物ごいで極めて厳しい生活を送っている。中国当局は九九年ごろから北朝鮮難民への取り締まりを強めてきた。中国人民に報奨金を払って密告を行なわせ、摘発し、拘禁し、強制送還を行なっている。
 アムネスティ・インターナショナルによれば、援助していた中国人民は平均三千元の罰金を課されているという。〇一年四月には吉林省で北朝鮮脱出者を支援する韓国のNGOグッド・フレンズの活動家四人が逮捕され、五十日間にわたって「スパイ容疑」で拘禁され、手をしばられて宙吊りにされるなどの拷問を受けるという事件が起きている。
 中国政府には、革命直後の五一年に批准した「難民の地位に関する条約」が定めている「追放と送還の禁止」を遵守する義務がある。われわれは中国政府に対して、北朝鮮難民への弾圧を直ちに止め、全員に難民申請手続きを行なわせることを強く要求する。

外務省の難民排除政策の帰結だ

 われわれは、日本総領事館が中国当局に協力し、北朝鮮難民を引き渡したことを断固として糾弾する。中国当局の五月十一日の発表によれば、警官が「連行していいか」と聞くと、領事館員は携帯電話で上司に連絡した上で「いい」と述べて承認し、しかも謝意まで表明したという。外務省は「同意した事実はない」と反論しているが、このような主張はまったく信用することができない。
 外務省の会見第一報では、難民が領事館内に入った事実さえ報告せず、あたかも領事館の外での出来事であるかのように発表していたのだ。それが次には二人が敷地内に入ったということを認め、韓国連合ニュースが難民家族が領事館に向かう前から撮影していたビデオが公開されるに至って、五人全員が領事館内に入っていたことを認めざるを得なくなったのである。ビデオが公開されなければ、シラを切り続けるつもりだったのだ。「機密費問題」や「宗男問題」はじめ、外務省は数えきれない虚偽報告をし続けてきた。まさに、虚偽報告は外務省組織の体質そのものになっているのである。
 五月十三日、川口順子外相が自ら外務省の調査報告を発表した。川口は、副領事が公使に携帯電話をかけた事実を認めた上で、指示の内容が「無理をするな」「連行されても仕方がない」というものだったと述べている。仮にこのような指示を受けたとすれば、副領事は中国警官に「連行するな」ということはできない。むしろ「連行してもよい」と言わざるをえないだろう。これは事実上、連行に同意したことを認めるものである。
 川口は、逃げ込んだ難民と中国警官が領事館内でもみ合っているのに領事館員がのんびりと近づき、ほとんど対応しなかったことについて「単なるケンカかと思った。混乱し、あがってしまった状態だった」などと述べた。
 冗談ではない。昨年の北京の国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)への駆け込み事件以降、亡命を希望する北朝鮮難民の各国大使館への駆け込みが続いていた。そのなかで外務省は今年三月、スペイン大使館に二十五人が駆け込んで亡命に成功した事件を受けて、北朝鮮からの亡命希望者に対する「対処マニュアル」まで作成して準備していたのだ(朝日新聞5月11日)。川口のホラ話をだれが信じるだろうか。
 外務省はこのマニュアルの内容を公開していない。しかしそれが、何十人ものアフガニスタン難民の難民申請を認めず、各地の収容所に半年以上も強制収容し続ける日本政府の「難民鎖国」の方針(本紙2月18日号)に沿ったものであることは疑いない。
 難民を拒否するこのような外務省の人権無視の態度は、今回の事件直前にもあらためて暴露されている。チェコ通信が五月二日、チェコに住むロマ人の日本での難民申請の可能性についての通信社の問い合わせに対して、プラハの日本大使館職員が「日本は亡命も難民申請も一切認めない。投獄される可能性もある」と回答した、と報じたのである(朝日新聞5月4日)。
 すなわち、外務省にとって難民は迷惑千万なものであり、絶対に受け入れたくないものなのである。その迷惑な連中を連行しようとする中国警察の行為に「同意」し「感謝」したというのは、外務省としてはむしろきわめて自然な行為と言うべきなのである。今回の事件は、自ら加入しているはずの難民条約を踏みにじり続けて恥じない日本政府・外務省の難民排除方針がそのまま表現されたものにほかならない。

主権侵害へのすり替えを許すな

 小泉政権・外務省、与党三党はもちろん、民主党や共産党などの野党に至るまで、中国当局の態度を強く批判している。しかしそれはすべて、中国当局の態度がウィーン条約に定められた「外国公館の不可侵」に違反しており、日本の主権を侵害するものだとするものである。
 有事法案の制定へ突き進む小泉政権は、難民を排除する自らの政策が全世界に暴露された失態を逆手に取り、それを国家主義と中国に対する排外主義に転化しようとしており、共産党も含む野党勢力は、中国による「主権侵害」と外務省の「弱腰」を批判することによって、自覚しようがしまいがこの小泉の策動の協力者に成り下がっているのである。
 第一に強く批判されるべきなのは「主権の侵害」ではなく、難民条約を踏みにじる中国当局の姿勢である。第二に厳しく批判されるべきなのは、小泉政権と外務省の難民排除の頑なな姿勢である。そして第三に、二千万人民を飢餓地獄にたたき込み、命懸けで故郷を捨てて難民とならざるをえない状態に追い込んでいる北朝鮮金正日専制支配体制の暴虐を、徹底的に糾弾しなければならない。何よりも、人権を平然と踏みにじって恥じない中・日・朝三国の支配体制こそ糾弾されなければならないのだ。
 日本共産党は国会による真相解明を提案した。これは正しい。難民支援NGOなどの協力を得ながら、国会に調査委員会を設置し、真相を徹底的に究明しなければならない。
 中国政府は連行した北朝鮮難民を直ちに解放せよ! 中国政府は難民弾圧を直ちに中止せよ! 小泉政権は難民排除政策を根本的に転換せよ! 外務省は「北朝鮮難民対処マニュアル」を公開せよ! 国会に北朝鮮難民連行事件調査委員会を作れ!
 (5月13日 高島義一)

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