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厳戒態勢の釜山で国際民衆フォーラム           かけはし2005.12.5号

反APEC運動の成果を香港WTO対抗行動に引き継ごう

反グローバル化勢力の成長

 韓国で移住労働者の支援活動を支えてきた大学教授の言葉が、この釜山民衆フォーラムの立つ位置をはっきりと語っていた。彼は、「朴軍事政権を最終的に打倒させた釜山民衆蜂起は、この釜山大学から始まった。私たち釜山市民はそれを誇りにしてきたのに、今の若い学生はこのようなフォーラムにあまり関心を持っていない。そればかりか、その時民主化闘争を担ってきた(いわゆる386世代)釜山大出身の活動家たちは、いまや盧武鉉政権の政策ブレーンとなっている」と嘆いた。
 しかし、釜山民衆フォーラム初日、十一月十六日の全体討論では、最初に「戦争と貧困を拡大するAPEC反対、ブッシュ反対釜山市民行動」共同代表で、釜山大学教授であり、民主労働党釜山市のキム・ソクチュン委員長がAPECに対する的確な問題提起を行い、グローバリズムに対抗する力が韓国内でしっかりと育っていることを示した。

戦争と貧困の拡大に抗して


 キム・ソクチュン委員長は「釜山市は、APECが『アジア太平洋沿岸諸国の円滑な政策対話と協議を主な目的とする協力体として、加盟国間の異質性を克服し、域内経済成長に寄与するなど、根本的に経済共同体形成を追求する』と言うが、APECがEUのような経済共同体に発展する可能性は非常に薄い」と主張した。その根拠としてキム委員長は、@加盟諸国間の経済格差A性急な加盟国拡大によるアイデンティティー確立の失敗B安保領域への議題拡大と地域経済協力体としてのアイデンティティー確立の失敗C米中など大国間の対立深化などを上げ、APECでの決議など、どの国も従おうとしないだろうと指摘した。
 さらに、現在のAPECの役割は、@WTO合意/FTA締結への奉仕者であり、Aブッシュの戦争への支持を強制し、B超国籍資本の利益代弁者であり、C公共部門民営化の伝道師となっていると述べ、「APECは結局、米国と超国籍資本の要求を一方的に貫徹する道具に転落しており、彼らだけの祭りをしている」と主張した。また「釜山市では『開港以来最大の国際行事』とお祭り騒ぎが行われている。だが、超国籍資本や国内の一部の財閥にはさらに多くの利益創出の機会を提供するが、民衆と零細自営業者には超国籍資本の攻勢に一方的にさらされる結果を露呈するほかはない」と付け加えた。一方、彼は、釜山市と政府が主張するAPEC誘致による経済的波及効果と外国資本の誘致効果についても「釜山市は何の具体的な根拠の提示もなく、経済が再生すると過大な宣伝をしている」と指摘した。

