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                           かけはし2005.11.7号

「お受験」に使えない「つくる会」教科書

ナショナリズムの首を絞める新自由主義

                                  仁志泰雄
「つくる会」教科
書は大敗北した

 先日、二〇〇六年度から使用する中学校教科書の採択が終わり、各地域ごとの採択結果が公表された。その中で新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)の歴史・公民教科書(扶桑社版)の採択率も判明した。その結果は「つくる会」側が掲げていた目標である採択率一〇%を大きく下回る歴史約〇・四%、公民約〇・二%となった。これは「つくる会」教科書に反対する市民運動等の成果によって勝ち取った結果である。
 自民党、日本会議などの右派勢力が総力を挙げる中で、「つくる会」教科書の採択数が伸びなかった理由はいくつか挙がっているが、その中の一つに「受験に使えない」というものがある。そこでここでは、特に「つくる会」の歴史教科書についてこの点を考えていこうと思う。
 「つくる会」の歴史教科書の特徴として、@各章ごとにテーマを設定し、クラス内でそれについて討論し考えるという趣旨のコーナーを設けているA各時代ごとにある人物にスポットを当て、コラム形式の読み物にしているB近現代史に重点を置き、ほかの時代よりもページ数を割いているC図表やカラーページが多いD日本の伝統や文化に関する記述が多いということが挙げられる。
 これらの特徴は現行の中学校学習指導要領の、教科や各分野ごとの目標に記述された内容を意識しているものであるが、現行の指導要領はその中の特徴である「ゆとり教育」による学力低下が指摘されている。つまりこのような指導要領では「受験戦争」に対応できないということである。もちろん「つくる会」教科書の記述内容そのものにも、受験的に不利と考えられるものがあるが、「ゆとり教育」との絡みからも、「受験に使えない」と考えられても不思議ではない。

「つくる会」教科
書はなぜ使えぬ


 「受験に使えない」理由としては、以下のようなことが考えられる。
 @特徴に「テーマを設定しての討論を行う」というものがあるが、実際の授業の中でこれを行おうとすると、多くの時間数を割くことになる。さらに受験を見据えた場合、このような授業そのものを、生徒、保護者が望んでいないという問題もある。
 A人物コラム等の読み物にかなりのページを割いているが、そのような知識が入試には必要ないということや、中にはその人物そのものが受験的に重要ではないということが考えられる。
 B「近現代史の記述が多い」という特徴があるが、実際の中学校における授業時間数の中では教科書をすべて終わらせることは難しく、プリントを配ってそれを読んで終わりであるとか、現代史についてはほとんどやらないという方法で対応している現状がある。また近現代史は入試で取り上げられることも少ないという問題もある。
 C執筆陣の問題(歴史学者がいない、そもそも執筆陣の数が他の教科書に比べ極端に少ない等)から、特に前近代史において、内容が薄い、歴史認識に欠陥がある、定説と距離がある記述がある等の問題がある。さらに前近代史は近現代史に比べ、ページ数そのものが少ないという問題もある。受験においては前近代史の比率が高いので、「つくる会」の歴史教科書は受験においてほかの教科書よりも不利になると考えられる。
 つまり「つくる会」の歴史教科書の特徴そのものが、「受験に使えない」と考えられる原因となっている。
 さらには実際の中学校の授業では、教科書をあまり使わないという問題もある。そして国立、私立、中高一貫校等の受験を強く意識している学校ほどその傾向は高くなっている。例として、多くの私立学校において、英語の授業で検定教科書を使用せず「プログレス」という教材を授業で使っているということが挙げられる。今回の教科書採択において「つくる会」教科書を採択した学校を見ていった場合でも、そこでは教科書を使わないで授業が行われている可能性がある。
 実際、採択校の一つである玉川学園中は、その教育方針により、原則として教科教育に教科書を使用しない。毎日新聞(05・8・11)の記事によると、玉川学園は採択後「4人の担当教員で教科書を見比べた結果、写真の点数や、日本文化を紹介する部分が多かったため、採用を決めた。『戦争の見方が偏っている』という意見も出たが、授業では資料集やプリント中心で進め、教科書は副読本として使う」とコメントした(ただし玉川学園中での採択において、「つくる会」教科書への社会科部長の強力な後押しがあったことは見逃せないが)。

