| マッカーサーの銅像撤去論争の続編 かけはし2005.11.21号 |
「朝鮮戦争」の評価をめぐる
ブルジョア間の思惑と攻防 |
カン・ジョング教授が7月27日付のインターネット新聞「デイリー・サプライズ」に「マッカーサーは38度線の執達吏だった」というコラムを寄稿して以降、6・25(朝鮮戦争を指す)を「統一戦争」と呼んだことに対する国家保安法違反の論難、チョン・チョンベ法務長官(大臣)の不拘束捜査についての指揮権発動、これによる検察総長の辞職や10・26国会議員補欠選挙を念頭においた野党ハンナラ党と与党・開かれたウリ党のセッカル論争(アカか、アカでないかをめぐるマッカーシズム的論争)が進行している。
1人の老教授の寄稿が招いたその暴風は3カ月が経過した今、与野党それぞれの思惑の中で、支配階級内部の攻防が続けられている。
カン・ジョング教授の寄稿文は、マッカーサーの銅像撤去闘争をめぐって7月17日に仁川・自由公園で展開された保守と進歩陣営の物理的衝突について憂慮を表明している。
「パルゲンイ(アカ)」という魔女狩りについて警戒しつつ、「討論や論争を通じて是々非々を判断する合理的な解決」を要求している。そして、これまで命の恩人と表現されているマッカーサーや米国は「民間人虐殺」の責任者であり、「韓(朝鮮)半島の分断と戦争の主導者」なので再評価が必要であるということを展開した。
カン・ジョング教授のコラムは冒頭で「セッカル論」についての憂慮を表明したけれども、保守右翼の諸団体は、6・25を「統一戦争」と呼んだ部分を拡大・解釈して即刻反撃に乗り出した。ハンナラ党と自民連がカン・ジョング教授の司法処理を要求する中で8月23日、23の保守団体が「北韓(北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国を指す)の南侵を正当化する論理なので国家保安法違反だ」ということを根拠に検察・警察にカン・ジョング教授を告発した。
これについて警察は8月24日、司法処理の方針を発表し、3回に渡ってカン・ジョング教授を召喚・取り調べを行った後、10月7日にカン・ジョング教授についての拘束の意見を検察に提出した。
「戦争の責任は米国にある」との主張、「6・25=統一戦争」との言及は、カン・ジョング教授だけの目新しい主張ではない。国内でも出版された著書である『韓国(朝鮮)戦争の起源』を執筆した米国の学者ブルース・カミングスも、分断と戦争の起源は米国にある、との主張をしており、チョ・ガプチェ元・朝鮮日報社長も「韓国の歴史において統一戦争を起こした人物はキム・ユシン(新羅の武将、7世紀、新羅、高句麗、百済の3国統一の英雄とされている)とキム・イルソンの2人だ」との発言をしたことが知られている。
だが「政治思想の自由」、「学問研究の自由」、「国家保安法撤廃」を主張している進歩陣営や市民・社会諸団体、教授たちの抗弁は保守右翼から完全に「親北の論理」だとして、ののしられた。結局、カン・ジョング教授をめぐる問題は司法処理によって一段落するかのようだった。
だが10月12日、チョン・チョンベ法務長官が、この事件についての不拘束捜査を指揮して以降、事態は与野党のセッカル論争へと広がっている。
ハンナラ党は、チョン・チョンベ長官が不拘束捜査を指揮したのは「検察と司法部の独立性を侵害すること」であり、現政府の検察掌握の意志の露骨な表現であるとして「チヨン長官の解任」を要求しており、そればかりかハンナラ党最高重鎮・常任運営委員連帯会議や議員総会で「恥辱の日」、「親北左派政権」、「政権退陣運動」を声高に主張した。パク・クネ党代表は記者会見を通じて「体制守護のために審判をすること」を宣言したりもした。
開かれたウリ党は「カン教授の発言には同意しないが、逃走や証拠隠滅の危険のない者の不拘束捜査は合理的なことだ」「ハンナラ党は何が何でもセッカル論に引っ張っていこうとしている」として、「アカ攻撃の仕立て」を批判している。
今回の与野党のセッカル論争は、支配階級内部の統治や支配方式の違いをあらわにしている。資本主義体制の守護と資本の利益という巨視的側面についてのブルジョアどもの立場は同一だ。だが体制を維持・発展させることにおいてブルジョアの各分派は、その方向性をめぐって時には衝突し、対立するけれども、究極的には共同の敵の前では和解する。
チョン・チョンベ法務長官の検察指揮権発動について京郷新聞、世界日報などは、平素の国家保安法廃止についての所信を身をもって実践したものであり、ノ・ムヒョン政府が推進してきていた国家保安法の廃止、ないしは明確な改正の立場を反映したものと見ている。
朝鮮日報と中央日報はノ・ムヒョン政権が継続的に取ってきていた「検察飼い慣らし」の延長線として、これを解釈している。カン・グムシル前法務長官がソン・ドゥユル教授に対する検察捜査の際、不拘束捜査の立場を明らかにしたことや、04年のキャンドル集会の主導者4人に対する逮捕令状請求問題に対して反対意見を提出したことも、その例として挙げている。
だがチョン長官による不拘束捜査の指揮は支配階級内の相対的改革分派が推進している民主改革のひとつであるにすぎない。ブルジョア民主主義を拡大・強化するひとつの過程にすぎない。それによって「維新政党」と表現されているハンナラ党との区別をし、改革と進歩とによって自らを表現しているのだ。