国際的連帯の力で闘おう


 続いての討論者として、ATTAC・ジャパンの秋本陽子さんは、WTO交渉への抵抗の世界的広まりと、日本国内での米軍再編への闘い、とりわけ沖縄民衆による辺野古での基地建設反対闘いの重要性に触れ、軍事と経済のグローバル化に対抗する方法は、全世界の運動陣営がより強いネットワークを形成することであると話した。また総括討論では、日本政府の欺瞞性について、一方で小泉首相の靖国参拝を支持しながら、他方で日韓FTAを前進させたい矛盾点も指摘した。
 ジョン・ベッカムさん(ANSWERロサンゼルス地域責任者)は、「ブッシュが行くところ、世界中で抗議行動が起きており、二週間前もアルゼンチンでの米州サミットへの出席では、一万人の抗議行動があった。米国内でも、九月二十四日、イラクからの米軍撤退を要求して三十万人がホワイトハウスを取り囲み、多くの民衆が『ブッシュを戦争犯罪者として弾劾せよ!』と叫んでいた」と報告した。
 さらに、米国内の貧富の格差が広がっていること指摘し、「ハリケーン・カトリーナの被害によって、アメリカでの貧富の格差が全世界に明らかにされ、アフリカ系住民十万人が死と究極の危機に直面した。ニューヨークの千六百万人に達する人々がまだ食糧配給を受けているが、ブッシュは社会公共部門の支出を減らし国防費に回している。毎日二千万ドルがイラクの占領と戦争のために財源に費やされている」と語った。続いて朝鮮半島の平和に関して、「現在、全世界が直面する核の威嚇は、平壌から始まるのではなく、米国から始まっている」とし、「米国は、世界で最も多くの核兵器を保有しており、核を先制攻撃の道具として使う計画までたてている」と話し、米軍のイラクからの撤退とともに、韓国からの撤退を求めた。
 最後の問題提起をしたキム・ミョンホ民主労総企画室長は、「韓国の民衆の激しい反対にもかかわらず、APEC首脳会議に盧武鉉政権が命をかける最も大きな理由は、『新自由主義は世界的趨勢』という論理で韓米同盟をよりさらに強硬に構築する機会にすることだ」と指摘した。続いて彼は「反戦・反グローバリゼーション闘争をしっかりやるためには、民衆がちゃんと組織されなければならない」として「各国の進歩的政党、労働者、学生など、全世界の民衆の具体的な交流と共同行動がもっと活発にならなければ、今回のような国際フォーラムが資本によるお祭りイベントに反対する例年行事に終わりかねない」と強調し、「もうひとつの世界へのオールタナティブは、ラテン・アメリカで始まっているモデルかもしれない」と指摘した。

APECの実態暴露へ


 この全体討論の前に進められた開幕行事で、「戦争と貧困を拡大するAPEC反対ブッシュ反対国民行動」チョン・グァンフン共同代表(韓国全国農民会)は、「超国籍資本は、教育、農作物、医療を商品化し、国境の壁を崩せという。また彼らは利益になれば世界のどこでも戦争を起こす」とし、「今回のフォーラムは世界の民衆が集まり、超国籍資本による彼らだけの世界化に対抗し、いかに対応するかを議論する生産的な場になるだろう」と述べた。
 続いて「戦争と貧困を拡大するAPEC反対ブッシュ反対釜山市民行動」チ・ヨングク共同代表(民主労働党)が「韓国政府は全行政力を動員して、今回のAPECが釜山経済に資すると広報している。しかし誰もAPECが釜山民衆に及ぼす影響には何も言わない。WTO/IMFは、公共サービス部門を民営化する経済戦争を起こしている」とし、「フォーラムに集まった世界の民衆とともに、公共連盟は明日街頭に繰り出し、数万人の生き生きした声を通してAPECの実体を暴露するだろう」と話した。
 また、また十二月一日にゼネストを準備しているヤン・ギョンギュ民主労総代表は、「民主労総は十二月一日、非正規改悪法に対してゼネスト突入を宣言した。こうして労働者が闘争しなければならない理由も、非正規職増大の問題も、よく調べれば超国籍資本と今日釜山で開かれるAPECのような機構が作り出した政策に起因する。労働者も反APEC闘争が重要だと思っていて、来る十二月一日のゼネスト闘争を元気良く組織する計画だ。釜山国際民衆フォーラムはそのような側面で、グローバリゼーションに対抗する新しい対案を生産的に作り出す討論の場になることを望む」と話した。
 十六日午後も全体会議が行われ、香港民衆連盟(HKPA)の代表やビアカンペシーナ・インドネシアの代表などがWTO交渉と各国のグローバル化の現状、政府の対応などについて報告した。そして、夕方から課題別のワークショップが持たれ、一七日も午前ワークショップ、午後分科会報告、釜山民衆宣言討論・採択へと至った。民衆フォーラムの最後に、十七日韓国政府の進める自由化政策に抗議自死を遂げた韓国農民女性(この前の週も農民が一人コメ自由化政策に抗議して自死している)、この二人の農民を追悼して参加者全員で黙祷した。