新自由主義とは
相性が良くない


 このように「せっかく」採択された「つくる会」教科書は、実際には使われないという可能性もあるのだ。「つくる会」教科書は受験に不利なので採択されず、仮に採択されても、受験に不利なので実際には使用されず、さらに幼稚園の段階から競争・選別を行い、一握りの「エリート」を生み出すものである「お受験」の世界においてはその傾向が高くなるということがいえるのではないでだろうか。
 しかし、かつての家永教科書(三省堂版「新日本史」)のシェアが小さかった理由にも、「受験に使えない」ということが考えられる。「お受験」はわれわれの味方では決してない。そしてこのような「お受験」による「エリート」教育、さらには「ゆとり教育」という名前の「エリート」教育という、新自由主義的な教育方針を打ち出しているのも、自民党を中心とした右派勢力なのだ。そして現状においては、単に自分で自分の首を絞めただけである。
 郵政民営化における「造反」議員(与党の教育基本法「改正」検討会座長であった保利耕輔が無所属になったため、「改正」論議が進まない)のように、保守本流さらには復古的ナショナリズムと新自由主義の相性が悪いことは、以前から指摘されているが、今回の「つくる会」教科書の採択結果においてもこのようなことの影響があったと考えられるのではないだろうか。しかし今後「つくる会」も自民党のように、新自由主義的に脱皮する可能性もある。そうならないようにも我々は現況に安心せず、「つくる会」の息を止めよう。



共謀罪はいりません! 銀座デモ
監視社会の強化に今こそ歯止めをと訴え


 十月二十四日、共謀罪新設法案に反対する日本消費者連盟、JCA│NET、ネットワーク反監視プロジェクトなど十八団体の呼びかけによる「話し合うことが罪になる共謀罪はいりません 銀座デモ」が行われ、百人が参加した。
 この日、自民、公明両党の国対委員長会談で「共謀罪」新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案の特別国会成立を見送り、継続審議とする方針を決定した。与党は、人権侵害・生活破壊の「共謀罪」に対する反対運動、各界からの批判、多くの反対意見の殺到によって強行裁決を決行することに躊躇してしまった。
 「話し合うことを罪にするのは、これまでの法体系を根本的に変えてしまう」「犯罪実行前の謀議だけで罰することは思想処罰となってしまう」「組織の規定があいまいだ」などの単純な疑問から、選挙・政治活動そのものに対する規制へと広がるのではないかという自らの危険を感じた与党議員から、この法案の欠陥に疑問を表明せざるをえなかったのだ。若干の時間的猶予を反対運動の拡大にむけて利用していかなければならない。まだまだ法案の危険性について伝えきれていない。この銀座デモを皮切りに、さらに人々に「共謀罪」反対を訴えていこう。
 日比谷公園霞門で集会が行われ、開催にあたって主催者は、「新聞各社は、与党は法案の成立を断念したとか報道している。確かに特別国会の日程的な問題からすれば与党が裁決に持ち込むには厳しい。しかし、本日も衆院法務委員会が開かれており、二十六日に参考人招致という日程だ。ぎりぎりで裁決に持ち込める審議状況だとも言える。なんとしてでも引き伸ばし、継続審議に持ち込み、来年の通常国会で廃案をめざしていきたい」とアピールした。
 次に、「日の丸・君が代」法制化と強制に反対する神奈川の会の京極紀子さんは、「十月十五日、厚木基地を考える会のメンバーが基地監視活動のためにマンションの非常階段にいたところを住居侵入罪だとして不当逮捕された。会は、長年、マンションからの基地監視活動を公然と続けてきた。これは明らかに神奈川の反基地運動全体に対する弾圧だ。立川テント村への弾圧以降、ビラ撒きに対する弾圧が強まっている。共謀罪の制定によって監視社会がより強まっていくことに対してストップさせていこう」と発言した。
 続いて、共産党の井上哲士参議院議員、社民党の福島瑞穂参議院議員から国会報告と反対の決意表明を行った。
 集会終了後、参加者はキャンドル、反対プラカード、横断幕を持って銀座一帯にわた「話し合うことが罪になる共謀罪はいらないぞ!廃案にするぞ!」と繰り返した。(Y)



共謀罪新設反対! 院内集会
目配せだけで罪になる法案は廃案しかない!