このブルジョア分派は、体制を脅かさない限りにおいて、すべての運動に市民権を付与することで、資本の下位パートナーへと運動を転落させる。
また時期的に、対北市場を他に先がけて占めることによって体制の危機を取り繕い、解消しようとするノ・ムヒョン政権の意図や、11月の6者会談を前にして不必要な障害物を除去するための計算が反映されたものでもある。
ハンナラ党は、かつての軍部独裁の時節に、司法部や検察を隷下において、ほしいままにした身の毛もよだつ悪業の数々を忘却したまま、あたかも司法部の独立性を侵害した反民主的行為であるかのようにチョン長官の行為を追い立て、根深いイデオロギーにその根幹をおいた「体制守護論」を土台として、10・26国会議員補欠選挙で有利な位置を占め、執権下半期の政局運営の主導権を掌握するために、ノ・ムヒョン政権の揺さぶりに乗り出したのだ。
開かれたウリ党とハンナラ党指導部は昨年末、国家保安法廃止について合意した。もちろん完全な廃止ではなく、代替立法の制定に合意したのだ。代替立法論は、国家保安法2条の「反国家団体」を「国家安全侵害団体」に変更し、7条の鼓舞讃揚罪をなくし、積極的な宣伝扇動のみを処罰するという内容だ。
これは形式上、国家保安法は廃止するが、いつでも労働者民衆の闘争を弾圧できるという支配階級の意図が、そのまま残されているのだ。したがって昨年末に合意し、うやむやになりはしたものの、再び「国家保安法を守護する」というパク・クネの妄言が力を発揮できるのだ。
またチョン・チョンベ法務長官の不拘束指揮は言葉通り、不拘束状態で司法処理を行うというものだ。これは思想や学問研究が依然として司法処理の対象だということを示している。韓国社会において、政治・思想に対する検閲は今なお現在進行形だ。これは支配階級内の相対的改革勢力が語る民主改革の虚構と不徹底さを、そっくりさらけ出しているものだ。
労働者階級は、このような部分について一貫した批判を遂行しなければならない。支配階級内部の相対的改革分派と保守右翼の攻防が進められるとき、保守右翼との線引きを試みることはブルジョア民主主義への幻想を拡大させるだけだ。
カン・ジョング教授の寄稿文と、それ以降にマスコミを通じて伝えられた諸報道は、ひとりの学者の個人的見解の披瀝にすぎない。賛否の立場は、いくらでも存在するだろうし、さまざまなレベルでの論争を必要とする。だが、これが正しいのか誤っているのかを現行法の物差しで裁断することは結局、支配階級の利益に奉仕する政治思想や学問だけを容認していくという意図なのだ。
ブルジョア民主主義の基本的権利さえも政争の対象としてしまう制度圏政治に、いかなる希望もない!(「労働者の力」第89号、05年10月28日付、ソン・ジヌ/政策局長)
東南アジア進出韓国企
業の労働権弾圧の実態
10月12日、民主労働党、民主労総、タン・ビョンホ議員(民労党)は「東南アジア進出韓国企業の労働権弾圧の実態調査報告と対応戦略ワークショップ」を共同で開催した。
実態調査は、今年6月30日にタイ・バンコクで開かれた「韓国系超国籍企業の労働権弾圧と対応戦略」ワークショップを通じて実現された。調査チームはカンボジア、フィリピン、タイ、マレーシア、インドネシア、スリランカなどからやってきた活動家たちとのインタビューも行った。
発表内容には各国駐在韓国大使官が把握し、労働部(省)が集約した「海外進出企業の紛糾現況」の資料を分析した結果も含まれた。
04年大韓貿易投資振興公社(KOTRA)の統計によれば、海外進出韓国企業6275社のうち中国が2783社(44・4%)で最も多く、その次が中国を除いたアジアで1579社(25・5%)に達した。労働部提出の資料によれば、02年以後、今年7月までに発生した労働争議は全部で88件で、ベトナム(44件)、インドネシア(23件)などアジア地域で(89・7%)に集中した。
争議発生の理由としては勤労基準法違反(41件)、賃金引き上げ(19件)、構造調整(6件)などとなった。
弾圧の事例では、韓国でも「無労組」方針を固守しているサムスンが際立った。マレーシア・サムスン電子は1999年に労組結成申告書が提出されるやいなや、労働者たちを相手に労組脱退の署名を強要し、労組の結成は結局、つぶされた。マレーシア電機産業労組の関係者は「労組を結成するやないや会社側の韓国人管理者たちは、サムスンで労組はありえない、として脱退署名を強要し、言葉による暴力、脅迫、解雇の脅しをした。強圧的な雰囲気の中で多くの労働者が脱退書に署名し、それ以後はエネルギーが消えはてた」と語った。
イ・チャングン民主労総国際部長は「海外進出企業に対応する最大の原則は現地の労働者たちの組織化を積極的に支持・支援し、労組結成のための有利な国内外的条件の形成に寄与すること」であり「来月には東南アジアの労組活動家を招請して訓練・教育を実施する計画」だと語った。(「労働者の力」第89号、05年10月28日付より)
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