「釜山ロードマップ」粉砕


 釜山APEC首脳会議では、WTO交渉促進の特別決議が採択された。二〇〇一年ドーハ第四回WTO閣僚会議で新しいラウンドが立ち上がって以来、二〇〇三年メキシコ・カンクンでの合意形成の失敗を受けて、WTO体制の深刻な危機が続いている。先進国優位となってきたWTO―ガット体制という「自由貿易制度」への反抗のために、一国一票制を前提での「コンセンサス方式(全体合意形成)」・一括受諾方式を、途上国が最大限利用し始めてきたからだ。
 しかし、途上国を分断する手法も盛んで、途上国グループからインド、ブラジルを代表として選び五つの利害関係国グループ(FIPS)を作り、非公式会合を繰り返し、昨年夏WTO一般理事会での「七月枠組み合意」は先進国から歓迎をもって受け入れられた。にもかかわらず、その背後に潜む欺瞞性が、すぐさまジュネーブに拠点を置く社会運動団体から明らかにされる中で、各国の農業交渉などへの意見の相違が噴出し、WTO交渉は第六回香港閣僚会議での妥結が困難に陥っている。WTO第六回香港閣僚会議は、最初から具体的合意を得ることのない、極めて中間的な会議となり、すぐさま二〇〇六年春までの続開WTO閣僚会議の場所と日程を決める場となるだろう。
 しかし、「釜山APEC首脳会議は消えていくDDAの火種を消すまいと再び点火しようとしている」(釜山民衆宣言)と指摘されるように、WTO交渉促進の特別決議を採択したが、これすらもEU非難を名指しするか否かで意見の相違があったし、またブッシュによる自国の輸出補助金の一部を削減するとの発言を歓迎するのみで、実際はアメリカの農業補助金政策である「青の政策」を無理矢理「緑の政策」に押し込んでいる事実には触れようともしない。
 西アフリカの綿花産出国は、このアメリカの輸出補助金による国際市場への綿花ダンピングで深刻な被害を被ってきた。そもそも、DDA(ドーハ開発議題)とは名ばかりで、多くの社会運動団体は、今ラウンドは「ドーハ反開発議題」を交渉に載せていると非難している。
 WTO体制を最終的に崩壊させる日が迫っている。そのためには、APEC抗議の行動に続き、WTO香港閣僚会議失敗に向けた巨万の民衆の行動が問われている。
 一方で、APEC首脳会議はボゴール宣言(一九九四年)の中間評価を行い、先進国で二〇一〇年、途上国で二〇一五年までに貿易・投資の完全自由化を目標にした「釜山ロードマップ」を掲げ、全分野での自由化促進を具体化していくことを決議した。
 WTO交渉打開が困難を極める中、二国間・地域間のFTA(自由貿易協定)が無数に促進・締結されてきている。現に、釜山APECの場において、中国−チリとのFTAが合意されたし、日本政府もチリとのFTA交渉促進を確認したという。WTOを凌ぐ、FTA締結の嵐を何としても阻止していかなければならない。
 日韓FTA交渉だけは、小泉首相の靖国神社参拝への反発もあり、日韓首脳会談も失敗に終わっているため、再交渉が日程に挙がって来ていないが、ASEANとのFTAは中国が今年七月発効・開始して、韓国の産業界を震撼させているため、韓国もASEANとのFTA交渉を急いでいる。また、アメリカに対してタイや韓国のFTA交渉も促進しつつある。貿易や投資の完全自由化は、新自由主義グローバリゼーションの最終兵器であり、労働者・農民・民衆にとって絶対に許容できないものである。

私たちの中期的目標

 アジア民衆は、「釜山ロードマップ」粉砕のための民衆の行程表を作成しなければならない。そのロードマップの第一歩が、釜山国際民衆フォーラムと釜山APEC反対民衆行動であったし、続く十二月香港WTO対抗民衆行動である。そして、二〇〇六年三月WTO続開閣僚会議の開催地での抗議行動であり、二〇〇六年末までのDDA最終合意のWTO閣僚会議対抗行動である。日本サイドからすれば、二〇〇八年G8サミット日本開催、二〇一〇年APEC日本開催までつながる各反対行動の行程表となるだろう。その間に、様々なFTA交渉反対行動や、WTO・IMF対抗行動が企画されるだろう。釜山で宣言された「釜山ロードマップ」は、二〇一〇年APEC日本開催までに粉砕され、もうひとつの世界への道の端緒が始まっていることを、必ずや私たち反グローバリゼーション運動の中期目標としよう。 (北野はじめ)