 十月二十七日、日本消費者連盟、盗聴法に反対する神奈川市民の会など十八団体は、共謀罪の新設に反対する市民と議員の集いを衆議院第二議員会館で行い、七十人が参加した。
 主催者は、「衆議院法務委員会は、二十六日に参考人質疑を行った。明日が最後の委員会だ。現在の段階では採決は行なわず、継続審議となる。次国会でどのような状態になるかわからない。油断せず採決させないところまで追い込め続けていきたい。廃案をめざして頑張っていきたい」と開催あいさつした。
 次に国会議員からの発言。社民党の福島瑞穂参議院議員は、「共謀罪を成立させなかったのは、みんなで頑張ってきたからだ。昨日の法務委員を傍聴し、与党の議員とも話したが、国連国際組織犯罪防止条約の国内法化を唯一根拠にしているにすぎないことがはっきりしてきた。共謀罪を認めるか否か、時代の転換点としてある。廃案をかちとろう」とアピールした。
 民主党の松岡徹参議院議員は、「国際組織犯罪防止条約は、社民党を除いて各党は賛成してしまった。みんな負い目を感じている。今になって『予備行為の規定が必要だ』『組織、団体性の範囲はどうこまでなのか』などの疑問が噴出している始末だ。結局、共謀罪の適用団体は、警察当局の判断でしかないことがわかってきた。こんなことは一言も法案には書いていない。一段落ではなく、闘いは継続する」と発言した。
 共産党の井上哲士参議院議員は、「法務省は、乱用しない、構成要件も厳しいんだということを説明している。しかし、ビラ撒き弾圧などから明らかなように、そんなことを信じられない。通常国会で廃案をしていこう」と訴えた。
 社民党の保坂展人衆院議員は、「衆議院法務委員会で一人の与党議員を除いて全て疑問を表明した。私は、共謀の定義について質問したが、法務省は共謀共同正犯と同じだと答えた。最近の判例では幅広く解釈されてきている。つまり、会議、打ち合わせだけではなく、言葉を語らなくていい、暗黙の共謀で成立してしまっている。大きな組織の長の目配せで共謀が成立するのかと質問したら、成立すると答えた。目配せで共謀が成立するという、こんなひどい法案を成立させてはならない。戦前の治安維持法が政治結社だけではなく、さまざまな領域の人々を弾圧していった。同様な形で拡大していく危険性がある。共謀罪があれば、ねらった対象に対しては、いかようにも検挙、弾圧ができてしまうんだということだ。こんな法案は廃案しかない」と批判した。 (Y)


こらむ

医療制度の改革試案

 厚生労働省が10月19日発表した医療制度の改革試案は、高齢化で増え続ける医療費の伸びを、高齢者を中心とした患者の負担増や生活習慣病の予防などで抑える(都道府県ごとに抑制に向けた政策目標を作らせ、達成できなかった場合の罰則的な措置も盛り込んでいる)のが柱となっている。
 具体的な患者の負担増のあり方は概ね次のとおり[06年10月めどに実施]。b70歳以上で一定所得以上の人(夫婦で年収約520万以上の世帯)の窓口負担3割にb長期入院患者の食費・居住費を自己負担化b高額療養費の自己負担限度引き上げ[07年4月めど]b傷病手当金、埋葬料などの現金給付見直しb標準報酬月額見直し[08年4月めど]b 新しい高齢者医療制度創設(75歳以上の高齢者を対象とした独立保険、市町村を運営主体。負担割合、公費5割、若年層の保険料4割、高齢者1割で掛け金は年金から天引き)b65〜74歳窓口負担2割に(一定所得以上は3割)。
 負担増を最初に行い、新しい高齢者医療制度を作ればそのご褒美として65〜74歳の窓口負担を2割にしてやるぞとの官僚の意図は見え見えだ。
 生活習慣病の予防は糖尿病・高血圧症・高脂血症の予防に着目した健診および保険指導の充実等、都道府県健康増進計画で、患者、予備軍の減少率や健診、保険指導の実施率の目標を示す。また患者本位の医療提供として、総治療期間短縮のため、脳卒中、癌などの年間総入院日数、在宅での看取り率などの数値目標の導入などが言われており、15年度の目標を糖尿病等の患者・予備軍を25%減、平均在院日数は、全国平均(36日)と最短の長野県(27日)との差を半分に縮小と、具体的な数値も含め、提起されている。
 試案は厚生労働省、具体的な数値目標の達成は地方自治体の責任、達成できなければ罰則的な措置(新しい高齢者医療制度への自治体の負担を増やす)を課せられる。地方自治体の首長や公務員の責任だけではなく、そこに住む住民にも責任を取らせようとしているのがこの罰則であろう。5割の公費負担を国、地方どのような割合になるのかはわからないが、数値目標を達成できない地方自治体からはより多く出費させるのだから。
 新しい高齢者医療制度も難問があるようだ。市町村が運営主体となると提起されているが、国民健康保険でさえ破綻している状況でそれ以上リスクのある保険は引き受けられないというのが市町村の実態であろう。これまでの無為無策の結果が医療費の現在を招いたのに「取れる所から取る」は政府税調だけではなく、厚生労働省もまた同じなのだ。小泉の言う「改革」もまた同じであろう。反撃する体制を作ろう。      (高)


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