資料 釜山民衆宣言


 釜山APEC首脳会議は、私たちが憂慮した通り、強国の論理だけが一方的に適用される新自由主義的グローバリゼーションをより拡大する結論に向かっている。私たちアジア太平洋地域の社会運動団体は、これに深刻な憂慮を表し、貧困と戦争のグローバリゼーションを拡大しようとする釜山APEC首脳会議に反対し、平等と平和のための美しい抵抗の拡大を決意する。

 APECは、これまで全世界に戦争と貧困を拡大する役割の先頭に立ってきた。 APECは「人間の安全保障」という美名の下に、軍事的覇権主義と非民主的な悪法を支持し、広めてきた。 APECは、ブッシュによるイラクとアプカニスタンへの不道徳な侵略戦争と、そこへの派兵を共謀するという犯罪を支持した。特に今回の首脳会議では、全世界の民衆の強力な抵抗により、自ら危機を招いたWTOドーハ開発ラウンド(DDA)交渉の妥結を要求する特別声明を採択しようとしている。そればかりかAPECは、地球的災厄を防ぐ京都議定書を無力化させようとしている。APECは、二酸化炭素排出量の減少を各国の強制義務事項ではなく、各国の自発的な努力に任せようという反環境的な議論を始めている。

 私たちは、釜山APEC首脳会議の議題が全地球的災厄を招くと警告する。釜山APEC首脳会議は「WTOドーハ開発ラウンド(DDA)交渉妥結を要求する特別声明」、アジア太平洋地域の貿易と投資の完全自由化のための「ボゴール目標への中間評価と釜山ロードマップ」等を採択しようとしている。DDA交渉の核心は「農業関税と補助金の撤廃、そしてGATS(サービス貿易に関する一般協定)交渉の進展」。DDA交渉の妥結は、農産物の市場開放を強要することで食糧主権を脅かし、公共サービス部門での市場開放で、教育・医療など公共サービス部門も超国籍資本に譲り渡す、悲惨な結果を招くだろう。そればかりか、釜山APEC首脳会議で扱われる「反テロ」議題は、派兵追加延長の議論により、苦境に陥っている米国ブッシュ政権の不道徳なイラクとアフガニスタン侵略戦争を支持し、サポートするものであると憂慮する。

 私たちは、韓国政府などによる人権侵害についても深刻に憂慮する。戦争と新自由主義に反対する運動は、貧困と暴力の悪循環を防ぎ、世界の民衆の「労働権、平等権、環境権、社会権」を守るための闘いであり、すでに世界史的な流れになっている。それにもかかわらず韓国政府は、全世界のNGO活動家に対する入国禁止、集会参加禁止、取り調べ、法的な強制力のない特別治安地区内の集会禁止など、独裁政権がしたようなことを行っている。

 私たちは、韓国政府が全世界から人権後進国と指弾される前に、 11月18日〜19日開催が予定されている、戦争と貧困を拡大するブッシュとAPECに反対する多様なデモを保障することについて強く要求する。私たちは、16日〜17日、二日間に渡って開かれた国際民衆フォーラムで APECに反対する全世界の民衆の立場を確認し、戦争と新自由主義に反対するアジア太平洋地域社会運動の課題を議論した。これを土台として、私たちは18日、世界中の至る所で歓迎されていないブッシュと新自由主義グローバリゼーションに反対する韓国民衆の新しい闘争を組織するだろう。先日、アルゼンチンで恥をかいたブッシュは、釜山でも韓国民衆の強い抵抗に直面することになるだろう。私たちは、新自由主義グローバリゼーションとWTO・DDA交渉に反対する全世界の民衆と共に、12月香港第6回閣僚会議を粉砕するために闘うだろう。

 釜山APEC首脳会議は消えていくDDAの火種を消すまいと再び点火しようとしているが、戦争もなく、貧困と差別もない世の中を建設しようとする私たちの力強い足取りを妨げることはできないだろう。私たちは、全世界の民衆の連帯を強化し、利潤ではなく、民衆の権利が尊重される新しい世の中に向かって、前進するだろう。

  2005年11月17日

戦争と貧困を拡大するAPEC反対、ブッシュ反対国民行動/戦争と貧困を拡大するAPEC反対、ブッシュ反対釜山市民行動/国際民衆フォーラム参加者一同.


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